2024.3.7

「流彩染」ワークショップ最終報告

 安城ゼミ3回生は、2023年11月22日、京都の染色工房アート・ユニを訪問し、染色加工業界の仕組みや環境保護を視野に入れた同社の技術開発に関するお話をうかがった上で、流彩染(りゅうさいぞめ)という技法のワークショップに参加しました。水面に筆で染料を落として模様を作り、トート・バッグ、スニーカー、化粧ポーチ、バンダナなど、各自が持参した布製品を水面に浮かべることで、布の表面がその模様に染まるというのが大まかな作業の流れです。作業が完了した布製品を日常生活の中で使用するためには色落ち防止の処理が必要となるのですが、特殊な技術が必要となるため、アート・ユニの方が仕上げてくださいました。最終処理を経た完成品一式がいよいよ到着し、ゼミ生一同、感激するばかりでなく、生地に関わるビジネスにこれまで以上に強い関心を持つようになったようです。

学生コメント

日常生活の中で、製品ではなく大元の生地を取り扱う会社について知る機会はなかなかないので、今回のワークショップは非常に貴重な経験となりました。特に、シルクスクリーンのプリントのための大きな設備をはじめとして、生地の染色にどのような器具が使われているかを実物を見ながら説明していただけたことが印象に残っています。さらに、越本さんのお話の中で、アート・ユニの生地が使用されたラグジュアリーブランドの製品の価格に比べて、染色加工の工賃が非常に安価だったことには驚きました。間にいくつも仲介業者を通すので仕方のないことかもしれませんが、素晴らしいデザインを生み出している現場にもっと利益が還元される仕組みに変わっていかないものかと考えさせられました。
流通学部3年 別所 羽菜花

参加学生一覧

岡崎 希海、 藤田 悠斗、 安座間 心愛、 網本 叶、 川崎 涼太、 國川 想、 高倉 隆秀、 別所 羽菜花、 堀江 美南、 松本 結美、 三田 怜央也、 毛利田 小桜、 山本 翔

連携先コメント

株式会社アート・ユニ
越本 大達 様

EC や SNS の普及により、ファッションは消費者にとって今まで以上にアクセスしやすいものとなりました。しかし、依然として洋服やその元となる生地がどのような背景で生み出されているかを知る機会は多くありません。そんななか、日本の生産現場では産業の空洞化が顕著になってきており、世界に誇る技術を持った地域工場の廃業があとを絶たない現状があります。今回行った流彩染めワークショップでは、生地加工の現場を見学し、普段職人が使用している道具などを用いてその加工の一部を実際に学生の皆さまに体験していただきました。手を動かし、楽しみながら生産現場の現状や職人の技術について学ぶ。こういった機会を入り口として、学生の皆さまにはマクロかつよりミクロな視点でファッションの流通に思考を巡らせてもらえることを願っています。

教員コメント

流通学部
安城 寿子 准教授

学生は、ファッションビジネスに関する講義科目で、「川上」「川中」「川下」の説明を受けてはいるものの、関心の向かう先というと、多くの場合、製品として売られている服やコスメで、生地の重要性は見落とされがちです。しかし、今年度のフィールドワークでは、アート・ユニ様のご協力のもと、著名なファッションブランドのコレクションにも起用された様々な染色技法の生地を見せていただき、また、実際に「流彩染」を体験することで、決して誇張ではなく、ゼミ生の目が開かれたように思います。当日は、一同、染色技法や業界の仕組みの説明に熱心に聞き入っており、ワークショップ後も自発的に繊維商社について調べているグループがあり、非常に貴重な機会となりました。昨年来いろいろとご相談に乗ってくださった越本様と代表の西田様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。