受託研究

受託研究

受託研究とは、国・自治体等公的機関をはじめ、企業などから研究調査の委託を受け、大学の業務として請け負うもので、大学の知的財産を活用して産業界、官公庁、大学が連携する社会貢献事業のひとつです。
本学では、これまで以上に「本学の蓄積された知的資源」の活用を目指して、積極的に事業展開をおこなっていきます。

※所属・職名は、掲載時及び受託当初の情報です。

研究3: 近畿地方における自治体環境政策の促進要因検討業務

項目 内容
研究テーマ 近畿地方における自治体環境政策の促進要因検討業務
内容 近畿地方の自治体に対するヒアリング等により得られた情報を基に、環境政策促進に向けた自治体の内部要因の抽出を行い、近畿地方の自治体への助言・情報提供等に活用する。
研究代表者 経済学部 准教授
大野智彦 ※所属・職名は2012年在籍時のものです。
委託元 特定非営利活動法人 大阪府民環境会議
研究報告
 本受託研究においては、次の2点の業務を中心的に行った。

(1)自治体環境政策に関する先行研究の整理
 自治体環境政策の促進要因に関する先行研究の整理を行い、既往研究において重要性が指摘されている要因として、(a)社会・経済要因、(b)行政組織、(c)政治的要因、(d)相互参照、(e)環境政策統合に関する変数を抽出した。

(2)自治体環境政策に関する聞き取り調査
 京阪神間の特例市、中核市を対象とした聞き取り調査を、近畿環境パートナーシップオフィスと共同で実施した。各市の抱える環境政策上の課題や、組織特性など既往研究にもとづいて抽出した変数について情報収集を行った。また、聞き取り調査の結果を踏まえて、アンケート調査の調査票設計、配布に関する作業を行った。

 これら受託研究の成果の一部は、2013年2月5日に開催された近畿自治体環境政策情報交換会(仮称)において報告された。

研究2:
大阪・近畿エリアの産業立地優位性・劣位性に関する内外比較調査

項目 内容
研究テーマ 大阪・近畿エリアの産業立地優位性・劣位性に関する内外比較調査
内容  今回の調査は大阪・近畿エリアにおいて企業立地を促進する上で、どのような優位点があり、また逆に問題点が存在しているかについて、産業の立地優位という視点から検証しようとするもので、主として物流コストの問題を中心に分析している。

 その分析結果を踏まえて、エリア内の物流環境の改善を図り、企業立地、域内への投資促進を図れるよう、具体的にどのような施策に反映させて行くことが可能かについて検討している。また、情報化、国際化時代に大阪の産業競争力強化とこれからの育成発展方向の策定に資することを目的にしている。本調査は本学3学部の教員と他大学の研究機関、さらに大阪府の企画室の共同参加によって実施されたものである。
研究代表者 流通学部 助教授
洪 詩鴻 ※所属・職名は2004年在籍時のものです
委託元 大阪府
研究報告
 今回の調査は大阪・近畿エリアにおいて企業立地を促進する上で、どのような優位点があり、また逆に問題点が存在しているかについて、産業の立地優位という視点から検証しようとするもので、主として物流コストの問題を中心に分析している。


 その分析結果を踏まえて、エリア内の物流環境の改善を図り、企業立地、域内への投資促進を図れるよう、具体的にどのような施策に反映させて行くことが可能かについて検討している。また、情報化、国際化時代に大阪の産業競争力強化とこれからの育成発展方向の策定に資することを目的にしている。本調査は本学3学部の教員と他大学の研究機関、さらに大阪府の企画室の共同参加によって実施されたものである。

 本調査の第I部では、実証分析として、県別産業分類データ分析による優位産業の選定を行い、続いて選定した産業へのアンケート・インタビューによる実態調査、さらに実態に基づいた問題特定と改善策・課題検討の3段階に分けて検証している。第II部では、政策インプリケーションとして、物流改善策、他府県、並びに海外との競合、協調関係のあり方について提案している。

 調査研究の前半部分のデータ計算と分析から、全国的に比較した立地集積度(Location Quotient)の高い大阪の優位産業が次の特徴・優位を持つことが分かった。

  1. 全国平均集積レベルより3倍以上集積度の高い大阪の優位産業の業種を特定した結果、その数は100近くあり、その業種は全製造業に均等に分布している。また、その数値は愛知県の約2倍である。愛知の自動車産業依存(50%以上シェア)の「単一経済」より、大阪は内需志向の成熟した工業国型産業構造になっている。

  2. 優位産業は原料志向型、市場志向型、自由立地型に分けられるが、大阪における産業は組み立て技術が重要で、かつ集積効果の高い自由立地型産業に集中している。
 次に、優位産業の代表的な企業へのアンケート結果からも、自由立地型産業の優位が確認できた。さらに、大阪港の存在が大阪の石油化学、塗料、鉄鋼などの原料志向型産業に立地の優位を形成していることが分かった。つまり大阪港は大阪の重要産業である重化学工業に立地優位を寄与していることがいえた。

 大阪の広い範囲の業種の集積と港は立地上の優位を作り出している一方、物流と工業用地のコストの高さと利用の不便さが新産業の集積を形成しづらくし、また、他府県との競合における不利なファクターとなっているのである。また、名古屋新国際空港の出現は関空との競合というより、りんくう工業団地の交通の便利さと土地の安さで大阪の新産業集積や事業拡大の競合相手になると思われる。
 もう一つの新興工業地帯である大阪対岸の上海周辺の工業集積地帯との関係についてであるが、大阪と類似した鉄鋼、石油化学、電機、機械の集積が挙げられる。競合相手になる心配もあるが、今回の調査では、双方は類似した産業構造であるため、補完性も非常に高く、輸出入データと実態の進出投資企業へのインタビューからは、両集積地の同業間分業は大阪の産業の輸出効果を高めながら、双方の成長に寄与していることが見られる。国境を跨る協調関係を形成しつつあるダブルダイヤモンドモデルの集積様相を呈しているといえよう。

 上記の考察を踏まえて、政策的インプリケーションとして、以下の提案を考えている。


  1. 既存の集積は優位産業であるため、物流条件の改善がその存続と成長に不可欠である。特に北東大阪から名神高速までのアクセスを改善することが重要である。

  2. 既存集積産業のさらなる成長には物流の改善と新たな用地が必要になる。その可能性は南大阪エリアの工業地帯にあり、ここに思い切った経済特別区政策を打ち出す工夫があれば、新産業集積の誘致効果が考えられる。

  3. 既存の優位産業の事業拡大の市場は中国にあり、南大阪工業エリアの立地優位は港と空港に近いことにあるため、中国の集積地との近接性を生かし、外資誘致を含めて中国との分業をさらに積極的に推進すれば、南大阪工業地帯の活性化につながる。いわば、南大阪エリアはダブルダイヤモンド集積の中核産業エリアに育てていくことである。



 今回の調査は、産官学の共同作業でより現実味のある成果が得られたと思う。そして日中双方の企業現場からの声を聞いた結果、特に中小企業者双方の交流・協力体制作りの要望が多く、その必要性を強く感じた。本調査により、これからの大阪優位産業の発展の方向性に役立つことを期待したい。

研究1:
「世界遺産を活用した『こころの空間・癒しの交流づくり』・癒しの交流のしくみとIT活用

項目 内容
研究テーマ 世界遺産を活用した『こころの空間・癒しの交流づくり』・癒しの交流のしくみとIT活用
内容 国の複数省庁連携調査である「世界遺産を活用した『こころの空間・癒しの交流づくり』」に関する調査のうち、本学は和歌山県より「癒しの交流のしくみとIT活用」の委託を受け、産官学民の新しい連携を実施している。

阪南大学では、1998年以来国際コミュニケーション学部を中心に国際観光講座を実施する他、数多くの地域の調査研究を行い、また学識委員として研究者を派遣してきた。

そして、昨年度は「観光と環境との新しい関係?観光で文化と自然の遺産を守れるか?」をテーマに今回の世界遺産登録と関係の深い「紀伊山地の霊場と参詣道」の関係者を招いてシンポジウムを開催したことに加え、現地で学生とともに実地調査を行っている。このような活動が評価され、今回の調査委託につながった。

この調査は、三重県、奈良県、和歌山県が連携し、国土交通省及び厚生労働省の委託を受け、和歌山県が「地域資源を健康増進、癒しの資源として活用した交流促進による地域活性化方策」を行うための調査として実施するもので、これまでの産官学に加え民間団体とも連携して行っている。


今回の調査は三重県、奈良県、和歌山県の三県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界遺産に登録されたことに伴い、世界遺産登録された当地域の特性を生かし、現代のキーワードである<癒し・健康>を軸とした観光振興による自立的な地域づくりのあり方について科学的に検証するものである。特に、世界遺産として世界で2例目となる「道」の活用を中心に、広域的なルートを巡る観光振興方策や高齢化社会における健康志向に対応した地域活性化方策を具体化するためのもので、新たな連携の試みとなる産官学民が検討・研究・調査に参加することにより、観光振興に向けた具体的かつ一体的な取り組みが期待されている。
研究代表者 国際コミュニケーション学部 教授
吉兼 秀夫 ※所属・職名は2004年在籍時のものです
委託元 和歌山県
研究報告
 平成16年度、国土施策創発調査(国土交通省)による「世界遺産を活用した『こころの空間・癒しの交流』づくりに関する調査」の総括・委員会運営及び本調査を構成する3編の調査のうち「世界遺産を活用した健康増進観光のあり方に関する基礎調査」を和歌山県より受託し、吉兼秀夫教授を主査とする国際観光学科の教員及び本学の学生を中心とする研究グループによって民間調査機関や地元NPOなどの協力を得ながら実施した。

 調査の目的は熊野古道を中心に、世界遺産登録後の背景にある精神文化、歴史、自然など地域の資源を「癒し・健康」に活用する新たな観光交流の創造および地域活性化をはたすことである。そのため、熊野地域の中でも熊野本宮大社のある本宮町(平成17年5月より田辺市)をモデル地域とし、同地域の資源を心の癒しを軸に評価し、これらのネットワークと活用法について検討した。なお、本研究における「癒し」の概念は「人間が、それをとりまく環境や社会、空間との相互作用により、本来あるべき姿に戻されること」と概念整理し、熊野地域が「蘇りの地」と呼ばれてきたことを重視する方向性を確認した。

 熊野古道周辺地域には世界遺産登録後古道歩きを中心とした観光客が増加していた。本学学生も参加して行った現地調査からは、本宮町には温泉、森林、霊場を始めのどかな集落など癒しに通じる資源が多く存在していることが確認された。さらに古道歩きの観光客にホスピタリティあふれる解説と案内を行う語り部および、語り部が道中何気なく語りかける地域住民の素朴な語り(彼らを語り手と命名した)の果たす役割がきわめて大きいことを併せて確認できた。

 そこで、この語り部などが活躍する熊野古道を舞台に、熊野には癒しを生み出してきた文化が存在していることに着目し、これを「癒し文化」と呼び、地域全体を「癒し文化の森・熊野」とみたてた交流方策を検討することとした。展開にあたってエコミュージアムの概念を取り入れ「癒し文化の森・熊野」は癒し文化の研究、学習、保存活用の機能をもち、総合情報センター、癒し文化ステーション、発見の小径を主要構成要素とし、これらを運営するNPOなどの組織群によって運営されるものとした。これらの活動によって生み出される「癒し文化の森・熊野」は和歌山県が現在押し進めようとしている健康増進観光のフィールドとしてすばらしい舞台を提供し続けることになるものである。これらのフィールドに誘客するターゲットとしては時間富裕層(熟年世代)、予防医療の顧客、研究者及び学生・ニート層を戦略ターゲットとし、熊野リピーター、熊野ライトファンの2次、3次ターゲットとし、裾野の広いターゲットを考えた。これは、浄不浄を選ばず、貴賤を問わない熊野信仰の精神に則るものである。戦略ターゲットを対象とした癒し観光の具体的プログラムについてはその例示を行った。
■国際観光学科学生による熊野古道現地調査
 平成16年度和歌山県より受託した「世界遺産を活用した健康増進観光のあり方に関する基礎調査」の一環として、本学学生による「道草の楽しい古道歩きに関する基礎調査 —熊野古道の宝探し—」を実施した。平成17年2月11日〜12日)国際観光学科の1回生から3回生までの交換留学生2人を含む総勢16人が参加し、吉兼教授、前田(弘)教授、松村助教授の3教員が指導に当たった。調査は5つのチームに分かれ、それぞれに現地の案内人である語り部が1人ずつ付き、熊野古道を歩きながら解説を受けるとともに、古道沿い及び古道周辺の生活名人(炭焼き、養蜂、木工芸、笠作り、畜産農家)を訪ね、熊野古道周辺の宝(魅力)を聞き出すとともに、名人の技を現場で見学、体験した。学生はその日の内に宿舎で資料整理をし、楽しい古道歩きのための方針を検討した。翌日は提案内容を模造紙に清書し、本宮町役場会議室に集まっていただいた語り部を始め地元の方の前で報告会を開催した。

 地元の方からは「現地にいてはなかなか気づきにくいことを指摘してもらって参考になった」と学生の提案したアイデアに賞賛の言葉をいただくことができた。また、この調査結果から語り部と生活名人のような語り手との連携による古道歩きの宝(魅力)を確認することができ、本提案作成に大いに参考となる知見を得ることとなった。

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