2024.2.1

「ソーシャルビジネス」外部招聘講師による特別講義実施報告(2023.12.12)

流通学部 流通学科 片渕卓志

 「ソーシャルビジネス」とは貧困問題などの社会的問題をビジネスの手法を使って解決するビジネスです。今回は日本でも古くから活動しているソーシャルビジネスの先駆的事例である「ビッグイシュー日本版」編集部の松岡理絵さんに特別講義をお願いしました。

 『ビッグイシュー』とは、1991年に英国・ロンドンで創刊し、ホームレス(路上生活者)状態の人の自立を応援することを目的とした雑誌です。日本では2003年に、当時もっともホームレス状態の人が多かった大阪で創刊しました。
 
 ホームレス状態の人であればその日から何の条件もなく、この雑誌の販売者となることができます。最初に10冊を無料で受け取り、1冊450円で販売。すべてを販売すると4500円を得られ、そのお金を元手に次からは本人の判断によって1冊を220円で仕入れてもらいます。
 
 以降、路上で1冊を販売すると、450円のうち230円が販売者の収入になるという仕組みです。この20年間で累計982万冊を販売し、15億8392万円を販売者に提供してきたその事業について、まず説明して頂きました。
 
 そして、なぜホームレス状態となるのか、ホームレスの人たちの就労を困難にしているもの(壁)は何かなどをお話していただきました。また、NPOビッグイシュー基金を別途立ち上げ、ホームレス状態にある人の生活全般を支援、さらに自己肯定感を高めるために取り組んでいる文化・スポーツ活動(フットサルや講談ほか)についても紹介していただきました。

「街で見かけたことはあるか」という質問に手を挙げる学生たちは3分の1ほどいたものの、その仕組みまでは知らなかった学生も多く、今回の講義で「ビッグイシュー」の事業について理解が深めることができました。

 講義を通して「ホームレス状態というのは誰にとっても無関係ではないとわかった」、「病気や失職、介護離職など、さまざまな背景があることがわかった」、「お金ではなくて仕事を与えるという考え方やシステムになるほどと思いました」、「人としての自己肯定感を高めるという事も大切にしている点に感動しました」という感想がありました。「ソーシャルビジネス」が私たちの社会の中でどのような意義をもち、どのような仕組みで実践されているのかを、生活圏の中で見かけたことのある「ビッグイシュー」を題材にしたことで、身近かつ具体的に考えられる時間となりました。

学生の感想

流通学部 3年
さまざまな事情で仕事ができなくなる可能性がある社会でありながら、そこからの復帰が難しい今の社会環境は変えていかないといけないと思いました。ビッグイシューのようにどんな人でも受け入れて応援する企業や団体が増えていくと、よりより社会が作られるのではと感じます。
 
流通学部 4年
その日に仕事を与えるという事業に驚きました。4500円あれば、まずはその日の生活ができ、次につなげることができます。また、仕事を押し付けるのではなくあくまで本人の自主性を重んじ、成功体験を積んでもらうという考え方は、本人のやる気につながる良い仕組みだと思いました。世の中にはやる気はあるのに職場と相性が合わないという場合もありますが、このような仕組みは何かのヒントになるのではと思いました。
 
流通学部 3年
ビッグイシューについては事前の授業で学んだ時も素晴らしい会社だと思いましたが、今回より詳しく学んでいく中で、自分の中にあった「普通」という概念を大きく覆されたような気がして、とても面白い授業でした。英国と日本ではチャリティの意識の違いもあるのだと知り、もっと日本で広まっていってほしい事業だと思いました。
 
流通学部 3年
私はホームレスの人に対して、ただただ働きたくないからホームレスになっていると偏見を持っていましたが、介護や病気などのやむを得ない理由の人がいることを学ぶことができました。大阪には他県に比べるとホームレス状態の人が多いので、自分に何ができるかを考えてみようと思います。また、今度街でビッグイシューを見かけた時は、1冊買ってみようと思います。
 
流通学部 3年
街なかでホームレス状態の方をたくさん見かけるたびに、何かできることはないかとずっと考えてきました。今回の授業を通して、住所のない方々でもその日からできる仕事があると知りました。また、ただ“助ける”だけではなく、その人に合わせた“自立”に向けてサポートするという、そんなソーシャルビジネスが大阪で行われていることに感動しました。私も何かの形で困っている人を支援する活動をしたいと改めて考える機会になりました。