2024.1.31

秋学期の専門演習(3回生)のキャリアゼミ活動報告(最終報告)(2024.1.21)

流通学部 流通学科 片渕卓志

 
2 提携団体(自然エネルギー市民の会)への最終研究成果報告
 2024年1月12日に、谷町四丁目にある「自然エネルギー市民の会」の事務所に赴き、これまでの研究成果を報告いたしました。10名ほどの参加者が私たちの研究成果の発表を聞きに来てくださいました。同会の事務局のみならず、企画部会の方々にも参加して頂き、大人数で活発な質問や意見をやりとりする場となりました。このことは学生の社会人的基礎力の涵養にとって、とても良い機会となりました。当日の写真とスライドは以下の通りです。参加者からは以下のたくさんの指摘を頂きました。衷心より御礼申し上げます。
【主な質疑と応答】
・よくできている。簡潔にまとめていて分かりやすい。
・図1の温室効果ガスの量を示す図が分かりやすい。
・発表の最初から地球温暖化の原因が二酸化炭素であると決めつけている気がするが、なにゆえに二酸化炭素になったのか、というのは、どういう経過で二酸化炭素が温暖化物質であるといえるのかの説明が必要ではないか。
・発電能力の説明で、kWhとMWhの単位が使われているが単位を揃えるべきだ。生産された電気が何世帯分かを計算をする際に間違える原因となるという場合がある。
・単位が書かれていないところがある。単位が「円」なのか「ドル」なのかが分からない点が発表としてもったいない。
・二酸化炭素の排出量は、最新のデータでは現状では420ppmになっている。370ppmはずいぶん前の数字である。できるだけ新しい数字にしたほうがよい。
・「温暖化の対策は再エネの導入が必要です」という説明の際に、ここでは、「何で再エネか」ということで、再エネの特徴の説明があった方が分かりやすい。
・カーボンニュートラルを目指すとなると再エネの導入だけではだめで、「省エネ」をすすめ、エネルギーの消費を抑えていかないと脱炭素は実現しないので、さらっと「脱炭素をめざすためには再エネの導入と省エネが必要です」と加えたほうが良かったのではないか。
・地球温暖化の図にSSPという単位が出てくるが、これは何か。説明しないのであれば、別の図を使えばよかったのではないだろうか。その説明をすることで、地球温暖化の問題の大きさが聞く側により深刻に伝わる。
・有田川町の水車は中身を見学できなかったが、東吉野の水力発電所は中身を見学できる。
・汐見市民共同発電所で行った草刈りに参加したのだから、そのことについても発言したらよかったのではないか。「たいへんだった」ということも発表に入れてよかったと思う。
・今回、色々なところに見学に行き、また研究をしたことで、そのことをきっかけに、今、学生の皆さんが何か新しいことに取り組んでいる、あるいは取り組んでみたいと考えているというのがあれば、教えてほしい。
 → 自転車屋でアルバイトをしている。電動アシスト自転車の漕ぎやすさを説明している、また自動車運転免許を返納したお年寄りの方には電動アシスト自転車のカタログをたくさん配布している。自動車の運転では「エコモード」がつく運転を心がけている。
 → 身近な人に自分の学んだ知識を説明している。
 → 「ほっともっと」でのアルバイトでは、IHヒータのつけっぱなしが多いのを直している。
 → 移動手段をよりエコになるように考えている。ゴミの分別を考えるようになった。
・能登の地震を機に原発の怖さを感じとってほしい。
・能登、福井の原発の事故があると、放射性物質が琵琶湖の水を汚し、大阪の水にも影響を与えることを知っておいてほしい。

学生活動状況報告

家次 一毅(3年)
 地球温暖化を勉強する前には言葉は聞いたことがあっても、実際に「自然エネルギー」というのが何かをよく理解できておらず、太陽光発電というのも家の屋根にソーラーパネルがあるという程度しか理解していませんでした。すなわち、実際の発電量などを考えたことがなかったです。このキャリアゼミの研究活動を通じて、自然エネルギーの普及の度合いや、自然エネルギー発電がどのように地球温暖化の対策に貢献しているかというのを考えることができました。
 自分の経験で一番良かったのは小水力発電やバイオマス発電、太陽光発電を実際現地に行き、見学させていただいたことです。特にバイオマス発電はあの環境で働いていることはたいへんなことだと感じました。大学を卒業して自分がどう地球温暖化問題に取り組んでいけるか分からないが、それでも今後の人生に生かしていきたいです。

石田 将暉(3年)
 2年生になり片渕ゼミに入ることになり、それから地球温暖化や自然エネルギーについて勉強することになったが、全く無知の状態でした。最初は自分には全然関係ないと思っていたくらいでした。社会の偉い人が解決することだと考えていました。しかし、実際現地に視察見学に行ったり資料を読ませてもらった時に、他人ごとじゃないな、と感じて自分のできることをしなければいけないと感じるようになりました。研究に取り組む姿勢については、最初はゼミ大会のためだけに頑張ろうと思っていたところがありましたが、やっていくうちに不思議とどんどん勉強したくなった、またもっと知りたくなる分野だと思えるようになりました。
 今のままだと日本の状況は悪化していきそうだと思うので、今後、50年後の気温の上昇の数値が下がっていくよう、これまで学んできたことを自分なりに発信していきたいです。そのように、この2年間のゼミ活動を通して強く思うようになりました。本日は貴重なお時間ありがとうございました。

山下 大地(3年)
 自分はこのゼミに入るまでは、自然エネルギーについて太陽光、風力、水力発電までは名前だけ知っていたが、バイオマス、地熱発電は知りませんでした。バイオマス発電を見学した時は発電所内が蒸し暑かったのには驚きました。あのような環境で働いている人、すごい人がいるとは知りませんでした。また「小水力発電」と名前を聞いた時は小さめの水力発電所なのだろうと考えていたが、行ってみれば大きな川にダムがあり、どこでモーターが回っているのかと思えば、川に比べるととても小さい四角い箱のような場所で発電していると聞き驚きました。片渕ゼミに入り、PAREさんに協力してもらわなければ、こういうことを全然知らなかったんだなと実感しました。これらの発電所に行かせていただいたことがきっかけで、YouTubeで流れるEVのCMに興味をもってみるようになりました。これまで興味を持てなかったことに興味をもてるようになったことは自分が成長したところだと思います。この1年間、協力して頂いて有難うございました。

今川 斗碧(3年)
 このゼミでは、募集要項に「トヨタの研究をする」と書いてあり、来させてもらおうと思ったのですが、入って勉強するうちに地球温暖化のテーマになっていると思い、ちょっと思っていたのと違っていました。ですが、普段自分が学ぼうとしないことをゼミで学べてよかったと今は思っています。
 また和歌山龍神温泉にある「ささゆり」での合宿から島田さん、中村さんとつないで頂き、お話をさせて頂いたのですが、その時は内容が全然理解できなくて、感想も何を話せばよいか困るほどでした。その後、1年間を通して自然エネルギーが地球温暖化をどうすれば止められるかを考えてきて、色々な方法があることがわかりました。方法も太陽光しかよく知らなかったのですが、色々発電所の視察見学をさせていただき、先生やPAREさんのおかげで色々なところを回らせてもらって、色々な方と出会って、自分にとってとてもプラスになった一年だったと考えています。
 一番印象に残っているのが和歌山有田川町のバイオマス発電所です。普段生活しているだけでは、作業現場のなかに入って仕事を見学させてもらうことができないと思います。自然エネルギーについて学んでいないとバイオマス発電所を見学することはできないと思ったので印象に残っています。1年少しですが、ご指導いただきありがとうございました。

連携先コメント

自然エネルギー市民の会
事務局次長 中村 庄和 氏

 温暖化と再エネの要点をうまくまとめられた発表でした。温暖化は私たち人類の健全な暮らしを脅かすもので、差し迫った世界共通の課題です。みなさんが社会の中核として活躍される時代は「エネルギー革命」がすすみ、社会構造が大きく変わってくると思います。ゼミで学んだことを暮らしや仕事のなかで生かしてもらえれば幸いです。

教員コメント

流通学部
片渕 卓志 教授

 今年度の研究テーマは「地球温暖化と自然エネルギー発電」としました。このテーマの特徴は、一つに、とても大きな研究テーマであるということ、加えて自然科学に関する専門知識を一定程度必要とするという点にありました。これらを1年間で理解させることは大変な作業でした。
 しかし、学生たちが「先生の熱意があったから頑張れた」と述べていたように、年度末に行われるゼミ大会に向けて次第に学生の意欲が増していきました。その結果、優秀賞を獲得することができました。発表も原稿を読み上げるのではなく、諳んじて発表ができるまで練習していました。4月から考えると長足の進歩がありました。
 ゼミ大会の発表に対して、審査委員より難しい質問がありました。「地球温暖化を止めるには自然エネルギーを普及させるというのは当たり前の解答である。より具体的には、どのような取り組みが必要なのか」という問いでした。私たちはその、より具体的な取り組みを泉大津市役所の「ゼロカーボンシティ」の説明で聞いていました。具体的な事例は一つであり、数多くの具体的な取り組みを紹介する準備は出来ていませんでしたが、自分たちが発表したなかにある、泉大津市の事例を強調して回答することができれば、最優秀賞に手が届いたかもしれません。その点、たいへん残念でした。教える側である私の問題点としては、「地域や市民は地球温暖化を止めるために具体的にどういう取り組みをしているのか」という視点で泉大津市の環境行政を十分学生に理解させられていなかったということになります。
 提携団体である「自然エネルギーの会」様への最終報告では、多くの方に集まっていただき、質問をしていただきました。また不十分な点の指摘や建設的な意見も出して頂き、学生も発言に困る場面が多々ありました。こうした経験が社会人基礎力をつける上で必要だと考えます。たいへん貴重な場を「自然エネルギー市民の会」様に用意して頂きました。1年間、資料作成や引率、渉外のお仕事に加え、私たちのために温かいご指導を賜り誠に有り難うございました。