国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 第9号」マレーシア・香港・マカオ 女子学生の一人旅

旅行が好きな国際観光学部の学生たち

 暖冬の気象予想が外れたのか、このところ寒い日が続いていますね。みなさん元気にお過ごしですか?さて、私たちは「国際観光学部」の名に惹かれて入学してきた学生ですので、男子学生にも女子学生にも、旅行の好きな人がたくさんいます。入学するまでは旅行に全然興味のなかった学生が、卒業するころには、「旅行が趣味だ」と自己紹介をするまで変わることもあるそうです。大学生となれば一人前ですので、その気になれば、どこへでも行けますが、やはりまだ学生ですので、旅費と相談です。旅行をするためにアルバイトで貯金をして、長い休みを利用して出かける学生も少なくありません。大勢で近場の名産物を味わいに行く学生、比較的ツアーの値段が安い時期を狙い、沖縄や北海道などへ遠出をする学生、ラ・れっとる第7号で紹介したように、自転車の旅に挑戦する学生等々、旅行のスタイルはさまざまです。そのようななか、今回紹介するのは、榎戸敬介先生のゼミで学んでいる3回生の島晴香さんです。取材を申し込んだきっかけは、Facebookに投票されていた彼女の記事でした。島さんは、女子学生には珍しく、海外への一人旅を趣味としています。投稿記事はとても臨場感があって、こちらまで海外に行ったような気分になりました。そんな観光学部生らしい彼女にインタビューをさせていただきました。(守安理沙子)

※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

二十歳になったらと思い続けた夢

守安:さっそくですが、いつごろから旅にあこがれるようになったのですか?
島:二十歳になったらこれがしたいという夢がいくつかありましたが、「一人旅をしたい」という夢が特に強かったですね。両親の力を借りることなく、一人ですべて準備をして旅行に行きたいと思っていました。
守安:でも、不安もあったでしょう。特に海外旅行は。
島:その通り。女性が一人で海外に行くのは、やはり危険が伴いますし、とても勇気がいりますね。夢は見てはいましたが、不安もいっぱいで、相当迷いました。
守安:それじゃ、きっかけは?
島:国際観光学部の先輩ですね。「行ってきたら」と背中を押してくれました。現在4回生で、今も留学されているのですが、その先輩から一人旅について、いろんな話を聞きました。
守安:それがきっかけですね。
島:はい、聞いているうちに、「やっぱり行きたい」という思いが込み上げてきて、二十歳の誕生日に、躍るような気持ちで旅行代理店の窓口へ向かいました。

生れて初めての海外一人旅

守安:初めての一人旅。行先はどこですか?
島:マレーシアの首都、クアラルンプールです。本当はずっとシンガポールにあこがれていて、そこに行きたかったのですが、やはり旅費の問題もありまして…(笑)
守安:それでも、手数料のかかる旅行代理店を使われたのですね。
島:ええ、初めての一人旅でしたので、代理店にチケットやホテルを予約してもらいました。初回だけということで…
守安:行ってみて、いかがでしたか?
島:マレーシアに着くまでは、本当に不安でいっぱいでしたね。英語が得意なわけでもないので、「話が通じなかったらどうしよう」と、不安に包まれて飛行機に乗りました。マレーシア航空だったのですが、キャビンアテンダントに日本人の方がいて、私の気持ちがわかったのか、やさしく話しかけてくれました。
守安:顔に出ていたのかも知れませんね。
島:「初めての一人旅なんです」と伝えると、そのCAさんは「もし何か困ったことがあったら、いつでも連絡して下さいね」と、電話番号までメモをしてくれました。不安でいっぱいだった私にとって、そのメモは力強いお守りになりました。
守安:実用的なお守りですね。
島:マレーシアに着いて、機内見送りの際、「楽しんでいってらっしゃい」と、特別に声をかけてくださいました。家族や友達との旅行では、こういう機会は少ないかと思います。そこで気づきましたね、一人旅は話し相手がいない分、思い出に残る出会いが多いのではと。
守安:現地での観光はいかがでしたか?

島:クアラルンプールには「ペトロナスツインタワー」という超高層ビルがあります。名前の通りツインになっている高いタワーなのですが、実は私、あべのハルカスの展望台でアルバイトをしていまして、なんとそのタワーとあべのハルカスの設計者が同じであるというのです(※)。なので、行く前から気になっていました。展望台は、その街全体を広く見ることができます。町の空気、色、車の動き、そういった風景を眺めるのが好きで、旅行に行く際は、まず展望台を探します。
 ※アルゼンチン出身のアメリカ人建築家、シーザ・ペリ(1926-)

世界遺産制覇にチャレンジしてハプニング

守安:ほかに、どこか一人旅した国は?
島:次に行ったのは香港・マカオです。シンガポールは予算が足らず、そのときも見送りました。授業で香港・マカオのことを勉強していて、興味を覚えましたので、そこにしました。
守安:香港やマカオではどういった観光を?
島:マカオは歴史のある街で、世界文化遺産に登録されています。建物や広場などの構成資産が30ヶ所もあり、それらのすべてを1日か2日で回ることができる、ということを授業で聞きました。そこで、ぜひ自分もチャレンジしてみたいと思ったのです。30ヶ所を1日半で巡るプランを立て、向かいました。
守安:もう不安はなかったですか?
島:初回に比べれば少なかったのですが、また違った不安がありました。今回は旅行代理店を使わず、自分ですべて予約したのですが、はたしてうまく予約できているか。そちらが心配でした。

守安:確かに、そういう不安はありますね。ところで、世界遺産は回りきれましたか?
島:はい、すべて回り切れました。ただ、ハプニングも多かったですね。29ヶ所目までは順調に回れたのですが、最後の一つが少し遠く、歩いてゆくには時間がかかる。タクシーを使おうと思ったのですが、いくら待ってもタクシーが来ません。
守安:それは焦りますね。
島:現地の人に聞いたら、「ここに来るよ」と教えてくれましたが、そこで待ってもタクシーは来ません。仕方がないので、歩いて向かっている途中、やっと1台のタクシーを拾えました。ところが、そのドライバーは目的地がわからず、なんと、すぐに降ろされてしまいました。
守安:それは大変ですね。
島:自分がどこにいるのかもわからない状態ですね。「このまま帰れないのでは」と思い、泣きそうになりました。結局、3台目のタクシーでやっと目的地にたどり着きました。「もうだめだ」と思ったあとの達成感からか、涙が出てきました。あんな経験は滅多にできないですね。

私にとって旅行とは

守安:一人旅を経験された晴香さんにとって、旅行とはどういうものでしょうか?
島:ありがちなセリフかもしれませんが、「知らない世界を知る機会」というのが、一番しっくりくる気がします。日本がどれほど平和で安全な国であるかを実感します。文化の違いもわかります。普段の生活では感じられないことをたくさん感じることができます。人の温かさにも触れることができます。何より、視野が広くなります。悩んでいたことも、旅に出ると、ちっぽけなものに思えてくるのです。「こんなことで悩んでいたのか」と、馬鹿らしくなります。新たな発見にもつながります。
守安:外から自分を見つめることができるのですね。
島:もし、少しでも興味があるなら、勇気を出して日本を出てみてはいかがでしょう。自由に時間を作ることができるのは、大学生の今しかないと思います。その一歩が踏み出せない、という人がいたら、今度は私が背中を押しましょう。ぜひ声をかけてください。

インタビュー後記

 私自身もそうですが、「一人旅をしてみたい」「でもなかなか勇気が出ない」と思っている女子学生は多くいるはずです。島さんは普通の女子学生ですし、英語も本人曰く「まだまだ勉強が足りない」そうです。特別な才能がなくても、少しの勇気を出すだけで、こんなにも有意義な旅をして、たくさんの思い出を作ることができるのは、素晴らしいですね。彼女が先輩の話を聞いて踏み出したように、「一人旅をしてみたいが不安だ」という人は、この記事を後押しの一言だと思い、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。お忙しいなか、インタビューに答えていただいた晴香さんに感謝します。次こそ、シンガポールの体験談をお聞かせくださいね(笑)。

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