宿泊産業論の学び-宿泊産業論

国際観光学部教授 李貞順

 平成31年、観光庁の観光産業革新検討会がまとめた報告書によると、観光産業が国の基幹産業となるためには、宿泊業の改革を第一に行う必要があるとしています。そして、宿泊業は観光・旅行ビジネスにおいて基幹的ビジネスとして位置づけられています。
 宿泊業は、事業経営において建物や設備など、多額の先行投資を必要とする資本集約型産業であると同時に、商品としては、人的サービスの比重が高い労働集約型産業でもあります。近年、日本の宿泊業において、トップレベルの経営者から現場の実践的な人材まで、中核・実務人材の不足や、それにともなう人事生産性(従業員一人が1時間あたりに稼ぐ粗利益)の低さが課題となっています。それは、これまで日本では、観光事業に特化した高度な専門的人材養成が不十分だったためという指摘がなされています。さらに、宿泊サービスの実践現場では、「旅行者のニーズの多様化」「ICTの進展」「異業種からの参入」など、宿泊業を取り巻く経営環境は大きく変化し、企業間の競争が激しく、これまで以上にきめ細かく消費者ニーズに対応した個性的なサービスの提供が求められています。
 以上の事業特性と課題を踏まえ、今日、日本の宿泊業においては、「経営力の向上」と「新たなビジネスモデルの在り方」等についての検討がなされつつあります。
 授業では、以上の宿泊業が抱える課題解決に向けて必要と考えられる基礎知識を学びます。ホテルや旅館を中心に、事業内容の定義や特徴、欧米及び日本での観光や旅行の変化に伴う宿泊業の発展経緯を考察します。また、宿泊業の経営の仕組みやビジネス環境の変化、それに伴う課題について理解を深めます。同時に、顧客満足経営の観点から、サービス品質の管理や人材の確保のための戦略についても学びます。

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