なにかを見つめ直す旅について-観光と宗教

国際観光学部准教授 鷲﨑秀一

 人はなぜ旅をするのか、ついこの前までは、そのようなことに思いを巡らす必要もなく、多くの人は、行きたいところに出かけ、見たいものを見、食べたいものを食べ、旅を満喫したと思います。つまり、自由に観光ができたのです。
 ところが、知ってのとおり状況が一変し、現在では、旅に出る前に、あらためてその目的が問われる事態になっています。やむを得ぬ出張、地域活性、あるいは窮屈な日常からの解放など、いろいろな目的があるとは思います。しかし、歴史をさかのぼると、じつは昔の人は、もっと厳しく旅の目的を問われていました。日本人の庶民にいたっては、伊勢参りの例が示すように、信仰を理由にしないと旅の許可すら得られませんでした。世界に目を向けてみても、キリスト教徒のエルサレムへの巡礼、イスラム教徒のカーバ神殿への巡礼など、じつは旅と信仰は密接な関係にあると言えます。人間はそこで考えるのかもしれません、旅とは何か、また何に導かれて旅をしているのか、と。
 この「観光と宗教」という授業では、世界の宗教についての基礎知識を確認しつつ、その信仰とともにある巡礼について学び、それと現代の観光との関わりについて考察します。
 巡礼の多くは、一人(または少人数)で行われます。四国のお遍路さんは、白衣に「同行二人」と記し、一人旅だけど大師様と一緒であることを励みに、歩みを続けます。
 これからしばらくは、大人数での旅や気楽な旅はできないかもしれません。この授業で、あらためて「人はなぜ旅をするのか」を考えてみてはいかがでしょうか。
  • 巡礼のみちのりをたどる-少人数での歩き旅

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