ニュージーランド・ダニーデンで歴史的建造物の分布調査を行いました

 前回はニュージーランドで行った海外実習2の現地調査のうち、ウェリントンで実施した鉄道沿線の資源調査について報告しました。今回は南島のダニーデンで行った歴史的建造物の分布調査の様子について、以下で受講生が報告します。
 ダニーデンは、南島ではクライストチャーチに次いで大きく、南島南東部の沿岸に位置しています。ダニーデンは19世紀後半に金鉱脈が見つかり、ゴールドラッシュに沸きました。ゴールドラッシュは10年ほどで終わりましたが、その当時に建てられた建物がたくさん残されており、スコットランドの面影を残す都市として知られています。そこで、今回はHistoric Places and BuildingsのHeritage New Zealand Register, Category 1に登録された歴史的建造物のうち、ダニーデンの中心にあるオクタゴンから半径2kmにあるものを抽出し、それらの悉皆調査を行いました。調査はダニーデンを3つのエリアに分け、4日間かけてすべての建造物の写真を撮影し、建築様式や現在の用途などを確認していきました。市議会議事堂や高校、大学、駅舎など、現在もそのまま利用されている建物も多く、その美しさに驚きました。
 今回の調査では、オタゴ大学に留学中の国際観光学部3年・平安座レナさんも参加しました。また、彼女のホストファミリーのご厚意で、ご自宅にお招きいただき、夕食をご馳走になりました。受講生もなかなかできない体験で、英語と日本語を交えながら交流を深めていました。ホストファミリーの皆さまのご厚意に心から感謝いたします。(森重昌之)

現地実習の様子

  • 歴史的建造物であるオタゴ大学

  • 歴史的建造物のオタゴ男子高校

  • 歴史的建造物のノックス教会

  • 歴史的建造物の調査の様子

  • 歴史的建造物の調査の様子

  • ダニーデン鉄道駅にて

  • ダニーデン市街を一望できるシグナルヒルにて

  • 世界で最も角度のきつい坂道のボルドウィン・ストリート

  • 留学中の平安座さんのホストファミリーと

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参加した学生の報告

歴史のある美しい街ダニーデン
 国際観光学部2年 有地美慧

 歴史的建造物が多いダニーデンで、どの様式の建物が分布しているかをテーマに調査を行いました。前期の授業の中で、事前にロマネスク様式やルネサンス様式、ゴシック様式、バロック様式などの特徴を学び、リストに載っている歴史的建造物のうち、市街地の中心にあるオクタゴンから2km圏内の建物の住所や位置を手分けし、確認しました。
 ダニーデンに到着した初日は、きらびやかなダニーデン駅から調査を始め、サウスダニーデンのエリアにある建物を順番に調査しました。翌日からはペアに分かれ、調べるエリアを分担しました。スマートフォンで位置情報を検索しながら進めていきましたが、一致しないことが何度かあり、調査は少し難航しました。
 一方のグループはノースダニーデンのエリアを調査しました。ノースダニーデンには、オタゴ大学の華やかな校舎が集中して建っています。私たちはセントラルシティを街歩きしながら、歴史的建造物を探しました。中心のオクタゴンから放射状に坂が延びており、かなり急な坂もありました。洋風の建物がたくさん建ち並んでいましたが、どれも日本にある洋式の建物とはひと味違うお洒落なものばかりでした。ゴツゴツした建物やのっぺりして装飾がたくさん施されている建物など、さまざまでした。ホテルに戻ってからは、それぞれの外観を建築様式に当てはめ、冊子に記入していきました。建築様式の特徴が合わない建物もありましたが、それは時代が変化している頃に建てられたので、建築様式の特徴が混ざっているのかなと考察していると、おもしろみを感じました。調査の途中に「どこに行くの」と声をかけてくれた方がいました。英語でうまく答えられませんでしたが、場所を教えようとしてくださったと思うと、嬉しくなりました。
 ダニーデンでは、留学中の先輩のホストファミリーに夕食を招待していただきました。私は初めての海外でしたので、靴のまま家にあがる時に少し抵抗がありました。ホストファーザーが「時間がある時に自分でビールをつくっている」とおっしゃっていて、暮らしにゆとりがあり、趣味に時間を費やせることは良いなと思いました。また、ニュージーランドの南島の方は北島のことをあまりよく思っていないことは意外でした。
 ダニーデン最終日にオタゴ入植者博物館に行きました。昔の衣食住で使われていたもののディスプレイや入植時の偉人の肖像画が飾られていました。ダニーデンの街はゴミがほとんど落ちておらず、衛生的で美しい街だと思いました。また、山道を登っている時にも講演や庭の草がきちんと手入れされており、ニュージーランドは大雑把なところもありますが、きれい好きな方が多いように感じました。
 後期の授業では、歴史的建造物の分布を丁寧にまとめ、発表につなげていこうと思います。

歴史的建造物調査で学んだ驚きの使われ方
 国際観光学部2年 福田龍之介

 私は8月23日から26日まで、ダニーデンに建てられている歴史的建造物について調査を進めていきました。事前に授業時間の中で調査する歴史的建造物をピックアップし、さらにそれらの中から町の中心地であるオクタゴンから半径2km以内の建造物に絞って調査を行いました。調査方法としては、その建造物のある場所まで実際に行き、インターネットで行った事前調査の内容と異なる部分があるか、また建造物がどの建築様式に該当するか、そして現在はどのようにして使われているのかの3点を調査していきました。
 調査を進めていて一番驚いたことは、歴史のある建造物が意外な使われ方をしていたことです。基本的にはレストランやカフェ、大学のキャンパスなどに使われているものが多かったのですが、普通に民家やアパートとして人が住んでいたり、かつて刑務所であった場所が展示場として一般に開放されていたりするなど、私の想像とは全く異なるものもありました。その中でもひときわ驚いたのが、サウスダニーデンに位置するFitting Shopでした。この建物はもともと工場として稼働しており、敷地内にガスタンクもあったのですが、工場の稼働が止まり、ガスタンクも撤去されてしまいました。その工場であった建造物と、ガスタンクを囲んでいた骨組みも伝統的建造物としてリストに上がっていたので、調査を行いました。その工場は今では週に1回展示会として敷地を開放しており、見学することができます。通常の閉鎖された工場では決してできないことでも、特殊な建築様式だからこそ可能となることもあるのだなと学びました。
 もう1つ、私が衝撃を受けたのが、Dunedin Railway Stationです。この建築物は写真からもわかるようにルネッサンス様式で非常に美しく、敷地面積も広い大きな駅なのですが、1日に来る列車はわずか数本しかなく、駅としてはほとんど機能していませんでした。それでも、駅周辺や構内には人があふれていたことに私は驚きました。この駅そのものが観光スポットとして成り立っていたからです。日本にも駅が観光スポットとして成り立つケースもありますが、ここまで多くの観光客でにぎわっている駅は初めて見ました。駅の外で野菜の直売や、構内で絵画の展覧会なども催し物が行われていたことで、地域住民の人々も多く訪れていました。
 今回のダニーデンでの調査は歴史的建造物の分布を調べるというものだったのですが、その調査した分布からまた何か新しい発見があるのではないかと私は考えています。