ニュージーランドでマオリの神話や伝説の観光利用実態を調査しました

 8月23日から9日間、国際観光学部3、4年生6名が観光実習2(海外)の現地調査で、ニュージーランドを訪問しました。今年度は受講生が話し合った結果、先住民マオリの神話や伝説が観光現場でどのように活用されているか調査しました。調査対象地域はミルフォードサウンドとロトルア、タウポです。調査内容のみならず、往復の飛行機や国内の移動手段、宿泊先も受講生がすべて準備・手配した上で、現地調査に臨みました。
 往路は大阪国際(伊丹)空港から東京国際(羽田)空港を経由して、空路でオークランドに向かう予定でしたが、台風20号の影響で急遽東京まで新幹線で移動するというハプニングからスタートしました。しかし、ニュージーランドに到着してからは天気が良く、冬とは思えない暖かい日が続きました。雨が多いことで知られるミルフォードサウンドも晴天に恵まれ、フィヨルドの壮大な景観を堪能できました。
 現地では、実際のツアーに参加してマオリの神話や伝説が解説されているか、案内看板などで紹介されているかなどについて調べました。受講生は英語を聞き取ることにかなり苦労していましたが、事前に伝説や神話の各州をしていたこともあり、何となく理解できていたようです。以下で、参加した学生が海外での調査を通して得たこと、学んだことを報告します。(森重昌之)

現地調査の様子

  • 晴天に恵まれたミルフォードサウンド

  • ミルフォードサウンドのクルーズ船にて

  • クイーンズタウンの街なかのごみ箱にもマオリ語が

  • モコイア島のワイキミヒア(ホットプール)にて

  • モコイア島でガイドの解説を聞く受講生

  • ロトルアにあるオヒネムツ・マオリ村のマラエ

  • マオリ・ロック・カービングツアーの船上で解説を聞く受講生

  • タウポ湖にあるマオリ・ロック・カービング

  • タウポミュージアムを見学する受講生

参加学生のレポート

海外における現地調査の難しさ
 国際観光学部4年 安部和樹

 私たちは今年4月から、夏季休暇期間中にニュージーランドで現地調査を行うべく、準備を進めてきました。「ニュージーランドの先住民であるマオリの神話や伝説がどのように観光利用されているか」を調べることを目的に、8月23日から31日にかけて現地調査を行いました。私はミルフォードサウンドと呼ばれるフィヨルド地帯の調査を担当しました。ここはマオリの言葉で「ピヨピヨタヒ」と呼ばれており、その昔、トゥ・テ・ラキ・ファノアという神が魔法の斧を振り下ろしてつくったとされる伝説が残っている場所です。この場所自体が伝説の舞台となっているため、ここでは「自然を見て歴史を感じる」ことや「案内看板などでどのように説明されているか」について、クルーズとバスがセットになっているツアーに参加して調べました。まず、フィヨルドとは氷河によって長い年月をかけて削られた入り江のことを指します。日本のような「なだらかな山」というイメージよりも「切り立った山」という点が特徴で、断崖絶壁の山がいくつも連なっていて、迫力がありました。また天候にも恵まれ、後ろを振り返ると、はっきりと氷河によって山が円形状に削られた跡を見ることもできました。また、クルーズ船内のアナウンスで、伝説について少し触れていることも聞き取ることができました。船を下り、少し散策する時間があったので、周辺に設置されている看板から、「伝説がどのように説明されているか」を調査しました。看板は時間がほとんどなかったこともあり、1つしか見つけることができませんでした。そのため、はっきりと言い切ることはできませんが、私は今回のミルフォードサウンドでの調査で、「マオリの伝説に重きが置かれて情報が発信されている」というよりも、ミルフォードサウンドを楽しむための1つとして、観光客に向けて説明されているように感じました。今回の調査を活かして、今後の発表に向けてまとめていきたいです。
 私はニュージーランドも含め、生まれて初めて海外を訪れました。ニュージーランドは治安が良く、現地の方と観光客との距離が近いと感じました。日本は観光客を含め、お客さまに絶対に失礼がないようにと、まるで神様のように扱いますが、日本でそのようなことをすればクレームが来るのではないかということに、たくさん遭遇しました。しかし、私はそのことが自由で、うらやましく感じました。このように、日本から出てみないとわからないことがたくさんあり、とても良い経験になりました。この経験を活かし、将来観光業にかかわっていく者として、何らかの形で活かせれば良いと感じました。

ひとつだけではなかった観光の楽しみ方と、言葉の壁
 国際観光学部4年 氏原麻祐

 8月23日から31日までの9日間、ニュージーランドで現地調査を行ってきました。ニュージーランドのマオリ族において語り継がれているマウイ伝説や神話が、どのように観光に活かされているのかを調査内容とし、前期の授業期間中にインターネットや本、学内のイングリッシュスペースに通い、情報収集を行いました。
 マウイ神話はいくつかありますが、その中でもニュージーランドのフィヨルドで有名なミルフォードサウンドを舞台とした神話に興味を持ちました。ミルフォードサウンドはユネスコの世界遺産に登録されており、氷河によって岩山が削られて形成され、誰もが魅了される美しい場所です。神話によると、この場所はマウイが大きな斧を振りかざしてできたものであるとされており、今回私たちは日帰りツアーに参加しました。
 朝7時半にクイーンズタウンを出発しました。バスは大きな窓で、天井もガラス張りになっていたので、180度景色を楽しめます。また、ニュージーランド自体、雨の多い国ですが、この日は天気に恵まれ、快晴で1日中とてもきれいな景色を見ることができました。
 道中では、運転手の方がミルフォードサウンドのことについて、さまざまなお話しをしてくださり、途中景色のきれいなところや土産物店に寄りながら、約5時間かけてミルフォードサウンドに到着しました。そして、船に乗り込み、ミルフォードサウンドのツアーが始まりました。船は2階建てで、屋上はオープンデッキになっていました。真っ青な空に雪がかった山々、今までに見たこともない大自然、言葉には表せないくらい美しく、圧倒されました。そして、「これをマウイが斧でどうやってつくったのだろう」、「こんなに大きなフィヨルドをつくったのなら、マウイは巨人だったのか」など、考えることがたくさんありました。船内には各国の言語に対応したパンフレットが置いてあり、その中に少しマウイの神話について紹介されていました。しかし、パンフレットを手に取っている人は少なく、景色を見たり、写真を撮ったりしながら楽しんでいる様子でした。ツアーも神話をメインにしたものではなかったので、神話に基づいた観光をそれほど重視してないのかもしれません。ミルフォードサウンドは、マウイがつくった壁画のようなものがあるわけでなく、ミルフォードサウンド自体がマウイの彫刻であるといえるので、敢えて神話について案内しなくても、個々で見て何か感じるものがあるのかもしないと思いました。ただ、神話を知らない時と知った時では見方や考え方が変わり、違った楽しみ方ができるのかもしれません。
 今回、初めてニュージーランドを訪れましたが、私の英語力が不十分なため、すべて英語でのツアーで内容が十分に理解できなかったり、一緒に参加していた観光客とあまりコミュニケーションが取れなかったり、伝えたいことが伝わらないことが残念であり、悔しかったです。しかし、この経験から自分が甘かったことに気づくと同時に、もっとコミュニケーションが取れるように努力し、より多くのことを学びたいと思えました。この経験や気持ちを無駄にしないよう、次につなげていきたいです。

現地で知った神話への関心度の違い
 国際観光学部4年 新留由来

 9月23日から31日の9日間、ニュージーランドで「神話」についての調査を行いました。ニュージーランドでは、先住民族であるマオリを尊重しています。私はマオリ文化の存在を知ってはいましたが、マオリ神話があることを知らず、興味を持ったことが調査のきっかけです。
 私は、ロトルアにあるモコイア島のツアーに参加し、調査を行いました。モコイア島は「悲恋の物語」という神話の舞台となった場所です。大きな湖の畔に住むヒネモアという女性と、湖の真ん中にあるモコイア島に住むツタネカイという男性の恋の話です。部族の違いが理由で、2人は引き離されてしまいます。しかし、気持ちが抑えきれなかったヒネモアは湖を泳ぎ、彼に会いに行きました。この真剣さにお互いの部族が結婚を認め、幸せに暮らしたというお話です。
 現在、モコイア島は無人島であり、野生動物(主に固有種の鳥)の保護区となっています。島に足を踏み入れるには、入島許可がされているツアーに参加することが必要でした。ツアーでは、ジェットボードで島まで移動します。そこから約30分間、ガイドの方と島中を歩きながら、神話に基づく話、野鳥についての話をうかがいました。島に上陸すると、最初に目に飛び込んできたのが、大きな門のようなオブジェでした。人の顔が描かれた、左右対称のデザインで、3メートルは超えるであろう高く、赤い門でした。モコイア島への入り口に見え、これを潜らなければ島へは入れないよう、周りには木が生い茂っていました。この門から、以前はマオリ族が住んでいたと読み取ることができました。門を抜け少し歩くと、湯気の立つ温泉が見えてきました。“MAIKIMIHIA-Hinemoa’s POOL”と看板がある約40℃の天然温泉で、ここが観光でも有名で、神話が形として残っている場所です。ヒネモアが泳いで島に行き、冷えた体を温めるため、この温泉に浸かったとされています。ヒネモアがまっすぐ泳いできたとされるルートを、温泉からの景色で確認できました。私は、この場所が今回の調査で一番神話を感じられるところでした。モコイア島には、観光客が世界中から訪れますが、日本人は少なく、現地の日本人交換留学生がたまに来る程度ということでした。
 今回初めてニュージーランドに行き、人の温かさをすごく感じることのできる国という印象を受けました。すれ違う人びとは目が合うと微笑んでくれ、たまに話しかけてくれる人もいました。利用した宿泊施設の方も、チェックイン時には観光のことや協力できることがあればと、情報を提供してくださいました。日本との違いについては、マオリ族、マオリ文化をとても大切にしており、国民の多くが神話について詳しく知っているということです。日本では神話の存在を知っているだけで、詳しく知っている人はあまりいない印象です。一緒に現地調査に行ったメンバーも詳しく知っている人は数人で、私も知らない側の一人でした。国民がこれほどにも神話について知っていることを尊敬するとともに、少し恥ずかしくなりました。日本の神話についてもう少し詳しく知っておこうと思うきっかけとなった現地調査でした。

日本を離れ、文化や言語の違う土地で感じたこと
 国際観光学部4年 後田風佳

 ニュージーランド北島の中部にあるタウポへフィールドワークで訪れました。人口は約2万人と小さい町ですが、ニュージーランド最大の湖であるタウポ湖やタウハラ山など、自然に囲まれたのどかな町でした。そのような町で、約1時間半のタウポ湖クルーズツアーに参加しました。ツアー当日はあいにくの雨でしたが、集合場所へ着くと、ツアースタッフの方が気さくな笑顔で出迎えてくださり、クルーズの中ではマフィンやコーヒー、紅茶などの軽食が用意され、楽しく出発することができました。
 船内では、船長によるアナウンスが流れていました。すべて英語だったので、詳しい内容は理解できなかったですが、湖の見どころや火山の歴史、マオリの伝説・神話などを説明していました。また、このツアーのメインは岩壁に施されたマオリの彫刻を間近で見られるということもあり、マオリの彫刻の前に着くと、ツアー参加者のほとんどが雨の中でも外へ出て写真を撮っていました。マオリの彫刻は写真では何度か見たことがありましたが、実際に見ると全長10mもある壁画に圧倒されました。
 ツアーに参加して感じたことは、雨だったせいか参加者が少なく、少し寂しかった点です。しかし、ゆっくり満喫することができたので良かったです。また、湖に浮かぶカモに餌を与える体験をさせてもらえるなど、スタッフの方々がとても楽しませていた点が印象的でした。しかし、ツアー中は英語でのアナウンスしか流れないので、英語に馴染みのない海外から訪れる観光客には内容がわからず、少し残念だと感じました。晴れていたら世界遺産のトンガリロ国立公園にある山々を見ることができるそうなので、ぜひ見てみたいと思いました。
 今回ニュージーランドに初めて訪れ、感じたことは、日本とニュージーランドでは季節が真逆なので、夏の日本から冬のニュージーランドへ着いた時は寒く、不思議な感覚でした。また、自然が豊かで、それぞれの土地で違った美しい景色を見ることができました。最初に訪れた南島のクイーンズタウンの景色は、絵画の世界にいるような感覚でした。移動中のバスからは羊や牛、馬などを広い土地で放牧している光景が多く見られ、日本ではこういった景色はあまりないので新鮮でした。さらに、日本の都心での交通手段は鉄道が主流ですが、ニュージーランドでは鉄道が日本に比べると少なく、バスを利用した交通手段が主流だという違いも知りました。
 9日間の長旅の中、飛行機に乗る機会が6回もあり、日本からニュージーランドまでは約10時間、ニュージーランド国内でも3回飛行機を利用し、短期間でここまで飛行機にお世話になったことがなかったので、これも良い体験になりました。タウポからオークランドまでの交通手段でも飛行機を利用しましたが、タウポ空港は私の知っている関西空港や伊丹空港のような大きな空港ではなく、一見空港には見えない平屋の小さな建物にカウンターが2つほどと、小さなカフェが入っただけの空港に驚きました。保安検査もなく、荷物を預けてチェックインすれば、後は奥にあるドア1つで飛行機に乗ることのできる空港は初めてで、少し不安でしたが、ローカルな雰囲気を味わうことができて楽しかったです。
 日本から離れ、文化や言語の違う土地でフィールドワークを行いながら、多くの体験ができ、充実したフィールドワークになりました。今後はこのフィールドワークで学んだことを生かし、より良い研究をしていこうと思います。

先住民を尊重し、神話を伝承する国
 国際観光学部3年 島田麻衣

 タウポのシーニッククルーズは、船で全長10メートルのマオリのロックカービングを見るという内容です。この彫刻は湖に浮かんでいるので、カヤックか船でしか見に来ることができません。タウポは北島の中央部に位置しており、タウポ湖はニュージーランド最大の大きさを誇ります。この湖は、マオリの伝説で「北島の心臓」と呼ばれるくらい神聖な場所であります。壁画に到着するまで、ニュージーランドの火山の歴史やマオリの神話などを船長が詳しく話してくださいます。マオリの伝説や神話を知らない人でも理解しながらクルーズを楽しめますし、実際に壁画を見て神話のイメージが創造されやすいと感じました。また、今回は1時間半のクルーズでしたが、季節や曜日、時間帯で釣りやブランチを楽しむことができます。船内の1階にはパンフレット、マフィンやコーヒー、ティーなどの軽食、ニュージーランドやマオリについて説明する小さなテレビがありました。壁画に到着するまでに、カモに餌をあげる時間もありました。人間が食べるビスケットのようなものをあげるので、エンターテイメント性はありますが、生態系を壊すのでやめた方が良いと感じました。ミルフォードサウンドでも鳥に餌をあげないよう警告されていたので、タウポツアーでのこの餌やりがなぜ行われているのかと思いました。
 船長にうかがったところ、オーストラリアや東アジア、ヨーロッパからのツアー参加者が多いそうです。この日はあいにくの雨でしたが、晴れていたらより美しい景色のほか、彫刻も鮮明に見えたかもしれません。写真で何回も彫刻を見ていましたが、実際に見てみると、彫刻の堀の深さやとてつもなく巨大であることを感じることができます。操縦席に座らせていただき、船長のもてなし精神に感謝しました。
 ニュージーランドは広大な土地に羊の群がいて、農作が盛んという大自然のイメージがありました。しかし、北島と南島ではまったく風景が異なっており、南島では私のイメージ通りのニュージーランドでした。一方、北島は開発が進み、高いビルが並び、自然豊かという場所ではありませんでした。北島と南島の人たちが、「田舎者」、「本当のニュージーランドはこちら側だ」と仲たがいする理由がわかる気がします。北島も南島でも、自然を使ったアクティビティが盛んでした。案内標記など、マオリ語を一番上に表記することで、マオリの人たちを尊重している場面が見られました。こうした形で先住民族を尊重する点は日本にはないところだと感じました。シルバーファーンの銅像やマオリに関する銅像などを実際に見ることができ、大変満足です。ニュージーランドにまた訪れるなら、私は南島に滞在したいなと考えるくらい、南島の大自然は心地よいものでした。

日本との違いをたくさん学んだ海外実習
 国際観光学部4年 井上佑太

 私たちは8月23日から31日にかけて、ニュージーランドで調査を行いました。調査内容はニュージーランドの先住民であるマオリの伝説や神話がいかに観光客に伝えられているのか、実際に3つのガイドツアーに参加して調査を行いました。
 私はロミオとジュリエットのニュージーランド版と言われている、ヒネモアとトゥタネカイの舞台であるロトルア湖のモコイア島に行きました。モコイア島は溶岩でできた流紋岩ドームで、島には天然の足湯もありました。その足湯はヒネモア・プールと言い、ヒネモアが疲れを癒した場所と紹介されていました。モコイア島は神聖な場所であるため、ガイド付きのツアーでしか入島することができず、島に入ることのできる人数も限られているので、自然が保護されていて、固有の植物や鳥を見ることができました。本当はマオリのことをよく勉強できる場所なのですが、私たちは英語があまりできないと思われたのか、ガイドの方はマオリのことよりも鳥や植物のことなどを多く説明していました。船もジェットボードだったので、マオリの勉強というよりは湖のアクティビティ要素が強いツアーだと感じました。他に訪れた観光地でも、マオリの神話の舞台と言うよりも、自然の景色やクルーズを楽しむ要素が強かったです。今回の調査で得たことを12月に行われる日本観光研究学会全国大会のポスターセッションに向けてまとめていきたいと思います。
 私は今回の調査で初めてニュージーランドを訪れましたが、交通ルールが日本と同じなど、日本と似ている点も多かったですが、違うところも多く感じました。例えば、外食では野菜がほとんど出てこず、肉やポテトが多く、日本人は外国人からベジタリアンと言われることに納得がいきました。また、物価は高いですが、ホテルの宿泊費はとても安く、3,000円ほどで良い部屋に泊まることもできました。さらに、空港から市内に向かうバスにはペイントで大きく飛行機とWi-Fiのマークがあり、英語ができなくても迷うことなくバスに乗れました。これは、インバウンドが増えている日本でも同じことを行えばよいと考えました。特に驚いたことが、街なかでは芝生がきれいに刈られており、早朝から多くの方が作業されていたのですが、多くの方が笑顔で楽しそうに働いていたことが印象に残りました。今回調査以外にもニュージーランドの文化や食事、アクティビティなど、とても充実した日々を過ごすことができました。