発表を通して新たな気づきや発見があり、視野が広がりました

 今年度の観光実習2(海外)は3、4年生6名が受講しています。8月に「観光現場においてマオリの神話や伝説がどのように活用されているか」をテーマに、ニュージーランドの3ヶ所で現地調査を実施しました。現地調査の結果、いずれの調査地でも神話や伝説が積極的に活用されていなかったことが明らかになりました。そこで、後期に入ってからは、現地調査で得た資料や情報を整理しながら、マオリの神話や伝説をより積極的に活用した方が良いのかどうかを考えながら、研究成果をまとめていきました。
 これらの成果を発表するため、12月16日に跡見学園女子大学で行われた第33回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションに参加しました。受講生の中には学生ポスターセッションの経験者もおり、発表も手慣れた様子で行っていました。一方で、初めて参加した受講生は、先生方によってさまざまなご意見があったり、研究に関心を持っていただいて喜んだりしているようでした。先生方からいただいたご意見やご質問については、受講生が「参加者の報告」に記載していますので、以下をご覧ください。
 自分たちが調べてきたことをまとめ、発表し、他の大学の先生方や学生からご意見やご質問をいただくことは、受講生の視野を広げる上でとても重要な機会です。受講生の中には来春卒業する者もいますが、こうした経験を就職後もぜひ生かしてほしいと思います。(森重昌之)

当日の学会発表の様子

  • ポスターの内容を発表する学生

  • ポスターの内容を発表する学生

  • 発表終了後に受講生全員で記念撮影

※関連記事

参加した学生の報告

ポスターセッションで得た学びと目線を変えて物事を見ること
 国際観光学部4年 氏原麻祐

 私たちは12月16日に跡見学園女子大学で開催された日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。発表テーマは「観光現場において神話を活用する意義を考える」で、8月にニュージーランドで現地調査を行い、まとめた内容を発表しました。
 ニュージーランドといえば、大自然でのアクティビティや、集会場マラエでハカという踊りを見ることができるマオリ文化を利用した観光が有名ですが、マオリの神話や伝説がどのように観光現場で活用されているのかを明らかにすることを研究テーマとしました。現地では3箇所で調査を行い、いずれも神話に根付いた場所であり、ツアーに参加してガイドの説明や観光パンフレットをもとに情報を収集しました。共通していえることは、どの場所も神話が積極的に活用されていなかったということです。しかし、私たちはもっと神話を活用していくべきだと考えました。ニュージーランドの方々は先住民を大切にしており、例えば街中のゴミ箱には英語の次にマオリ語、その後に日本語や中国語などの表記がありました。また、道路の標識にもマオリ語が表記されており、ニュージーランドの人口のうちマオリ人の割合は15%と少ないにもかかわらず、そうした配慮があることで、いかに大切にしているのかわかりました。
 そこで、観光現場において神話を活用することで、観光客にも先住民を大切にするアイデンティティを持つ国であることを示すことができます。また、神話を知ることで、ただの自然景観とは違った見方ができ、イメージが広がり、おもしろみが増すことで、さらに観光資源の魅力を高められるのではないかと考えました。観光客は楽しみのための旅行に来ていますが、ガイドが観光客の逸脱する行動に対して注意ばかりしていると、その楽しみが減ってしまいます。そこで、神話を用いることで、その場所の大切さが伝わり、わざわざ注意しなくても観光客が自制してくれるきっかけにもなるのではないかと考えました。いずれの調査地も神話にあまり触れていない、または文字による解説だけでしたので、言語の壁や老若男女問わず理解できるように、図や映像などを活用すれば、より伝わりやすくなるのではないかと考えました。
 今回、初めてポスターセッションに参加し、緊張しましたが、自分たちが研究した内容に興味を持ってくださる方たちがいて嬉しい気持ちと同時に、たくさんの方と意見交換ができたことが良かったです。ある方から「自分たちの聖地が観光地になることをマオリの人たちはどう思うのか、観光地にしたいと思っているのか」、「観光現場で働いているマオリの人はいるのか」などのご意見をいただきました。研究する中で、マオリの人の立場になって考えたこともなかったので、違う目線からも物事を考えなければいけないこと、現地調査で実際にマオリの人に会ってお話しする機会がなかったので、その点も反省すべきと気づきました。また、今回作成したポスターで重要な調査結果の部分が、青色の背景に黒文字を使ったため、見にくくなってしまい残念でした。研究内容だけでなく、相手に見やすく、興味を持ってもらえるような資料づくりや、説明の長さや話し方の工夫が必要であることを学びました。これらの経験を無駄にせず、何事も広い視野で考え、次に活かしていきたいです。

発表することで気づいた視点の偏り
 国際観光学部4年 新留由来

 12月16日、跡見学園女子大学文京キャンパスにて、日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションに参加しました。内容は、今年の夏休みを利用して現地調査した「ニュージーランドの神話を利用した観光」についてです。現地調査後、帰国してから発表の当日を迎えるまでの授業で、各自で集めた情報を共有し、整理しました。その後、受講生同士で意見交換を行い、神話を利用しなければどのようになってしまうのか、神話は観光にどのような効果をもたらしているのかについて検討し、神話が必要である理由を見つけ出しました。
 ポスターセッション当日、私たちが発表を行うところは、吹き抜けのスペースでした。いくつものボードで仕切られており、それぞれが指定された場所に各自持参したポスターを貼りました。私たちと同じように発表を行っている学生やその先生方など、幅広い年齢層の方々が見に来てくださり、ご意見を頂戴することができました。
 私が発表を担当した時間帯は、2人の方がポスターの前に立ち止まり、説明を聞いてくださいました。お二人とも興味深い、おもしろいと言ってくださり、いくつかの質問に答えることで良い反応がうかがえました。しかし、私の担当外の時間に来ていただいた方から、「本当に神話は必要なのか。必要ないのではないか」と言うご意見を頂戴しました。私たちの調査の結果、神話は観光に必要であり、その理由もしっかりと述べたはずでしたが、その理由を理解した上で、「地域の人にとって良いことなのか」と問いかけられたそうです。このご意見を直接聞いた受講生から話を聞いた時、観光客側からの視点でしか考えていなかったことに気づきました。実際に地域の方はどのように思っているのか、神話を利用すべきだと感じているのかについて考えていなかったことがわかりました。
 今回、私は初めてポスターセッションに参加したので、何もかもわからない状態でしたが、同時に新たな発見の連続でもありました。その中でも、私たちのポスターを見てくださった方からの感想が全員違うということがわかり、その都度自分の視野を広げることができました。また、自分との視点の違いに興味も持ちました。先ほど述べた「地域の人にとって良いことなのか」という、返答に息詰まってしまうようなご意見もありましたが、その意見こそが私たちの気づかぬ間に生まれた固定概念をなくし、再び考え直すきっかけになると感じました。今後、観光関連のことについて調査する時には、必ず地域側の目線でも物事をしっかり考えていきたいです。

観光現場において神話の効果を伝える難しさ
 国際観光学部4年 安部和樹

 私たちは、12月16日に東京都にある跡見学園女子大学で開催された第33回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションに参加しました。調査場所をニュージーランドに決め、約半年をかけて行ってきた研究成果をまとめ、「観光現場において神話を活用する意義を考える-ニュージーランドの神話を事例に」について発表しました。
 ニュージーランドには、マオリという先住民族が今でも人口の約14%の割合を占めています。その歴史は古く、マオリの神話や伝説が数多く残されていて、その昔海を渡ってきたとされています。ニュージーランドは、英語表記よりも先にマオリ語の表記がされているなど、先住民族を大切にしていることがうかがえます。また、日本ではニュージーランドのラグビーチーム「オールブラックス」が躍る「ハカ」が馴染み深いと思います。加えて、ニュージーランドにはフィヨルド地形が世界遺産に登録されているミルフォードサウンドがあり、クルーズで雄大な自然を堪能するツアーがあるなど、自然を活かした観光が盛んです。
 実際にミルフォードサウンド、モコイア島、タウポ湖の3カ所を調査で訪れ、ツアーに参加してみたところ、マオリの文化や自然を活かしたアクティビティが盛んであることはわかりましたが、神話や伝説が観光現場であまり活用されていないことがわかりました。そこで、観光現場において神話を活用することにはどのような意義があるのかを考えました。1点目はニュージーランドが先住民族を大切にしているアイデンティティを持っている国であることを伝えられる、2点目は観光資源のイメージを広げ、魅力を高められる、3点目は観光客の行動を変えるためのきっかけにつながるという点です。
 発表を聞いていただいた先生方から、「わざわざ自然を活かした観光地として確立している場所に、神話を利用する意味があるのか」とのご指摘をいただきました。その際に前述した3点目の「観光客の行動を変えるためのきっかけつながる」を軸に、次のように答えました。「自然や異国の文化を体験する観光客は「楽しみ」を目的に訪れています。その時に、観光客の逸脱した行動をルールで規制してしまうと、せっかくの旅行気分が台無しになり、満足感が減少してしまいます。そこで、安易に規制するのではなく、神話が持つ神聖さや荘厳さを観光客自身が感じることで、観光客の満足感も下がることなく、観光地にとってもより良いものになるのではないかと考えています」。すると、「ミルフォードサウンドは世界遺産として登録されているから、わざわざ神話を使わなくても旅行に来る人はルールを守ると思う」ともご指摘いただきました。ミルフォードサウンドにおいて、1点目や2点目に述べた効果は知識を広げたり、より理解が深めたりするという点で意味があるのものだと感じました。今回の発表を通して、観光地として確立している場所を、神話を用いて再資源化する難しさや、神話の効果が限定的である場合もあると感じました。

さまざまな観光研究に触れることができたポスターセッション
 国際観光学部4年 井上佑太

 私たち観光実習2のメンバーは、12月16日に跡見学園女子大学にて行われた日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。「観光現場における神話を活用する意義を考える-ニュージーランドの神話を事例に」と題し、多くの観光研究者、各大学の先生方、学生に向けて発表しました。今年度の観光実習2では、ニュージーランドのマオリ神話がどのように観光現場で活用されているのかについて調査を行いました。夏季休暇に約1週間の現地調査を行い、3つのガイドツアーに参加し、そこからわかった結果をポスターにまとめました。
 調査を行った3つの観光地には、それぞれマオリ神話が伝承されていますが、現状ではツアーパンフレットに少しだけ紹介されており、また30分間のガイドの解説のうち、マオリ神話に関する解説がわずか1分だけなど、観光にマオリ神話はあまり利用されていませんでした。一方で、私たちは町中のごみ箱に英語の次にマオリ語を表記したり、ニュージーランドの国章にマオリ人が描いたりするなど、ニュージーランドではマオリ文化を大切にしていることがわかりました。そこで、神話を通してニュージーランドは先住民を大切にするアイデンティティを持っている国であることを示せるのではないかと考えました。また、神話の舞台ということで観光客のマナーを変えるきっかけになるとも考えました。ツアーに参加した英語圏以外の観光客や子どもでも理解しやすいように、文字による解説だけでなく、言葉の壁や老若男女問わず理解できるよう、図やアニメなどを活用していくべきだと考えました。
 私たちの研究に足を止めてくださった他大学の先生や学生から、さまざまな意見を頂戴できました。「参考になる研究ですね」と一定の評価をしていただいた一方で、「マオリ人は本当に神話を活用することで観光客に来てほしいのか」など、多くの厳しいご指摘もいただきました。しかし、自分たちでは気づくことのできなかった課題を多く指摘していただき、とても参考になりました。私自身、ポスターセッションの参加は2度目でしたが、自分たちの発表以外に、松山大学や文教大学などの他大学の発表を聞き、意見交換することで、自分たちとは違う観光の捉え方を考える機会になりました。また、他大学のポスターは文字の配置や見せ方などがうまく、とても見やすく参考になり、また勉強にもなりました。今回たくさんのご意見をいただき、普段経験することのできない発表を体験することで、良い機会になりました。

神話や伝説がもたらす利点
 国際観光学部3年 島田麻衣

 東京で行われた日本観光研究学会全国大会では、夏休みにニュージーランドで行ったフィールドワークについてポスター発表を行いました。ニュージーランドの観光において、大自然を使ったアクティビティが盛んであるほか、マオリの集会場であるマラエやマオリの踊りであるハカなどのマオリ文化も観光に利用されています。しかし、マオリの神話や伝説がどのように観光現場で活用されているのかわからないということで、事前調査、現地調査、事後調査を行いました。ポスター発表では、神話や伝説は観光現場において積極的に活用されていないということが調査結果からわかり、より積極的に活用するべきだと考え、その理由を大きく3つまとめ、発表しました。
 ニュージーランドに短期留学経験があるという学生に聞いたところ、「マオリ語」の授業科目があり、実際に授業を受けていたそうです。また、マオリの神話や伝説も学校で少し聞いた記憶があるということでした。ニュージーランドでは、マオリなどの先住民のことを知る機会が学校教育の場にあり、全員とまでは言いませんが、聞いたことがあるくらいの認知度があるのではないかと考えます。そのことと、マオリや神話がパンフレットに細かく記載されていなかったことが関係しているのではないでしょうか。しかし、海外からの観光客であれば、自分で調べたり、興味を持っていたりする人以外はマオリの伝説や神話を聞いたことがない、知らない人がほとんどですので、パンフレットなどに記載したり、図や映像でわかりやすく表現したりするなど、活用方法も多様であるべきです。ニュージーランドは先住民を大切にしていて、マラエやハカのようなマオリ文化を実際に観光現場で活用していますが、こういった国は少ないのではないかと感じます。マオリ文化に触れたことがない人とある人では、ニュージーランドのイメージも変わってきます。それを国民にも観光客にも示すことで、ニュージーランドのアイデンティティが守られ、国のイメージが膨らむと考えます。
 今回、塩路ゼミと観光実習の2つのポスター発表を担当したので、多くの他大学の学生のポスター発表を聞きに回ることはできませんでした。他大学にも興味深い発表が多く、大学を越えた交流は良い刺激になりました。フィールドワークにあたり、「学校から補助は出ているのですか」という質問が何回かあり、「すべて実費です」と答えました。他大学の発表内容は自分たちが調べていないようなテーマであったり、このような考え方があるのかと感心したりするなど、とても新鮮でした。今回の私たちのテーマは、自分たちで調べていても難しいと感じ、考察のアイディアがなかなか出ず苦戦しましたが、学会発表に間に合ってホッとしました。

約1年間取り組んできた海外実習の成果を実感
 国際観光学部4年 後田風佳

 約1年間、ニュージーランドでフィールドワークを行った海外実習の成果を発表するため、跡見学園女子大学に行きました。そこで発表した内容は、「観光現場において神話を活用する意義を考える」というテーマで、ニュージーランドの神話を事例に行ったものでした。
 事前調査として、文献調査やインターネットでニュージーランドの観光の現状を把握し、神話や伝説について調べました。そして、現地調査では実際にニュージーランドへ行き、3つのツアーに参加し、ガイドの解説の中に神話や伝説が含まれているか聞き取り調査を行ったり、観光案内板や観光案内所に置かれているパンフレットの情報収集を行ったりました。その結果、ニュージーランドの観光は大自然を使ったアクティビティが盛んであるほか、マオリ文化も利用されていましたが、現状では神話や伝説が積極的に活用されていないということがわかりました。そこで、神話を使うことによって、①先住民を大切にするアイデンティティを持っている国であることを示すことができる、②イメージを広げ、観光の資源の魅力をさらに高められる、③観光客の行動を変えるきっかけになるという3つの考察を出しました。そして、文字による解説だけではなく、言語の壁や老若男女問わず理解できるような図や映像を活用することが必要であるという結論に至りました。
 この研究を先生方や学生に対して発表したところ、「マオリの人は本当に観光客が増えることを望んでいるのか」、「自然を目的に観光客が来ているから、神話は必要ないのではないか」などのご質問をいただきました。中には、「神話や伝説の研究は珍しくておもしろい研究だね」とおっしゃってくださる方もいて、研究の成果を感じられた反面、いくつかご指摘をいただき、今後改善すべき点を考えていく必要があるとも感じました。
 また、学生が行っている研究発表をうかがって、知らなかった観光の取り組みや変わった観点の研究があり、刺激になるものが多くありました。初めは発表することに緊張してしまい、書いてあるものをそのまま読むことしができませんでしたが、何回か発表を重ねていくうちに、自分の言葉で要点を伝えられるようになり、緊張もほぐれ、楽しく終えることができました。約1年間、同じメンバーで現地のニュージーランドへ行き、フィールドワークを行ったり、毎週のように授業時間が過ぎても話し合いを進めてきたりした研究で、考えて答えを出すということを繰り返した結果、私の中ではとても成長できたと感じています。今後、この海外実習の経験を生かしていきたいと考えています。