2016.9.27

鹿児島市で現地調査を実施しました(1)

鹿児島市で現地調査を実施しました(1)

鹿児島市内の観光資源を隈なく視察しました

 9月12日から6日間(15〜16日はゼミ旅行)、鹿児島市を訪れ、現地調査を実施しました。これまでの授業で調べた資料や、9月5日に鹿児島県大阪事務所での聞き取り調査で得た情報をもとに、若年観光客に魅力がありそうな調査箇所を決めました。そして、当日はゼミ生14名が3つのグループに分かれ、鹿児島市内を隈なく調査しました。また、調査1日目に鹿児島市役所と鹿児島観光コンベンション協会で聞き取り調査も実施し、そこで得た新たな情報をもとに、地元の方々が「日常」で接する物事にも触れてきました。
 以下のゼミ生の報告からもわかるように、今回のフィールドワークでは桜島や仙巌園といった有名な観光資源だけでなく、地元の方々しかご存知ないような場所にも訪れ、観光資源化の可能性を考えました。ゼミ生が鹿児島市でのフィールドワークで得た成果について、3回に分けて報告します。(森重昌之)

フィールドワークの様子

  • 鹿児島観光コンベンション協会での聞き取り調査の様子

  • 鹿児島観光コンベンション協会での聞き取り調査の様子

  • みやげ横丁での調査の様子

  • 平川動物公園での調査の様子

  • グリーンファームの農家レストラン

  • 新とそ温泉から見た桜島

※関連記事

参加したゼミ生の報告

地元の人びとの「日常」を観光資源にする
 国際観光学部3年 森川奈央

 私たち森重ゼミ3年生は、9月12日から3日間、鹿児島市でフィールドワークを行いました。前回3月に鹿児島市を訪問し、調査しました。その後、ゼミ活動を重ね、今回のフィールドワークで訪問する箇所を選定しました。その中で、私たちのグループは鹿児島市の若者の観光客への対策を調査するために、まず鹿児島観光コンベンション協会を訪れました。
 訪れるにあたっていくつかの質問を用意していたのですが、主に私たちの担当をしてくださっていた郡山さまが「まず、質問は私の個人的意見になります」とおっしゃいました。鹿児島市に住み、鹿児島市を盛りあげたいと考える一市民としてご意見をいただき、とても親切に対応していただきました。
 まず、「鹿児島市内で最も若者に人気のスポットと言えば、どこを思い浮かべますか」とお聞きしたところ、鹿児島市は若者への対応が遅れているのではないかと考えているとおっしゃいました。もちろん、水族館や動物園は若者に人気な観光スポットではありますが、これらは鹿児島市以外にもたくさんあるため、わざわざ鹿児島市に来てもらえないと考えておられるようでした。近年、鹿児島中央駅周辺は賑わっていて、若者が訪れるようなところはありますが、果たしてそれが観光なのかと言われれば、違うかもしれません。
 しかし、郡山さまが鹿児島市を離れて住んでおられた時の話が出た際、「帰省した時には仲間と屋台で飲み明かした後、温泉に入ることが一般的である」とおっしゃっていました。その話を聞いて、きっと大阪ではそういったことが一般的ではないし、地元の人びとが日常的に行っている行為は、私たちには知らないことでした。観光とは非日常を体験するものであるので、十分観光として成立するのではないかと思いました。そうした話の中で、若者が旅行をする際には、どうしても金銭面の問題が出てきてしまうので、温泉宿に泊まることは厳しい一方、温泉には入りたいなどといった要望があります。しかし、鹿児島市は温泉を用いた公衆浴場の数が日本一なので、対応できるのではないかという意見も出されました。
 さらに、桜島が噴火していることは県民にとって当たり前で、決して危険を感じたりはしないということが、調査を重ねるうちにわかってきました。危険ではないのであれば、噴火している様子も、観光客にとっては見応えがあるのではないでしょうか。食に関しても、鹿児島独自の食べ方ができる食材などがあることがわかりました。こうした地元の人びとにとって日常的に行われていることが、観光にも利用できるのではないかと思いました。これまではアピールできていなかったことこそが、今後鹿児島市に観光客を呼ぶ上で重要なポイントになるのではないかと感じました。
 今回、私たちが実際に鹿児島市で体験した「こうしたもの」は、私たちが住んでいるところでは当たり前ではありません。そこで、「こうしたもの」鹿児島市でしかできない体験や経験として、もっと県外に発信することができます。そこで、「こうしたもの」に該当するものを、これからのゼミ活動で詰めていかなければならないことに気づきました。新たな課題も見つかり、とても有意義な時間になりました。

食の魅力と噴火の鹿児島
 国際観光学部3年 佐々木麻希

 私たち森重ゼミ3回生は、鹿児島を対象に、若者へ向けた情報発信をテーマに活動しています。今回行ったフィールドワークでは、4月から行ってきた情報収集や鹿児島県大阪事務所での聞き取り調査をもとに、有名な観光地からあまり情報発信がされていない場所まで、3グループに分かれ、3日間調査を行いました。
 1日目の午後から鹿児島観光コンベンション協会で聞き取り調査を行った後、私たちのグループはJR九州ホテル鹿児島、フレスタ鹿児島、薬師温泉、菓々子横丁を調査しました。JR九州ホテル鹿児島では、隣接している郷土料理「驛亭さつま」を調査しました。この店では、鹿児島県産の六白黒豚を使用した黒豚しゃぶしゃぶや焼き鳥、かごんま郷土料理のキビナゴ刺身、本場さつま揚げ、アルコールなどがメニューとして取り扱われていました。
 フレスタ鹿児島は、鹿児島中央駅の改札前にある土産物を取り扱っているコーナーで、現在ではみやげ横丁に改名されています。ここでは、鹿児島名物である白くまや安寧芋、知覧茶などを使った菓子から黒豚、焼酎、漬物、薩摩切子まで、多種多様な土産物が数多く販売されていました。
 次に訪れた薬師温泉は、鹿児島中央駅から自動車で5分ほどの4階建ビルの1階にあります。料金は大人390円で、冷え性や神経痛、疲労回復、健康増進が適応症だそうです。中には入りませんでしたが、風呂の種類として一般浴場、電気風呂、サウナ、水風呂、気泡風呂があるようです。
 最後に、天文館にある薩摩蒸氣屋菓々子横丁を調査しました。ここは約50メートルの奥行きがあり、70年前の木造家屋と新しい木材が融合した横丁となっています。1階には「かるかん」や「かすたどん」などの和菓子、ケーキなどの洋菓子が売られていました。中央には広場があり、癒しの滝が流れ、マイナスイオンを感じながら、買ったものをその場でいただくこともできます。その奥には屋久杉を使った雑貨やコーヒー、油で揚げていない「焼きどうなつ」などが販売されていました。2階は、ゆったりできる喫茶のほか、書画や民芸品などが展示されている屋根裏ギャラリーがあります。ここでは「焼きどうなつ」が1個76円、かすたどん、かるかん饅頭が108円と、リーズナブルに鹿児島の菓子を味わうことができました。
 今回の調査を通し、改めて鹿児島の食の魅力に気づきました。前回は黒豚など、高価なものばかりのイメージがありましたが、実際には高価なものからリーズナブルなものまで幅が広く、とても食べ尽くせないほど種類が豊富で、美味しいものばかりでした。一般的に鹿児島は、桜島や屋久杉などの自然や温泉、西郷隆盛などの歴史のイメージが強いですが、食の魅力も注目して欲しいと強く感じました。
 また、鹿児島というと、桜島の噴火というネガティブなイメージが付きまといます。しかし、鹿児島に住む人びとにとって噴火は日常であり、うまく噴火と共生しています。桜島が少し大きな噴煙を上げるとメディアに取り上げられ、桜島は危険というイメージが持たれてしまいます。しかし、実際には避難することもなく、ごく普通に生活されているそうで、メディアが流すことがすべてではないと何度かうかがいました。私も、鹿児島に行くまでは「桜島が噴火したらどうしよう」と不安を感じていました。このネガティブなイメージを食の魅力などで払拭することはできないかと思いました。良いイメージも悪いイメージも紙一重です。この先、私たちがどのような形で情報を発信するかはまだ決まっていませんが、その時には鹿児島にどのような影響があるのか慎重に検討したうえで、実施しなければいけないと感じました。

地元の日常が観光の思い出に
 国際観光学部3年 隅田光佐

 今回、私たち森重ゼミは9月12日から15日にかけて、鹿児島へフィールドワークに向かいました。私たち5期生がフィールドワークの対象地を鹿児島に決めてから3月に1度、鹿児島はどのようなところなのだろうと疑問を持ち、調査へ向かいました。そこで感じた鹿児島の現状を分析し、私たちは若者への情報発信を研究テーマに掲げました。さまざまなシチュエーションを考え、そのシチュエーションに見合った観光地をピックアップしていきました。今回、鹿児島を再び訪れたのも、そのピックアップした観光地を訪れて、実際にはどうなのかということを検証してきました。
 4日間の日程で、3つのグループに分かれて調査を行う中で、私たちのグループは鹿児島観光コンベンション協会を初日に訪れ、そこでヒアリングを行い、私たちが取り組んでいることと協会が取り組んでいることの情報共有を図りました。協会では、観光雑誌に載っていない、地元の方しか知らないスポットや、地元の方が当たり前に行っていることでも、私たちが聞くと魅力的な要素も多くありました。
 私たちのグループは初日に鹿児島中央駅エリアの調査を行い、2日目は鹿児島市内の南エリアを調査しました。2日目に行った平川動物公園には、計141種類もの動物が生息しています。平日ということもあり、来場者は比較的少ないようにも感じましたが、平川動物公園は2015年に改修工事が完了しており、さまざまな角度から動物をじっくり眺めることができました。改修にあたって、「南国鹿児島らしく、人と動物に優しい動物公園」を新たなコンセプトに掲げ、リニューアルされていました。園内も順序立てて構成されており、楽しみながら回ることができ、デートスポットにもってこいの場所なのではないかと感じました。
 今回、鹿児島で2度目の調査を行った中で、最初に訪れた時と鹿児島への印象が変わりました。特に感じたことが、地元の当たり前のひとつひとつが観光の思い出になるのではないかということです。3月に訪れた時には、鹿児島の観光は歴史や桜島を中心に構成され、展望台などをつくり、観光客誘致を図っているのだと考えていました。しかし、今回は4泊という長い期間鹿児島市内に滞在する中で、多くの鹿児島市民と触れ合う機会がありました。そこで感じたことは、鹿児島人の温かさです。初日の夜に「かごっまふるさと屋台村」という屋台が集合している場所で夕食を食べたのですが、そこで一緒になった地元の人と他愛もない話をしたり、地元のおいしいごはんを食べたりすること自体が、観光に活かせるのではないかと感じました。先ほど書いたように、地元の人の当たり前が魅力になり、観光資源になるということは、歴史を感じ、桜島を見て鹿児島を旅行するよりも、その所々で食や人情に感銘を受け、旅行の思い出にそういったものが残れば、必ずまた行こうとなると感じます。
 今回、若者の情報発信というテーマで調査を行いましたが、地元の人の日常など、若者にも楽しめる場所がたくさん眠っていました。今後はゼミ活動で、今回得た情報をゼミ生で共有し、テーマである若者への情報発信を進めていきたいと思います。

鹿児島の知られざる観光の可能性
 国際観光学部3年 小田建斗

 観光地の調査や聞き取り調査の目的で、9月12日から14日までの3日間、私たち森重ゼミ3回生は鹿児島市を中心としたフィールドワークを行いました。今回も3グループに分かれ、市内の多くの観光地を回りました。私のグループでは、まず1日目に鹿児島観光コンベンション協会での聞き取り調査を主に行いました。そこで事前に調べた観光地以外の観光情報について教えていただいたほか、鹿児島市の今後の取り組みについてなど、実際の観光に携わった仕事をされている方々との議論はとても内容が濃く、有意義な時間を過ごせました。
 観光地調査で訪れた場所の中から、2つ紹介したいと思います。1つ目は2日目に行った、事前調査では知ることができなかった「鹿児島市観光農業公園(グリーンファーム)」です。グリーンファームは41.3ヘクタールにも及ぶ広大な敷地があり、農産物直売館や体験用農地、キャンプ場、遊具、滞在型市民農園がある体験型学習を兼ね備えた施設です。その中でも賑わいがあった場所が、農園レストラン「だいだい」でした。「だいだい」の意味は引き継がれていくという意味の代々と、そして橙という果実に由来するそうです。景色も良く、錦江湾や大隅半島を眺めながら、敷地内で採れた新鮮な野菜を使用し、その地域に伝わる豊祭そばなど、地産地消の料理を食べることができます。週末や休みの日には多くの家族連れが訪れ、子どもとともに収穫体験や料理体験が行えます。このように楽しみながらも学べ、自然に触れ合える施設になっています。また、季節ごとの限定行事などもあり、何度でも楽しめ、周りが自然に包まれたとても落ち着く場所だと感じました。
 もう1つの訪れた場所として、地元の方々がよく利用されている「新とそ温泉」があります。鹿児島市は県庁所在地の中では温泉の源泉数が約270で日本一であり、市内の銭湯のほとんどは天然温泉ということから、温泉天国と呼ばれています。市内の公衆浴場の多くは値段も390円が多く、お手頃な価格になっています。新とそ温泉は高台に位置しており、内装もどこか懐かしさを思い出させる雰囲気になっています。浴場はガラス張りになっており、そこから見える広い街並みと一番の見どころである雄大な桜島を望むことができ、圧巻でした。また、朝早くから営業しているため、風呂に入りながら景色とともに日の出を拝むこともできる穴場になっているため、賑わいを見せています。
 今回、現地に調査に行って、鹿児島市はそもそもどのような場所であるかという認識の弱さを感じました。実際行ってみると、やはり外国人観光客や高齢の観光客が目立ちます。また、前回の調査に比べて、より食や歴史、温泉自体の良さや可能性があるように感じました。現在では、若者が注目するような情報発信があまり行われておらず、手探りといった感じです。それに伴った工夫を考え、若者目線で見ることができる私たちが、このフィールドワークの内容を踏まえて、若者の観光客に来てもらうために尽くしていきたいと思います。