観光実習の成果を学会で発表しました−観光実習I(国内)

観光客の増加と滞在時間の延長をめざした観光マップを提案しました

 今年度の観光実習I(国内)は、島根県隠岐諸島の知夫村(知夫里島)を対象に、観光客の増加と滞在時間の延長に向けた方策について検討してきました。9月に現地でフィールドワークを実施し、観光資源調査や観光関係者への聞き取り調査を行った結果、「謎解き」の要素を備えた2種類の観光マップを考えることになりました。そして、11月29日に高崎経済大学で開催された第30回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションで、これらの調査の成果を発表しました。
 当日の提案内容や他大学の先生や学生から得た意見やアドバイスについては、以下の学生の報告をご覧ください。今年度の観光実習I(国内)では、初めて発表する受講生と4年続けて発表する受講生が混ざっており、それぞれが「他流試合」の成果や成長を実感しているようでした。今後は学生ポスターセッションで得た意見やアドバイスをもとに、観光マップの完成に向けた作業を続けていく予定です。(森重昌之)

当日の発表の様子

  • 発表者全員で記念撮影

  • ポスター発表の様子

  • ポスター発表の様子

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参加した学生の報告

知夫村の謎解きマップの提案と刺激をもらったポスターセッション
 国際観光学部4年 上垣彩夏

 11月29日に、群馬県の高崎経済大学にて行われた日本観光研究学会主催の学生ポスターセッションに参加しました。私たち観光実習?の発表は「謎解き観光マップを活用した観光客誘致の可能性−島根県隠岐・知夫村を事例に−」というテーマで行いました。2013年9月に世界ジオパークに登録された島根県知夫村は、ともに登録された西ノ島町や海士町と比較しても知名度が低く、観光入込客数も減少傾向にあることが現状です。そこで、私たちは知夫村の観光入込者数を増加させ、滞在時間を延ばすことを目的とし、調査を行いました。
 文献調査や現地調査から浮かび上がった課題点は、先に述べたとおり、知夫村の知名度が低く、観光入込客数も少ないという点です。また、知夫村の既存の観光マップに記載されている観光資源の情報が乏しいため、島内を1日で周遊できてしまい、宿泊客が他の島へ流出してしまうこともあげられました。
 そこで、私たちは謎解き観光マップの活用を提案しました。謎解きマップの利点として、1つ1つの魅力が必ずしも高いとは言えない観光資源に、謎解きという付加価値を加えることができるという点があります。何の変哲もない通常の観光マップを眺めながら観光をするより、謎解きをしながら1つ1つの観光資源を吟味することで、その観光資源の魅力を高めることにつながると考えました。また、観光マップで説明されている文章をただ読むだけより、自らの頭で考え、謎を解き、行動することによって記憶に残ります。記憶や思い出に強く残った観光地へは、もう一度行きたいという思いが強くなり、リピーターにもつながると考えられます。
 謎解きマップは2種類作成しました。1つは、知夫村をより深く知ってもらうための謎解きマップで、知夫村の観光資源に関する謎解きが記載されています。そのほとんどは実際に足を運ばなくては解答がわからないようになっており、その解答の中の一文字をつなぎ合わせるとある言葉になるというクロスワード形式です。島全体を周ってもらうことで、滞在時間の延長につながると考えました。2つ目の謎解きマップは、西ノ島町や海士町から知夫村へも観光客に訪れてもらうための観光マップです。謎解きにより島から脱出するというストーリーになっています。西ノ島町や海士町に訪れている観光客を知夫村にも呼び込むことで、観光客数を増加させることを目的としています。これらを駆使することで、観光客数の増加と滞在時間の延長が見込めるという考察に至りました。今後の課題としては、マップの更新などを誰がするのか、また印刷にコストがかかるという点の解決策を考察したいと考えています。
 ポスターセッション当日はたくさんの方に発表を聞いていただきました。厳しいご意見もいただきましたが、その指摘を次の提案に活かしたいと考えています。他の大学の学生の発表を聞いて意見を交換することで、刺激をもらうこともできました。ポスターセッションは今回で4回目でしたが、毎回新しい知識と経験を得ることができました。ご指導していただいた森重先生に感謝申し上げます。

謎解き地図を利用して地域の魅力増大をめざす
 国際観光学部4年 福崎美帆

 2015年11月29日、高崎経済大学にて第30回日本観光研究学会全国大会が開催され、学生ポスターセッションにて発表しました。観光実習Iの授業では、新たな観光客の誘致をテーマとして研究に取り組みました。対象地域として設定した島根県隠岐郡にある知夫里島は、隠岐世界ジオパークの一部として認定されているにもかかわらず、隠岐諸島の中で最も知名度が低いという現状にあります。4日間の現地調査を行い、知夫村役場や地域住民への聞き取り調査を行いました。町役場での調査の結果、今後は自然を生かした遊び場を中心に、観光開発にも力を入れたいと考えていることがわかりました。
 今回の発表では、知夫里島に観光客を誘致するための方策として、「謎解き要素のある地図」を共通テーマに、2種類の地図を提案しました。謎解きがもつ効果として、観光客が自ら考え、まちなかでヒントを探すため、注意深く島を観察する点が考えられます。また、地域住民にヒントを求める可能性があり、島民と交流するきっかけにもなります。そうすると、観光客に島の印象が強く残り、リピーターや島の口コミによる宣伝効果につながるのではないかと考えました。
 提案した地図の1つ目は、知夫里島内にある複数の観光資源を周ってもらい、滞在時間を延ばす目的の地図です。知夫里島独自の文化や自然、歴史を問題にしたクロスワードパズルをつくり、地図に記載します。現在の知夫里島にある主な観光資源は2つしかないため、午前中のみの滞在がほとんどです。しかし、この謎解きマップを利用することで、島全体を観光しながら知夫里島について知識を深めてもらい、観光客自身が魅力的な場所を見つけてもらえると考えました。2つ目は、隠岐諸島の他の島から知夫里島へ観光客を誘致する目的の地図です。島前に伝わる後醍醐天皇と後鳥羽上皇の歴史を利用した物語に沿って、謎を解きながら島前の3島を周遊してもらいます。知夫里島は隠岐諸島の中で最も本土と近いため、隠岐の玄関口として流刑された偉人を受け入れてきたという歴史があります。物語の一部に知夫里島を組み込むことで、知夫里島の観光入込客数が増加すると考えました。
 今回のポスターセッションの時点では、まだ地図の製作に至っておらず、地図のイメージ内容を発表しました。発表後は、現在知夫里島に訪れている観光客の属性を明確にし、地図を利用してもらう層を決めたほうがよいという助言を多くいただきました。貴重なご意見を活かして、地図製作に取り組みたいと思います。

まだまだ未熟
 国際観光学部3年 竹中さおり

 11月29日に群馬県高崎経済大学で行われた、日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。
 発表の内容は、「謎解き観光マップを活用した観光客誘致の可能性について」です。今年9月に実際に島根県隠岐諸島、島前の知夫村でフィールドワークを行い、観光入込客数を増加させ、知夫村での滞在時間を延ばす方法を調査しました。調査の結果、自然観光資源が多いため、悪天候の際に魅力が半減してしまうことや、通過型観光になってしまい、宿泊客が獲得できないなどの課題が明らかになりました。そのため、謎解きマップを作成し、参加型観光にすることにより、観光客の滞在時間を延ばすことを考えました。
 今回提案したマップは、AとBの2種類です。Aは、知夫村を訪れた観光客向けとなっており、赤壁や赤ハゲ山と一緒に、あまり知られていない知夫村の固有種の植物や、江戸時代の文化を垣間見ることができる芋蔵などを周遊してもらう、知夫村の観光資源を組み合わせたマップです。一方、Bは知夫村だけでなく、西ノ島町、海士町の島前3島を訪れている観光客向けとなっており、後醍醐天皇と後鳥羽上皇のゆかりの地をたどる、ゲーム性と歴史資源を組み合わせた謎解きマップとなっています。A、Bともに共通する利点としては、観光客自身に謎を解いてもらう体験型であるため、印象に残りやすく、住民との交流が期待できることです。欠点や課題としては、マップに飽きが来る可能性、マップ更新の担い手がいない、印刷のコスト面などが考えられます。
 発表では、学生や他大学の先生、観光業界の方々からご意見やご指摘をいただきました。例えば、「そもそもジオパークとは何か」、「マップは良いと思うが、ターゲット層は誰か」、「どの地域の観光客を対象としているのか」など、私たちが曖昧なままにしてしまっていた点を的確にご指摘いただき、とても参考になりました。私自身は、全国各地から訪れてほしいと短絡的に考えていましたが、地理的な問題やコスト面、観光資源の誘致力の強さといったことを考慮すると、どこからの観光客が多いのかを明確にし、ターゲットを限定することが最善だと認識しました。
 反省点としては、ジオパークに認定されていることを知夫村のアピールポイントにしているにもかかわらず、ジオパークについての説明がなかったこと、イメージのマップに縮尺を載せ忘れたこと、グラフが間違っていたことなどの見落とし、ミスが多いことや調査不足です。今回の発表は、課題が多く残るものだったと実感しています。今後は実際にマップを作成していく上で、マップに載せる観光資源の抜粋やターゲットを限定するなどの課題を明らかにし、観光客の関心を引くマップを作成し、知夫村に貢献できるように尽力します。

ポスターセッションを通して感じた課題
 国際観光学部3年 佐藤研

 11月28日から群馬県へ移動し、29日に学生ポスターセッションを行いました。私たちは、「謎解きマップ」をコンセプトとし、隠岐にある西ノ島町、海士町、知夫村を対象に研究しました。
 西ノ島町や海士町には観光客が多く訪れるのですが、知夫村には2つの島から観光客があまり流れてきません。知夫村は人口が少なく、観光客も少ない状況にあります。そこで、私たちは2つの謎解きマップを提案しました。1つ目のマップは、知夫村の有名な観光地である赤ハゲ山や赤壁以外の観光地も周る機会をつくり出すことで、知夫村での滞在時間を延ばすことが狙いです。このマップに期待される効果としては、他の観光地も周り、知夫村の観光資源の良さを知ることで、他の人びとへも知夫村の良さを発信していただける点です。
 もう1つのマップは、歴史を活用した謎解きマップです。こちらは1つ目の謎解きマップとは違い、島前全体を使ったマップです。島前はかつて、後醍醐天皇と後鳥羽上皇が島流しにあった場所です。そこで、私たちは後醍醐天皇と後鳥羽上皇を題材にした謎解きマップを提案しました。このマップによる効果は、島前の歴史を深く知り、問題の答えがわからなければ島民にヒントを求めることで、観光客と地域の人びとの交流機会が生まれ、島前の良さを知ることができる点です。
 今回の学生ポスターセッションを通して、どのような観光資源を載せることによって、知夫村の魅力発信につながるかが課題であることがわかりました。他大学の先生や学生からさまざまな意見をいただきました。例えば、島根県を訪れている観光客に隠岐にも誘致するのか、それとも遠方からの観光客をターゲットにしているのかがわかりくいという指摘をいただきました。地域住民や観光客にアンケート調査を行ってどうか、名探偵コナンと謎解きを組み合わせた謎解きマップをつくってはどうかといった、アドバイスもいただきました。私たちはアンケート調査を行うことを考えていませんでした。客観的な意見をいただくことによって、私たちのマップに足りない部分がよくわかりました。これらの意見を踏まえ、観光客に知夫村の観光資源の魅力を伝え、地域活性化につながるような謎解きマップを作成していきたいと思いました。
 学生ポスターセッションに参加して、他大学のポスターセッションも聞かせていただき、いろいろと参考になりました。それぞれ違う視点から考えており、人を引きつけるような発表をされていて、良い勉強になりました。

さまざまな意見を聞くことができたポスターセッション
 国際観光学部4年 平山あかね

 11月29日に、群馬県高崎市にある高崎経済大学で開催された日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。
 私たちは、島根県隠岐諸島の知夫村を事例に、謎解きマップを活用した観光客誘致の可能性について発表しました。知夫村は2013年に世界ジオパークに登録されましたが、認知度が低く、またパンフレットにも観光資源の記載が少ないため、滞在時間が短いことが現状です。そこで、私たちは観光入込者数の増加や滞在時間を延ばすための謎解きマップを提案しました。
 1つ目のマップは、知夫村に訪れた観光客を対象に、知夫里島全体を観光してもらえるような、滞在時間の延長を目的とした謎解きマップを提案しました。2つ目のマップは、隠岐諸島の島前に訪れた観光客を対象に、島前3島を周遊してもらい、知夫里島にも足を運んでもらえるような、歴史資源を使ったストーリー性のある謎解きマップを提案しました。これらのマップを使うことにより、楽しみながら地域の歴史や文化が深まるとともに、謎がわからないと島民との交流も生まれる可能性があること、知夫村の観光資源を周ってもらうことで滞在時間が延びること、謎解きをすることでより記憶に残りやすく、リピーターの増加も見込めるのではないかと考えました。
 ポスターセッションでは、たくさんの他大学の学生も参加していました。いろいろと見て回っていると、「マップを使って」というキーワードが多いように感じました。私たちのポスター発表を聞いていただけたのは、6〜7組でした。貴重な意見を聞くことや、応援をしていただくこともありました。「マップに縮尺をつけた方がいい」、「ターゲットをもっと絞ってみるのもいいのではないか」、「島根県でやっている名探偵コナンのミステリーツアーと協力してもおもしろいのでないか」などの意見をいただきました。
 ポスターセッションは16時までだったのですが、12時から13時のコアタイムが終わると、ポスターを撤収し、帰ってしまう大学もありました。16時近くになると、ほとんどの大学が撤収していたので、私たちも16時にポスターをはずし、ポスターセッションを終えました。
 今回、日本観光研究学会の学生ポスターセッションい初めて参加し、他大学の学生や先生方など、普段意見を交わすことのない方との交流ができ、自分では気付くことができない意見などを聞く機会になり、学ぶことがたくさんありました。今回の学生ポスターセッションでの意見を参考にして、謎解きマップの完成をめざしていきます。

これまでの成果発表と実感した自身の成長
 国際観光学部4年 谷口真帆

 今年度の観光実習I(国内)の授業では、島根県隠岐諸島の知夫村の観光入込者数を増加させ、滞在時間を延ばすための方策を検討してきました。2015年9月12日から17日にはフィールドワークを実施し、島前地域の観光協会や地域住民へのヒアリング調査と資源調査を行いました。そして、11月29日に群馬県の高崎経済大学で開催された第30回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションに参加し、「謎解き観光マップを活用した観光客誘致の可能性—島根県隠岐・知夫村を事例に—」という題目で、これまでの研究の成果を発表してきました。以下、発表内容です。
 知夫村は隠岐の島町、西ノ島町、海士町に比べ、知名度が低い現状にあります。また、パンフレットなどに記載されている観光資源の情報が少なく、観光客は約2〜3時間で島内の主要な観光スポットを周り、西ノ島町や海士町へ移動してしまいます。そこで、知夫村に足を運んでもらい、滞在時間を延ばすためにはどのような方策が考えられるか検討し、2パターンの謎解きマップを提案することにしました。
 1つ目は、知夫村の観光資源を組み合わせた謎解きマップです。このマップは、知夫村を訪れた観光客をターゲットに、島全体を観光してもらうことで、知夫村での滞在時間を延ばすことをねらいとしています。そのため、島の植物や湧き水、観光資源にするにはインパクトの弱い石碑も問題にしました。そうすることで、あまり知られていなかった地域資源を紹介することができ、赤ハゲ山や赤壁といった主要な観光資源以外にも訪れる機会が生まれることから、結果的に滞在時間の延長につながるのではないかと考えました。
 2つ目は、ゲーム性と歴史資源を組み合わせた謎解きマップです。こちらのマップは、隠岐の島町、西ノ島町、海士町を訪れた人をターゲットに、知夫村に足を運んでもらうことをねらいとしています。最近話題となっている「脱出ゲーム」を参考に、ゲーム感覚で観光してもらえるようにし、新たな周遊コースを提案することによって、新規の観光客の誘致につながると考えました。普通に観光した時と比べ、自ら行動して謎を解くことで、観光客は楽しみながら地域の歴史や文化の知識を深めることができます。また、ヒントを得るために地域の商店に赴くなど、地域住民との交流も期待できます。
 以上を学生ポスターセッションで発表し、来場者の皆さまからご意見をいただきました。一番多かったご意見は、「ターゲットをもう少し絞った方が良い」ということでした。私たちは「知夫村を訪れている人」と「隠岐を訪れている人」ときちんとターゲットを設定していたつもりでいたので、返答するのに少し戸惑ってしまいました。昨年の発表でも、考えをうまく説明することができずに不甲斐ない思いをしたので、自分の不得意な部分がよくわかりました。しかし、昨年やそれ以前と比べ、他の学生の発表を聞いて意見や質問をすることができ、社交性や理解力は成長したと思いました。来場者の方からはご意見だけでなく、「おもしろい提案だから、ぜひ実現してほしい」という嬉しい言葉もいただきました。今後は実際にマップをつくり、知夫村の皆さまに良い成果報告ができるように取り組んでいきたいです。