尾道市役所にオンラインで聞き取り調査を実施しました

しまなみ海道の現状や観光施策について教えていただきました

 今年度の森重ゼミは、しまなみ海道を調査対象地域に選定しました。5月にしまなみ海道の観光の現状を知るための現地調査を行い、その後調査結果をもとにどのような課題に取り組むか検討してきました。当初、しまなみ海道はサイクリストなどの通過型観光客が多いと考えていましたが、実際に調査に訪れると、サイクリスト以外の観光客も少なくないことがわかりました。また、自治体が策定している観光振興計画なども参考にしながら、しまなみ海道の観光の課題を精査してきましたが、具体的な現状や行政の取り組みを確認する必要があるということになりました。そこで、尾道市役所にオンラインでの聞き取り調査をお願いしたところ、快くご協力いただけることになりました。
 7月11日(月)13時から、尾道市観光課とオンラインで聞き取り調査を行いました。はじめに、われわれがこれまで検討してきたことをお伝えした上で、しまなみ海道の観光の現状や宿泊施設の取り組み、それぞれの島の特徴についてご教示いただきました。また、われわれの課題認識に対してご意見もいただくことができました。さらに、聞き取り調査終了後も参考になるデータを送ってくださいました。
 今回の聞き取り調査を通して、今後の進め方を考える上で大変参考になりました。お忙しいなか、貴重なお話をお聞かせくださった尾道市役所職員の皆さまに厚く御礼申し上げます。(森重昌之)

当日の聞き取り調査の様子

  • オンラインでの聞き取り調査の様子

  • オンラインでの聞き取り調査の様子

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参加したゼミ生の報告

オンラインでの聞き取り調査で学んだことと今後の取り組み
 国際観光学部3年 井上友音

 私たちは、大学生をターゲットに地域にお金を落としてもらい、サイクリスト以外の観光客を呼び込むことを目的に、しまなみ海道を調査対象地域として活動していました。しまなみ海道は通過型観光が中心であり、滞在する観光客が少ないと印象を持っていました。しまなみ海道には宿泊施設がいくつかありますが、どれも十分PRされておらず、口コミも少ないことがわかりました。このように、多くの宿泊施設があるにもかかわらず、PR不足が原因で観光客の目に届かないことから、滞在型観光が少ないのではないかという仮説を立てました。
 そこで、私たちは宿泊施設をもっとPRし、滞在型観光を促進させることで、より地域にお金を落としてもらうという方法を検討することにしました。さらに、しまなみ海道の観光政策の現状や宿泊施設の取り組みについて詳しく知りたいと考え、尾道市役所観光課にアポイントメントをとりました。そして、7月11日13時からオンラインにてお話をうかがう機会をいただきました。
 聞き取り調査では、まず私たちがしまなみ海道を調査対象地に選んだきっかけ、前回のフィールドワークを経て学んだことを発表しました。その次に、こちらからあらかじめ用意していた質問をするという流れで行いました。私たちが投げかけるいくつもの質問に、観光課の方は一つ一つ丁寧にご回答くださいました。
 まず、「サイクリスト」と一言で言ってもさまざまであり、サイクリングのみを楽しむ方やゆったりと楽しまれるファミリーや女性のような方々がいることがわかりました。また、観光消費額の統計によると、1人あたり4,400円という数値を教えていただきました。尾道市の観光政策として、尾道市街を訪れるまちあるき観光客には、まちあるきだけでなく、しまなみ海道のサイクリングにも足を延ばしてもらう一方、サイクリストにはまちあるきも楽しんでもらいたいという考えがあることがわかりました。これらから、1人あたりの観光消費額が4,400円という数値では、宿泊者が少ないであろうと推測されます。
 続いて、宿泊施設の取り組みについて尋ねたところ、尾道市には最近50件ほど宿泊施設が増えており、生口島にもグランピング施設が3件増えたそうです。また、市役所が個別に宿泊施設について情報発信をすることができないことから、宿泊事業者を支援する取り組みや尾道GOGOキャンペーンなどが行っておられました。しかし、私たちはこの取り組みについての情報発信が少ないように感じました。観光課の方もそれを認識されており、情報発信がいかに大切であるか、感じておられることがわかりました。
 さらに、尾道市に属する向島、因島、生口島の印象についても教えていただきました。向島はアウトドアアクティビティの印象が強く、コロナ禍でも観光客がある程度訪れているとのことでした。生口島はサイクリストが多く訪れ、グランピングなどの宿泊施設も多くあるため、活気がある印象でした。それに対し、因島にはHAKKOパークや白滝山などがあるものの、イベント関係で多くの観光客が訪れていたため、コロナ禍の影響を他の島より受けていることがわかりました。
 聞き取り調査を終え、教えていただいたことを整理した後、私たちはこれから2つの活動を同時に進めていくことにしました。1つは尾道市街を訪れたまちあるき観光客に、ゆったり島をめぐるサイクリングを加えた観光スタイルを提案し、どのようにすれば両方の観光客の増加につながるのか調査を行うことです。もう1つは、しまなみ海道に滞在する観光客を増やし、地域にお金を落してもらうために、宿泊施設のPR方策を検討することです。今後、この2つの活動をグループに分かれて進めていきます。

宿泊施設のPR不足の現状を学んだ聞き取り調査
 国際観光学部3年 林みつば

 私たちは現在しまなみ街道を調査対象地とし、大学生をターゲットに地域にお金を落としてもらうことを目的にゼミ活動を行っています。これまで事前調査とフィールドワークを終え、ゼミ活動を進めている中でいくつかの疑問点が浮上してきました。そこで、これらの疑問を解消するため、尾道市役所観光課の方にZOOMで聞き取り調査を実施しました。
 聞き取り調査では、主に4つの質問を中心に進めました。1つ目は、サイクリスト以外の観光の取り組みを行っておられるかについてです。観光課によると、観光客の行動パターンとして、市街地のまちあるき観光としまなみサイクリングの大きく2つがあるそうです。ターゲットは明確に分けておらず、両方を楽しんでもらうという方向で取り組みを行っているとの回答をいただきました。2つ目は、尾道市にある向島、生口島、因島それぞれの観光の現状や特徴について質問しました。向島はアウトドアを楽しめる島で、コロナ禍の影響はあまり受けておらず、観光客も訪れているそうです。生口島は「未来心の丘」やJR西日本と大学生が共同開発したレモンのデザインが施された自転車、17個のアートや高級リゾートホテルのオープンなど、SNS映えするスポットが数多く存在し、若者が多く訪れているそうです。そして、因島は村上水軍に関する歴史的な資料やイベントが開催されていますが、数多くのイベントが中止になり、コロナ禍の影響を大きく受けたとの回答をいただきました。
 3つ目は、観光客のうち何割が宿泊しているのかという問いに対し、正確な割合はわからないが、尾道市街で旅行中の観光客に消費金額のアンケート調査を行ったところ、1人あたり約4,400円だったそうです。この数値から宿泊客の割合は少ないと考えられます。4つ目は、現在取り組んでいることについて尋ねたところ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で落ち込んだ観光需要の回復と地域経済の早期復興を図るため、宿泊料金、飲食代、土産品購入代金を割引する、市独自の観光キャンペーン「おのみちGOGOキャンペーン」を実施し、現在参加事業者を募集しており、7月23日(土)から利用が開始されることを教えていただきました。
 これらの質疑応答を通して、しまなみ海道の観光の問題点や改善点に対する知見を深めることができ、私たちにとって大変貴重な時間となりました。また、今回お聞きしたお話をもとに、自分たちができることは何かを改めて見直し、考え進め、ゼミ活動を行っていきたいと思います。