観光資源や観光客の様子を学ぶため、さまざまな島を巡りました

 森重ゼミでは毎年、2年次にゼミ生それぞれが観光を通じた地域課題の解決に向け、フィールドワークの調査候補地を提案し、話し合いによって1つの調査対象地を選定した上で、3年次にフィールドワークを実施しています。話し合いの結果、今年度の3年生は広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶしまなみ海道を調査対象地に選びました。
 しまなみ海道はサイクリストの聖地として有名ですが、サイクリスト以外の観光客も楽しめる島の魅力がたくさんあるのではないかと考えました。そこで、それぞれの島の魅力を発掘することで、サイクリスト以外の観光客にもゆっくりと魅力を堪能していただけるのではないかと考えました。しかし、ゼミ生の多くがしまなみ海道を訪れたことがなかったので、5月20~21日に下見を兼ねた現地調査で島々を巡りました。
 当日は限られた時間でしたが、それぞれの島を周り、観光資源を巡るとともに、観光客の様子などを調査しました。そこで、今回の現地調査の様子を2回にわたって報告します。今回はしまなみ海道が通っている4つの島の調査の様子をゼミ生が紹介します。(森重昌之)

当日のフィールドワークの様子

  • 向島の高見山展望台からの眺望

  • 高見山展望台での調査の様子

  • 立花食堂の店内の様子

  • 因島のザウルくん

  • 因島のしまなみビーチ

  • 遊覧船から見た来島海峡大橋

  • 今治の象徴である造船所の様子

  • 伯方の塩ソフトとレモンソフト

  • 伯方ビーチ

参加したゼミ生の報告

島の雰囲気を学べたフィールドワーク
 国際観光学部3年 玉置瑞季

 私たちは、5月21日と22日の2日間を利用し、しまなみ海道で大学生をターゲットに地域に金を落としてもらい、いくつかの島を周遊したと言ってもらえること、サイクリストばかりというイメージを払拭することを目的とし、夏の本調査を行う前の下見としてしまなみ海道でフィールドワークを行いました。
 現地に行くまでの事前調査で、まずしまなみ海道は広島県尾道市から向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島を経て、愛媛県今治市に入る道路だということを理解しました。次に、私は向島にどのような観光資源が存在するのかを調べました。高見山展望台は標高283メートルとそれほど高い山ではありませんが、因島大橋や岩子島など、多くの島々を一望することができるところ、また立花食堂はテラス席から海を眺めることができることがわかりました。また、効率よく島を回ることができるように、観光資源の場所の位置関係、周る順番、滞在時間の目安、営業時間・定休日などを確認し、細かくスケジュールを組みました。
 当日、最初に向島の高見山展望台に向かいました。あいにく天気が悪く、遠くの景色を一望することはできませんでしたが、風がとても気持ちよく、向島の大きさや地形などを理解できました。また、展望台に行く途中に、「瀬戸のうたみち」と呼ばれる遊歩道があることがわかりました。道中には俳人・文人の詩歌が岩に刻まれており、楽しみながら展望台をめざすことができます。
 一方、立花食堂は海沿いの道にあり、サイクルラックが設置されていることで、サイクリストも気軽に立ち寄ることができる場所でした。私たちが訪れた時はお客さまが多かったので、とても人気のある場所だと感じました。店内は広々としており、木のぬくもりを感じることのできる柔らかい雰囲気でした。食堂の横には、life: styleという雑貨店が隣接されており、広島を感じるレモンを浮かべた足湯もあることがわかりました。
 実際に現地へ行くことで、事前調査ではわからなかった島の雰囲気や観光資源の状態など、今回のフィールドワークで得られたことがたくさんありました。事前調査で調べた観光資源をすべて回ることができましたが、発見できていない観光資源がたくさん存在すると思い、新たな観光資源を発掘することも重要なのではないかと考えました。そして、夏の本調査までに、しまなみ海道にあるすべての島を対象にするのは多すぎるので、島をいくつかに絞ろうと考えています。そして、気軽にしまなみ海道に行ったと言えるように、サイクリストのイメージを払拭し、地域に金を落としてもらうという目的を再確認し、ゼミ生全員で協力して頑張っていきたいと思います。

学びの多かったフィールドワーク
 国際観光学部3年 伊櫻七海

 5月20~21日、私たちはしまなみ海道で1泊2日のフィールドワークを行いました。今回の調査の目的は、サイクリスト以外の観光客も楽しむことができ、島に点在する各観光地を周っていただくにはどのようすればよいのかを考えることです。
 私たちはしまなみ海道の観光地としての課題を、島々に金が落ちないこと、サイクリスト向けのイメージが強すぎることと考え、ターゲットを自動車で移動する大学生にしました。そのため、フィールドワークの下準備では、大学生が行きそうな場所とそれらが開いている日時や移動時間などを入念に調べました。そして、効率よく島を見て回るために、タイムスケジュールの作成をしました。
 フィールドワーク1日目はあいにくの曇天でした。向島と岩子島を訪れた後、因島にある因島アメニティ公園としまなみビーチ、はっさく屋、因島水軍城、そしてHAKKOパークを訪れました。順に紹介します。
 因島アメニティ公園では、「ザウル君」という恐竜のオブジェがどっしりと構えていました。因島アメニティ公園としまなみビーチは隣接しており、夏は海水浴とプールを楽しめることがわかりました。次にはっさく屋に向かい、はっさく大福を堪能しました。はっさくの酸味とそれをつつむ白あんのバランスが丁度よく、今でもあの味を思い出せるくらい、とてもおいしかったです。因島に訪れた時は、ぜひ立ち寄ってほしい場所です。
 その次に因島水軍城を訪れました。ここには城まで急な坂道があり、登るのが大変でした。坂を登る時に杖が用意されていたことと、坂が急だったことは下調べの時にわからなかったので、新たな発見でした。また、水軍の資料や人形などが置かれていましたが、これも下調べの時にはわからなかった、新たな発見でした。そして、最後にHAKKOパークに行きました。ここは17時まで開いているのですが、私たちが着いたのが16時40分だったので、あまり調査ができず、少し悔しい思いをしました。犬やヤギ、鯉がいるほか、子ども向けの遊具があったので、全体的に家族向けに楽しめる印象でした。
 今後取り組むこととしては、今回訪れた島の中からスポットを絞り、もう一度現地調査を行って、新たな発見と細やかなプランが組むことができるだけの情報を集め、大学生向けのプランを練りたいと考えています。時間の関係で細かく調査できないことがあった点が今回の現地調査の反省点だと感じているので、次回のフィールドワークに活かしたいです。

大島の観光地を巡り見えてきた若者が来ない現状と今後の取り組み
 国際観光学部3年 平山ひな

 5月20~21日、自分たちで調査対象地を決定し、その地域の問題解決をめざす1回目のフィールドワークに行きました。私たちは広島県と愛媛県につなぐ「しまなみ海道」を調査対象地に決めました。
 この地域の問題は、サイクリストの多くがサイクリング自体を目的としており、島に金が落ちないということでした。そこで、私たち同世代の観光客やサイクリスト以外の観光客、自動車でしまなみ海道を訪れる観光客に金を落としてもらうため、まずはどのような観光資源があるのかを見つけると同時に、インターネットで調べきれなかった観光資源を見つけたり、島の雰囲気を感じたりすることを目的に、1泊2日で下見へ行きました。現地に到着後、下調べしていた場所や施設を周ることに加え、移動中に気になる場所があれば停まって調査するという計画を立てました。
 まずは吉海町にある「道の駅よしうみいきいき館」に行きました。ここでは来島海峡大橋を眺望しながら、新鮮な魚介を味わえる海鮮料理や七輪バーベキューが楽しめます。また、町内で採れた野菜や鮮魚、特産品、土産物も販売していました。私たちは昼頃に着いたので、七輪バーベキューをしました。ハマグリや魚、肉などが並べられており、自分が食べたい食材を好きなだけ取ることができ、幅広い年代に楽しんでもらえるのではないかと感じました。その中でも、私は鯛の刺身に感動しました。目の前で鯛を捌いていただき、町のことや海鮮の美味しい食べ方なども教えていただきました。ここで私が感じたことは、年配の方が多く、若者がいないことでした。私たちと同年代の観光客はどこにもいませんでした。私たちと同年代の観光客があまり来ることがないということで、漁師さんが鯛の刺身をサービスしてくださいました。私は今回のフィールドワークを必ず良いものにしようと思いました。
 その後、道の駅から出発する来島海峡急流観潮船に乗りました。料金は1人1,500円で、約50分のコースです。ガイドスタッフによる案内とテープガイダンスの2つで、下田水港、武志島、中渡島、馬島、小島、来島、波止浜湾、下田水港を順に周りました。出発する前は半袖でも暑いくらいでしたが、「無料貸し出しのジャケットを持っていってください」と言われ、その時は「こんなに暑いのに」と思いながら持ち込みましたが、持っていって大正解でした。緩やかに周る場所もありましたが、次のポイントまでの間、船はものすごいスピードで走り、ジャケットを着てもとても寒かったです。来島海峡の干満差で起きる急流を遊覧船で体験し、川のように潮流が渦を巻いていました。また、海事都市・今治の象徴である造船所群を湾内から見学でき、見たことがないくらい大きな船を目の前に、驚きと興奮が止まりませんでした。さらに、明治時代に建てられた芸予要塞の砲台跡が残る小島も見ることができ、同時にガイダンスが流れるのでわかりやすく、歴史ファンを魅了する見どころ満載の体験型クルーズでした。
 1回目のフィールドワークを終えて振り返ってみると、楽しめる場所がないから観光客も来ず、金が落ちないと思っていましたが、私自身はとても楽しむことができました。特に、クルーズ船はぜひ訪れてほしい観光スポットです。遊覧船に乗った時、私たちの他に年配の方と20代のカップルが乗っていました。カップルに話しかけたところ、お二人は広島県福山市から来られていて、きれいな景色と美味しいご飯を食べにしまなみ海道に来たとおっしゃっていました。私は今回初めてしまなみ海道を訪れましたが、自然が溢れ、都会では見られないような景色を見ることができたほか、とても新鮮な食材もありました。これらを伝えることができればと、お二人からヒントをいただきました。それぞれの島は自動車で数分あれば渡ることができ、知らないだけで伝えることができれば、私たちが問題としていたことも解決でき、さらに多くの観光客にしまなみ海道の良さを知っていただけるのではないかと考えました。
 今後のゼミでは、それぞれ島の魅力を整理し、必要に応じて対象とする島を絞り、さらに調査を行うことで、しまなみ海道を旅行する際に楽しめるポイントを組み込んだ旅行プランができれば良いと考えています。

伯方島の観光スポットとPRの工夫の必要性
 国際観光学部3年 林みつば

 私たちは、しまなみ街道をサイクリスト以外の方々にも楽しんでいただきたいという目的から、向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島の新たな観光スポットや、どのような魅力的なスポットがあるのかを調査しました。
 まず、下調べの際に各島のすでにある観光スポットを探しました。探してみると、観光スポットが集中していることに気づき、すでにある観光スポットの現状を調査するとともに、あまり情報収集できなかったエリアに行き、発掘することに決めました。
 私が担当した伯方島は、下調べの時点ではほとんど見つけられず、すでにある観光スポットは1つしかありませんでした。そこは「ドルフィンファームしまなみ」というイルカと触れ合うことができる施設で、見学のみだと500円で、実際に触れるにはプラス5,000円かかることがわかりました。施設自体が寂しい雰囲気を漂わせていたため、魅力的に感じられず、今回は外から眺めるだけにしました。イルカに触れるという経験は滅多にできないし、貴重であるにもかかわらず、十分にPRしていない印象を受け、もったいないと感じました。ドルフィンファームの近くにはオートキャンプがあり、BBQはもちろん、グランピングもできることがわかりました。そこではイルカ見学込みの素泊まりプランで、大人1人12,000円、BBQを付けると2人分で4,500円でした。最高の景色とBBQで少し贅沢な自分たちだけの時間を過ごすことができる施設であることがわかりました。
 ドルフィンファームしまなみのすぐ隣りに「道の駅伯方SCパーク」がありました。そこでは鯛ラーメンや伯方の塩ソフト、瀬戸内レモン使用のレモンソフトなどが販売されており、私たちは2つのソフトクリームを食べました。塩ソフトはソフトクリームの優しい牛乳にちょうど合う塩味がアクセントになっていて、とても美味しかったです。もう1つのレモンソフトは、酸っぱすぎず、後味さっぱりの爽やかな口当たりで、こちらも美味しかったです。どちらのソフトクリームも他では食べることのできない特別感があり、伯方島を訪れたら絶対に食べて欲しいと感じました。
 道の駅の前には伯方ビーチがありました。浜辺の近くは綺麗に舗装されていて、傍にはたくさんのヤシの木が並んでいました。海も綺麗で雰囲気がとても良く、道の駅でソフトクリームを買って浜辺で食べたり、写真を撮ったりするなど、SNS映えスポットとしても良いと思いました。
 時間の都合上、伯方ビーチの周辺しか調査できなかったですが、ゆったりとした時間を過ごせて、とても良い場所だと感じました。次回のフィールドワークでは、ビーチ周辺以外のところも調査したいと思います。