講演の背景

 阪南大学は、教育内容の充実・発展を図ることを目的として、奈良県立法隆寺国際高等学校(小橋康之校長)と高大連携協定を締結しています。
 法隆寺国際高等学校では、「総合的な探究の時間」を3年間通して実施する学校独自のカリキュラムとして「創生」を編成し、2年生は12月の創生発表会で発表することを目指した探究活動に取り組まれています。私は4月30日の講演「【高大連携】奈良県立法隆寺国際高等学校 2年生講演(探究活動へのご案内)|祐岡 武志|阪南大学」に続き、11月17日に事前指導を12月8日に全体発表会を実施しました。

11月17日(月)事前指導

 6限目(50分)に、歴史文化科の1組を除く2組から8組の代表班7つの発表にコメントをすることとなり、事前に以下の内容をお伝えしました。

1.1つの班の発表とコメントが7分しかないので、発表の生徒と教員は私のコメントをメモする準備をして発表に臨んでください。

2.メモは、次の2点で取ることを事前に各クラスにお伝えください。
 ・発表時に生徒と教員が気づいた改善したい点
 ・次の祐岡の①~③のコメント

3.私のコメントは、次の観点(①~③)で行います。
 ①自分(現代の課題)との関連で探究課題を設定し、
 ②データ(本・人・旅)などの根拠に基づく内容で、
 ③自分(高校生)なりの論理に基づいて解決策(最適解)を提案しようとしている。
※これらの観点は4月30日の講演でお示しした「探究の方法」に基づくものです。
※スライドの不備など、各論のコメントは時間的に難しいと思います。発表時に生徒と教員が気づいた改善したい点と、私の①~③の総論に基づいて、改善していただければと考えています。

 7つの代表班の発表スライドを事前に送っていただき、当日までに上記①~③の観点をA~Cの3段階で評価をしておきました。当日にスライドを変更している班もありましたが、事前の評価を基に7つの班に口頭でコメントをしました。代表班のテーマは以下の通りです。

 2組「スマホと睡眠時間について」
 3組「法国生の登下校中の危険をなくすためにはどうすればよいか」
 4組「法国生の登下校中の危険をなくすためにはどうすれば良いか」
 5組「家庭や学校のゴミの削減について」
 6組「海外にルーツを持つ人について~過ごしやすい学校にするためには~」
 7組「現代の若者と自己肯定感の低さ」
 8組「新入生に、英語科をどう魅力的に伝えるか」

 その結果を整理すると以下のようになり、①の課題設定ではA評価が多いことに対し、③の解決策の提案は全ての班がC評価で課題があることが分かります。
 ①A3班、B2班、C2班
 ②A1班、B4班、C2班
 ③A0班、B0班、C7班
 7つの班の①~③の評価とコメントは、発表終了後に文書化して担当の先生にお渡しし、12月の発表会に向けて準備をしていただくようにお願いしました。

12月8日(月)全体発表会

 1~3限目(概ね3時間)に1つの班について発表8分コメント7分程度で、7つの班の発表が行われました。前日までに送られたスライドは11月と変化がないため、私が事前のコメントを準備することができませんでした。しかし、発表では前回の私のコメントを参考に、全ての班で内容が改善されていました。特に、②のデータ(根拠)を見直した班が多く、③の提案については、ほぼ全ての班で行われていました。
発表後の講評では、発表者を含む全ての生徒さんに向けて、次のようにコメントしました。

発表は終わってからの振り返りがとても大事な時間になります。
まず、発表した皆さんは、「上手くいかなかったこと」や「もっとできたと思うこと」を考えてください。
発表を見ていた皆さんは、「自分ならどう発表したか」を考えてください。
自分で自分の発表を振り返り、自分で改善点を見つけることができるかが、探究の授業の目的の1つです。
発表をして満足したり、安心したりして終わっているなら、もったいないです。
1つでも良いので「自分ならこうする」「次はこうする」という点を手元のプリントに書いてください。

 これにより、代表者による発表を生徒の皆さんが自分事とすることを目指しました。その上で、①から③の観点に基づき、各班の例を挙げながら講評をしました。また、この探究の学びが大学での学びにつながることと、先生方には探究の支援のあり方についても助言をしました。
 この全体発表会に関するアンケート結果は以下の「20260212_2025_法隆寺国際_創生の時間結果報告」からご覧ください。
 アンケートでは、私が4月に説明した「探究の方法」で、「メモの取り方」(他者の考え方を自分事にする)を選択した生徒が最も多く、次いで「数字・ファクト・ロジックで考える」と「タテとヨコで考える」が多く選択されていました。中でも「数字・ファクト・ロジックで考える」や「メモの取り方」が役に立ったと回答されていることが注目されます。特に、課題設定に基づく提案ができたことでは「ある程度できた(「十分できた」を含む)」が90%を超えており、事前指導を踏まえた改善ができていることが分かります。
 先生方へのアンケートでは、「数字・ファクト・ロジック」を重視した指導がされていることがうかがえ、思考のプロセスでも「ある程度検証できた」が100%で、探究活動に一定の手ごたえを感じておられることが分かります。
 自由記述では、生徒の皆さんだけでなく先生方からも感想や質問をいただきました。以下に、一部を抜粋してコメントします。

<生徒>
・もう少し他の人からの意見も取り入れるべきだなと思いました。
 ⇒これは「本・人・旅」の「人」から情報(根拠)を得ることになりますね。

・問題・解決策の論理展開をもう少し詳しくするべきだった。
 ⇒良い気づきです。根拠に基づいて解決策を提示することは論理的説明になります。

・なにか提案するときにきちんと根拠を用意しておこうと思います
 ⇒そうですね。探究は、「なぜそう考えたのか」の理由(根拠)を探すことです。

・ポスターをもっと明確に記載した内容にしたら事後アンケートの結果も変わっていたかなと思った。
 ⇒これはアンケートの対象となるポスターの内容を充実させることですね。良い気づきだと思います。

・発表するだけでなく、自分の伝えたいことの表現も大事だと思った。
 ⇒何のために発表するのか、それは自分に伝えたいことがあるからです。発表が目的ではありません。

・もっと課題を抽象的にして、そこから疑問を広げていき、どんどん具体的な課題、そして問題解決の方法を考えれば良かったかなと、思います。
 ⇒抽象的な課題(テーマ)から新たな疑問(問い)を導きだして、その具体的な解決策を考えることが探究です。何度も探究のプロセスを経ることで、探究が深まることに気づいていることが良いです。

<教員>
・今年は、活動を開始してから、祐岡先生の説明を聞かせもらうことになった。まず、探究学習について良く聞いて、始めて行くべきだと思った。
 ⇒教員向けの事前指導は昨年は4月当初にしていますが、今年はできなかったことが残念です。

・祐岡先生が、最初の問題設定が大切だとおっしゃいましたが、生徒たちの後の活動を見て、そのことを痛感しました。解決できない問題や答えが簡単に出てしまって意味のない課題設定だと、指導者がよく考えるべきだと反省しました。
 ⇒最初に完成された課題(問い)を設定させようとせず、探究を進める中で修正して良いです。

・今回は手探りでの指導だったため、班決めやテーマ決めの1時間目の入り方に改善点があると感じていました。今回を通して1年間の流れもわかったため、次回はテーマ決めから自クラスで行っていきたいと思いました。
 ⇒1時間目の班決めやテーマ決めは注意が必要ですね。特に班編成は後で変更が難しいですから、生徒の様子をつかんでおく必要があります。私は事前に個人で興味があるテーマを発表させています。

・校内アンケートに答えてもらう人数をもっと多くしたらよかった。データの読み取りをもっと多角的に行えるように訓練したい。
 ⇒アンケートの質の向上は、アンケートからどんなデータを得たいかに基づいてよく検討する必要があります。必要なら、改善した新しいアンケートを実施すると良いです。

・7つのグループが活動を進めていくなかで、全体に目を配って指導して行くのは厳しいと感じました。教員1人が担当するグループ(人数)はどれくらいが適切だと思われますか。
 ⇒40人クラスなら8グループ程度が適切だと考えます。私は大学の授業ですが、グループは4名構成で、15グループを指導したことがあります。人数とグループ数によって、指導・支援できる内容も変える必要がありますが、1つのグループは4~5名が良いと考えています。多すぎると、役割を見つけられないメンバーが出る可能性が高いからです。

・探究活動の考え方は科目の授業でも取り入れて行っています。生徒の成長できる機会になるように励んでいきたいと思います。
 ⇒近年は「世界史探究」など、教科でも探究活動を行う科目が増えました。私の探究の方法や考え方は教科の探究活動にも取り入れることができると考えています。機会があれば、教科でどんな取り組みをされているか教えてください。

・一生懸命に取り組む生徒と誰かに依存してしまう生徒が出てきてしまう。グループの一員として何か貢献する自覚を促していきたい。また、発表後に自分が果たした役割を、しっかりと振り返る機会があればよかった。今後工夫したい。
 ⇒活動の「振り返りシート」で、一人一人の生徒に「自分が取り組んだ活動」をできるだけ具体的に書かせると良いと思います。Webサイトを調べただけでも、どんなサイトで何が参考になりそうかを記録させることで、その生徒の活動の成果とすることができます。

 この全体発表会を通して、生徒と教員の皆さんが様々な気づきを得たことが分かります。創生(探究活動)はこれで終わりではなく、これからも続いていくものです。今回の経験を今後の探究的な学びに活かしてもらえると嬉しいです。

 全体発表会で最も評価の高かった8組代表班は、「新入生に法隆寺国際高校の魅力をどう伝えるか」をテーマに、令和8(2026)年2月17日に行われた奈良県の「令和7年度「総合的な探究の時間・奈良TIME」学習指導研究会及び環境探究発表会」に学校代表として参加し、ポスターセッションで発表をしました。
 手書きのポスターは独自性が高く、自分たちの学校の課題を取り上げたテーマは自分事に直接関わることから、切実生が高い発表として注目されていました。なにより、自信を持って発表していることが良かったと思います。お疲れさまでした。