2014.12.16

観光実習の成果を学会で発表しました−観光実習I(国内)

観光実習の成果を学会で発表しました−観光実習I(国内)

離島における移住者の増加に向けた方策を発表しました

 今年度の観光実習I(国内)では、香川県小豆島と沖縄県小浜島でそれぞれフィールドワークを実施し、離島において移住者を増やすために、どのような方策が考えられるかについて検討してきました。そして、12月7日日)に大阪府立大学I-siteなんばで開催された、第29回日本観光研究学会全国大会学生ポスターセッションに参加し、「離島における移住者増加の可能性−香川県小豆島と沖縄県小浜島を事例に」という題目で、成果を発表しました。
 今回は成果をどのように取りまとめるかについて、ずいぶん長い間議論を重ねてきました。しかし、今年度の受講生は全員が4年生で、しかも何度も学会発表を経験していることもあり、いったん方向性がまとまると、手際よくポスターを作成していきました。卒業研究と同時に準備を進めていかなければならなかったので、大変だったと思いますが、自分たちの成果をうまく表現できた内容にまとまっていました。
 以下で、受講生がポスターの作成プロセスや学会発表で得た経験、今後の課題などについて報告します。(森重昌之)

当日の発表の様子

  • ポスター発表の様子

  • ポスター発表の様子

  • 発表者全員で記念撮影

※関連記事

参加した学生の報告

1年間の成果報告と新しい課題の発見
 国際観光学部4年 白野紘平

 12月7日、観光実習I(国内)の成果報告を行うために、大阪府立大学のI-siteなんばで開催された第29回日本観光研究学会全国大会(以下、学会大会)の学生ポスターセッションに参加しました。会場では、愛媛県や神奈川県など、さまざまな大学の教授や学生が研究発表を行っていました。
 私たちは、「離島における移住者増加の可能性−香川県小豆島と沖縄県小浜島を事例」というタイトルで発表を行いました。現在、離島では人口減少が進行しており、移住によって人口維持を図り、生活基盤の確保をめざす動きが高まっていますが、効果的な移住政策や条件が明らかになっていません。そこで、移住者が移住先を決める条件やニーズを明らかにし、離島における移住者増加の可能性を明らかにすることを目的としました。研究をするにあたり、行政と移住者両方の意見をうかがうことにしました。そこで、行政が積極的に移住政策を行っている香川県小豆島土庄町と、移住者の調査環境が整っている沖縄県小浜島へ聞き取り調査のため訪問しました。
 調査の結果、土庄町では主な移住政策として、役場が空き家物件の登録や情報提供契約まで、所有者と移住者の仲介役となる「空き家バンク制度」や、移住希望者を対象にした移住交流滞在施設「島暮らし体験の家」、移住者との交流や空き家バンク物件の見学、地場産品の見学・体験を1泊2日で体験できる「島暮らし体験ツアー」などを行っていました。これらの政策により、移住件数や移住者が増加し、土庄町の人口は減少傾向にありますが、緩やかになっています。また、自治会などが積極的に地域の祭りやイベントに移住者を誘うことで、移住者が地域に溶け込みやすい環境をつくっていました。一方、小浜島での調査結果からは、移住者の特徴として、「移住前に来訪経験があった人が多いこと」、「来訪中に地域住民との交流があったこと」、「集落内外で移住目的が違うこと」、「20、30代の移住者が多いこと」などがあげられました。
 これらの調査結果を踏まえて、小豆島と小浜島の共通項を3つあげました。まず、小豆島は空き家バンクや島暮らし体験ツアーの実施により、地域住民と同じような生活体験の機会があります。小浜島は、民宿での宿泊や援農などの地域住民との交流が生活体験の機会になっています。このことから「移住前に地域での生活に近い体験をすることで、移住後の生活をイメージしやすい」ということを指摘しました。2つ目に、小豆島ではお遍路文化から地域住民が移住者を受け入れやすい環境を持っています。小浜島では、もともとは外部からの来訪者に対して抵抗がありましたが、リゾート施設の進出によって移住者が増加し、地域住民との交流が生まれたことで、移住者に対するイメージが変化しました。このことから「地域住民と来訪者が交流を図ることで、移住者の受け入れがしやすくなる」ということがわかりました。最後に、小豆島はオリーブが地域資源として認知度が高く、「ビッグダディ」や映画のロケ地など、メディアの掲載による知名度が高くなっています。また小浜島も、リゾート施設の進出によってリゾート地としての認知度が高く、ドラマ「ちゅらさん」のロケ地など、メディアの露出がありました。このことから、「メディアの露出が比較的高いことが、観光地としての知名度を高め、足を運びやすい条件になった」ということがわかりました。これらの共通項を「移住生活のイメージのしやすさ」、「地域住民の来訪者に対する寛容さ」、「地域イメージ・知名度」とし、3つの共通項が移住先に選ばれる要因になることを明らかにしました。
 今回、ポスターセッションを行う中で、離島出身の方に意見を聞く機会がありました。その方も離島の過疎化について考えておられ、私たちの研究に対して耳を傾けてくださいました。「地域住民は、外部から来訪者や移住者が来ることに抵抗があります」というご意見もいただきました。行政の取り組みや移住者の動向などを調査していましたが、地域住民側の調査をできていなかったので、貴重なご意見をうかがうことができました。小浜島でも同じように島出身者しか参加できない祭事があり、移住者を必ずしも島民として受け入れているわけではなく、あくまで島民と移住者という関係も見られました。そのため、「島民と移住者の関係づくり」を新しい課題として見つけることができました。

地域の魅力創造へ
 国際観光学部4年 笹田真璃

 12月7日、大阪府立大学で開催された日本観光研究学会の学生ポスターセッションに参加しました。今回作成したポスターには、今まで観光実習の授業で行ってきた研究の成果をまとめたものです。それは、人口減少や過疎化が懸念される離島において、移住者増加についての課題を模索してきた調査の結果です。調査方法としては、移住者増加のための政策を行う行政の立場と、移住者の立場との両方を対象に、聞き取り調査を行いました。香川県小豆島では移住者政策に積極的であった土庄町役場で聞き取りを行い、沖縄県小浜島では移住者に対して聞き取りを行いました。双方の島は、日本の離島の中で移住者が比較的多い島です。これらの調査結果や共通点から、私たちは移住者増加の可能性として、以下の3つの点をあげました。それは、「来訪者が島での暮らしをイメージしやすいこと」、「地域住民が移住者受け入れに寛容なこと」、「認知度が高いこと」です。
 当日、会場では多くの学生がポスターセッションに参加しており、多くの人が行き来している中での発表になりました。私たちの発表内容に興味を持ち、話を聞きに来て下さる方もいて、移住者増加というテーマ自体の関心の高さがうかがえました。いただいた意見の中で、若い世代の移住者増加について考えた時に、若者の価値観が田舎暮らしに適していないのではないかと心配する声がありました。例えば、過疎化が進行する地域では仕事が限られており、数も少ないという現状があります。そうした環境で生活するためには、自分たちのしたい仕事を諦めて、生活を楽しむ生き方を選択する価値観が必要です。今の若い世代の人たちは、こうした価値観を持ち合わせていないのではないかということでした。確かに、過疎化が進行している背景として、こうした現状を無視することはできないと思います。私の周りでも、田舎に留まりたいと考えている友人は少なく、都会で仕事をしたいと考えている人の方が圧倒的に多いです。しかし、夏休みに小浜島を訪れた際、ダイビングなどのリゾート関係の仕事をされている20代と見られる若者を何人も見かけました。彼らはダイビングが好きで、それを自分の仕事に選び、そのために小浜島に住んでいるということでした。こうした仕事は小浜島だからこそ可能な仕事だといえます。このように、地域の特色を生かした仕事をしたいと考える若者は少なからず存在します。小豆島と小浜島での調査結果からも、20代や30代といった若い移住者は多いことがわかっています。
 地域にはさまざまな特色があり、田舎でしかできない仕事もあります。そうした仕事が生まれ、充実していくことは、まちづくりにおいて重要な点になると思います。特色を生かしたまちづくりを進めていくことで、やがて地域の魅力となって、人びとを引き寄せるのではないかと思います。

移住者増加のためには観光の役割が大事だとわかった
 国際観光学部4年 浦上絵梨香

 12月7日に大阪府立大学I-siteなんばで行われた日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。私たちは「離島における移住者増加の可能性−香川県小豆島と沖縄県小浜島を事例に—」について発表しました。
 人口減少が続いている離島は、移住者を増加することで人口や生活基盤を確保していますが、移住政策や移住条件についてはまだ詳しく研究されていません。そこで、私たちは移住者が移住先を決める条件やニーズについて調べ、離島での移住者増加の可能性を探ることにしました。
 まず、移住先を決めるニーズや条件について、行政と移住者の両方の意見を聞くことにしました。そこで、移住政策を積極的に行っている香川県小豆島で土庄町役場の皆さんに協力していただき、聞き取り調査を行いました。小豆島では、移住を考えている人向けの空き家の見学や、地場産品の体験などができる島暮らし体験ツアー、町内の空き家を有効活用して移住希望者に貸し出している空き家バンクなどの政策を行っています。土庄町役場での聞き取り調査からは、土庄町の人口は年々減少しているものの、移住政策によって減少が緩やかになっていること、移住者数は2007年度の14名から2013年度には183名と増加していることがわかりました。また、地元の自治会の方々が地域の祭りやイベントに移住者を積極的に誘うなど、移住者が地域にうまく溶け込めるように手助けをしていることもわかりました。
 次に実際に移住した人にお話を聞くために、聞き取り調査の環境が整っていた沖縄県小浜島で聞き取り調査を行いました。調査は3日間で19人(世帯)の方々に、出身地、年齢、職業、性別、家族構成などの基本情報と、移住歴、移住の動機、来訪経験などを聞きました。調査から、移住前に来訪経験があったこと(19人中11人)、来訪中に援農を体験し、地元住民と交流があったこと(11人中3人)、20〜30代の人が比較的多かったこと(19人中12人)という結果がわかりました。
 小豆島と小浜島の聞き取り調査から、空き家バンクや島暮らし体験ツアー、民宿での宿泊や援農で生活体験の機会を提供することで、移住前にその土地での生活に近い体験をすることで、移住後の生活をイメージしやすい環境にあること、小豆島にあったお遍路文化や小浜島へのリゾート施設の進出による移住者増加と地域住民の交流といった地域住民の来訪者に対する寛容さがあったこと、小豆島も小浜島も知名度が高く、メディアに取り上げられることで地域のイメージが高かったことがわかりました。
 私は3回目のポスターセッションでしたが、これまでは現地視察からどのような問題があって、どうすれば解決できるかを考えてきました。今回はこれまでと違って、自分で集めたデータを分析し、そこから何が読み取れるのかと考えることに苦労しました。ただ「来訪経験がある」、「仕事がきっかけで来た」というだけでなく、そういった人たちや住んでいる場所によって、どのような特徴があるのかということをデータから読み取ることが難しかったです。ポスターセッションでは、観光は移住に来る前の段階で訪れるので、移住者を増加させるためには重要な役割であること、どのように観光と移住者がかかわっていくかが大事だという意見をいただくことができました。運よく人通りの多い場所にポスターを設置できたというのもありますが、たくさんの人に興味を持っていただくことができました。

いろいろな発見ができたポスターセッション
 国際観光学部4年 関伽緒里

 私たちは、研究目的として、離島において移住者を増加させるにはどのような条件が必要なのかを課題に取り上げました。この研究のために、香川県小豆島土庄町、沖縄県小浜島に聞き取り調査を行いました。小豆島では特に、行政が移住者政策に力を入れており、主な移住者に向けての政策として空き家バンクや島暮らし体験を実施しています。一方、小浜島では移住者の情報を公民館で得られるということで、移住者に聞き取り調査を行いやすいと考え、調査対象にあげました。これらの聞き取り調査の結果を踏まえ、離島における移住者の増加の条件を検討しました。
 1つ目は、移住生活のイメージの提供です。小豆島では、空き家バンクや島暮らし体験を通して、地域住民と同じような生活を体験することができます。小浜島でも、民宿や宿泊施設が安い値段で利用できるという部分で長期滞在ができ、地域住民と同じような生活を体験できるという条件で、移住後の生活のイメージをしやすい環境が提供できていました。2つ目は、地域住民の地域外からの来訪者に対する寛容さです。小豆島には、もともとお遍路の文化があり、地域住民が移住者を受け入れやすい環境をつくり出しています。逆に小浜島は、もともと島民意識が高く、外部からの来訪者に対して寛容ではありませんでしたが、リゾート施設の進出によって観光客が増え、移住者が増加し、集落にも移住者が増えていったことで地域住民との交流が生まれ、地域住民の移住者に対するイメージも変わっていきました。最後に、地域のイメージと知名度です。小豆島はオリーブや最近では「ビッグダディ」など、小浜島はリゾート地としての認知度の高さとドラマ「ちゅらさん」の知名度があります。これら3つの条件が移住先に選ばれる要因になっていることを明らかにしました。離島でこれらの要素を備えることにより、そこを訪れた人びとに移住を意識させるきっかけを、移住を考えている人たちには移住先の選択肢を提供できると考えられます。
 学会ではたくさんの大学生、先生方が来られていました。先生方の発表は聞けませんでしたが、ポスターセッションではさまざまなテーマを取り上げられていました。私たちが研究した沖縄県を研究しているグループがあったので親近感も湧き、話を聞きたかったのですが、たまたま不在で聞けませんでした。また、私たちと同じ大学で海外実習の授業をとっていた学生の話を聞いたのですが、私たちが訪れた小浜島の気温より、彼女たちが訪れたモロッコの方がはるかに高く、小浜島で暑いと言っていたのを申し訳なく思いました。モロッコは街自体が迷路になっているようで、話を聞きながら訪れて見たいと感じました。そして、モロッコで愛用されている紋章を使ったお土産物やモロッコの民族衣装、楽器なども展示しており、聞き手が目で見て楽しめる方法を用いていた点はとても良かったと感じました。そして、もう1つ聞いたのが、玉川大学の4年生が研究していたSAやPAについての取り組みでした。最近はテーマパーク化が進み、温泉を完備しているSAやPAが多いそうです。全国のSA、PAのガイドブックなども出ており、ある意味で観光地になっているとのことでした。SAやPAと言うと、ただ休憩したり、ご飯を食べたり、お土産を買ったりする目的以外で訪れる人が少ないのが現状で、どのようにしてたくさんの人びとに認知してもらえるようにするかが課題であるそうです。今後認知度が高まっていくと、ロケ地巡りならぬ、SA、PA巡りが増えていくのではないかと感じ、自分が立ち寄った際にはそのような部分を意識して探してみようと思いました。
 今回初めての学会発表で、私たちのポスターセッションを聞きに来られた人にどのように説明すればわかりやすいか、試行錯誤しながら説明しました。いろいろな意見をいただき、自分では思いもしなかった疑問などを聞くことができ、勉強になりました。

違う視点の意見を学んだポスターセッション
 国際観光学部4年 坂本由貴

 今回、12月7日に大阪府立大学で行われた学生ポスターセッションに参加しました。発表した内容は、離島の人口維持に向けて、移住者が移住先を決める条件やニーズを明らかにするために、香川県小豆島と沖縄県小浜島で聞き取り調査を行い、離島における移住者増加の可能性を考え、発表しました。移住者政策を積極的に行っている小豆島と、政策を行っていないが移住者が多い小浜島の聞き取り調査の結果から、互いの共通点を3点考えました。
 1つ目は「移住生活のイメージの提供」です。小豆島では、空き家バンクや移住者体験ツアーを実施しており、1週間から3ヶ月という短期間で生活体験ができます。小浜島では1日3,000円から泊まれる民宿があり、祭りに参加することや地域住民と交流する場があることなどといった、生活体験ができました。このことから、生活体験をすることで、移住してからの生活イメージが湧きやすいのではないかと考えました。
 2つ目は「地域住民の地域外からの来訪者に対する寛容さ」です。小豆島では、自治会から移住者に向けて清掃活動や祭りなどに積極的に勧誘していることや、四国にはお遍路の文化があることから、来訪者に対する寛容さがあると考えました。一方、沖縄県もともとの民族文化から、なかなか移住者を受け入れない文化ですが、小浜島ではリゾート地があることから移住する人が多く、そこから地域住民と交流が生まれたことで、他の島に比べると寛容さがあると考えました。
 3つ目は「地域イメージ・知名度」です。小豆島では「ビックダディ」、小浜島では「ちゅらさん」と、どちらも生活に関する番組であり、知名度もあることから移住先にあげやすいのではないかと考えました。その3点を移住先に選ばれる要因として重点的に発表しました。
 今回、学会発表が初めてということもあり、来場者の方がポスターの前に立つたびに緊張しましたが、いろいろな方から意見をいただくことができました。例えば、「小豆島では役場での聞き取り調査だけなので、移住者にも聞き取り調査を行った方がより良い調査をできたのではないか」、「1つの地域を詳しく調べて見ても良かったのではないか」といった、調査をより詳しく行った方がよいという意見をいただきました。また、離島に住む来訪者から移住者が訪れた時に「やはりよそ者扱いをしてしまうことに対し、どのようにして向かい入れるべきなのか」という住民側の意見もいただき、移住者側の意見だけでなく、地域住民にも聞き取り調査を行うことで、移住に対する考え方をより詳しく発表できたのではないかと気づきました。
 今回の発表で、2つの地域ではなく、1つの地域を移住者側と地域住民側の両方の意見を取り上げ、より詳しく調査してみても良かったのではないかと思いました。また、他大学の学生のポスターセッションやたくさんの意見をいただき、貴重な体験することができて、とても勉強になりました。

今後の活動に向けて刺激を受けた学会参加
 国際観光学部4年 水野巧基

 2014年12月7日、第29回日本観光研究学会全国大会が大阪府立大学(I-siteなんば)にて開催されました。観光実習I(国内)の授業で、研究を進めた香川県小豆島、沖縄県小浜島を比較分析し、「離島における移住増加の可能性」について学生ポスターセッションにて発表しました。
 観光実習では、4月から離島の人口減少に歯止めをかけ、移住者を増やしていくための取り組みを考えることをテーマに取り組んできました。移住者誘致に向けた取り組みが行われている香川県小豆島について資料収集を行い、土庄町役場で聞き取り調査を実施しました。その後、移住者の移住理由や動機を調べるために、リゾート地でもあり移住者が多い沖縄県竹富町小浜島で5日間滞在し、移住者に聞き取り調査を行いました。その結果、移住者は政策などの支援などを重視し、移住地を決定しているわけではないことが明らかになりました。小浜島の移住者の半数以上は、移住以前に来訪経験がありました。旅行などの目的で訪れ、その中で援農を通じて地域住民と交流していました。また、私たちも民宿に宿泊しましたが、宿泊施設の雰囲気も温かく、施設の方との交流も盛んであり、小浜島は気軽に地域住民と交流することができるのではないかと感じました。移住者の多くは、移住動機に仕事、移住目的に自然環境と回答していました。調査実施前は、定年後の生活として移住を決める方が多いと考えていましたが、実際は20代から30代の時に移住した方が大半を占めていました。これらの調査から、離島における移住者の増加に向けて必要な要因を検討しました。その結果、3つの要因が必要ではないかと考えました。
 1つ目に、「移住生活のイメージの提供」があげられます。小豆島は空き家バンクや島暮らし体験ツアーの実施、小浜島は民宿での宿泊や援農などの実施により、地域住民と同じような生活体験の機会の提供ができていると考えられます。2つ目に「地域住民の地域外からの来訪者に対する寛容さ」があげられます。小豆島はお遍路の文化から、地域住民が地域外の来訪者や移住者を受け入れやすい環境をつくり出しています。また、移住者に古民家や空き家を提供するなど、行政も移住者の生活環境をより良くするためのサポートを行っています。小浜島は小豆島とは対称的で、地域外住民の外部からの来訪者に対する抵抗感がありましたが、リゾート施設の進出によって移住者が増加し、集落にも移住者が定住したことで、地域住民と移住者に交流が生まれ、地域住民の移住者のイメージが変化しました。その後、いくつかの伝統的行事にも移住者が参加できるようになり、両者の交流機会が増加したことで、地域住民の外部からの来訪者に対しての対応が寛容的になったと考えられます。最後に、「地域イメージ・知名度」があげられます。両島ともメディアに取り上げられることが多く、その中でも島民を題材としたドキュメンタリーやドラマの放送により、外部にも島内の生活環境が伝わり、その土地での生活についてのイメージができるのではないかと考えます。また、観光地としても知名度が高く観光客が多いことから足を運びやすい環境にあると考えられます。今回の調査を経て、これらの要因が移住者誘致に向けて必要になってくるのでないかと考えました。つまり、移住者は移住後の生活を重要視しており、仕事や生活環境などを事前に体験することで移住を決意すると感じました。
 私は、1回生の時から日本観光研究学会の学生ポスター発表に参加し、今回の発表で4度目となりました。4年間を通して参加したことで、観光学について以前より深く学ぶことができ、観光学についてより関心をもつことができました。卒業後も研究を続けていきたいと考えています。最後に、調査にご協力いただいた小豆島と小浜島のみなさんにお礼申し上げます。