地域通貨による地域活性化の仕組み-観光経済学

国際観光学部教授 清水苗穂子

 予想もしなかったこのコロナウィルスのパンデミックで、世界中が混乱に陥りました。「命を優先させるべきだが、経済を見捨てることもできない」と、各国、各地域で難しい選択を迫られています。このような中、閉店を余儀なくされた個人商店や、倒産してしまった企業のニュースを聞くと、いたたまれない気持ちになります。
 地域経済や地域社会に何か少しでも貢献できるような仕組みはないのだろうかということで、今回みなさんに地域貢献を目的とした「地域通貨」を紹介したいと思います。
「地域通貨」は普段私たちが使っているどこでも流通しているお金(法定通貨)と違い、限られた地域やメンバーの中でしか使えないお金です。しかもこのお金は利子がつきませんので、長期で持っていても得にはならず自ずと使おうとします。では、どのようにしてこの「地域通貨」を手に入れることができ、また、どこで使えるのでしょう。「地域通貨」を発行して、地域活性化につなげている地域の事例をひとつ紹介したいと思います。
 「アトム通貨」は、早稲田・高田馬場で、地域コミュニティの育成、まちの活性化を目的とした地域通貨です。地域の「環境」「地域」「国際」「教育」に貢献するイベントやプロジェクトに参加することで「アトム通貨」をもらえ、主に地域内の加盟店で使用できます。人と人の関わりから生まれる「ありがとうの気持ち」を伝えるThanks Moneyで、お金を出しても買えない、「いいこと」をした人に配布される「地域通貨」です。
 また近年では「デジタル地域通貨」も利用されています。飛騨信用組合が発行する高山市、飛騨市、白川村の地域限定「さるぼぼコイン」は、スマホにチャージをすれば1%のプレミアムポイントのおまけが付き、地域内の加盟店約1300店舗で使用できます。有効期限は1年間です。
 「地域通貨」の入手方法はボランティアをしたり、購入できたりと地域によってさまざまですが、有効期限内に地域の店舗で使うことによって、地域内でお金や人々の交流が循環していく仕組みです。
(参考ホームページ)

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