関西国際関係合同ゼミナールに参加

 2017年7月1日に阪南大学南キャンパスで「第10回関西国際関係合同ゼミナール」が開催され、国際観光学部の段家誠先生が指導されるゼミ生たちが参加しました。京都女子大学・同志社大学・関西大学・神戸大学・立命館大学・名古屋市立大学などのゼミが次々と研究成果を発表したのち、最後に段ゼミが堂々とトリを務めました。段先生のご専門は国際関係や国際政治。授業では「国際協力論」や「国際平和論」を担当されています。国際観光学部のグローバルな面を担う先生であることは学生たちも知っていますが、先生ご自身のことを知る学生はどれほどいるでしょうか。今回は先生にお願いをして、公私にわたる色々なお話しを聞かせていただきました。ぜひこの記事を読み、段先生のことを深く知っていただければ幸いです。(春本莉花)

※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

ゼミ生たちが大きく成長する機会

春本:さっそくですが、関西国際関係合同ゼミナールのことをお聞かせ下さい。
:主に関西圏の大学で国際関係を研究しているゼミ生たちがそれぞれの研究成果を発表し合う会です。毎年開かれていて、2017年度は10周年の記念大会となりました。
春本:それが私たちの南キャンパスで行なわれたのですね。光栄なことです。段先生のゼミ生たちは何について発表したのですか。
:今年の学生たちは「ミャンマーの民主化-NLD政権前と政権後を比較して」というテーマで発表しました。詳しくは、段研究室のサイトをご覧ください(以下のURLに掲載)。
春本:関西国際関係合同ゼミナールに学生を参加させる意義は?
:ゼミに入って約3年間のなかで、学生が一番頑張る機会です。およそ3カ月にわたり、調査・研究・プレゼンテーションスキルなどを極めるために頑張ります。多くの聴衆が見る中での発表ですので、学生にとっては、大きく成長できる機会となります。
春本:合同ゼミナールでの成果は、その後のゼミ活動に活かされるのでしょうね。
:はい、ここでゼミ生たちは調べ方や発表の仕方を学びますので、それから後は各人の研究テーマや課題を見つけて取り組んで欲しい。そう願っています。ゼミの時間には、個人の研究成果を発表し、ゼミ生同士、お互いにさらに学問を研鑽し合ってほしいですね。
春本:特に今年について言えば?
:開催校の学生として、彼らは大会の運営も担ったので、いい経験になったことでしょう。

いい経験ができた学外の活動

春本:それでは、段先生ご自身のことをお尋ねします。先生が国際情勢や政治などに興味を持たれたのはいつですか。
:国際都市の横浜で生まれ育ちましたので、たえず世界のこと、とりわけ中国・台湾・日本を比べながら見てきました。そのため、だいたい6歳か7歳くらいの年ごろから日中関係などの国際情勢や政治・社会に関心がありましたね。
春本:それは早い!小学生のころの夢は?
:そうですね、小1や小2のころは、刑事や工学博士なんかに憧れていたと思います。
春本:ずいぶん幅広い。その後は?
:美術が好きだったので、中学生のときは芸術の道に進みたいと思っていました。
春本:美術がお好きとは。まったく知らなかったです。高校生のときは?
:高校時代は、外交官や国連の職員になりたいと思っていましたね。
春本:では、そのころから国際関係を本格的に勉強されたということですか。
:いいえ、本格的に始めたのは大学生になってからです。
春本:大学ではどういう学び方を?
:本を読むことや授業で学ぶことはもちろんですが、NGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)にボランティアとして参加したり、講演会やいろんなシンポジウムに足を運んだりしました。
春本:学外で何か得るものはありましたか。
:もちろん。いろいろな活動に参加することによって、さまざまな人と出会い、そして大学の講義や専門書で取り上げられるより前に、途上国の最新事情やその国や社会が抱える問題を知ることができました。高校時代の受験勉強や大学での講義と比べて、それらがとても新鮮に感じられました。
春本:さまざまな人との出会いや経験が、今の先生につながっているのですね。
:はい。大学でNGOの存在や日本のODA(政府開発援助)の問題を知り、環境保護の重要性や国際援助の在り方などについての意識が高まりました。
春本:そうなのですね。
:座学での勉強ばかりしていた時には、わからなかったことを、たくさん学びました。
春本:先生の勉学に対する姿勢はご両親の影響ですか?
:勉強しないと、実家の店を継がされると中高生の頃はよく言われましたので、必死に勉強しましたよ。(笑)
春本:それらが大学での学びにつながり、大学院で博士号を取得され、阪南大学で教鞭をとることになったのですね。

観光に多大な影響を与える国際関係

:大学の教員になってからも、調査や研究で世界各地を巡りました。
春本:例えば、どんなところへ?
:遠いところだと、南米ブラジルのアマゾン川流域。その上流にあるロンドニア州まで。アフリカ大陸では、南アフリカに囲まれたレソト王国まで。他にも、アメリカ合衆国やミャンマー・カンボジア・中国・台湾・アルバニア・インド・ネパール・バングラデシュ・フィリピンなど、だいたい19カ国くらいは行ったかな。
春本:興味深いところばかりですね。現地へ直接行くことは、大事なのですか。
:日本と違った世界を、肌で感じることが大切です。
春本:やはり。ところで、大学の海外研究制度で台湾に1年間滞在されたとのことですが、台湾のどちらに?
:2010年度に台南市にある国立成功大学で研究しました。
春本:なぜ台湾を選ばれたのですか。
:歴史的な経緯や政治的な事情があって、台湾の国際的な地位は、いまだはっきりとしていません。「一つの中国」という建前では、中国の一部とみなされ、一方、独立した国家であると唱える向きもあります。
春本:複雑なのですね。
:台湾と関わりの深い中国でも、近年、人権や民主主義の問題が表面化しています。一方で、中国の政治や経済等の影響を受けながらも、台湾は民主国家であり続けようとしています。総統の直接選挙があり、思想信条の自由、言論や報道の自由があるのです。また、NGOなどによって市民社会が活発に機能しています。そんな台湾には、日本が失ったものがあるのでは、と思い、台湾に行くことにしました。
春本:腑に落ちました。1年間行かれて、どうでしたか?
:国際社会における「台湾のよさ」が見えてきました。詳しくは「国際協力論」や「国際観光開発論」(新カリキュラムでは「観光開発論」)、「民間協力(NGO/NPO)論」などの授業で取り上げますので、ご期待ください。
春本:観光の授業が多い国際観光学部のなかで、国際関係や国際政治を教えておられる意義は?
:観光も国際関係や政治と密接に関係があります。だから、世界で起こっている政治・経済・社会問題を知ってほしい。平和な日本からは見えないところで、さまざまなことが起こっているのです。それらのなかには、やがては私たちの日常生活や観光の分野に影響を与える出来事があります。アメリカの同時多発テロ事件、日中関係や米朝関係の悪化などは、その例です。
春本:確かにそうですね。先生のお話を伺っていると、知らないことが多すぎることに気づきます。
:できれば、わかったことを皆で話し合い、発信し、問題の解決へとつなげてほしい。将来的には、学問を通じて、学生が自分のテーマや生き方を見つけ、考えてほしい。その学問の一つが国際関係なのです。
春本:国際関係を学ぶコツを。
:日ごろから新聞やニュースを見ることですね。
春本:はい、承知しました。貴重なお話、ありがとうございました。

インタビュー後記

 国際観光学部と聞けば、観光の言葉に気が行って、観光—旅行—楽しいとつながりますが、華やかな観光の裏にシリアスな現実があることを、段先生のお話で感じました。世界の負の側面と正の側面は切っても切り離せないことも教えていただきました。国際関係や国際政治と聞けば、複雑で、漠然としていて、難しいと感じますが、学べば学ぶほど、大切な知識が得られます。世界を見つめることは、自分自身を広げることにもつながり、これまでの価値観を変えることになるかも。段先生への取材を通じて、世界を学ぶことの大切さを再認識しました。私にとっても有意義なインタビューでした。皆さんもぜひ、段先生のお話しを聴きに行って下さい。(春本莉花)