文:炭家清花  撮影:服部美雪
 
 今回は阪南大学経営情報学部の田上教授(学長)の著書から「ITの英語」(NOVA出版)「デジタルサウンド・プロセシング」(二瓶社)の二冊についてインタビューさせていただきました。田上先生の著書の紹介は前回に続き二回目です。
——:最初に「ITの英語」についてお伺いします。
   この本を書くに至った経緯を教えてください。
田上:実は依頼執筆なんです。英会話の「NOVA」から電話がかかってきて、IT関連の英単語についての本を書いて欲しいと依頼が来ました。当時はITというものが日本に浸透し始めたところでした。当時の総理大臣がITのことを“イット”と読んだ時代です。そのような時代に、ビジネスマンが海外との取引をしているとき、英会話でIT関連の英単語を出されると何のことかわからないわけですよ。
——:つまりビジネスマン向けの英会話本だったから「IT用語集」ではなく「ITの英語」にしたんですね?
田上:そうです。専門家からすると「ITの用語集」の方がいいと思うのだけれど、ビジネス英会話の中に出てくるようなものを取り上げてほしいということでした。
——:依頼のきっかけは何かあったのですか?
田上:それがないんですよ。ある日いきなり電話がかかってきてすごく驚きました。以前に「IT入門」という本を出版していたのでそれを見て依頼が来たのかな?と思います。もう一つ考えられる理由としては、学生時代ECC予備校で英語講師をしていたことがあるのでひょっとしたらその繋がりからかもしれないです。
——:学生時代から英語は得意でしたか?
田上:得意というより好きでした。
——:ITを勉強する時、カタカナ語ではなく英語として学ぶ意義を教えてください。
田上:会話のためには英語で学ぶべきだと思います。
——:この本を書くにあたって意識したことを教えてください。
田上:まず、辞書と同じような形になることを意識しました。英会話の中で分からない単語があればすぐに引けるようにしています。そして、気軽に読んでもらえることも意識したので、専門的なことは避けています。一般的に知られていない話や興味を持てるような話を挟むような構成にして、少し読み物的に書いています。さらに英語独特の癖に気づいてもらえるようにしました。すべて英会話ベースで考えています。
——:苦労したことは何ですか?
田上:ITの世界は日進月歩なので新しい言葉がどんどん出てくることです。執筆期間は約三か月でしたが、その間に本に取り上げた単語の0.5倍ぐらいの新しい単語がでてきていました。そうして出てきた単語を載せていると、今度は載せた単語に使われなくなったものも出てきたりで、ぎりぎりまで校正をかけていました。
——:この本を書いてよかったことは何ですか?
田上:読者の方から感謝の手紙をいただいたことです。我々教員が書いた本は専門書が多く、普通一般の人に出回ることはほとんどないので、こうした手紙をいただいたのはこの本だけ。すごく嬉しかったです。
——:次に「デジタルサウンド・プロセシング」についてお伺いします。
   この本を書くに至った経緯を教えてください。
田上:当時、コンピュータで音楽を作るためには音楽的な知識を持っていないとできないと思われていました。しかし、実は音楽的な知識がなくてもできちゃうんですよ。なので、コンピュータで音楽を作るのはどういうことなのか、音をデジタル処理するとはどういうことなのか世の中に説明したかったのです。
——:デジタルサウンド・プロセッシングとはどういうものですか?
田上:音を数字で表すことです。CDや配信されている音楽、TVの音楽も0と1の数字でできています。デジタルを使って音楽をプロセスするというのがデジタルサウンド・プロセッシングです。
——:デジタルサウンド・プロセッシングに興味を持ったきっかけをおしえてください。
田上:学生時代にバンド活動をしている際に、海外のバンドがアナログのシンセサイザーを使いだしたんです。それを聴いて自分たちも使いたい!と興味を持っていたところに、実家の近くのRolandという会社がシンセサイザーを作っていると聞いたんです。そこで、見学に行かせてもらいました。その時ちょうど作っていたのが国産初の「SH-1000」というモデルでした。そのアナログシンセサイザーの仕組みに興味を持ったことがデジタルサウンドの道に行くきっかけでした。
  次にこのシンセサイザーに対して複数社で共通のデジタル規格を作ろうとする動きがありました。ちょうどその時期に、私がRoland主催のシンセサイザーミュージックのコンテストでアマチュア部門グランプリをとりました(前回記事参照)。その時Rolandが入賞者から現場の意見をということで、「MIDI」に対する意見を聞かれました。

ライター注:MIDIとはMusical Instrument Digital Interfaceの頭文字を組み合わせた言葉で、電子楽器やコンピュータ等のメーカーや機種に関わらず音楽の演奏情報を効率良く伝達するための統一規格です。(出典:一般社団法人音楽電子事業協会HPより)

田上:デジタル化するということで自分が今までやってきたコンピュータの知識と音楽の話がつながりました。そこからコンピュータで音楽をするとはどういうことかというテーマが自分の中で出てきて、今私のゼミでしているプロジェクションマッピングにつながっています。
——:大学でバンド活動をしていたということでしたがそれまでに音楽を習った経験はありましたか?
田上:小学生の時に姉がピアノをしていた影響でピアノを習っていました。三ヶ月だけでしたけど(笑)。そこからは趣味でピアノやギターを弾いていました。
——:この本の狙いを教えてください。
田上:私は絵を描くように音楽をつくれる時代が来ると信じています。デジタルを使って絵を書くことと同じような難易度で音楽を作曲し演奏できるということを皆さんに知らせたいということが狙いです。当時デジタルサウンド・プロセッシングをトータルとで解説している本がありませんでしたから、デジタルサウンド・プロセッシングの全容を書こうと思いました。
——:この本を書くにあたって意識したことを教えてください。
田上:誰にでもわかりやすく楽しい本を意識はしたんです。しかし、結果としてかなり難しい内容になってしまいました。
——:この本を書くにあたって難しかったことは何ですか?
田上:ソフトウェアやハードウェアによっていろんなやり方があるので共通する部分を取り上げて汎用的に使えるような内容に落とし込むのが難しかったです。
——:この本を書いてよかったことは何ですか?
田上:たまに他の学校の授業に使われたと聞く時です。結構大学図書館や市民図書館に入っているみたいです。
——:この本の著者履歴を見ると田上先生は過去にアルバムをリリースしたと記載されているのですが、アルバム収録曲は先生が作曲をしたのですか?
田上:作曲と演奏をしました。半分はアナログで半分はデジタルで作った曲です。アナログの曲はアナログシーケンサーを使ってシンセサイザーを鳴らしています。デジタルの方はコンピュータの音源を鳴らしていました。全部で10曲(組曲は5曲で1タイトル)収録されていてLP版で出ていました。
——:どんなジャンルの曲ですか?
田上:いろいろ寄せ集めです(笑)。クラシックぽい曲やポップス調の曲もあります。イージーリスニングに近いかもしれません。歌はへたくそなので入れるなと言われたので(笑)。全部インストゥルメンタルです。コンクールで入選した曲も収録されています。
——:プロジェクションマッピングの音楽はどうやって作曲しているのですか?
田上:コンピュータです。音符を打ち込んで作曲するのですが、最近ではAIが曲を作る技術が発達してきて、私たちの好みをくみ取って1曲作るという技術が出てきました。そうしたAIの技術を使った作曲もしています。学生が作曲担当もするのですが、プロ並みの子もいるんですよ。

——:音楽の経験が著作やその後の人生に活かされたことはありますか?
田上:めちゃくちゃ活かされています!経営学がもともとの専攻で学んでいたのですがその後、情報学に興味を持ち二刀流していました。阪南大学に勤めるきっかけになったのはその二つに加えてデジタルサウンド・プロセッシングをしていたという経歴からなんです。当時、マルチメディアというのはマイナーな分野でした。マイナーな分野なので研究者が少ない中、経営学もして情報学もしているということで阪南大学の採用試験を受けることを勧められたのです。そこから今のプロジェクションマッピングにつながるので私の中で非常に大きな割合を占めています。
——:まさに音楽が人生を変えたのですね!

取材を終えて

 自分も授業の中で簡単なデジタルサウンド・プロセッシングをしたことがありますが、作るだけなら何の知識もない自分が簡単に曲を作れたことを覚えています。ただ、いい曲を作るのはすごく難しいと感じました。田上教授がいう絵を書くように音楽が作れる時代が本当に来ると思います。
炭家清花

 この度は貴重なお話、お時間いただきありがとうございました。昔の話を思い出すときの仕草や考えている動きなど、撮影しがいのある取材でした。中でも著書の撮影は試行錯誤したので気にして見ていただければ嬉しいです。
服部美雪
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