2018.4.2

経営情報学部学生広報誌「じぇむ」no.10 田上教授の著書紹介(1)

文:上谷沙耶 撮影:辻哲史

 新シリーズとして、経営情報学部の先生の著書紹介を始めることになりました。一人目は学部長である田上先生の著書のうちから、「マルチメディア情報学概論」「デジタルアニメーション-Flashの基礎技法」の二冊についてインタビューさせていただきました。田上先生の経歴についても伺いました。
担当教員注:田上教授は、4月から学長になられます。なお、大学教員の業績は著書以外に論文などもあり、論文が重視される分野も少なくありません。しかし「じぇむ」では一般の方が入手しやすいという点で、著書をとりあげることにしました。

経営学部を卒業し、情報系の道へ

——:初めに経歴についてお伺いします。
田上先生は神戸大学経営学部卒業だと伺ったのですが、情報系の授業を担当されているのはなぜですか?
田上:経営学部で組織の意思決定や組織論について学びました。そして卒業後、会社で人事課に配属されコンピュータによる給与計算を任されました。その関係でコンピュータの勉強を始め、面白いと感じるようになりました。その後、ある大学でコンピュータ要員の募集があったので転職し、プログラムを自分で組むようになりました。
——:先生は演奏や作曲もされると聞いたのですが、音楽との関わりを教えてください。
田上:大学生の時にバンドを組み、オリジナル曲を作っていました。
——:どんなジャンルですか?
田上:プログレッシブロックです。ピンク・フロイドとか、ディープ・パープルとか、イエスとか好きでしたね!

担当教員注:ディープ・パープルは、ハードロックの代表的バンド、ヘビーメタルの先駆者と言われることが多いですが、第2期の初期まではプログレッシブロックの傾向を持っていました。
——:知らないです…。
田上:でしょうね(笑)。そこからシンセサイザーに興味を持つようになり、電子音楽の研究を始めました。しかし当時はシンセサイザーを学べるところがほとんど無く、ほとんど押しかけのような感じで、冨田勲氏に教えを請いました。1981年には世界シンセサイザーミュージックテープコンテストでBクラス(一般部門)のグランプリを受賞しました。このときの賞状の裏には富田先生のサインがあり、我が家の家宝になっています。
担当教員注:冨田勲(1932~2016)は世界的に著名な作曲家・シンセサイザー奏者。アニメ「ジャングル大帝」「リボンの騎士」、映画「学校」シリーズ、「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「武士の一分」「母べえ」等の音楽を担当。1974年度全米レコード販売者協会クラシック部門最優秀レコード等、海外でも評価が高い。なお、受賞盾とサインの写真は田上教授からの提供。
——:映像関係では何かされていましたか?
田上:高校・大学で写真部の部長を努め、風景写真を加工していました。白黒写真を扱っていたのですが、それを一部反転させたり、色を付けたりしていました。
——:すごいですね!昔から画像編集に興味があったのですね。
田上:今から思うとそうですね。コンピュータのシステム開発と趣味の電子音楽・映像が合わさってマルチメディアに興味を持つようになりました。

マルチメディアの全体像が手軽に分かる

——:「マルチメディア情報学概論」(田上博司著 晃洋書房)についてお伺いします。
まず、マルチメディアとはどのようなものですか?
田上:複数のメディアで情報を伝えることです。複数とは視覚や聴覚など人間の五感のことで、文字や記号だけでなく、人間が感じることのできる情報すべてを扱うことです。
——:この本の狙いを教えてください。
田上:これからマルチメディアを勉強しようとする人が手軽に扱える本がなかったので、マルチメディアの全体像を勉強していく人に見てもらうために書きました。そのため、技術面だけでなく、歴史も載っています。この本を勉強するとマルチメディアがどのようなものなのかが分かるようになっています。
——:この本を書くにあたって意識したことを教えてください。
田上:大学生や大学院生が使用できるレベルで、また初学者にとっても難しくないようなレベルになるようにしました。
——:教科書として書く本と、一般の方向けに書く本とでは何か違いがありますか?
田上:あります。教科書を書くにあたって1番重要なことは、何に基づいているのかが常に説明できることです。自分が出した論文の内容も含めていますが、全ていつ出した論文なのかが分かるようにしています。
——:1番苦労したことは何ですか?
田上:300ページ前後に収めることですね!
——:まだまだ書きたいことがあったんですか?
田上:そうですね。でもこれ以上増えると教科書ではなくなってしまうのでまとめました。
——:仕上がるまでにどれくらいの日数がかかりましたか?
田上:構想から出版までは2年かかりました。執筆からは1年ですね。
——:この本を書いてよかったことは何ですか?
田上:阪南大学で行われているマルチメディア情報論・マルチメディア入門の授業で教科書として採用してもらったことです。前は大学院の授業でも使ってもらっていました。それと、日本のほとんどの大学図書館に置いてもらっていることです。いくつかの大学かでは授業でも使ってくれています。

アニメオタクの大学教授が書いた、アニメ制作の本

——:「デジタルアニメーション-Flashの基礎技法」(田上博司著 晃洋書房)についてお伺いします。
   デジタルアニメーションとはどのようなものですか?
田上:デジタル化される前は、アニメーションの制作は透明のプラスチック版に少しずつ違う絵を手書きしていましたが、コンピュータが使えるようになってからは、前の絵をコピーして使えるようになりました。コンピュータが使えるようになって1番手が省けるようになったものはアニメーションではないかと思います。
——:アニメーションに興味を持ったきっかけは何ですか?
田上:もともとアニメが好きだったので…
——:好きなアニメはありますか?
田上:最近では「HUNTER×HUNTER」(富樫義博原作)が好きです。あんまり言うとオタクなのがバレてしまうんですけど…(笑) 「戦姫絶唱シンフォギア」とか!「食戟のソーマ」とか!知らないですよね(笑)
——:知らないです…
田上:それからコンピュータを使ってアニメを作ることに興味を持ち始め、アニメーションがすべての動画の基礎になっていることが分かってきました。
——:これまでに作ったアニメーションは何かありますか?
田上:ゼミでプロジェクションマッピングの作成をしています。
——:この本の狙いを教えてください。
田上:基本は学生が対象なのですが、一般の方でも読めばアニメーションが作れるレベルの本に仕上げました。
——:この本を書こうと思ったきっかけは何ですか?
田上:デジタルアニメーションに特化した本が少なく、高度な技術のものしかなかったので、基本から押さえているものを書こうと思いました。
——:この本を書くにあたって気を付けたことを教えてください。
田上:アニメーションの基本を押さえられるようにしました。また、一般の人に興味を持ってもらえて、面白いと思ってもらえるようにしました。
——:仕上がるまでにどれくらいの日数がかかりましたか?
田上:10ヶ月です。
——:1番苦労したことは何ですか?
田上:この本は白黒なので、カラーで表現したい部分をどういう風に書くかが大変でした。また、Flash(現Adobe Animate)というソフトウェアに準拠しているのですが、このソフトウェアはバージョンアップが激しいので、今までのバージョン全てに当てはまるようにしなければいけないことに苦労しました。
——:この本を書いてよかったことは何ですか?
田上:読者からお便りをもらえたことです。それと、授業がスムーズに進められるようになったことです。

今後ITはどうなっていくのか

——:これから書きたいと思っている本の内容はありますか?
田上:情報文化学の分野で書きたいと思っています。今後ITが進んでいったらどうなるのかを調べてみたいと思っています。実は私は2004年に、
「今後、携帯が高度化され、コンピュータと同じ機能を持ち、全世界で同じ形式のものが出回るならば、便利だが危険なことになる」
と授業で学生に話していました。それが今、現実となり、スマホが普及しています。
——:予言していたのですね!すごいです!!

取材を終えて

 「マルチメディア情報学概論」の教科書は私も受講した授業で勉強させていただきました。受講しているときは少し難しく感じましたが、記事を書くために読み返してみたらわかりやすかったです。阪南大学で教科書として利用されているだけでなく、日本のほとんどの大学図書館に置いてもらっているということも驚きました。
 田上先生がアニメオタクだったとは知りませんでした!私はアニメについて全く分からないので引いてしまい、反応に困ってしまいました。すみませんでした。でも、オタクだったからこそ今に繋がっているのですね!
上谷沙耶

 田上先生は、私のゼミの先生です。ゼミ活動の中では学生と混ざって好奇心旺盛な姿を見せている先生も、今回の取材では落ち着いた大人な雰囲気でした。いつもと感じが違う先生を見ることができ新鮮な気持ちになりました。取材をしたのは学生が普段は入れない会議室だったので、良い経験になりました。
辻哲史

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