文:秋吉恵梨香  撮影:服部美雪
 
 阪南大学は、近畿圏の4年制大学の中で、2020年3月卒業生の実就職率2位(全国40位;「東洋経済」2020年8月28日「最新!『本当に就職に強い大学』ランキング150」)(卒業者数1000人以上、ただし女子大や理系学部のみの大学を除く)という実績があります。高い実就職率を出すためにどんな取り組みが行われているのでしょうか。今回、キャリアセンターの鶴谷課長に取材しました。

なぜ実就職率で近畿地区2位に?

——:就職率には二種類あるようですけど、就職決定率とは何ですか?
鶴谷:就職が決まった人数を、就職希望者数で割った値のことです。
——:実就職率とは何ですか?
鶴谷:就職が決まった人数を、全卒業者数から大学院進学者数を引いた人数で割った値のことです。こちらは就職決定率よりも数字は低くなります。文部科学省の学校基本調査に提出しています。
——:就職決定率と実就職率は、何が違うのですか?
鶴谷:実就職率の分母には、就職を希望しない学生や就職できなかった学生も入っているのが就職決定率との違いです。
担当教員注:就職活動をしていたが就職を諦めた学生は「就職希望ではなかった」として扱う余地があるため、就職決定率には恣意的なものが入り込む余地があります。また、ウェブサイトには就職決定率のみ掲載して実就職率は掲載していない学校もあります。阪南大学は実就職率も掲載しています。
——:私は、就職活動を始める前は阪南大学の実就職率が近畿3位(全国45位;2019年3月卒業生)とは知らず、聞いた時は驚きました。偏差値では阪南大学よりも上で、就職決定率も上なのに、実就職率は東洋経済ベスト150に入っていない大学がいくつもあります。なぜ阪南大学が、近畿圏の4年制大学(女子大や理工系学部のみの大学を除く)の中で、実就職率2位(2020年3月卒業生)という実績をあげることができたのでしょうか?
鶴谷:うちは学生が就職したい業界をしっかりヒヤリングしてその学生にあった企業紹介をすることを細かく行っています。ゼミの先生と連携した就活支援も行っています。キャリアセンターのメンバーも企業訪問して、学生に採用情報を提供するための活動を行っています。そういったことの積み重ねではないでしょうか?
——:阪南大学は2019年には近畿圏4年制大学の中で実就職率3位でしたが、順位をさらに上げるために強化した取り組みはありますか?
鶴谷:ヒヤリングや企業訪問など学生に寄り添う就職支援活動です。3年生から基礎ガイダンスを始め、早い時期から活動に取り組むよう意識付けを行っている事が順位を上げた要因だったのではないかと思います。

キャリア教育プログラムとは

——:阪南大学にはキャリア教育プログラムというものがあるそうですが、どんなものですか?
鶴谷:キャリア関係の授業、資格講座就職支援プログラムから構成されています。1年生からどういう職業につきたいかを考えるプログラムになっています。
——:では、キャリア教育プログラムについていくつかお伺いします。「キャリアデザイン」というのは、どんな科目ですか?
鶴谷:将来どういう風になりたいのかを自己分析して、自分の人生設計を考える科目です。
——:「キャリアゼミ」とは、どんな科目ですか?
鶴谷:専門ゼミのテーマとして、企業が課題解決したいものに取り組みます。
——:「起業塾」とは、どんな科目ですか?
鶴谷:将来自分の会社を持ったりしたい学生たちが会社の立ち上げについて学ぶ科目です。ビジネスプランを考えさせることもあります。
担当教員注:経営情報学部には、企業の経営者から直接話を聞ける科目(「経営実践講座」「関西電子情報産業協同組合(KEIS)寄付講座」)や、親族の会社・店の継承を考える科目(「事業承継論」)もあります。
——:インターンシップとは、どんなものですか?
鶴谷:実際に一定期間仕事の体験をさせてもらうものです。海外インターンシップでは、現地の文化に触れながら仕事体験をします。
——:公務員になるためには何年生くらいから勉強を始めればよいでしょうか?
鶴谷:遅くとも3年生になった時からやらないといけません。化学とか生物など理系科目も出題されるので、早い段階から勉強しないと厳しいです。公務員試験対策講座は1年次生から受けられます

学生の長所を引き出し、個性に合った仕事選びをサポート

——:1年生でもキャリアセンターに相談に行っていいですか?
鶴谷:もちろん大丈夫です!将来何をしたいのか悩んでいる人は結構多いので、気軽に相談に来てください。
——:オープンキャンパスで就職活動支援の話を聞けますか?
鶴谷:聞けます。高校生は資格の相談をされる方が多く、就職活動支援の話は親御さんが多いですね。
——:私の友人は、自分のやりたい事がなかなか決まっていませんでした。そういう場合でも相談に行っても大丈夫なのですか?
鶴谷:もちろんです。どういうことに興味があるのか、どういう仕事に向いているのかを相談します。その学生の長所を引き出し、個性に合った仕事選びができるようにしています。
——:就活のことをあまり勉強せずにキャリアセンターに行ったら怒られるかも、と思ってしまうのですが、履歴書に何を書いたらいいのかわからない場合でもキャリアセンターに行って大丈夫なのですか?
鶴谷:そんなことはないですよ(笑)。真っ白な履歴書を持ってきてもらっても全然大丈夫です。一緒に考えて履歴書を完成させましょう。
担当教員注:せめて自分なりに記入してから相談に行きましょう。
——:模擬面接指導では、どんな指導を受けられるのですか?
鶴谷:面接のマナーや受け答えの仕方などです。また、目線や姿勢も全て見てもらえるので客観的にどうみられているのかがわかります。
——:リクナビやマイナビには有名な企業がたくさん登録してあって、キャリアセンターに行かなくてもいいようにも思います。キャリアセンターに行くメリットを教えて下さい。
鶴谷:阪南大学の卒業生が活躍している企業のデータや阪南大学の学生を採用したい企業を知ることが出来ます。
——:求人検索NAVIは、どんなものですか?
鶴谷:阪南大学の学生を採用したい企業を調べられます。大手求人サイトには掲載されていない企業も多いです。企業の人が本学を訪問して頂いたときの情報も蓄積してデータとして残しています。
——:求人を出す企業の立場からすると、大手の求人サイトに求人を出した方がたくさん学生が集まるのでいいように思うのですが、なぜ大手求人サイトには出さずにうちの大学に出してくれるのですか?
鶴谷:大手求人サイトは掲載料も高いですし、エントリーする学生が多すぎるとそこから少数をセレクトする企業側の人的・時間的な負担もあります。効率的な採用活動をするために、あえて大手求人サイトは敬遠して、卒業生の評判のいい大学に求人を出すということがあると思います。
——:私は、面接の際に変わった質問をされ驚いたことがありました。OBOGの方がその企業を受けていた、または前年度の質問内容などを知ることはできるのでしょうか?
鶴谷:求人検索NAVIの就職活動体験記で知ることができます。質問内容や面接の人数、面接官の雰囲気も知ることができますよ。
——:学外業界研究セミナーと学内業界研究セミナーの違いは、何ですか?
鶴谷:阪南大生を採用したい企業が阪南大まで来てくれるという点ですね。
——:学内業界研究セミナーには、どんな企業が参加されるのですか?
鶴谷:銀行や商社、旅行会社など色々です。有名企業も多いです。去年からは製薬会社さんにも参加してもらいました。製薬会社の営業は文系の学生が多いので、そういう業界も知ってもらうためにキャリアセンターで開拓して参加してもらうということもしています。
——:就活生にとって良い会社とは、どんな会社ですか?
鶴谷:会社の規模ではなく、本人にとってやりたいことができる会社だと考えています。

単位修得も就活準備

——:私は3年生の8月にインターンシップに行き10月から就職活動を始めましたが、就職活動はいつごろから動き始めるのがいいですか?
鶴谷:基礎ガイダンスが3年生の4~5月から始まるので、それを皮切りに就職活動を本格的に始めるのが理想的ですね。1年を通して採用を行う企業も増えてくるかと思うので早め早めに準備するのが大事です。
——:本格的な就職活動が始まる前にしておいた方が良いことはありますか?
鶴谷:自己分析です。あとは、単位を修得しておくことですね。
——:今年度は新型コロナウイルスの影響で、説明会が中止になったりリモートで面接に切り替わったりと就職活動がこれまでとは違って大変だった印象があります。就職活動支援にはどんな変化がありましたか?
鶴谷:オンラインでの就職相談を取り入れました。リクナビやマイナビの説明会がなくなったので、企業紹介できる場をつくれるかも勝負でした。阪南大学での単独企業説明会では、密を避けるために人数制限をして開催したりしたので、大きな変化となりました。
——:これから就職活動をする人へのアドバイスをお願いします。
鶴谷:学生がしたいことややりたいことをしっかり引き出してサポートします。学生時代にしかできなかったこと、一生懸命したことを武器にして就職活動に入ってもらいたいです。あとは、自信をもつことです!不安や悩みは、キャリアセンターを利用してもらえたらいいなと思います。キャリアセンターには、学生の為に何かしてあげたいと思っている人たちが集まっているのでしっかりと応援していきます。是非、活用してください。

取材を終えて

私は、就職活動をしている際、キャリアセンターの学部担当の方に履歴書の事や逆質問のコツを聞き、お世話になりました。今回の取材中でもそうでしたが、親身になって話を聞いて頂きとてもリラックスして話ができました。後輩の皆さんは、就職活動大変かと思いますが、是非キャリアセンターを利用してもらえたらいいなと思います。鶴谷課長お忙しい中、取材におつきあいいただきありがとうございました。
秋吉 恵梨香

今回の取材では感染症対策のため鶴谷課長とライターとの間に衝立を使用して撮影しました。衝立をできるだけ映さないように撮影するのは難しかったです。また、遠隔でも相談できるようになったことで就活中でも気軽に利用できそうだと感じました。最後になりましたがこの度は取材に応じて頂きありがとうございました。
服部 美雪
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