都市文化論シンポジウム2022
古今東西:后・妃と王女—嫁入りと臣籍降下—

都市文化論(ヨーロッパ)を担当する松本典昭教授が「イタリア・メディチ家の結婚」、都市文化論(中国)を担当する陳力教授が「中国皇帝の皇后・妃・公主(王女)たち」、都市文化論(日本)を担当する神尾登喜子教授が「日本の皇后と皇女たち」について話をしました。最後に日中の架け橋となった愛新覚羅溥傑さんと浩さんの国際結婚の話題になりました。軍部による政略結婚だったにも関わらず、奇跡の愛を育んだ二人。MCは神尾教授でした。

科目担当者コメント

「都市文化論2022」第2回シンポジウムを終えて

松本 典昭:都市文化論(ヨーロッパ)担当

 古今東西、千年以上の歴史を行ったり来たり。学生の皆さんは頭がこんがらがったかもしれませんね。私はまだまだ聞きたりないし、しゃべりたりないと感じました。過去の悲惨な話ばかりでうんざりしたかもしれませんが、逆に皆さんは、自分の人生を自分で決められるいい時代に生きていると実感したはずです。日本でも結婚が家と家の結びつきではなく、個人と個人の結びつきになったのは、戦後のことです。うかうかしていると、逆戻りしかねませんから、歴史を学んで、どの方向に進むべきかを考えてみましょう。

陳 力:都市文化論(中国)担当

 私は普段の研究で都市計画と思想の関係にウェートを置いているため、授業で都市をステージとする生活文化とその背景的内容に関する講義コンテンツが少ないかと思います。この度、冠婚葬祭のなかの「結婚」を主題としてシンポジウムを行い、私の授業の内容を補完できて幸いでした。シンポジウムの後、受講生から異国の通婚による文化交流や貴族社会の結婚意識について数多く感想をいただきました。私も、松本先生と神尾先生が提供してくださった興味深い情報(例えば違う都市空間に住む両家はどのような動線で新婦を新郎邸に送るかなど)に啓発されたところが多いです。

神尾 登喜子:都市文化論(日本)担当

 臣下の娘が天皇に嫁入りし、皇后になることへの突破口を開いた藤原氏の話を授業では行っておりました。それがメインの授業プログラムではないのですが、そこから生まれる軋轢によって、都市伝説が生まれていくという内容です。さて、今回の「結婚」をテーマに展開したシンポジウムですが、家と家のつながりや、閨閥拡充のためという現代では喪失した結婚の在り方について「?」の学生諸君もいたのではないかと推察いたします。シンポジウム終了後、私の授業を履修しているある学生が、「前回以上に濃い内容でした」との感想を寄せて下さったことに、背中を押される瞬間でもありました。

「都市文化論」第2回シンポジウム・学生コメント

加藤 希穂

結婚と聞くと教会をイメージしがちだが、ルネサンスの結婚は婚約・指輪交換・花嫁行列の順に教会外で行われた。花嫁行列が具体的にどう行われ、新郎新婦は何をするのか調べてみたいと思った。清朝とモンゴルとの間には多くの婚姻関係があると知り興味を持ったため、モンゴルへ嫁いだ清朝の公主について調べてみたいと思った。天皇の結婚事情については、授業内容についていけるだけの知識がなかったため、一つ一つ復習していきたい。
メディチ家の結婚事情は分かりやすく、興味がもてた。メディチ家の社会的地位が上がると高い地位の嫁をもらい、高い地位の嫁をもらうことで、また同家の社会的地位が上がるという循環がおもしろいと思った。一方で、中国皇帝・妃・公主について、日本の皇后と皇女たちについては、時代が飛躍したので理解するのが難しかった。自分の勉強不足を痛感したが、溥傑さんと浩さんの婚姻の話は興味深く、「お国のために役に立つのであれば〜」という浩さんの言葉が強く印象に残った。


森脇 実久

ヨーロッパの王侯貴族は国際結婚を前提とした教育が行われていたという話を聞き、貴族の教養がどんなものか知りたいと思った。中国でも国際結婚が頻繁にあったことが分かり、モンゴル族以外にどんな民族と結婚したのか知りたいと思った。かつての日本では、「国のため」という考え方があったが、そうした考え方が結婚以外にどんな影響を社会に与えたのか知りたいと思った。
現代の日本では、自由恋愛・恋愛結婚の風潮があり、女性の権利が守られ、とても恵まれていると感じた。日中関係の融和の為に、婚約者との結婚を諦め、中国へ渡った女性が、国のため、両親のため、政略結婚を受けいれた一方で、「もっと平穏に暮らしたかった」という言葉がとても心にささった。現代でも世界にはまだ女性の自由がない国がある。女性の権利が守られているからこそ、彼女たちのことをもっと考えなければいけないと感じた。

中野 滝士

持参金が年収の5年分ということ、結婚は娘のうち1人ということの理由をもっと調べてみたい。花嫁の入市式の巡行路の意味を知りたい。中国の皇帝の離婚できる7つの条件とは何か、知りたい。天皇の結婚事情は昔から現在までどう変化してきたのか、調べたいと思った。
今回のシンポジウムでは、ヨーロッパ、中国、日本の身分の高い人の結婚事情について理解することができた。一般の私たちとは違って複雑な事情がたくさんあって大変だなと感じた。普通の結婚生活を送りたくても送れないということは、私には耐えられない。国の事情があり、歴史の事情があり、身分の事情があり、非常におもしろかった。

吉田 飛鳥

ヨーロッパにおける王族同士の婚姻は、同盟を結ぶことと同義であると学んだ。そこで、終戦時に対立していた国の王族同士が結婚した後、どちらかが裏切った事例がないのかを調べてみたいと思った。中国では、離婚は基本的には禁止であるが、時代による離婚条件や離婚率の変化も調べてみたい。現代のように自由な恋愛が認められていない時代の日本では、どのような政略結婚があったのかを詳しく知りたい。
ヨーロッパ、中国、日本の結婚事情に予想以上に相違点が多かったのに驚いた。最も驚愕したのは、中国の結婚である。女王の結婚は難しく、結婚がたとえできても、財産目的で悲惨なことが多い。浩さんと溥傑さんの、日中国際関係緩和のための婚姻の話に興味をもったので、この実話を題材にした映画『流転の王妃・最後の皇弟』を見てみたい。

秋山 萌依

19~20世紀に王侯貴族に恋愛結婚が浸透したきっかけ、君主国の多くで身分制度が弛緩したきっかけについて知りたい。清朝とモンゴルの政略結婚でうまくいくのかについて知りたい。和宮の臣籍降下、現在の天皇の結婚事情について知りたい。
日本では離婚する人が比較的多いと感じるが、カトリックも中国も離婚が原則禁止されていたということを初めて知り驚いた。子をたくさん産まなければならない女性は、死の危険や出産の辛さがあるから何度も出産したくない気持ちはなかったのか、カトリックで離婚は禁止されているが一緒に過ごせなくなるとどうするのか、気になった。3国共通して女性が男性の政治に振り回されていたことが分かった。恋愛結婚が普通の感覚だったので、身近な話ではなくてなかなか理解するのが難しかったが、もっと知識をつける必要があると痛感した。ありがとうございました。

樫根 望

ヨーロッパでは100~200人ほどの従者を引き連れて嫁いだことを知り、具体的にどういった役割の人がいたのかを調べたい。実在した人物を模した仏像があることをはじめて知りおもしろいと感じたため、則天武后がどのような人物か詳しく調べたい。和宮の臣籍降下の話のなかで、花嫁行列の際に入れ替わったという伝説があると知り、どうしてそのような話が出たのかまた実際に起きたのかを調べたい。
今回、3カ国の結婚事情を学び、家の事情や政治的な事情のための結婚が多かったことを知った。しかし、そうした政略結婚のなかでも溥傑と浩のように、お互いを大切に思えるような関係を築いた人もいるのだと感動した。そして、二人を応援するかのように溥傑を釈放した周恩来の対応にも驚いた。結婚式や持参金などさまざまな点に違いはあったが、どの国においても結婚は夫婦二人だけの出来事ではなく国民や文化にまで影響を与えるものだったと学んだ。そうした理由があるからこそ、結婚式や花嫁行列などを行うことで周囲の人々に「公認」してもらう必要があったのだと感じた。

佐竹 祐子

ヨーロッパの過去の君主の離婚歴について調べたくなった。皇后の顔が彫られた龍門石窟を見て皇帝の力の大きさを感じた。他にも中国の皇帝に関する世界遺産があるのか調べたい。孝明天皇の妹である和宮が入れ替わった説があると聞いて、追求してみたいと思った。他にも天皇家と将軍家の結婚はあったのか知りたい。
今日のシンポジウムで一番印象に残ったのは、どの国の結婚でも「政略結婚」が多いという点だ。恋愛結婚という考えが王室では当たり前ではないことを知った。特に興味深かったのは、イタリアの結婚文化で、持参金が年収の約5年分と聞いて高額と感じたし、それを花嫁の父が花婿に渡すという点にも驚いた。まさに「家と家の契約」だと感じた。また、子の3人に1人は早世だったと聞いて、現代医療の発達のありがたさに改めて気づかされた。

川端 大智

神尾先生が仰っていた「結婚が都市の風景づくり」という言葉がとても心に残りました。当時のイタリアでは、結婚が伝統文化や伝統の交流であったことで、都市が結婚相手の家柄の文化を取り込むことで当時のイタリアの都市が形成されたと考えるとても都市形成の背景が深く面白いと感じました。その時、結婚は家と家の契約であり、個人の意思が尊重されることはなかったという結婚がもし現在も受け継がれていたら、何も考えずに国のために結婚をすることになるのだろうかとふと考えました。イタリアだけでなく、中国で皇室の結婚とは「契約」ではないが、結婚は政治とされていたように、結婚をすることで異民族との連帯を作る手段とする場合もあり、結婚で当時の政治体制を整えていたんだ側面があると思いました。

篠崎 圭佑

本日のシンポジウムでは、ヨーロッパ・中国・日本と三つの地域での婚姻事情を学ぶことができ、内容が多く充実した時間であったと感じました。シンポジウムならではの各分野の先生の話を聞けて、そして、その場で各地域の婚姻事情を比較できたことで、より各国の特性が見られたと思いました。
イタリアでは君主の結婚の際、花嫁の順路で街を回って宮殿に入るという儀式があることなどが理由で結婚によって街が変わるといわれています。このように君主の結婚により多くの人に影響を与えていると感じました。
昔、各国の結婚の相手を選ぶとき、やはり身分を考えています。中国の近世では貴族社会ではないが、身分は結婚と関係しているのではないかと考えています。
今回のシンポジウムでは、君主・皇帝・天皇の婚姻事情について学びましたが、各々の違いが印象深かったです。ヨーロッパ・中国・日本以外の各国の婚姻事情について調べたいと思いました。

塩見 翔平

今回のシンポジウムを通して、各王族、皇族によって結婚の目的や傾向、風習がそれぞれ違う意味を持っているのだと理解した。特に私が興味深かったのはイタリアの結婚事情である。持参金の多さにも驚愕したが、カトリックは離婚が出来ないのだと初めて知った。現代では、離婚は許容されている世の中ではあるが、離婚の禁止という部分から結婚=契約という考えが強かった事に納得できる。
私が今回の講義と前回の講義で感じた事は日本と中国は根本的な部分における都市や結婚などの様式が似ていると考えた。これらは日本が中国の文化を模倣していた影響が関係しているのではないかと予想する。
今回の講義で、王族、皇族の結婚文化は理解できたが、一般市民の結婚文化はどのようなものだったのか今後調べてみたいと考えた。

浅野 浩輝

今回は結婚をテーマに、ヨーロッパ・中国・日本、これら3つの国を比較した。毎回のように感じているが、「比較」という至って単純な形式、スタイルを用いた3者の討論会。比較することによりそれぞれの項目でのメリット及びデメリットを見出すことが出来る。これに加えて、例えば陳先生が言った発言に対して松本先生がちょっと待ったと言わんばかりの反論や共感の見解を主張する。本当の討論会という雰囲気を体感出来る上に自分自身が持っている考え方をきちんと相手に伝えるというツールを学ぶことが出来る。このような機会は本当に数少なく授業という場を通して理解することによって今後に大きくつながる学びがあると感じる。だからこそ、私はこのような会を今後も続けていくべきだと考える。
 神尾先生、陳先生、松本先生、大変貴重なシンポジウムありがとうございました!

笠井 満葵

婚姻は国ごとの文化の違いで変わってくるものではありますが、それよりも国に属する位などでも変わっていくものだと感じました。一般市民である私たちからは考えられない、日中国際関係のための婚姻や日中国際緩和のための婚姻などが挙げられており個人的な感想ではそのような事があって良いのかと疑問に思いました。時代が変わって行くにつれ、昔に行われていた結婚事情は条件や決められた事の元で行っており非常に驚くことばかりでした。どの地域でも共通して言えることは、貴族や豪族などに当たる方達には、婚姻をするにあたっての相手を自由に選択できないということです。自国を向上させるために政治と絡めながら行っていくため、この時代の結婚をめでたいことと捉えて良いのかわからないと思いました。

嘉成 綾乃

松本先生・陳先生・神尾先生の3名の専門分野である各都市についてのシンポジウムは、先生方が楽しそうで、こちらまで楽しくなってきます。普段の都市文化論の授業もそうですが、自分の既に知っていることがどのような成り立ちでできているのかということを知れるので、とても面白い授業です。全学生にお勧めしたいほどです。今回のシンポジウムでは結婚について討論が行われました。持参金や花嫁道具、結婚についての価値観まで、3つの国の違いを少しでも知ることができたと思います。私が一番驚きを隠せなかったことは、「イギリス国教会はヘンリー8世が愛人と結婚したい。でも、カトリックじゃ離婚はできない。そうだ、カトリックを抜けよう。」という経緯でイギリス国教会を作ったということです。世界史Bを履修した私はイギリス国教会という単語だけは習いましたが、その経緯はしらないまま。今回経緯を知ることができて、イギリス国教会にとても興味を惹かれました。正直いうと高校生の時にこの成り立ちを知っていたらテストでも間違うことはなかったでしょう。先生方の学者魂に触れることができ、自身が常識人・知識人に一歩近づけたような気がするシンポジウムでした。

佐藤 成

シンポジウムを受講したことで、文化による結婚様式や結婚観の差異を学ぶことができてとても面白かった。なかでも、王族・皇族の婚姻では政略結婚によって、家系図から歴史の勢力図が見えてくる点が興味深く、中国、イタリアのように異民族との連帯からなるものもあれば、日本のように皇族同士の近親婚によって形成されるものもあり、歴史上の結婚観が現代とは異なっていて面白い。また、政略結婚の変遷も興味深いものであり、イタリアのメディチ家は当初、結婚相手がフィレンツェ商人の娘であった。しかし、16世紀には王族・皇族の娘と結婚しており、政略のスケールが大きくなっている。一方で、中国は異種族と連帯を作り、強強連合を形成していたが、外戚による政治干渉を防ぐために近古代には強い異種族との婚姻関係を結んでいない。また、品位がまずまずな皇后の選定や、近親結婚も行っており、婚姻相手の位がスケールダウンしている。また、近親婚においては日本と共通しており、当時の政略結婚において、身内で勢力を固めることが有力だったと推察できる。

内田 裕人

後期開講の「都市文化論」。15回のうち2回あるシンポジウム。2回目は去年と同じく、3都市の結婚事情について、3人の先生によるトークショーであった。ここから、それぞれの都市の結婚事情について、印象に残ったことを記していく。去年受講した松本先生の担当都市、フィレンツェの結婚事情の中で、改めて印象に残ったところは、「娘のうち一人」や、「持参金は年収の約5年分」という、結婚に関してのルールが日本と比べて非常に厳しい条件である点である。特に「娘のうち一人」を言い換えると、自分の身内でなければ結婚できないということが読み取れる。また「持参金は年収の約5年分」に関しても、非常に厳しい条件であることが読み取れる。印象に残ったイタリア・ルネサンスにおける、結婚する際のルールについての分析は、相手が身内であることをはじめとして、かなりの高年収でないとそう簡単には結婚は許されないということである。中国の皇帝の結婚事情について、印象に残ったところは、「結婚は政治だ」である。普通、「結婚」と聞くと、幸せな夫婦となって生涯にわたって過ごしていくものであるが、中国の皇帝の結婚と聞くと、国民と違い、政治をする際のパートナーになるということを聞いて、なかなか面白く感じた。これを日本で例えてみると、天皇家の中のうちの一人と結婚すると、その相手も政治をする上でのキーパーソンの一人になるということなのである。つまり、中国の皇帝では、イタリア・ルネサンスの結婚事情よりは厳しくはないものの、結婚すると、その相手が誰であろうとも、政治に関わらなければいけないということが分析できた。最後に現在受講している、神尾先生の日本、京都の結婚事情において印象に残ったものは、「天皇家と豪族の家系で生まれた男の子は皇太子として認められない」ということである。理由は、なぜ、天皇家と豪族の結婚が認められないのかと疑問に感じたからである。分析してみると、当時、この2つの関係は、戦のきっかけにもなったからではないかと、法律が定められてこのようになったのではないかと考えた。今回のシンポジウムを受けて、去年学んだことはもちろん、今年新たに知った知識を習得できて面白かった。