都市文化論シンポジウム2022
北半球・歴史都市の旅
フィレンツェ・西安・京都

 毎年度、後期が始まると瞬く間に、第1回のシンポジウムとなります。全15回の授業実施回数のうち2回のシンポジウム。聴いている受講学生よりも、登壇している科目担当者のほうが、若干の緊張感があります。
ところでなぜ私たちは、2010年度から毎年度このシンポジウムを継続しているのか。そこには、毎年度新たな発見があるからにほかなりません。同じデータを使いながら、視点を変えてみたとき、突如としてこれまで気づかなかった「何か」に出会います。それが面白くて実施しているのだといえます。
そしてもう一点。互いに、Q&Aを繰り広げることで、論文執筆のネタを探しているのだということです。企業でもプロジェクトを組み、メンバーからの忌憚のない意見を集約していくことでプランは進んでいきます。
受講学生諸君には、やがての未来における自分自身の姿を、登壇教員に重ねていただくことで、自分自身の立ち位置を考えてみる、という出席の方法もありそうです。

科目担当者コメント

「都市文化論2022」第2回シンポジウムを終えて

松本 典昭:都市文化論(ヨーロッパ)担当

 久々に対面でのシンポジウム。緊張しましたが、学びの多いシンポジウムでした。「われ以外みなわが師」という言葉を噛みしめています。3人の教員の共通認識として、たとえ国家と国家が対立しても、都市と都市は連帯しうる、ということが確認できてよかったです。個人と個人が繋がりうるのはいうまでもありません。個人と国家の間に都市というものを考えてみてはどうでしょうか。都市文化論の究極の目的は平和の探究です。学生のみなさん、いっしょに学んでいきましょう。

陳 力:都市文化論(中国)担当

 3年ぶりの全員対面のシンポジウムで、教員も受講生もかなりハイテンションの姿勢でシンポジウムに臨みました。受講生たちは特に都市の立地に関して興味津々に教員の議論を聞いて考えたようで、シンポジウムの後に提出したレポートには、立地に関する内容が多かった点が印象的でした。教員三人の対談を聞いて都市文化論の立地に関する考えと都市経済学や地政学の立地論との違いを授業のときより深く理解できたと思います。シンポジウムの最後の話題は中世以後の都市の間の連帯でした。この問題を話し合って都市の発展には、平和は如何に大事かということを教員と学生が一緒に考えたことが非常に有益とおもいます。来年度以後の授業のなかで都市と平和の内容も入れようと考えています。このように教員・学生は相互啓発をして、新しい都市文化に対する関心を開拓できたとおもいます、毎年のシンポジウムは私に対しても非常に勉強になる場です。

神尾 登喜子:都市文化論(日本)担当

 シンポジウム終了後、ある学生から「先生たちって仲いいんですか?互いに厳しい突込みにニコニコしながら答えるのって難しくないですか?でも、面白かったです」と伝えられました。最後の一言で、救われた思いがした私ですが、教員は互いがライバルでもあり、仲間でもあります。その根底には、信頼がなければこのようなシンポジウムは続けられません。13回目のシンポジウム。もっと研究をしないといけないよね、と反省しきりの時間でした。

「都市文化論」第1回シンポジウム・学生コメント

都市文化論(ヨーロッパ)

井口 七緒

自分では気づかない視点から話が進み、驚きと発見の連続だった。印象深かったのは占いについてだ。私は海亀の甲羅や鹿の骨を使うのは、いい感じにひびが入るからだと思っていた。ところが先生がたの解説により、神聖な生き物の体の一部を使うことで人智を超えた神の言葉を聞いているということが分かった。また、鳥占いの話題になったとき、陳先生が新たな情報を提供されていて、毎年新しい発見があると話されていた意味が分かった。内容はもちろんだが、先生がたの関係性からも学ぶことがある素晴らしい時間だった。

櫻井 美砂生

今回初めてシンポジウムの講義を受けました。今までの講義では一つの都市を様々な観点から見ていましたが、今回は3つの都市を比較しながら見ていくことで、今まで狭い視野で考えていたことも広い視野で考えることができました。3つの都市の共通点や相違点を学べるのがいつもの講義と違い、とても新鮮で楽しかったです。そして、何の説明も書かれていない画像からたくさんの情報を読み取り、別のたくさんの情報につなげていくのが学問研究の楽しさなのだなと実感しました。また、先生がたの「都市と国家は違う」「都市は敵同士でなく、味方同士である」という言葉がとても印象的でした。

山田 薫里

3つの都市について学ぶことによって、文明は東西に繋がって広まり共通する部分が出てくると分かった。それぞれの都市の特徴、その都市はどのようにして、いつ創られたのか、なぜその場所に都市が置かれ、どのような形だったのかを知ることが出来た。相違点ばかりではなく、形や理由など似た部分もありながら、都市ごとに個性があって面白く感じた。西安やフィレンツェには城壁があって、内と外をはっきり区別していたが、京都には城壁がなくても成り立っていたことを初めて知った。3つの都市を比較しながら、これらの都市の歴史的関係性を学ぶことができたので、非常に面白いシンポジウムだった。

都市文化論(アジア)

岩田 遥馬

フィレンツェも京都も周りには海があって、海産物がとれた。だが、西安は内陸部に位置しているから海が遠かった。だからフィレンツェ、京都は、船に乗るが、中国は馬に乗るという話を聞いて、おもしろいと思った。内陸部に位置していることによって、海産物の生料理ではなく、乾燥させたものなどを食していた。食卓に並ぶ料理も違ってくるというのは、都市の位置の重要性を感じた。これが地政学にも関係していることだと思った。フィレンツェの都市の形は、2000年前の形が今も残っているというのは、文化継承の叡智を感じた。西安は紀元前1000年前後にできたと学んだが、その当時できたものは何か残っているのか気になった。ローマと中国の測量する器具がそっくりだという話を聞いて、どこかでつながっているそういう関係性や歴史を調べていくとおもしろそうだと思った。都市というものは、人と人が接することによって成り立つ。これまで長い歴史の中で、ずっと人と人が接してきたと考えると、都市の重要性がよくわかった。

門岡 佑太

陳教授、神尾教授、松本教授のシンポジウムを始めて受けてすごく興味深かった。三人とも楽しそうに自分の知識を私たちに伝えようとしているのが分かり、場の雰囲気のよくためになる講義であった。神尾教授が「日本の都は京都である」とおっしゃっていて初めて知り驚いた。今度都について聞かれたときははっきりと京都であると自信をもって言いたいと感じた。一度の講義で三都市について学ぶことができ、またシンポジウムを開催してほしいなと感じた。

篠崎 圭佑

今回のシンポジウムを受けて感じたことは様々な研究レベルの知識を学べる学習だと感じました。普段の授業では都市文化論の中でもアジアをメインに学習していますが、シンポジウムではヨーロッパや日本の都市文化を学べとことにより、とても良いと感じました。そして、3都市の文化論の話を1度に聞くことで、比較や相違もわかりやすく、より深い学びにつながると感じました。特に各先生同士のシンポジウム内での議論はシンポジウムならではの光景であり、話を聞いている私たちにとても良い影響を与えていると思いました。この各分野の先生たちの知識や長年の研究を聞くことができたシンポジウム、今後の学習にも結び付くと考えました。

原川  彩

授業を受けて、衝撃だったことが多かった。なぜなら、西安、フィレンツェ、京都の共通点があると思っていなかったし、あったとしても1つあるかないかだと思っていたからだ。全然違う地域で、何千キロメートルをも離れている中で緯度がほとんど同じ位置にあることが驚いた。海を除いて、三都市をつくるとき、立地条件について似ている考えになっていたのではないかと考えた。しかし、実際には作られた都市の場所も年も違うのに、その場所にした理由は、バラバラではあるが、住みやすい場所、安全性、温帯などをしっかりと考慮されており、技術は今ほど無かった時代でも、以心伝心していたのかのようだと感じた。多くの知識を使って作った結果、同じような緯度の場所で作られていたという史実に尊敬し、感動した。人間は住んでいる地域、年代の違いがあっても、国境を越えた人々の想い、考えが似ていることもあると知れた。また、3人の先生方がそれぞれの国について、討論しているのも興味深かったし、このような機会があるからこそ、世界が広がり、新しい研究テーマも増えてゆくのだと理解できた。

都市文化論(日本)

春木 美穂

シンポジウムの講義を受けてみて、先生方3名がたった一枚の写真やスライドだけでたくさんのことが語れるというのに感心しました。3都市、フィレンツェ・西安・京都の歴史的関係性は、世界の扉が開かれる時、グローバルの時代であることが理解できた時間でした。

浅野 浩輝

本日の2022年シンポジウムでは、普段受けている「京都」以外のフィレンツェ・西安にも焦点を当てた際の考え方を理解することが出来て良かった。大きく感じたことは、三都市を見比べる、つまり比較して見た際に大きさや時間などの数字に注目したり「なぜ」などの理由に焦点を当てたりすることで、違いをきちんと認識出来たことである。言い換えると、比較しやすかったがために何が異なるのか、どの部分が同じであるのかをしっかりと理解出来たということである。また、講義内では知り得なかった知識や専門用語、歴史的キーワードを数多く知ることが出来てメモをたくさん出来て良かった。是非、シンポジウムをあと2回、3回は聴き自分の経験値として学びたい。

北野 雄哉

フィレンツェ・西安・京都3都市の共通点や相違点を知ることができました。それぞれの都市文化論を専門家の先生から聞くことができるという貴重な体験をすることができました。私自身、高校時代に日本史を選択していたことやこの授業でも日本の歴史をふまえた都市伝説を学習していますが、京都と西安における比較は聞き入れやすいものであり、より知識が増えたような気がします。さらに、フィレンツェは初めて聞く内容がほとんどではありましたが、松本先生の熱量で自然と聞き入ってしまいました。そして、同じテーマを同じ時間にそれぞれの異なる都市について聞くことによって、「ここは同じだ。」、「ここは異なる。」など自分の中で比べることに面白さを覚えました。このような機会をこれから少しでも多く経験していきたいです。

内田 裕人

今年も都市文化論を受講して、京都とフィレンツェ、そして西安の3都市を比較してみて、地図上では離れていても、北緯では、ほとんど変わらない場所に位置していることを今年も改めて知ることができた。また、今年も神尾先生、陳先生、松本先生の素晴らしいトークを聞くことができて、この授業を受けてよかったと感じる。昨年受講したフィレンツェに関しては、都市それぞれが個性を持っていることや、周りがもともと別の国であったことなどを再びこのシンポジウムで、改めて学ぶことができた。西安は帝国の中の都市であることなど、京都は、改めて都は今でも京都であることなどが改めて分かった。今回のシンポジウムを受けて、改めて、とてつもなく離れている都市が、形が同じであったり、都市の東西と南北の大きさの差がどの都市も数字上では大きく離れているわけではないということを再び学ぶことができた。