2014.8.19

流通学部スポーツマネジメントコース主催「庄司悟氏、ワールドカップブラジル大会を語る」全3回総括

流通学部スポーツマネジメントコース主催「庄司悟氏、ワールドカップブラジル大会を語る」全3回総括

サッカーW杯ブラジル大会の開催に合わせ、6月5日、6月28日、7月21日、
あべのハルカスキャンパスにて全3回にわたり庄司悟氏にご講演いただきました。

6月5日「ワールドカップ直前講演会」

 ワールドカップの開幕に合わせ、第1回目の講演会では、観戦のポイント・見どころを紹介していただきました。
 「パス本数」と「パス1本を受けるために全選手が走った距離」を座標軸として表現される「コンセプトマップ」はそのチームの戦術の傾向が一目でわかるもので、たとえば、2010年南アフリカ大会のスペインはパス本数が多く、パス1本あたりの走行距離が短い「ポゼッション型」、対して日本はパス本数が少なくパス1本あたりの走行距離が長い「カウンター型」のチームであったことがはっきりと見てとれます。2010年では優勝国のスペインを筆頭におおむね優勢であったポゼッション型のサッカー(いっぽうで典型的なカウンター型であったウルグアイがベスト4という好結果を残しているのが、サッカーが難しく、また面白いところだと思います)は、2014年大会でも引き続き優位を保つことができるのかといった点が見どころとしてあげられました。
 また、シュートの決定率や被決定率に関するデータや、時間帯別に区切られた得失点のデータ、さらには試合映像なども駆使され、さまざまな着眼点を提供していただきました。

6月28日「ワールドカップ分析講演会」

 グループリーグ終了直後、決勝トーナメントが始まるまでの非常に短いインターバル期間を利用して第2回の講演会が行われ、庄司氏にはまさにできたてのデータを用いてグループリーグの傾向を総括していただきました。
 前大会優勝国であり、今大会でも優勝候補に挙げられていたスペインが初戦でオランダに1−5と大敗し、そのままグループリーグで敗退してしまったことは大きな驚きでした。コンセプトマップを確認して見えてきたものは、スペインを代表とするポゼッション型のチームの苦戦とカウンター型のチームの躍進です。このままカウンターを得意とする国が優勝するのか、それともドイツのように高いポゼッションを誇るチームが優勝するのかといった新たな見どころが提示されました。
 残念ながらグループリーグで敗退してしまった日本代表については出場選手別にさらに詳細なデータが示され、それによると全体としてパスはよく回っていたものの、自陣後方の選手を中心にパスが回っていた(つまり、攻めあぐねていた)試合があったり、ホンダや香川といった攻撃の中心選手がボールを失うことが非常に多い試合があったりと苦しい試合が続いたことがよくわかりました。

7月21日「ワールドカップブラジル大会を語る」

 ワールドカップ終了後の7月21日、3回目の講演会として大会の総括を行っていただきました。
 ベスト8に残った国それぞれが戦った準々決勝までの5試合をコンセプトマップ上にとると、各国のスタイルが見てとれましたが、ベスト4に残った国はいずれも普段とは異なる戦い方を強いられた試合を経験しているとのことでした。つまり、不慣れな戦い方であってもそれを勝ち切るだけの力があったとのことです。 サッカーが相手のあるスポーツである以上、常に自分たちの得意な形で戦えるとは限りません。日本の敗退決定後「日本も複数の戦い方を用意して大会に臨むべきであった」との指摘が数多くなされましたが、ベスト4に残る強豪国でさえ普段のスタイルを捨てて戦う試合があったという事実は非常に示唆に富むものです。
 ベスト4に残った4ヵ国について示されたさらに詳細なデータからは開催国ブラジルの苦戦の様子を見てとることができました。そのデータによると、ブラジルは準々決勝のコロンビア戦から苦戦していて、相手に攻撃のリズムを出させないために意図的にファウルを連発し試合を止めていたこと、準決勝のドイツ戦にいたってはファウルで相手を止めることすらできず、ドイツがボールを持つ時間帯では走り回されてしまったようです。ドイツ戦では相手のリズムを狂わせるしたたかさを発揮できなかったところにも1−7という予想外の大敗の一因を見ることができそうです。
 今大会の優勝国であるドイツに関しては、2006年、2010年、2014年の3大会をそれぞれ切り取った3枚の写真から、戦術の継続性と深化を見てとることができました。監督が交代するたびに戦術が大きく変わる日本代表を見慣れている私たちにとってはなかなか考えさせられる写真でした。日本では新監督にハビエル・アギーレ氏を早々に迎え入れましたが、庄司氏も講演で提唱されていたように「日本のサッカーはどうあるべきか」という議論がもっとあって然るべきだったのではないでしょうか。

まとめ

 全3回にわたる講演会をとおして、庄司氏にはたくさんのデータを提示・解説していただきました。私たちの印象を裏付けるもの、逆に印象を覆して驚きを与えるもの、さまざまなデータがありましたが、庄司氏によって切り取られ、再構成されたすべてのデータはいずれも美しく、大変興味深いものばかりでした。
 サッカーの楽しみ方にはいろいろありますが、今回は「サッカーをデータで見る、そして語り合う」という楽しみ方を教えていただきました。W杯ブラジル大会は終わってしまいましたが、世界各国では新たなシーズンに向けて動き出したり、リーグ戦が再開したりとサッカーは今日も続いていきます。庄司氏には4年後といわず、ぜひまた近いうちに講演いただき、私たちをさらなるサッカーの深淵に導いていただくことを期待します。

第1回〜第3回の詳細はこちらをご覧ください

阪南大学流通学部スポーツマネジメントコースについて

社会的な健康意識の高まりや、スポーツが持つ教育的価値の認知により、人々のスポーツへの関心がかつてないほど高まっています。スポーツは今や世界的なビッグビジネス。スポーツ業界の大きな流れを見据え、ビジネスとして関わっていくことができる人材が求められています。スポーツビジネスの最前線を「流通学」で分析し、その成果を社会に発信するのがスポーツマネジメントコースの目的です。「将来はスポーツにかかわる仕事を」という声にこたえて、Jリーグやプロ野球の球団経営をテーマとしたシンポジウムを開催するなど、スポーツ最前線と交わる教育を実践しています。