連携先:株式会社フェリーさんふらわあ

 国際観光学部大谷ゼミでは大阪・関西を発着するフェリー航路に着目し、フェリーを利用する旅行者を増大させるための活動を行っています。2021年度はこれまでに引き続き株式会社フェリーさんふらわあ(大阪・別府、神戸・大分、大阪・志布志航路)にご協力いただき、同社の航路をフィールドにキャリアゼミとしての活動を行いました。
 7月に同社旅客営業部の大西康人部長・尾石実企画・マーケティンググループリーダー・明渡茂樹CSグループリーダーが来学くださり、新造船の計画、コロナ禍の影響と対応、注力している取り組み内容についてご説明いただきました。そして同社航路を利用する旅行の“定番”を若者・学生目線で“アップデート”するというミッションをいただきました。
 活動にあたり学年別でチームを編成し役割を分担しました。3回生がフェリーで大阪・関西を訪れる旅行者を、2回生がフェリーで鹿児島・大分を訪れる旅行者をそれぞれ想定し、若者・学生のニーズをふまえつつ、観光スポットやフェリーを取材していくことになりました。
 3回生は、朝に大阪に到着するというスケジュールを生かし朝食にこだわり、カフェや“映える”スポット、レジャー施設などもおさえつつ、サップボートのこたつでたこ焼き体験など“大阪らしさ”を盛り込むコースを設定し取材を行いました。
 2回生については、コロナの感染状況により宿泊を伴う対外活動が認められない期間が続いたため、実際にフェリーを利用して鹿児島・大分を訪れるのは12月になってしまいました。12月には鹿児島(志布志市・鹿屋市)を、1月には大分(別府市・大分市)を訪れて取材を行いました。ただしコロナの感染拡大により1月下旬および2月上旬に実施を予定していた大隅、大分での取材が中止となりました。
 このほか12月に大阪に停泊しているフェリーの船内見学もさせていただきました。
 そして2月に同社本部において活動の成果を報告させていただきました。

学生活動状況報告

 私たちは多くの人にフェリーを知ってもらい利用を促すにはどのようなプロモーションが必要かを考えてきました。若者は旅行を計画する際にSNSを利用することが多く、特に動画が効果的です。同じ動画でも、既に認知・関心のある人にリーチしやすいInstagramやYouTubeよりも不特定多数にリーチできるTikTokに注目する必要があります。動画はそれぞれでの使われ方を想定したものでなければなりません。一方で紙媒体にも力があります。紙だと信用や記憶のうえで有利です。“映え”への関心が高まっていることから、特に表紙に魅力的な写真が必要です。
このようなことからInstagramおよびTikTokで発信する動画、パンフレットの三点を制作するつもりで船と現地の観光を取材することにしました。船でも現地でも、若者のニーズに合う過ごし方をし、それを写真・動画でどう表現できるかを意識して取材することにし、検討を重ねました。しかしながら、コロナの活動制限で取材が十分にできなかったこともあり、完成形でお示しすることができず、イメージをお伝えする程度のものになってしまいました。
ただ私たちはそれとは別の提案も行うことにしました。私たちが実際にフェリーを利用してみて、現地の観光も若者にとって魅力的だと感じたのですが、フェリーそのものが私たちが思っていた以上に素晴らしいものでした。フェリーがメインとなるような旅を訴求することもできると考えました。事前にいただいていたミッションとは少しずれてしまうことになりましたが、次年度以降こんなことをしたいという提案も加えさせていただくことにしました。
 それは、フェリーそのものの魅力発信としての「フェリーパーティー」をテーマとするプロモーションです。これは私たちの造語です。若者に流行している、“映え”を意識してホテルの客室で少人数で行う「ホテルパーティー」を参考にしたものです。フェリーの客室での「フェリーパーティー」から始まり船内や現地の観光においても“映える”旅を動画などで発信しつつ、それに対応する運賃プランの設定や船内でのパーティーグッズの提供、誕生日の特別サービスを行うなど、重層的に展開することを提案させていただきました。
 大変興味を持っていただき、実現しようとするとこういう検討も必要、こういう課題がある、こういうこともやれるのではと、前向きな反応をいただけたのがとても嬉しかったです。
 当初の動画やパンフレット案は、検討を重ね若者のニーズを反映させたものにしたつもりでしたが、ご指摘を受け、それを実際にどう届けていくかまでの検討ができていなかったことに気付かされました。また発信内容を提案するだけでなく、運賃プランや船内での対応など複数の取り組みを組み合わせることにも興味を持ちました。新年度も機会をいただけるならば「フェリーパーティー」のような提案をいくつか検討し、具体的な提案をさせていただけるよう頑張りたいです。
 活動の機会とご助言をいただいた株式会社フェリーさんふらわあの皆様、ありがとうございました。
流通学部 三宮 はるか

参加学生一覧

岡本 沙千、千賀 琉偉、長岡 実央、岩橋 里桜、餝谷 理菜、谷口 瑠奈、平田 実咲、古川 歩由梨、杉本 有香、黒河内 菜実、塩田 琴美、井口 七海、岩永 こまち、小林 亮太、三宮 はるか、SONG JINSEON、武井 里奈、田渕 未羽、西村 風香、堀江 央晃、山嵜 珠優、山本 薫、山本 華夢

連携団体担当者からのコメント

株式会社フェリーさんふらわあ
旅客営業部 企画・マーケティンググループリーダー
尾石 実 様

 若い方々との接点が少なく、学生の皆さんがフェリーをどのように見ているのかをこのように直接教えていただけるのは貴重な機会です。
 見せていただいた動画はとても綺麗なもので感心しました。またTikTokについては当社では全く議論しておらず勉強になりました。パンフレットもそうですが、それを実際にどのようにターゲットに届けていくかの検討もお願いしたいです。たとえば弊社と学生さんのコラボアカウントを開設し運用することで、宣伝風にならずに魅力を伝えていくなどです。また動画は弊社窓口前のサイネージでATC来場者に見ていただいたり、船内でも放映することができます。パンフレットについては設置場所が難しいため、認知度向上よりも、船内に置きリピーターの掘り起こしに使うなどが考えられるでしょう。
 「フェリーパーティー」については、ぜひ具体的な企画をご提案いただきたいと思います。期間限定で実験的に実施できるかもしれません。

教員のコメント

国際観光学部 大谷新太郎 准教授

 今年度のゼミ生たちは、フェリーさんふらわあのみならず日本全国のフェリー航路を取材し、フェリーで日本一周するなどのコンテンツで、フェリー業界全体の魅力発信にも取り組もうと意気込んでいました。しかしながらコロナをめぐる社会情勢が好転せず、活動制限を受けたまま時間だけが過ぎようとしていました。
 そんななかで、最も古くからお付き合いがあり、このゼミのフェリーをフィールドとする活動の“原点”ともいえる株式会社フェリーさんふらわあ様にお力をお借りし、感染状況の落ち着きを見ながらその時点でできることから少しずつ動き始めるというのが今年度の活動でした。
 当初は宿泊を伴う対外活動が認められていない状況が続いたため、フェリーの利用経験の無い学生が大半であるなかで、フェリー旅行の魅力を発信するコンテンツを考えるには大きな困難がありました。しかし、実際にフェリーを利用する取材が行えるようになるまで、若者・学生のニーズの把握やそれを反映した取材計画の立案に注力してくれました。そしていざ活動が可能になると、熱心に取材に取り組んでくれました。
 取材に同行すると、これまでの学生以上に “SNS映え”にこだわりがあり、船内でこんな撮り方があったんだ、大隅にもこんなおしゃれなカフェがあるなんて、といったように、何度もフェリーを利用し何度も現地を訪れている私でも新たな発見ばかりでした。
 具体的なプロモーションの提案や完成度の高い成果物をお示しできなかったのは残念ですが、「フェリーパーティー」のプロモーションのアイデアは、若者のニーズとフェリーの強みをつなげるものでとても良かったと思います。いただいたご助言も生かし、ぜひ具体的な提案につなげて欲しいと思います。
 株式会社フェリーさんふらわあの皆様には、コロナ禍への対応に骨を折られているなかでも多大なご協力をいただきましたこと、深く感謝申し上げます。