連携先:株式会社フェリーさんふらわあ

 今年度の国際観光学部大谷ゼミでは「観光マーケティングに関する研究と実践」をテーマとし、株式会社フェリーさんふらわあの航路を利用する旅行者を増大させるための活動に取り組みました。
若者に流行しているホテル客室等でのパーティーと同様に、フェリーの客室(船室)でパーティーを行うことを題材とするプロモーションを行おうと、5月にその構想を先方にお示しし、6月には実際に船室でパーティーを行ってみました。それらを通して得られた経験や写真・動画素材をもとに、どのような発信内容が想定できるのか、どのような課題があるのかをゼミ内で検討し、提案につなげていくことにしました。

学生活動状況報告

 私たちは11月に、株式会社フェリーさんふらわあ旅客営業部の皆さまに、これまでにゼミで議論してきた内容をお伝えしました。
まず私たちがフェリーの魅力だと考えていることをお伝えしました。それは、移動と宿泊が同時に行われるため、他の公共交通機関に比べ、時間と空間を有意義に使うことができる点です。移動しながら入浴や食事を楽しむだけでなく、デッキに出て外の風にあたるといった特別な経験もできます。
そして、そんなフェリーと、若者の流行とが結びつくことをお伝えしました。その流行とはホテルやカラオケボックスの客室での“女子会”や“推し活”などのパーティーです。日常と切り離された空間に友人と集まり特別な時間を楽しみます。よくあるのは誕生日のお祝いですが、友人だけでなく自分の好きなアイドルやアニメキャラクターの誕生日を祝う、いわゆる“推し活”もあり、ライブ映像の鑑賞や“推し”のグッズを使った写真撮影も行います。これらはフェリーでも可能であるだけでなく、船ならではの特別な過ごし方ができます。
多くの若者が、そういった “女子会”や“推し活”についてSNSに投稿している現状について、ハッシュタグの集計などを通じてお示ししました。ホテル業界やカラオケ業界ではそんな若者のニーズに対応したプランやサービスが様々な形で提供されており、特に私たちが注目した事例をご紹介しました。
私たちはこのようなパーティーへのニーズとフェリーを結びつけることで、若者がフェリーに興味を持つきっかけをつくることができると考えました。そして実際に船室でパーティーを行う内容を含むコンテンツを発信する必要があると考え、その検討内容をお伝えしました。パーティーを行う船室は「デラックス」とし、予算の関係で往路のみとする。船室で風船やライトなどの飾り付けを行い“女子会”や“推し活”を行うだけでなく、デッキやプロムナード、レストランなどで海の景色を楽しむ、丸窓で“映える”写真・動画を撮るなど船内での過ごし方を提案する内容も発信する。そういった発信を想定して撮影した写真もご覧に入れました。こういったコンテンツを、「TikTok」や「Instagram」を通して動画、特に尺の短い縦の動画で発信すべきだということを、各種調査の結果を交えてお伝えし、その試作動画もご覧に入れました。
並行して、専用運賃プランの設定や、売店での風船などのパーティーグッズ販売、予約制でのケーキ販売、船内で行われているプロジェクションマッピングへのサプライズ映像の投映などのリアルな取り組みも検討が必要だとお伝えしました。
5月に活動計画をお伝えした段階では、自分たちが頭で考えているプロモーション内容についてうまくお伝えできず、前向きに検討していただける提案につなげられるか不安がありました。また、船室でのパーティーが本当に魅力的なものになるのか心配もしていました。しかし実際に行ってみて、私たち自身も手応えがありましたし、それを写真や動画を通してお示しすることにつなげられました。世代が近いスタッフの方々が「楽しそう」と言ってくださったのが何よりも嬉しかったです。
流通学部 井口 七海・田渕 未羽

参加学生一覧

黒河内 菜実、塩田 琴美、井口 七海、岩永 こまち、佐々木 亮太、三宮 はるか、SONG JINSEON、武井 里奈、田渕 未羽、西村 風香、山嵜 珠優、山本 薫、山本 華夢

連携団体担当者からのコメント

株式会社フェリーさんふらわあ
旅客営業部 企画・マーケティンググループリーダー
尾石 実 様

 昨年度からお話に出ていた船室でのパーティーについて、具体的にイメージを掴むことができましたし、若手社員の反応もよく、このような発信の必要性を理解できました。ご提案内容を社内で共有させていただきます。専用の運賃プランの設定や船内でのグッズ販売などは容易ではありませんが、たとえば皆さんが撮影した写真や動画を、SNSの投稿キャンペーンにおける例として使わせていただくなど、実行に移しやすいことから検討できたらと思います。
弊社でも自社アカウントでのショート動画の配信を検討しており、社内でその内容を検討する際にご提案いただいた内容や見せていただいた動画を参考にさせていただきます。

教員のコメント

国際観光学部
大谷 新太郎 准教授

 フェリーをフィールドとするこれまでのゼミ生の活動は、どちらかといえば現地の魅力を探り、それをどう発信するかに力点が置かれていました。しかし今年度の活動は、昨年度の活動を通じてフェリーの魅力にとりつかれたゼミ生達が、フェリーそのものの魅力を若者のニーズと結びつけて訴求していこうという、これまでとは異なるもので、どんな提案になるのか楽しみにしていました。
 フェリー船室でのパーティーというアイデア自体は昨年度末の先方への報告内容に含まれていましたが、実は私にはその内容や魅力がさっぱりわかりませんでした。尾石様も同じような反応だったかと記憶しています。
 それが、若手社員の方々にもご同席いただいた打ち合わせのなかで思いのほか良い反応をいただき、良いアイデアなのかもしれないと思うようになりました。
 しかし、良い提案になりそうだと確信したのは、実際に船室でパーティーを行う場面を見せてもらったときです。実際にやるとこんな“絵”になるのだと理解できましたし、あくまでも写真・動画素材のための”女子会“・“推し活”ではありましたが、ゼミ生達が本当に楽しんでいて、今の若者が時間・空間をこのように共有して楽しんでいるということもよくわかりました。
 具体的な内容を写真・動画で表現できたことに加え、若者のニーズを示すデータや他業界での類似事例もあわせ、この内容のプロモーションを行う意義を明確にできたように思います。実際にプロモーションの企画を進めていくうえでは、その意義や期待される効果について社内の理解を得る必要がありますが、その大変さや面白さを知り、学びになったのではないでしょうか。
 11月に上記のような報告をさせていただいたその後、モデルコースや現地観光を含む特設サイトをイメージした試作コンテンツの制作や、ホテルでの“女子会”・“推し活”などのパーティーに関するニーズ調査の実施と分析を行うなどして、よりよい提案に仕上げていくという計画になっていましたが、この報告文を提出する2月末の時点には間に合わなかったことが残念に思います。また、現地観光について、志布志を拠点とする観光は訴求力があまりなく、1月より新造船が就航した別府を拠点とする観光とフェリーでのパーティーを組み合わせて発信したいとのゼミ生達の考えも聞いていますが、観光を学んでいる皆さんには、むしろ前者について自分たちで新たな魅力を探り出し発信してほしいと思います。
株式会社フェリーさんふらわあ旅客営業部の皆さまには、コロナ情勢の落ち着きや「旅行支援」による旅客需要の拡大、そして新造船の就航により大変ご多忙にも関わらず、ゼミ生に学びの機会を頂戴しましたこと、深く感謝申し上げます。