香川県小豆島で現地調査を実施しました(3)

酒蔵やオリーブ園、移住者のカフェなどを視察しました

 森重ゼミ3年生が9月7日(月)〜11日(金)まで、香川県小豆島で実施した現地調査報告の第3弾です。今回は特産物を調査したグループの報告です。彼らは酒蔵やオリーブ園などを訪れたほか、移住者のグループである「小豆島ガールズ」、移住者が経営するホームメーカーズへの聞き取り調査を実施しました。また、寒霞渓を訪れた観光客からも話をうかがいました。以下で、その時の様子をゼミ生が報告します。
 3回にわたって、香川県小豆島でのゼミフィールドワークの様子をお伝えしてきました。最後になりましたが、今回の現地調査の実施にあたり、土庄町役場、小豆島町役場、小豆島観光協会の方々には、お忙しい中を聞き取り調査にご協力いただきました。また、島内の移住者の皆さまや観光で訪れた方々にも貴重なお時間を割いていただき、聞き取り調査にご協力いただきました。多くの皆さまからアドバイスやご支援をいただきましたことに対し、厚く御礼申し上げます。(森重昌之)

フィールドワークの様子

  • オリーブ公園内のギャラリーにて

  • 酒店・森國での聞き取り調査の様子

  • 土産物店での聞き取り調査の様子

  • 小豆島ガール・メンバーの高岸さまと

  • ホームメーカーズでの聞き取り調査の様子

  • ホームメーカーズの三村さまと

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参加したゼミ生の報告

温かく出迎えてくれる移住カフェ
 国際観光学部3年 佐藤研

 今回、私たち森重ゼミ3回生は、小豆島への移住者をどのように増加させるかをテーマに現地を訪れました。コンセプトは小豆島の魅力を載せる動画とマップの作成です。景観班、アクティビティ班、食と文化、地域住民の聞き取り調査班の3つのグループに分かれ、それぞれ調査を実施しました。私は今回カフェ「ホームメーカーズ」を経営する三村さまご夫婦の聞き取り調査について書かせていただきます。
 三村さまご夫婦は名古屋から移住された方で、もともと小豆島にお祖父さまがおられ、年に一度小豆島に遊びに来られていました。名古屋では共働きで、休みが月に2日しかなく、家族と過ごす時間が少なかったので、生活環境を変えたい、独立をしたいと思うようになったそうです。2011年3月に東北大震災の影響を受け、生活の不便さを改めて知り、そのきっかけで生きる力をつけたいと思い、年に1回遊びに行っていた小豆島に移住することを決意されました。移住されてからは三村拓洋さまの趣味である農業をメインにカフェを開き、小豆島の住民の方々に野菜を使った料理、飲み物を提供されています。その他にも、住民のために野菜の直接販売もされています。
 移住して良かった点は、家族との時間が増え、ご飯も一緒に食べられるようになった点だそうです。それに農業を始めた結果、三村さまのお子様が空いている時間に農業を手伝ってくれ、幸せな時間を過ごすことができるようになったことが、移住して一番良かったことだそうです。逆に移住して悪かったところは、手に入るものがとても減ったことです。以前はすぐに手に入っていたものが今では手に入らなくなってしまい、ショッピングなどが満足にできないことが欠点だそうです。しかし、今はインターネットの時代でもあるので、ウェブサイトを利用して購入しているそうです。他にも、地域住民との距離が近過ぎることによって、自分たちの私生活が見られているように感じるそうです。しかし、これは必ずしも悪いことではなく、地域住民と仲良くなった結果に結び着いていると話されていました。
 小豆島の一番の魅力は、立地条件が良いことです。小豆島は土庄港から高松港までフェリーで約1時間の距離です。すぐ近くには四国や淡路島があり、とても島とは思えないほど、立地条件が整っています。また、比較的大きなスーパーが自動車ですぐに行ける距離にあります。島暮らし、田舎暮らしをしながら不便なところがあまりないということは、とても魅力的だとおっしゃっていました。さらに、美しい景色が一望できる点も魅力だそうです。三村さまご夫婦のお勧めの景観スポットは四方指と山岳霊場とのことでした。四方指は東西南北のどの方向を見ても景色がとても綺麗だそうです。また、山岳霊場はとても登るのがきついそうですが、とても神秘的であり、縁を結んでくれる寺だと言われています。
 移住を考えている人と話す機会はたくさんあり、一番聞かれることは仕事の有無だそうです。小豆島で仕事する場合、農業やオリーブ農園がメインになってしまい、サラリーマンとして過ごすには不便ではないかということであり、働く場所がないということが、小豆島の一番の課題だそうです。これを改善することによって、もっと移住者が増えるのではないかと話されていました。
 最後になりますが、この度お世話になったホームメーカーズの三村さまご夫婦に御礼申し上げます。お忙しい中、私たちのためにお時間を割いていただき、ありがとうございました。

女性目線を加えた観光
 国際観光学部3年 榊原知恵

 観光スポット以外にも、住んでいるからこそわかる景色や文化、島民などに目を向けて、女性の視点から魅力を発信したいとプロジェクトを立ち上げられた、「小豆島ガール」のおひとりにお話をうかがいました。結成のきっかけは、映画「八日目の蝉」の撮影が小豆島で行われたことにあります。日常的な風景や魅力をせっかく素敵に捉えてもらったのに、このままではもったいないと感じられたそうです。島の生活を楽しみ、地元が大好きで、訪れる方々に少しでも役立てばいいなと考え、観光施設で働く女性や隣町の女性に声をかけ、集まったメンバーだそうです。
 小豆島に住んでいて良かったことをうかがうと、子育てがこの島でできたことだと言います。子どもの数は少ないですが、幼い頃からずっと一緒に同じ学校に通っているので、やはり絆が深く、子どもたちも安心できる島なのだと感じました。また、島の魅力は自分たちのペースで暮らせることだと教えてくださいました。無理をせず、それぞれのスタンスで生活し、趣味を楽しめる余裕が持てることだそうです。近くに海や山があり、気候や時間によって景色の変わる朝日や夕日を楽しんだり、仲間や島民と過ごす時間など、いつもとは違う気分を簡単に味わったりできることも魅力のひとつだとおっしゃっていました。
 次に、観光客と触れ合う時になにか難しいと感じることがあるか尋ねたところ、都会の便利さを求められた時だったといいます。Wi-Fiの環境や銀行の場所を聞かれた時にギャップを感じられたそうです。しかし、観光客には何度も訪れて、毎回新たな魅力を感じてもらいたいし、ゆっくりと過ごして、いろいろな角度から島を見てほしいとおっしゃっておられました。主にブログを通して発信されていますが、別の仕事や子育てをしながらの活動のため、できる人ができる範囲で活動を継続していく予定だそうです。
 小豆島では毎年500人近くの人口減少が進んでおり、Iターン、Uターンの必要性が高まっています。一度地元を離れ、生まれ育った町の魅力に気づいて戻ってこられたり、小豆島ガールの存在が移住を決めたひとつのきっかけだったと言って移り住まれた方であったり、家族と過ごす時間を大切にしたいという思いで移住された方など、さまざまな方がいらっしゃいます。
 小豆島ガールとしての活動が進むにつれて、「ブログに載せるごはんの写真に地元の食材を使おう」、「島ならではの自然の中で子どもを遊ばせよう」など、ふだんの生活の中でも意識が変わったこともあるといいます。また、今まで男性主導であった観光業が、女性の意見も必要とされ、重要視されるようになったことも変化だといいます。女性ならではの視点で島を盛り上げようと活動されていることに、とても魅力を感じました。「どこに看板を設置しようか」から「どんな看板にしようか」だったり、「何冊パンフレットを印刷しようか」から「色はどうしようか」など、女性の意見が取り入れられることで違った魅力がつくられ、発信の方法も変わるのだと気づきました。
 また、メンバーに限らず、小豆島が大好きな女性たちを小豆島ガールと呼んでいるそうですが、活動やブログを拝見していると、さらに小豆島の魅力を探ろうと毎日を楽しく過ごされ、充実していることが感じ取れますし、観光客を笑顔で迎え入れているようなイメージができると思います。私自身は小豆島に訪れたのが3回目でしたが、毎回違う発見ができ、自然や人の温かさに驚かされます。これからフィールドワークでの活動を踏まえて、また来たいと感じてもらうためにはさらにどのような工夫ができるのか、どのようなつながりが生まれるのかについて研究し、まとめていきたいと考えています。

フィールドワークにおける住民への聞き取り調査の必要性
 国際観光学部3年 劉峻峰

 瀬戸内海で2番目大きい島である小豆島は、知名度こそ比較的高いものの、人口が年々減っており、深刻な問題になっています。阪南大学森重ゼミでは、9月7日から11日まで、「移住者を増加させるために、新たな魅力を発見する」というテーマで、小豆島でフィールドワークを行いました。地域住民との触れ合い、地域住民の声に耳を傾けるフィールドワークであり、9月10日に集中的に住民に聞き取り調査を行い、情報収集を行いました。
 今回は、島内の観光地や特色な飲食店、土産物店などで地域住民や現在移住されている方の声を聴きました。中山農村歌舞伎舞台の斜め前にある「こまめ」というカフェで働いておられる移住者に聞き取りをしました。ご夫婦は小豆島が好きで、5、6回観光目的で訪れた後、2015年2月に大阪から小豆島に移住されました。移住してから、海や山が近く、心が安らぐことが一番良かった一方、周りとの関係は難しいとおっしゃっていました。自動車があれば不便ではなく、仕事が都市より少ないですが、あるにはあるので困らないそうです。
 二十四の瞳映画村の前にある土産物店を経営している、Uターンの地域住民にも話をうかがいました。ご自身は進学や就学のため、3年ほど大阪に出ていましたが、自分で商売をやっていけると思い、小豆島に帰ってきたそうです。移住者に関して、増えること自体は良いですが、良い人に入ってきてほしいとのことでした。島に住むことには不便さや不安はなく、スーパーやコンビニエンスストアも近くにあるうえ、銀行のATMもあるので、島民だけではなく、観光客にとっても便利です。島ではありますが、ちょうど良い生活ができるようです。ただ、主要な観光施設だけではなく、自然などの他の魅力も知ってほしいとのことでした。農業だけではなく、オリーブなどの自然要素をビジネスとして捉えれば、見方が変わるのではないでしょうか。島の経済を潤すことで、活性化できるように思いました。
 このほか、二十四の瞳映画村に務めている移住者や小豆島ラーメンの地域住民、寒霞渓にある土産物店のUターンのスタッフなどにも聞き取り調査を行いました。
 それぞれの情報をまとめて感じたことは、小豆島に移住した一番の理由が自然であることです。全員が「自然と触れ合える」、「自然を楽しめる」と答えておられました。移住のきっかけは、観光と移住体験と答えた人が多かったです。地域別では、移住体験は東京から来られた人が多いですが、聞き取り調査をさせていただいた方の中では、大阪から来られた移住者が一番多かったです。また、不便なことについては、慣れればそれほど不便でもないと思われます。今回の聞き取り調査により、以上のことがわかりました。

食の魅力から見た移住者増加の可能性
 国際観光学部3年 川口華月沙

 9月8日、小豆島唯一の酒蔵である森國を訪問し、店員の方にお話をうかがいました。森國は酒造会社として経営すると同時に、11時から17時までランチや軽食、デザートを出すカフェを営業し、ショップ・ギャラリーも開放しています。そして、20時からは予約制のバーとして、森國で製造された酒を提供しています。もちろん昼間でも酒の販売・飲食もでき、試飲も行っています。森國は2005年に創業し、初めの清酒「森」を販売しました。そして、いくつかの原酒や吟醸酒、純米酒などをつくると同時に、2007年にカフェ部門を開始し、今年7月には姉妹店であるベーカリーショップをオープンしました。ベーカリーショップでは森國と同様、持ち帰りと店内飲食の両方ができるようになっていて、そこでは森國で使われている酒米を使ったコッペパンを販売しています。
 私たちが15時頃に来店した時には、食事のメニューはすべて売り切れで、デザートのみとなっていました。店内のお客さまは私たちの他に数名で、カウンター席でコーヒーを飲んでいる方や、ギャラリーで酒を見ている方がおられました。店内は飲食するためのカウンター席とテーブル席が2つ、奥に座敷がありましたが、昼時にはほぼ満席の状態で、待つお客さまもおられるそうです。森國には、2階から下を見下ろせるようなカウンター席もあります。場合によっては、お客さまに開放することもあるそうですが、基本的にはイベントの観賞用の席になっています。
 森國では、地方や地元のアーティストがイベントとして来店し、弾き語りなどの公演を行っています。以前は森國からアーティストに依頼し、来店していただいていたそうですが、今は常連のアーティストが来られているようです。
 森國に来店するほとんどの方が観光客で、カフェ利用と酒を買っていく方の割合がほぼ半分であるそうですが、地域住民のお客さまにはあまり利用されず、立地場所もわかりにくいため、あまり知られていないようです。しかし、今年ベーカリーショップがオープンしたことで、森國を知る地域住民も増え、朝ご飯を食べに近所の方が森國のカフェを利用されるそうです。また、地域住民の利用が少ない要因として、小豆島の方々は外食する機会があまりないこともあげられます。
 今回、森國を訪問して感じたことは、観光客と地域住民の認識にギャップがあるということです。観光客からすれば、森國は島唯一の酒蔵であり、観光資源の1つであると認識しますが、地域住民は知る人も少なく、特に有名でもありません。小豆島の住民が外食する機会が少ないので、地域住民が食の魅力を見出すことは難しいかもしれないと思いました。しかし、酒より手軽に買えるベーカリーショップをオープンすることにより、地域住民の利用客が増えたことから、PRをすれば食に対して魅力を感じ取ってもらえることがわかります。食というのは生活において最も重視されることの1つであり、食の魅力は移住にあたっても大きな魅力になると感じました。

活発な移住者増加に向けた活動
 国際観光学部3年 藤田亜希

 小豆島に移住者を増やすために、オリーブ公園ではいくつかの移住者増加に向けた活動が行われていました。1つ目は、「リアル“オリーブ農園”スタッフ体験」です。この活動は今年からスタートしたもので、スタッフと一緒にオリーブオイルができるまでの製造工程を見学し、オリーブの収穫・選果を含む農作業全般の体験を通じて、小豆島のオリーブの魅力を体感する宿泊滞在型イベントです。特に週末は予約でいっぱいです。オリーブに興味がある方や農業に興味がある方が多いようです。募集期間は10月初旬から11月末までで、1日5名程度、小豆島以外にお住まいの原則15歳以上の方が参加可能です。参加費および宿泊費が完全無料ですので、参加しやすいことが魅力です。
 2つ目は、オリーブ農園での「あこがれの島暮らし体験」です。開催日は10月のはじめで2泊3日の行程です。募集人員は20名程度です。私たちが訪れた2015年9月9日現在で、すでに12名の予約が入っていました。参加条件は?小豆島(香川県)で定住・就農を考えている方、?2泊3日の宿泊ができること、?アンケートに協力すること、?18歳以上大人のみで参加することです。こちらも参加費および宿泊費は無料です。農家や島民と直接話す機会もあり、町役場の方とともに活動します。参加者には必ずアンケートに協力していただき、体験活動の良い点と悪い点を記入し、悪い点は改善につなげていきます。
 スタッフ体験、島暮らし体験ともに、電話やネットの予約が可能です。仕事を辞めて田舎暮らしを考えている都会の方の参加者が多く、定年後に参加される方もおられます。オリーブ公園には、「魔女の宅急便」のロケ地が再現された場所があり、ほうきをレンタルして写真を撮ることができるサービスを始めてから、観光客が増えたそうです。すでに500名分の写真が集まっています。
 私たちが思っていた以上に、小豆島では移住者の増加に向けた活動が活発的に行われていました。参加者にも負担がないよう、気軽に参加できることがとても良いと思います。特に、移住を考えている方が参加者に多いとうかがいましたが、これらの活動なら移住を考えていない私でも参加してみたいという気持ちになったので、移住に少しでもつながるのではないかと思います。アンケート結果を改善するというところも、今後の参加者や移住者を増やすための活動であり、とても前向きなスタッフや島民を見て、素晴らしい活動だと思いました。小豆島のことをよくわからない状態でフィールドワークに参加しましたが、今回のフィールドワークで小豆島がとても良い島だということを実感しました。島民の方は小豆島に移住者を増やすためにさまざまな活動をされていることがわかりましたが、その情報をどのように小豆島以外の方々に伝えていくか、知っていただくかが課題でもあると思います。そのために、もっといろいろな方に小豆島のことを知っていただきたいです。私たちがフィールドワークの結果を生かして、移住者が増える活動を今後もサポートできるよう、ゼミ活動に参加したいと思います。