『観光による地域社会の再生』で学会賞を受賞しました

観光学術学会平成27年度学会賞「教育・啓蒙著作賞」を受賞しました

 昨年3月28日に出版した阪南大学叢書101『観光による地域社会の再生−オープン・プラットフォームの形成に向けて』(現代図書、A5判205ページ)で、筆者(森重昌之)が観光学術学会平成27年度学会賞「教育・啓蒙著作賞」を受賞しました。これは観光学の教育・啓蒙に寄与した著作の著者に授与されるもので、7月5日に阪南大学で開催された観光学術学会第4回大会で授賞式が行われました。
 筆者の研究成果のみならず、本書で取り上げた対象地域の取り組みがこのような形で評価され、とても嬉しく思います。これを機に、今後も教育・研究活動に邁進してまいります。(森重昌之)
 なお、観光学術学会による講評は次の通りです。

≪講評≫
 本書は、著者による博士論文『観光を通じた地域再生に寄与するオープン・プラットフォームの研究』(北海道大学、2010年12月、264ページ)の内容を加筆修正し、一般読者向けにまとめたものである。
 著者は、過疎化により担い手が不足し、自律的な問題解決が困難となりつつある農山漁村においては、「地域社会を持続するための自律的な問題解決力の回復」と定義される地域再生が求められていると指摘する。その実現のためには、ビジョンに基づいて地域社会が主導する観光の推進を通して、自律的であると同時に地域外の人びとがかかわることのできる「オープン・プラットフォーム」を新たな問題解決のシステムとして形成していく必要がある、と論じている。
 内容は大きく3部で構成されている。第1部(第1章)では先行研究の検討、ならびに研究対象である現在の農山漁村地域の問題を指摘した上で、「オープン・プラットフォーム」の導入を提起する。第2部では、北海道内にある夕張市(第2章)、黒松内町(第3章)、標津町(第4章)、登別市(第5章)を取り上げ、観光による地域再生の実証分析を展開している。第3部(第6章)では、4つの事例研究を踏まえて、地域社会再生に向けた「オープン・プラットフォーム」の形成に関する理論的なモデルを提示している。
 本書は、数は限られるものの丹念な事例研究を踏まえて、「オープン・プラットフォーム」を通した、観光による地域再生に関する理論的なモデルを導出し、多くの過疎化の進む他地域への応用の可能性を示したことは、本学会の教育・啓蒙著作賞にふさわしい貢献として高く評価される。また、観光系の学会での地域活性化・まちづくりの研究報告をみていくと、特定の地域を対象とした事例発表が多くなりがちであるなかで、著者による理論化の試みは、観光の学術研究の発展に新たな刺激を与えるものであることも付記しておきたい。

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