4年生は卒業研究を、3年生はゼミ活動の成果を発表しました

 1月27日(土)、森重ゼミ2~4年生の28名が出席し、第11回卒業研究発表会を開催しました。このゼミでは、卒業研究を大学4年間の学びの集大成と位置づけており、卒業研究を通して社会的課題の発見や論理的思考、自身が考えたことを的確に人に伝えるプレゼンテーションの能力の醸成をめざしています。そして、その成果を発表する場として、毎年卒業研究発表会を開催しています。4年生は論文執筆に苦労するのですが、今年度も例外ではなく、提出期限ぎりぎりまで加筆修正を繰り返し、卒業研究に向き合ってきました。
 南キャンパスでの最後のゼミ活動となった今年度の卒業研究発表会では、4年生10名がさまざまなテーマで発表、質疑応答を行いました。その後、3年生が長崎市池島で実施したゼミ研究の成果「人口減少・過疎化が進む池島での観光のあり方」について発表しました。
 以下で、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)

当日の様子

  • 開会挨拶の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 質疑応答の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 3年生のゼミ研究成果発表の様子

  • 3年生のゼミ研究成果発表の様子

  • 卒研発表会後の全員での記念撮影

※関連記事

卒業研究のテーマおよび要旨

植物園・フラワーパークの魅力向上の可能性(No.133)
 国際観光学部4年 井上友音

 新型コロナウイルスの影響でアウトドア志向が高まっているにもかかわらず、植物園・フラワーパークは入場者数が減少している施設が多い。そこで、植物園・フラワーパークに足を運んでもらえるようにするには、どのような魅力向上の方法が良いか検討することを研究目的とした。植物園・フラワーパークの定義や類義語、観光関連の取り組みや集客状況などを調べた結果、魅力的な植物園・フラワーパークは多く存在するにもかかわらず、魅力の向上ができていないことが明らかになった。そこで、いくつかの植物園・フラワーパーク、動物園を調査・分析した結果、魅力向上につながる方法の共通点が明らかになった。それは、入場者をつぶさに観察すること、植物をじっくり観察すること、魅力を変化させることであった。これらを生かした取り組みを植物園・フラワーパークで実践することで、植物園・フラワーパークの魅力向上につながると考えた。

衰退している郷土料理の保全・継承方法-滋賀県の郷土料理を事例に(No.134)
 国際観光学部4年 森直輝

 本研究は、人口減少や新型コロナウイルスなどの社会環境の変化によって滋賀県内で衰退している「ぜいたく煮」と「おあえ団子」の2品の郷土料理を保全・継承するために、どのような活動を行えばよいか検討することを目的とした。先行研究を整理し、既存の研究には郷土料理の衰退に着目した保全・継承方法の研究が見られないことを指摘した。次に、郷土料理の現状を整理し、なぜ2品が衰退しているのか、他の地域ではどのように保全・継承が行われているのかをまとめ、そこから2品を他産業と連携して新たな価値を得るためにどのような取り組みを行うべきかを課題とした。そこで、2品の栄養面から酒蔵ツーリズムとの連携によって新たな価値を得ることができると考え、酒蔵ツーリズムで郷土料理を保全・継承している事例からそれぞれの成功要因を分析した。その結果、酒蔵ツーリズムで郷土料理を保全・継承するために、地域資源の再認識や明確なビジョンの策定が重要であることを示した。

環境に配慮した旅行の動機に関する研究(No.135)
 国際観光学部4年 伊櫻七海

 本研究は、日本人が環境に配慮した旅行をするにはどうしたらよいのかを明らかにすることを目的とした。はじめに、環境に配慮した旅行を定義づけた後、日本人の環境意識を調査した。その結果、他国に比べて日本人が環境に配慮した行動をとらない理由は「何をしたらよいかわからない」ことであった。これを解決するために、まず3つの国の事例を参考に、レスポンシブル・ツーリズムの考えを理解してもらうこと、旅行時に行える環境配慮例を取り上げた。また、どのようなきっかけがあれば環境に配慮した行動をとるのかを調べたところ、日常行動に少しの変化を起こすだけで経済的なメリットを得る場合や特別な体験ができる場合に、積極的に行動することが判明した。そこで一例として、宿泊施設に歯ブラシを持参した人にインセンティブを与えることで使い捨てプラスチックを減らし、環境に配慮した旅行の日常化を促す方法を提案した。

和歌山県かつらぎ町における関係人口の創出・拡大の可能性(No.136)
 国際観光学部4年 玉置瑞季

 本研究は、和歌山県かつらぎ町において関係人口を創出することを研究目的とした。日本では2003年に人口のピークを迎えた後、減少が続き、その対策として地域おこし協力隊や定住人口・交流人口の拡大を図ってきたが、十分な効果が得られなかった。そこで、地域と多様に関わる仲間を指す関係人口に着目し、地域活性化に取り組んでいることを現状で明らかにした。かつらぎ町でも人口減少が起こり、産業の担い手不足が課題となっており、定住人口・交流人口の拡大を行っていたが、関係人口の取り組みは行われていない。そこで、かつらぎ町においても関係人口の創出を行うことで課題解決し、地域を活性化させることができるのではないかと考えた。関係人口の創出に成功している事例を調査すると、自然や歴史、立地といった特性や魅力となるものにフォーカスしているだけでなく、関係人口となり得る人のターゲットを絞っていることが明らかになった。これらを生かした取り組みを行うことで、かつらぎ町においても関係人口の創出・拡大につながる可能性があると考える。

棚田の景観維持と観光地としての発展の可能性-下赤坂の棚田を事例に(No.137)
 国際観光学部4年 黒葛原大珠

 日本の棚田は、美しい景観と多くの多面的機能を有しているにもかかわらず、多くの棚田は耕作放棄が問題となっている。そこで、本研究では「下赤阪の棚田」を調査対象地とし、これまで下赤阪の棚田と他の地域の棚田では、どのような取り組みが行われているのか整理し、下赤阪の棚田の景観維持と観光地の発展を検討することを研究目的とした。下赤阪の棚田の現状を整理する中で、高齢化問題や「棚田夢灯り」の資金確保が難しい現状にあることが明らかになった。そこで、いくつかの棚田保全と棚田グリーンツーリズムの事例について調査・分析した結果、観光客誘致につながる要因の共通点が明らかになった。それは、他の地域では見られない観光資源と棚田を掛け合わせること、1年を通して棚田の魅力を発信すること、都市近郊を活かした多様な体験プログラムを用意すること、コンセプトを付け加えることにより棚田の魅力をより引き出すことであった。これらを活かした取り組みを「下赤阪の棚田」で実施することで、観光地としての知名度を増し、交流人口の増加につながると考えた。

ソフィア堺プラネタリウムの稼働率向上の可能性(No.138)
 国際観光学部4年 林みつば

 本研究は、ソフィア堺プラネタリウムの稼働率向上の可能性を検討することを目的とした。まず、プラネタリウムの現状とソフィア堺プラネタリウムの概要を整理した。そして、ソフィア堺プラネタリウムに聞き取り調査を行った結果、冬季に入場者数が減ることで、夏と冬の平均値が稼働率低下の数値として表れていることがわかった。そこで、冬季の入場者数の増加に向け、黒川温泉、新江ノ島水族館、白馬岩岳マウンテンリゾートの取り組み事例を調査し、冬季の稼働率を上げるポイントを分析した。その結果、地域との団結強化、今ある素材を活かす、時代やニーズの研究がポイントであることを明らかにし、ソフィア堺に当てはめて考察した。本研究の成果を生かすことで、全国のプラネタリウムの稼働率向上につながると考えられる。

ミュージックツーリズムを用いた地域活性化の可能性(No.139)
 国際観光学部4年 尾崎昴史

 この研究の目的は、ミュージックツーリズムを用いた地域活性化の可能性を論じることである。まず、音楽産業と観光産業の双方にメリットを促すミュージックツーリズムの定義と分類を明らかにし、ミュージックツーリズムを行う上でのメリット、デメリット、問題点を整理した。その結果、日本のロックフェスティバルやクラシック音楽祭、アイドルのコンサートなどのイベント開催による地域への恩恵は、これまであまりなかったことが明らかになった。この研究の課題はフェスなど、さまざまな音楽イベントが開催されているのにもかかわらず、地域に十分なメリットがもたらされていない。そこで、加賀温泉郷フェスでと定禅寺ストリートジャズフェスティバルの2つの事例を調査・分析した結果、フェス参加者がその土地固有の資源やアクティビティなどに触れながら地域の人びとと交流するには、参加者を周遊させるしくみが必要であることを指摘した。これを実践することでミュージックツーリズムを通じた地域活性化に貢献できると考えた。

海洋ごみ問題における若者の認知度向上(No.140)
 国際観光学部4年 坂口皓亮

 本研究では、海洋ごみ問題に対する認知度が低いとされている若者に焦点を当て、若者の海洋ごみの認知度を高める方法を明らかにすることを研究目的とした。先行研究では、海洋ごみ問題対策や調査などの研究は見られたが、若者の海洋ごみ問題に対しての認知度を上げる方法についての研究は見られなかった。そして、現状分析を通じて海洋ごみとは何なのか、どのような悪影響を及ぼしているのかを調査した結果、海洋ごみが増え続ければ、環境だけでなく、人体にも影響を及ぼすことが明らかになった。そこで、若者の認知度向上に向け、You Tubeを通じた発信が効果的であると考えた。そして、「身近なものを取り入れる」や「誰にでも実践できる」という要素を取り入れ、海洋ごみについて認知し、対策などの実践してもらえることを明らかにし、その具体例や方法を提案した。

ベジタリアンツーリズム推進による訪日外国人増加の可能性(No.141)
 国際観光学部4年 藤井前

 本研究は、ベジタリアンやヴィーガンのインバウンドを増やすためには、日本人の理解を進めることが重要と考え、日本人の理解者を増やす方法を検討した。まず、ベジタリアンやヴィーガンについての現状を調べた上で、多くの国でベジタリアンやヴィーガンが増加していることがわかった。一方で、日本では団体などが活動を行っているにもかかわらず、他国に比べると増加率は低く、ベジタリアンやヴィーガンも少ないことから理解が乏しいことを課題としてあげた。そこで、他国のベジタリアンやヴィーガンのイベントを調査した結果、これらのイベントにベジタリアンやヴィーガンではない人びとが参加していることを明らかにした。その要因として、音楽やヨガなどの食以外の要素を取り入れていることを指摘した。そこで、日本でもこれらの要素を取り入れたイベントを開催することによって、ベジタリアンやヴィーガンへの理解が深まり、インバウンドの受け入れにつながると考えた。

新たな地方創生の可能性を持つサウナツーリズム(No.142)
 国際観光学部4年 磯田圭吾

 サウナを対象とした観光が行われている中で、ツーリズムとして定義づけされていないことに疑問を感じた。そこで、本研究は既存のツーリズムを整理した上で、「サウナツーリズム」を定義することを1つの目的にした。まず、若者がサウナを目的に地方へ旅行している現状を整理した上で、サウナを目的とした観光と類似したウェルネスツーリズムやヘルスツーリズム、アウトドアツーリズムの相違点をまとめ、サウナツーリズムを「サウナ体験という特定の事象を目的に地域に足を運び、食や文化を知ることができるツーリズム」と定義し、地域コミュニティへの参加を促す特徴を持つことを明らかにした。そして、実際に行われている取り組みをあげ、地方ならではのアウトドア環境の中にサウナがある、サウナアンバサダーによるプロモーション、地方自治体が主体となっている共通点を整理した。この結果から、サウナツーリズムを通して関係人口の創出に至る可能性を示し、地方創生につながるサウナツーリズムモデルを提案した。