プロフィール

経営学部 経営学科

片渕 卓志 (カタフチ タカシ)

大学入学以来から数えると30年以上日本の自動車産業を研究しています。トヨタ自動車の研究にほぼすべての時間を費やしてきました。
日本での自動車産業の研究は1950年代までさかのぼれますが、特に1980年代以降、日本の自動車メーカーの国際競争力の高さの源泉をめぐって、社会科学系では学会の枠をこえて膨大な研究がなされてきました。世界にも日本の自動車産業を研究は広がり、その研究のブームは2000年代まで続きました。その研究の中心は常にトヨタ自動車を対象とした者でした。「トヨティズム」という言葉も生まれました。
トヨタ自動車は現在、世界で1番の1000万台以上の車を年間生産し販売していることはご承知の通りです。
2019年に『トヨタ品質管理のメカニズム』(晃洋書房)を出版しました。この本は、日本の製造業が「品質クライシス」として『日経ビジネス』に特集された頃に出版されました。本の帯には、「日本製品の品質に対する信頼回復の道」、「トヨタ自動車の世界品質への飛躍の礎は、1960年代における経営管理の刷新によって築かれた。当時のトヨタ品質管理の運動メカニズムを、本社機構から工場・製造現場までを視野に入れつつ、一次史料と社員へのインタビューをもとに実証する」とあります。
本書の研究成果を一言でまとめれば、本社部門から工場の一般作業員までの全社的品質管理におけるトヨタの品質管理に関する規則と職務権限体系を解剖し、品質管理活動が原価低減活動の手段として位置づけられる組織を構築したことを解明することに成功したものだと考えております。トヨタの研究は恐ろしいほどに研究業績の分厚い分野でありますが、トヨタ自動車本体についてのこの分野についての一次史料にもとづく研究は今もありません。トヨタといえば、かんばん方式、ジャスト・イン・タイムなどの研究が中心でしたが、実は品質管理と原価低減を両立させる現場の改善活動は現場が自主的に行っていると考えられていましたが、トップ・マネジメントが規則と職務体系を決めたことによる「機能別管理」、「継続的改善」、「方針管理」がもう一つのこの企業の国際競争力の源泉なのです。
本書は新聞で紹介さ、雑誌でも書評いただき、また光栄にもある学会賞をいただきました。
大事な点は、トヨタにおいては車両ごとのトヨタ規格とは別に製造工程にはさらに厳しい管理水準が設定され品質管理活動が行われていること、そして品質管理活動をすればするほど、製品の性能は向上し同時に会社の利益の源泉にもなっているということなのです。この規則と職務権限体系の原則は今も変わっていません。
本書が、日本の多くの製造業の参考になればたいへん嬉しく思います。私は講演の依頼を受けても説明が上手ではないのでこれまで講演は断っていますが、個別にトヨタ自動車の全社的品質管理を参考にしたいので質問したいということがあれば、日本企業の方であればどのような企業であれ、いくらでも説明することで貴社に貢献し、日本の産業経済の繁栄に寄与したいと常々考えております。またお会いすることができれば、今回、書ききれなかった生の資料もお見せすることもできます。ご希望の方があれば、遠慮なくお問い合わせください。どうすれば、品質や精度の向上と原価の低減を両立させる規則や組織をつくることができるかを説明して差し上げられたらと考えている所存です。
品質管理の進め方につきましては、何より「㈶日本科学技術連盟」へお問い合わせして、ぜひセミナーに参加したり、『QCサークル』をご購読され、現場の不良対策を学ばれることを心からお勧め致します。
本書の刊行にあたっては、のちに第5代社長豊田英二氏の命により、1962年に品質管理部長、トヨタ自動車がデミング賞を受賞した1965年にはQC推進統括本部長を担当され、トヨタの品質管理規則・原価管理規則と業務分担表の作成を行った故水野崇治氏にご指導とご厚情に多大なご助力を賜りました。かつてご自宅への訪問をお許しいただき、インタビューにお応えいただいた際には、フレデリック・W・テイラーの原著を手に取りながら、「よく勉強していますね」とのお言葉を頂戴いたしました。その折のご厚意は今も忘れることができませんし、そのお言葉は、今なお私の心に深く刻まれております。ここに深く感謝申し上げるとともに、謹んで御霊の安らかなることをお祈り申し上げつづけております。
今後も、引き続き、日本の製造業の飛躍のために研究に精励する所存です。
学生の皆さんには、経営、経済、政治、社会問題に幅広く勉強してほしいといいたいです。
職名 教授
出身地 横浜市
出身校 大阪市立大学大学院経営学研究科 後期博士課程
学位 博士(経営学・大阪市立大学)
担当科目 経営学入門、経営管理論
研究テーマ
  • 自動車産業の国際競争力と戦略
  • 工場管理と経営組織
  • 品質管理の組織と管理体制、リコール問題
  • ドイツ自動車産業の研究
  • 気候危機とカーボン・ニュートラル実現のための脱炭素先行地域に関する研究
主要業績
  • 「トヨタ品質管理のメカニズム」晃洋書房, 2019年
  • (訳書)「ボーフムのオペル工場——あるグローバルな自動車大手の生存競争での敗北?——」(Blöcker, Antje, [2013]: Opel-Werke in Bochum: verlorener Überlebenskampf in einem globalen Automobilkonzern? In: Geographische Rundschau, Nr. 6, S. 12-19 )『阪南論集 社会科学編』第53巻第1号,2017年10月
  • 「トヨタ生産システムと日本のものづくり」『経営労務事典』晃洋書房, 2011年
  • 「循環統合型生産システムの構築に関する国際比較研究」(台湾調査報告書)『OCU-GSB Working Paper』No.201102,2011年3月
  • 「品質管理の日本的特質」鈴木良始・那須野公人編『日本のものづくりと経営学』ミネルヴァ書房、2009年

※その他の研究業績については、下記「researchmap」(国立研究開発法人科学技術振興機構)で公開している研究ページをご覧ください。

researchmap

e-mail katafuti@hannan-u.ac.jp (@は小文字に直して下さい。)

新着情報 VIEW ALL

片渕卓志教授が執筆した本

トヨタ品質管理のメカニズム (阪南大学叢書113)
‎ 2019年3月30日

片渕研究室

激動の時代を科学的精神で生きる。
良い習慣は才能を超える

おすすめの一冊(推薦図書)

○豊田英二『決断—私の履歴書』(日本経済新聞社、1985年)
〇トヨタ自動車工業『トヨタ自動車三十年史』(トヨタ自動車工業株式会社、1967年)
〇大野耐一『トヨタ生産方式—脱規模の経営をめざして-』(ダイヤモンド社、1978年)
○徳丸壮也『日本的経営の興亡-TQCはわれわれに何をもたらしたか』(ダイヤモンド社、1999年)
〇F・W・テーラー『科学的管理法』(産業能率出版部、1969年)
〇門田安弘『トヨタプロダクションシステム-その理論と体系-』(ダイヤモンド社、2006年)

研究室案内

阪南大学では「オフィスアワーズ」という研究室に立ち寄り質問する時間を設けています。私で良ければご相談に乗りますので、気軽に立ち寄って下さい。

担当授業の紹介

「経営管理」。生産管理だけでなく、組織デザイン、モチベーション、リーダーシップなども教えています。