3月13日、立命館大学・東アジア平和協力研究センターが主催した「 Future Direction of Korea–Japan Relations and Cooperation Forum 」に日韓それぞれの大学・政府・マスコミ関係者が参加し、日韓協業に関する課題と対応シナリオについての報告、および、討論会が行われました。
本学から経営学部の千島智伸教授が参加し、半導体・サプライチェーン・エネルギー分野の日韓ビジネスエコシステムの方向性について説明と提言を行いました。

報告は、ビジネスエコシステムが拡張されるための視点として、以下の点が提示されました。


第1(変化): 補完関係と循環概念の両立
第2(共存): サプライチェーン分業から新たな事業化への展開
第3(政策): ルールと標準化を活用した協力モデルの構築


  • 立命館大学 東アジア平和協力研究センター主催「 Future Direction of Korea–Japan Relations and Cooperation Forum 」

半導体分野においては、日本の材料・装置技術と韓国の量産力という関係に従来から補完性があり、AI半導体の拡張に伴う電力効率や制御技術の知見が、通信インフラやデータセンターへ応用されうること、および、再び材料・装置の新規開発へと還元される「循環構造」の適用について説明を行いました。AIからAGI(汎用人工知能)へと進展する過程では、このような循環的な知識・技術連携はコーポレートストラテジーの視点で可能性を見極める対象になります。たとえば、半導体 → 半導体を使用したデータ環境の整備 → 電力を効率化させたData centerを保有し運用するノウハウ → AIインフラを持つことによるサービスやアプリケーションの実行というサイクルの実現性について理由を示しています。

レアアースなどの希少資源をめぐるサプライチェーンに関しては、両国ともに中国依存という現実を踏まえ、「デカップリング(分断)」ではなく「デリスキング(リスク低減)」の観点から、日本の分離技術と韓国の量産能力を組み合わせた分業モデルの検討案が示されました。この中で、EV用モーターを起点とした技術がロボットやドローンなどの産業へ波及する「スピルオーバー効果」に言及し、新たな産業創出の課題と可能性が示されました。希土類ビジネスでは、中国を避ける・排除するという意味ではなく、過度な依存を低減しつつ適用可能な製品やサービスの枠を広げる、いわゆる、多元化する方法が検討の対象になるという意味になります。

企業視点で国際協業が実行されるためには、制度やルール整備が必要で、その点に関する課題と、既に両国政府レベルで「需要国として共に市場を創る」という方向性が存在しているので、共同事業に対する税制優遇や柔軟な資金調達、人の移動が円滑になる制度を実務面と制度面で取り上げる内容となりました。

参加した千島教授のコメント

もともと存在する生産分業の効率性に加え、資源・技術・制度を統合した新たな産業エコシステムへと発展し得る可能性について言及しました。もちろん、その実現には難しさも伴いますが、近年は日本が米国やフランスなどとレアアースや重要鉱物をめぐる協力や供給網強化を進める動きも見られており、先端産業を取り巻く国際連携は、多層的な構造へと移行しつつあります。さらに、ベトナムをはじめとする他国においても資源や生産拠点としての役割は以前から注目されており、将来的にはこうした国々を含めた連動的な協力の可能性も視野に入れる必要があります。

現時点では、同一国内においても、政府・企業・大学それぞれが重視する目標や優先順位は必ずしも一致していません。例えば、政府は経済安全保障や供給安定を重視する一方で、企業は収益性や市場競争力を、大学は基礎研究や人材育成を重視する傾向があります。こうした多様な主体の視点を踏まえたうえで、今後の連携のあり方を検討することには一定の意義があると考えています。一般的に、技術が成長段階にある場合は、企業によるクローズドな開発が競争優位を確保しやすく、技術が成熟・停滞段階に入ると、オープン化や標準化を通じた効率的な普及が進みやすくなります。さらに、近年の先端産業では、単一国家のみで投資・開発を完結させることが難しい領域が増えており、単独で推進すること自体は可能であっても、必ずしも効率的とは言えない状況も見え始めています。

その意味で、今後の日韓両国の関係に加え、米国や欧州、さらにはアジアの第3国を含む広域的な資源・技術ネットワークの中で、どのような役割分担や協力可能性を持ち得るのかを検討することが重要になります。引き続き、実現可能性の高い協力モデルについて、政府・企業・大学の連携を視野に入れながら、エコシステム研究を実証的かつ具体的に進めてまいります。