ICTビジネス論 (別)◆経営情報特別講義B(経営学部 千島 智伸 准教授 担当 ) では、社会にあるICT製品の活用やビジネスの仕組みについて理解を深め、講義内容を用いてICTビジネスが成立する要因が読み解けることを目指しています。
今月は急速に進化する日本のeスポーツ産業を対象に、選手目線で見たeスポーツの可能性と課題について日本eスポーツ連合公認プロライセンスを所持する小此木 勇太 選手をお招きし「eスポーツとこれからの国内市場」 をテーマにご講演をいただきました。

『TEKKEN』 シリーズは、売上数世界最大の3D対戦格闘ゲーム。
シリーズ総売上数約6,000万本。eスポーツの競技タイトルとして選ばれることも多い。ステージに奥行きがあり、手前や奥移動で相手の攻撃を回避するなど、3Dならでは対戦が楽しめる。

出典画像:『TEKKEN』 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
※本画像は講義目的で引用しており、商用利用ではありません。
当日は、まず日本国内のeスポーツ競技人口は約390万人とマイナーな印象があるものの、世界のeスポーツの競技人口は人気スポーツであるテニスと肩を並べ、その観戦者は、世界で約3億8,000万人に上る市場性についてご紹介を頂きました。
小此木さんは、JeSUのプロライセンス制度が始まった2018年頃から、一緒に練習に取り組んでいた周囲の仲間からプロゲーマーが出始めた状況に面し、自分も挑戦を志す契機を「社会の中で本気になれる自分を見つけ、それを実践すること」と捉えたそうです。将来、学生が社会に出て自分が熱中できる何かを見つける動機とは、そういう環境の変化に対応するのに自分を果敢に肯定する気持ちを持つことだと熱く語って頂いたのがとても印象的でした。
プロライセンスを持つプレイヤーとしての視点も、普段わたしたちが聞く機会が少ない非常にわかりやすい事例を紹介していただきました。たとえば、eスポーツにおける「一人称視点(First-Person Perspective:FPS)」と「三人称視点(Third-Person Perspective:TPS)」のゲームでは、観衆の受け取り方やプレイヤーの意識すべき点が明確に異なります。一人称視点(FPS)では、プレイヤーの目線で画面が構成され没入感は高いが、観戦者にとっては視野が狭く、状況把握が難しいこともあるようです。『Valorant』『Fortnight』などの代表的なゲームがそれにあたります。三人称視点(TPS)は、キャラクターの動き・周囲の状況が見えやすく、観戦者にとって理解しやすいキャラクターの背後から全身を見渡せる視点が特徴です。 eスポーツ初心者やライト層にもわかりやすく、教育的・エンタメ的要素も高いというゲームをよく行う学生が一斉に頷く瞬間が印象的でした。
 
eスポーツは、国内では企業が大会を企画・運営し、プロ選手やチームがスポンサー支援を受けて競い、ファンが観戦する仕組みで回っています。海外ではリーグが存在し、メディアライツやサブスクリプションが附随する複層的な機能があります。一方で、今後の日本市場化が拡大するために、学校と自治体の連携や社会的認知向上のための普及活動(メディア露出・親子eスポーツなど)の必要性を取り上げて頂きました。また、グラフィックボード(GPU搭載)などの技術や道具の進化は、eスポーツ市場の発展に非常に大きく関係すると指摘され、わずかな反応速度の差も競技要素に直結し、GPUなどの半導体が遅延低減・映像の鮮明化に寄与するとして、 eスポーツ向けに最適化された電子部品と配信技術との連携にも言及されました。