5月22日、デジタル・エコノミー論(経営学部 千島 智伸 准教授 担当 ) では、株式会社アイリックコーポレーション 取締役副社長の建部 賢二郎 様より「保険業界が取り組んでいる最新のデジタルエコノミーについて」 同社の保険ビジネスの基本モデルからデジタルを活用した手法をご紹介いただきました。

近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)では、ICT技術やデジタル技術などを活用して業務プロセスの改善や更なる効率化を図り、組織や競争上の優位性を得ることが想起されます。我が国では、2018年12月に経済産業省が「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」という施策を発表し、そこからDXという言葉が一般に普及するようになりました。保険業界にも、こうした方向変化が起きているところですが他の業種と比べてDX推進では様々な課題を抱えているようです。

例えば、収集したデータを活用する仕組みが安定せず、社内に蓄積されたデータを商品開発に充分に転換できていない企業も少なくないようです。保険商品と会社に対する認知、つまり、想起率を高める仕組みも課題があるようです。
顧客にブランドを認知してもらう取り組みや仕掛けは、どの会社も活発に行っています。しかし、ブランドマーケティングとデジタルマーケティングを分けて見ること、それが丁寧にストーリーとして繋がることは、簡単なことではないというご説明がとても印象的でした。

受講した学生から、保険の選び方・保険に関する投稿をInstagramやTikTokで配信するとどのような効果が得られるか?という質問が挙がり、実際はビジュアル中心のSNSで親近感を演出したり、堅苦しい印象のある「保険」というテーマを、視覚的にわかりやすく・親しみやすく伝えることで、興味を持ってもらいやすくするという方法がありえる、という点をプロセス毎に例示いただきました。

デジタルを使うと、本質的にはターゲット層にリーチしやすくなります。興味関心ごとのアプローチも同様に、「子育て家庭におすすめの医療保険」「30代独身女性のための保険選び」など、パーソナライズされた訴求が可能になります。
ライブ配信で直接相談の場が作れると、コメントを拾いながらリアルタイムで質問に答えるようなエンゲージメントの高まりも期待できます。こうした中で、約20年にわたり40万件以上の保険証券ビッグデータを活用している点が印象的だったとする学生の声が多く聞かれました。

長年にわたり培ったノウハウは、従来は属人化(人の経験や能力に依存したもの)しやすい印象がありますが、こうした経験値として積まれる’コト’に加え、デジタルによる分析や発信アイデアと組み合わせながら知識資産を更新し、それを商品開発に繋げるイメージを持つことができました。