講演の背景

 阪南大学は、教育内容の充実・発展を図ることを目的として、奈良県立法隆寺国際高等学校(栗栖一宏校長)と高大連携協定を締結しています。
 法隆寺国際高等学校では、「総合的な探究の時間」を3年間通して実施する学校独自のカリキュラムとして「創生」を編成し、2年生は11月の発表会を目指した探究活動に取り組まれています。私は2024年から高大連携による探究活動の支援をしていますが、今回は2026年4月27日(月)に2年生(275名)教員(18名)に向けた「探究活動へのご案内」の講演を行った後、担当される先生方と「探究活動の例」について話し合いました。

講演の概要とアンケートへのコメント

 2年生への講演では、探究に取組もうとする生徒の皆さんが主体的に探究活動を進めていくための入り口になることを目的として、昨年度と同様に次の4つの問いを設けました。ただし、「3.探究によってどのような力を身につけられるか。」は、より具体的な探究の方法として「インプット」と「アウトプット」を身につけることを目的として、内容を追加しました。

 1.探究とはどういう活動か。
 2.探究のプロセス、探究活動のノウハウとは何か。
 3.探究によってどのような力を身につけられるか。
 4.探究するとどんな良いことがあるか。

 また、3で説明する「探究の方法」の一つとして、「メモの取り方」を生徒の皆さんに実践してもらいました。私の講演で「良かったと思ったこと」や「もっと知りたいと思ったこと」などのメモをとり、そのメモをもとにしたペアワークを実施しました。
 講演の後に創生を直接担当される先生方には、私の探究活動のワークシートを用いて、「インプット」をどのように「アウトプット」させるのかを、グループワークで体験してもらいました。また、探究活動を行う人数(個人かグループか)についても、意見交換をしました。
 講演後のアンケートでは、「探究活動でどのような能力が身につくのか理解できた(「よく理解できた」を含む)」や「今回の講義が探究活動に取り組む上で参考になった(「少し参考になった」を含む)」とする回答が、95%以上あったことで安心しました。自由記述では、生徒の皆さんだけでなく先生方からも感想や質問をいただきました。全てのご質問にお答えできないことが残念ですが、一部を抜粋してコメントします。
・仮説の立て方について知りたい(数名の感想)
⇒仮説は問いに対する「仮」の「説」です。つまり、事前に入手できたある程度の情報(一般論など)の分析を根拠とする仮の説明です。ですから、1回の探究で望ましい仮説が立てられるとは限りません。探究を進めながら仮説をより望ましいものに修正していく必要があると考えています。

・メモの取り方が印象に残った(数名の感想)
⇒「探究の方法」で紹介した「メモの取り方」は、情報収集の基本です。授業で先生の板書(黒板に書かれた内容)をそのままノートに写すことはメモではありません。「他者の考え(客観)」を整理して「自分の考え(主観)」を関連付けることがメモです。板書ノートにも自分の気づき(感想など)を加えると良いでしょう。

・探究で思うような結果にならなかったら、その研究は無意味になりますか?
⇒予想した通りの結果になる必要はありません。研究は予想しなかった方向に進むことで、新しい仮説や問いにつながります。ですから、結果を気にするのではなく、探究の経過(プロセス)を楽しむ姿勢が大事です。思わぬ結果にも自分なりに意味を見いだす柔軟性があると良いでしょう。

・創生の発表に限らず、普段の学校生活でも使えるようなことが知れて良かった。
⇒そのとおりです!講演で紹介した「探究の方法」は、「メモの取り方」のように他の教科や普段の生活でも活用できます。高校や大学だけでなく、社会人になっても探究活動で身につけたスキルは役立ちます。だから「創生(総合的な探究の時間)」があるのですね。そのことに気づいたことが素晴らしいです!

・【先生より】グループでの活動がどうあるべきか(メンバーの組み方、人数など)。
⇒私は大学の全ての授業でグループ活動を取り入れています。探究活動を伴う長期間行動を共にするグループを形成する前に、ランダムに3~4人で授業を振り返りなどのグループワークを行います。そのような経験を数回重ねるとランダムなメンバーで固定しても活動が成立します。
⇒探究活動の場合は、個人で興味のあるテーマを発表させた後、4人を基本としたグループを作らせます。普段の仲間でグループを組む学生もいますが、発表テーマから人間関係が広がるケースもあります。もちろん、上手くグループに参加できない学生へのサポートも必要になります。

 皆さんのコメントからは、探究活動に取り組むために新たな発見や疑問があったことが分かります。いただいたコメントは前向きなものばかりで、講演をして良かったと思っています。もちろん、探究活動に対する不安は生徒の皆さんだけでなく、先生方もお持ちです。しかし結論を急がず、じっくり取り組まれると良いと思います。なぜなら、探究に絶対的な正解はないからです。自分なりに、より望ましいと思う正解(最適解)に近づくことが探究活動だと、私は考えています。コメントでもふれたように意味のない探究はありません。発表会に向けて、皆さんが探究のプロセスを繰り返し、楽しみながら自分なりに探究活動を深めていくことを期待しています。