2021.8.23

奈良県立高取国際高等学校 教員研修(講演・ワークショップ)

教員研修の背景

 奈良県立高取国際高等学校(渡部憲一校長)は、WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業(以下、WWL)における「事業連携校」となり、本年度から3年間WWLに取り組まれることとなりました。私は、WWLのカリキュラムアドバイザーとして、高取国際高校における「探究的な学び」についての教員研修を、WWL拠点校である奈良県立国際高等学校の松本真紀教諭とともに、令和3(2021)年8月6日(金)に実施しました。

教員研修の概要

 高取国際高校では、第1学年の総合的な学習の時間において、地域の課題を自ら考え、解決しようとする生徒の育成を目標とした「探究なら」を設定しておられ、今後実施される総合的な探究の時間を見据えながらWWLとの連携を実現するため、新たな探究学習のあり方を検討されています。
 今回の研修では、高取国際高校のご要望により、「探究的な学び」について学習指導要領解説の目標や内容、探究のプロセスを用いながら説明するとともに、WWL拠点校の国際高校の「グローバル探究」の取り組みを紹介することで、具体的な事例から探究学習を理解していただくとともに、先生方に探究的なグループワークを体験していただくことを目指し、以下の3つの目的を設けました。
 1.「探究的な学び」について、その目的・内容・方法・評価から理解を深める。
 2.県立国際高校の「グローバル探究」の取り組みを説明し、情報共有を図る。
 3.1と2に関するグループワークを実施し、「探究的な学び」について考察する。
 特に、2については、国際高校の松本真紀教諭に講師をお願いし、第1学年と第2学年で取り組まれている「グローバル探究」における生徒の学びの様子を、担当者としての成果と課題を踏まえながら説明していただきました。
 また、研修の初めに、先生方には「探究的な学び」に有効と私が考える「メモの取り方」を理解していただき、1と2の講演にコメントをする前提でメモを取りながら研修に参加していただきました。残念ながら、時間の都合により、3のグループワークは十分に実施できませんでしたが、ワークショップのイメージは先生方にご理解いただけたと考えています。
 この教員研修を行ったことで、「探究的な学び」について、その目的や内容と具体的な方法例から先生方の理解を深め、国際高校の「グローバル探究」の紹介から探究的な学びによる生徒の変容の様子が、取り組まれる先生方のご苦労とともに説明されたことで、共通理解を深めることができたと考えます。それは、下記のアンケートへの記述からもうかがえます。

  • 探究的な学びについて、基本から実践まで、短時間で非常に分かりやすくご講義いただきありがとうございました。国際高校の先生方が真剣に生徒に向き合い、一から探究の授業をつくってこられたように、我々も学ぶ姿勢を持ち続けていきたいと思います。
  • 「探究」の授業内だけでなく、様々な教科において取り組んでいく必要があることだと感じました。
  • 外部の人材の活用の重要性、長期的なスパンで探究をやることの素晴らしさがよく分かりました。
  • 生徒と共に成長しながら日々取り組み方法を考え試すパワーのあり方、Try and Errorの精神の大切さを改めて感じました。教員側も大変…できないな…ではなく、まず「やってみる」が第一歩だと思いました。
  • 国際高校の生徒たちは「探究」の時間を楽しみにしているということを聞いて、正直びっくりしました。そのような授業をされている(組み立てる)ことに感銘を受けました。でも、正直大変そうです。
  • 県立国際高校で、生徒が探究を一番楽しんでいるということが驚きでした。「自分事」として考えられるよう仕掛けていくことができればいいと思いました。
  • 「(生徒の)成長を元気づける評価」という表現はすてきだと思いました。時間と手間をおしまず、背中を押す評価をつけたいと思います。
  • 昨年一年、生徒と高取町の課題を調べ、それが2年になってすっかりつながっていないので、国際高校さんの「2年生が1年生に話す」という方法はとてもいいと思いました。
 これらのご意見からは、「探究的な学び」について先生方が理解を深められたことと、国際高校の「グローバル探究」の取り組みのやりがいと難しさを認識されたことが分かります。特に、「探究と教科の学びをつなげる」ことと、「聞き取り調査や現地調査の重要性」や「1年生での探究的な学びを2年生でも継続する」ことについては、高取国際高校の「探究」を再検討する上で、重要なご指摘だと考えます。さらに、国際高校の生徒が探究を楽しんでいることについては、「生徒が成長を感じている」ことと関連すると思います。つまり、生徒自身が学びの成果を自分なりに評価できていることがあると考えるのです。この点は、「探究」の評価のあり方を検討するうえで、示唆に富むご指摘だと考えます。
 先生方から前向きなご意見を多数いただいたいことで、私もカリキュラムアドバイザーとして、高取国際高校の探究学習がより良いものになるよう、効果的な支援を継続していきたいと考えています。