2021.3.12

奈良県立国際高等学校 教員研修(講演・ワークショップ)

教員研修の背景

 この教員研修は、奈良県立国際高等学校で令和3(2021)年3月8日に実施されました。国際高校では、学校設定科目「グローバル探究」においてESDを基本とした探究学習を進めておられ、この教員研修ではESDとSDGsに関わる講演とワークショップを担当しました。このESDを視点としたカリキュラム開発については、平成30年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)を受けた「世界史教育内容編成論の研究-ESDの視点に基づく「現代の諸課題」からの再構成-」に関連する研究の一環となります。

教員研修の概要

 奈良県立国際高等学校(中尾雪路校長)は、本年度(2020年度)に開校された新しい高等学校で、現在は第1学年だけで構成されています。「多様な人々との積極的なコミュニケーションを通して、グローバルな視点でものごとを捉え、国際社会の平和と発展に貢献する資質・能力を育成する。」ことを使命(Mission)とされ、「探究力」「創造力」「協働力」「寛容さ」「挑戦力」「キャリアデザイン力」の6つを「育てたい力」として目標(Goal)に定められています。特に、ESDやSDGsの観点を導入したカリキュラムデザインを目指され、「国際高校で身につけさせたい力の共有化」と「教科学習との関連、カリキュラムマップの作成」を目的として、教員研修が実施されました。
 講演とワークショップは、次の3部で構成しました。
1.「身につけたい力」とは何なのか?
2.「身につけたい力」をどう活用するのか?
3.カリキュラムマップの作成

 1では、国際高校が目標とされている「探究力」「創造力」「協働力」「寛容さ」「挑戦力」「キャリアデザイン力」の6つの「育てたい力」について、そのイメージを中尾校長先生からご説明をいただきながら、グループワークで共有しました。
 2では、SDGsの17の目標とESDの「環境」「経済」「社会」の3領域を関連づけ、教科の学習内容とSDGsがどのように位置付けられるか、グループワークを通して考えました。グループのメンバーは異なる教科の先生方がそれぞれの立場で意見を述べることで、多様な視点に触れることになりました。
 3では、第1学年の1年間の各教科・科目の月別の学習内容が1枚にまとめられた「カリキュラムマップ」に、6つの「育てたい力」とSDGsの17の目標を位置付けました。6つの「育てたい力」とSDGsの17の目標のシールをご準備いただき、それを「カリキュラムマップ」に貼るワークショップとすることで、先生方全員がその場で活動成果を確認できる機会となりました。これらのシールは、生徒さんの学習でも活用できそうなクオリティでした。
 この教員研修を行ったことで、先生方が改めて学校の目標である「育てたい力」と、ESDとSDGsについて、講演でのグループワークにおける意見交換で認識を深められ、「カリキュラムマップの作成」のワークショップでは、シールを貼る作業を楽しみながら進められたことが印象的でした。特に、校長先生や教頭先生もグループワークに参加され、先生方が率直な意見を述べられる姿は、新しい学校としての力を感じました。
 研修の事前と事後のアンケートからは、教員研修を始める前は、ESDよりもSDGsに対する認識が深い先生方が多かったのですが、それぞれの関連性を講演で説明してカリキュラムマップを作成したことで、研修後はESDとSDGsそれぞれの理解が深まったことが、次の先生方の感想からも分かります。
  • カリキュラムマップにシールを貼る際に、どの内容もどの分野にもつながるように思えて、でもそれがSDGsというかESDなのかな…と感じました。(数学ご担当の先生)
  • カリキュラムマップやシラバスを作る際に、ESDやSDGsという観点で考えるということは今までしたことがなかったので、この研修をきっかけに、普段の授業づくりを考えていかないといけないと感じました。(英語ご担当の先生)
 この教員研修を一つのきっかけとして、先生方が新たなカリキュラムをデザインされ、国際高校で学ぶ生徒がESDやSDGsと関連付けた各教科の学習により、6つの育てたい力を身につけられるようになるだろうと感じました。大学教員としては、今後のESDの研究につながる、貴重な経験をさせていただいたことに感謝いたします。新たな学校づくりを目指される国際高校において、先生方と生徒の皆さんの学びが深まることを、これからも応援していきたいと思います。