課題研究発表会の背景

 この課題研究発表会は、奈良県立登美ケ丘高等学校の第2学年が、総合的な学習の時間「倭(やまと)」における課題研究の成果を発表する機会として、平成31年2月13日に実施されたものです。私は、課題成果報告会の講師として参加し、代表班の発表についてコメントをしました。その探究活動に基づく学習は、平成30年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)を受けた「世界史教育内容編成論の研究-ESDの視点に基づく「現代の諸課題」からの再構成-」に関わるものです。

課題研究発表会の概要

 登美ケ丘高校(新田泰三校長)では、すでに6月12日に上記の科研費助成事業で地理歴史科に関わる特別講義を第2学年2クラスに実施(詳細は、7月の新着情報を参照)し、さらに10月24日には第1学年(240名)を対象とした「総合的な学習の時間」における講演会で講演をしました(詳細は、11月の新着情報を参照)。
 今回は、第2学年が1年間かけて取り組んだ課題研究について、6つの代表班から発表がありました。そのジャンルとテーマは次のとおりです。
  1. 産業7班「企業の経営戦略」
  2. 国際3班「”Let’s make sweets!”」
  3. 文化5班「奈良を難波にしかけた男」
  4. 行政6班「畜産産業~大和ブランド~」
  5. 産業9班「奈良を賑わすなら」
  6. 教育5班「ならならではの給食」
 同校の課題研究は、「産業」や「国際」などのジャンルで構成され、生徒がクラスを越えて、自分の興味があるテーマに分かれることが特徴です。つまり、生徒の主体性が生かされた研究活動になっているのです。また、各ジャンルで代表班を選出するにあたっては、学生の相互評価による結果も反映させていることが大きな意味を持ちます。予選を通過した代表班は、それぞれのジャンルの生徒によって選ばれた代表であるため、自ずと生徒の当事者意識が高まることになります。さらに、生徒が司会進行を務めたこともあり、生徒による発表会として、主体性が伝わるものでした。
 6つの発表班に共通していたことは、次の2点です。
 1つは、奈良を取り上げ、フィールドワーク(調査・インタビューなど)を行っていたことです。
 2つは、「仮説の設定」→「検証」→「新たな仮説」と、探究の過程が明確になっていたことです。
 課題研究のテーマは、生徒が身近に感じられることが大切です。それにより、生徒の当事者意識が高まり、研究に深まりがでるのです。また、研究は予想(仮説)どおりに進むとは限りません。むしろ、思うように行かない方が多いのです。しかし、その検証結果から仮説を見直したり、思いもよらない発見につながったりすることがあるのです。
 この2点は、登美ケ丘高校の総合的な学習の時間の学びの特徴であり、同校の課題研究が主体的でかつ探究的な学習になっている理由であると考えられます。
 また、この課題研究発表会を第1学年の生徒全員が傍聴していることにも大きな意味があります。つまり、登美ケ丘高校の総合的な学習の時間の学びは、次の学年に引き継がれていくのです。もしかしたら、先輩が提示した新たな仮説を後輩が検証していくことになるかもしれません。それは、研究には終わりがないが深まりがあることを示すものとなるでしょう。
 このような、貴重な学びを深める生徒の皆さんに、コメントを通してお話をする機会をいただいたことにお礼を申し上げます。そして、これからの登美ケ丘高等学校の先生方と生徒の皆さんの探究学習の深まりを、期待を込めて応援したいと思います。