産学連携先:株式会社サルッガラボ

 SDGsやゼロカーボンなど、エネルギーに対する注目度は最近高まっています。古来、人類は水車、風車、動物から、近代以降は石炭に加え、石油、天然ガス、原子力からエネルギーを得てきました。現在注目を集める炭素排出を伴わない発電には、原子力、地熱、水力、風力、太陽光などがあげられます。今回のフィールドである鹿児島県はそのすべてを有しています。その理由や条件、そして将来の可能性について、政策的なマクロレベルから、発電所を建設する現場の生活者というミクロレベルで考察することをこのキャリアゼミの目的としています。
 経済学で考えると、政府・政策と人々・生活の間に企業があります。鹿児島は、人口減少と自然エネルギーの活用が同時に進む、将来の日本の縮図のような場所です。この場所で、企業のCSRで実際に何を行っているのか、企業に何が求められているのか、風力発電所が立つことで現地の人びとの生活はどうなるのか、学生目線で、しっかりと考えてほしいと考えています。
 また、コロナ禍で旅行がしにくいこともあり、「外の目」を持つことが難しく、特に都市部の人は「地方」を「知らない」というのが、一般的な状況ではないかと思います。日本全体をとらえる上で、また、自分の将来、就職先を考える上で「地方」を知ることは、学生にとって非常に有意義です。今回は、鹿児島国際大学経済学部西宏樹准教授にご協力いただき、西ゼミ生とのワークショップをさせていただきました。学生同士、地域の特性を生かしたエネルギーや今後の発展について議論することで、お互いの魅力やポテンシャルを認識する良い機会となりました。

学生活動状況報告

 定藤ゼミ2年生は、風力発電と地域のつながりに関して、Vena Energy、カザミドリと現地視察を行いました。風力発電事業は、発電するのみならず作った電力を使ってもらう必要があります。カザミドリは、そのため発電所に関連する地域において、新たな観光資源の発掘や町おこしなどへの支援・協力といった取り組みをされています。当日はVena Energyが行うSCRとしてカザミドリが企画運営を行っている直販所に伺い、風力発電の収益をどのように地域に還元し受け入れられる関係を築いているかなどのお話をしていただき、その後風力発電の現地視察を行わせていただきました。
 名勝仙厳園・尚古集成館を訪れ幕末から近代にかけての産業の発展を学び、当時鎖国によって遅れていた日本が外国に対して抱いていたであろう焦燥のようなものが垣間見ました。
 翌日は、鹿児島国際大学経済学部西ゼミナールの方々と交流を行いました。鹿児島と大阪それぞれの地元において持続可能なエネルギー産業についての討論を行い、高層ビルを使った発電や潮流の利用による発電など多角的な見解を持つに至りました。
経済学部 鳥居 俊佑


 2020年度私たち経済学部の定藤ゼミ2年生は、鹿児島合宿に行きました。風力発電の現地視察とカザミドリの活動、鹿児島国際大学経済学部経営学科西ゼミの皆さんとのワークショップを行ったので、報告します。
 1日目は主に、日本の風力発電の現状、カザミドリの活動についてお話を聞きました。
 ヴィーナ・エナジーが鹿児島において進めている風力発電事業に関わる中山間地域も同様に高齢化、過疎化が進んでおり、カザミドリは地域住民と事業者が近い距離感でアイディアを出し合いながら、持続可能性や地域基盤づくりや豊かな生活、持続可能な地域づくりを進めていました。例えば、「地元野菜や生花の直売所MINOTE+」をオープンし、スーパーが近くにない人の為に野菜を安く提供しているそうです。
 2日目は、鹿児島国際大学経済学部経営学科西ゼミの皆さんと、エネルギー産業と地域についてワークショップを行いました。鹿児島と大阪のメリット・デメリットを出し合い、デメリットをもとに、今後、発展するために何をしたら良いかについて発表しました。大阪、鹿児島のメリット・デメリットを出し合うことで新しい発見や改善点などが見つけることができました。
経済学部 井上 直哉

参加学生一覧

賀喜 敦貴、石田 拓巳、鳥居 俊佑、十河 雄一郎、安達 涼真、井上 直哉、井本 郁弥、押立 慶大、佐藤 拓也、鈴木 健介、富永 翔大、橋本 翔生、日高 将也、山本 達也、藤野 航陽、吉井 秀虎、冨田 新、中村 悠希、西下 祐翔、坂下 快

ゼミ集合写真

  • ※写真撮影時のみマスクを外しています。

連携団体担当者からのコメント

株式会社サルッガラボ
代表取締役 市村良平 様

 全国的な感染症拡大が続く中、遠く鹿児島までお越しいただき、ありがとうございました。一時は、鹿児島での現地視察も難しいかと危惧しましたが、12月の合宿は、風力発電の事業を視察いただき、エネルギーと地域づくりについて考える機会となったのではないでしょうか。
 私自身、鹿児島県内の地域づくりをサポートする仕事をしており、さまざまなテーマに取り組んでいますが、今回ご覧いただいたような、地方の過疎地とエネルギーの問題は、そのなかでも考えごたえのあるテーマだと思います。普段ニュースで知るコトの現場で何が起きているのか、について、リモートガイダンスと現地視察を行いました。それらを通して、政府と企業と人々の役割や関係性、そして、地域創生の可能性について、考えるきっかけとなっていればうれしいです。
 鹿児島だけでなく、全国的にみても、風力や地熱、太陽光など、さまざまな自然エネルギーの活用が進められています。どのエネルギー源にもそれぞれ特有の問題があり、地域との関わりを考える必要があると思います。これからも、エネルギーや地域活性化について、さまざまな角度からとらえ、考えていきましょう。

教員のコメント

経済学部
定藤 博子 准教授

 2021年度から始めた活動でしたが、2020年度に引き続き、新型コロナウイルスの様子を見ながらの1年間でした。7月には鹿児島からリモートで、ガイダンスをしていただきました。
 そんなコロナ禍でも、12月に鹿児島で現地視察をできたことは大きな収穫となりました。鹿児島合宿の日程が決まったのが2週間ほど前だったため、参加人数は少なかったですが、その分、濃い内容になったと思います。1日目は、鹿児島の近代史に始まり、中山間地の状況、日本の風力発電の現状、風車の建設に対する地元住民と少し離れた方々の意見の相違、そして、発電事業者のCSRとして地域創生事業のためにその補助金を活用するカザミドリの活動について、学びました。2日目は、地元の将来を担う鹿児島の若者代表として、鹿児島国際大学経済学部経営学科西ゼミの皆さんと、エネルギー産業と地域について、南日本新聞と神戸新聞という地元紙を使いながらのワークショップを行いました。鹿児島、大阪、両方のメリット・デメリットの比較や将来の可能性を論じました。2月にはゼミ生全員で鹿児島合宿を行う予定でしたが、コロナの再蔓延のため、実行できなかったことは残念です。
 学生は自分の見ている世界がすべてだと思いがちですが、この活動を通して、自分の視野を広げ、将来の選択肢を増やしながら、エネルギー産業のマクロな政策的側面とミクロな生活者の側面の両方に興味を持ち続けてもらいたいと思います。