阪南大学のホームページをご覧の皆様、こんにちは。経済学部、公共サービスパッケージの中原ゼミに所属している吉田誠です。
 私が所属するゼミでは普段、カウシック・バスー著『見えざる手を越えて』(NTT出版、2016年)という経済理論の著作を読んでいます。そこではその著作の内容を理解することはもちろん、その内容をゼミ生同士で議論し、理解を深めています。こうした学習を繰り返すことで私たちは着実に読解力や語彙力を身につけ、公務員や民間企業に就職して活躍できる人材になれるよう、努力をしています。
しかし就職してから大切になるのは勉学だけではありません。特に私が目指している公務員は働く土地の住民との関わりが深く、その土地で暮らす方々のニーズに応えなければなりません。そういった住民のニーズを聞くという機会はなかなか普通の学生が出会うことができないことです。そこで私は12月に実施された「未来の商店街をつくるワークショップ」に参加しました。
 このワークショップの目的は、松原市の商店街にはどのいった具体的なニーズがあるかを学生と住民の方で考え、衰退しつつある商店街を活性化することです。実際に参加してみて、私たちは、多くの学生が経験できない住民の方の「生の声」=「ニーズ」を聞くという貴重な体験をすることできました。
 全体的なワークショップの流れは以下の通りです。第1回では商店街を活性化するためのアイデアを想像する方法を学びます。第2回では全国の活性化事例を元に、軸となるアイデアを決めて企画を計画します。第3回では決定した企画を具体化して実施に向けた準備をします。
 この「未来の商店街をつくるワークショップ」の具体的な目的は、参加者が5年後どういった暮らしをしたいかという考えを軸にその希望の暮らしを実現するための場として商店街を利用するというものです。各班それぞれが希望する暮らしを元に和気あいあいとディスカッションをして多様な企画が立ち上がっています。それを実施するために現在も各班、力を入れて取り組んでいます。

 それでは、以下で第2回目の個別相談会、第3回目のワークショップについて詳しく報告します(なお、このワークショップの第1回目の内容については、同じゼミ所属の森田さんがすでに本HPで報告を行っていますのでそちらを参照ください)。

第2回目のワークショップについて

 まず参加者はそれぞれ、第1回目のワークショップでの作業から出てきた5つのテーマ、「商店街の価値を発信する」、「働く人をサポートする」、「家族の時間を大切にする環境をつくる」、「子育てをサポートする」、「健康な体づくりをサポートする」、から1つ選んで、合計7つの班に別れました。
 私は「家族の時間を大切にする環境を作る」という考えを基軸にして集まった3-1班に入りました。そこから班ごとに自己紹介と五年後の理想の暮らしについて話し合いをして、意識を共有し合いました。その後、全国の主な自治体の活性化事例を検討して、松原市の商店街で使えるコア・アイデアを練り上げ、最後に全体で発表を行うという流れでワークショップを行いました。各班に分かれてディスカッションをしたため、本報告ではさしあたり全体のことは取り上げず、私が参加した3-1斑に内容を絞って報告します。
 私たちはまず全国の活性事例が書いてある冊子に商店街で使えるアイデアに付箋を貼り、最後に全員で大きい白い紙にアイデア付箋を貼っていく方法でディスカッションをしました。
 具体的には、「商店街を先輩母が後輩母に育児について教えてあげる場にしよう」というアイデアや「空き店舗を人が交流する場にしよう」というアイデアなどが冊子を元にでて来ました。またこういったアイデアが出てくるなか、班の中からも「松原市も色んなイベントやってるで」という意見が出たのです。しかし、そのイベントを阪南の学生は知りませんでした。
 ということは「実のところ、松原市に住む人たちにも情報が行き届いてないのでは無いか」。私たちの班はそのように考えたのです。そこで3-1班は阪南大学の公式LINEとアプリを利用する案を作成しました。具体的には新たに情報発信だけの公式LINE作り、そこで松原市で実施されるイベントの情報やそこで使えるクーポンなどを付けてお知らせし、アプリでは時間割りの余白にイベント情報を発信していくことを考えたのです。これがこのときのワークショップの結論でした。
 第2回目のワークショップではゼロからアイデアを想像するのではなく全国の活性事例を見て議論をしたので次々とアイデアが出てきたように思います。しかし、アイデアをゼロから作る難しさに改めて気づく機会にもなりました。
 ですが、このワークショップでは家族の時間を大切にするというアイデアで企画を考えることができませんでした。わたしたちは商店街と家族を結びつけるアイデアを考えなければならないと思ってはいたものの、想像以上にそうしたことの具体化は難しく、壁にぶち当たった思いでした。

個別相談会にて

 第2回のワークショップの後、12月18日松原市市役所8階の会議室で個別相談会を行いました。
 集まったメンバーで雑談をしていたときに「阪南大生は授業の空き時間とか何してるの?」と質問され、私は図書館を利用している人が多いと答えました。その時に商店街を阪南大学の図書館のように学生誰もが利用する場所にしようというアイデアがわき上がってきました。そしてこのアイデアを生かした企画を全員で考えました。そのなかで決まった企画が「阪南大学の学生に授業のなかで商店街を歩いてもらう」というものです。
 この企画の利点が普段商店街にいくことがない学生に商店街を知ってもらえて図書館以外での楽しみ(食べ歩きや店主との会話)を提供できるということです。そしてお店側も学生が来ることで継続的な利益が見込め、かつ学生が多く訪れるので活気のある商店街を取り戻すことができるのではないか、そのように考えました。
 この個別相談会では、阪南大学、商店街、学生という3主体を絡めた企画を考えることができ、3-1班もその企画を軸にしようということで話がまとまりました。
 しかし、この企画に家族を取り入れることはできませんでした。したがって、班の当初の動機からはだいぶ距離を取る形になってしまいましたが、そのおかげで私たちの企画が別の面で面白いものになったと感じています。

第3回ワークショップ

 この日のワークショップの流れは、前回のふりかえをして全班が二枚の大きな紙に具体的な企画の内容や実施予定日などを書き込み、企画を育て、最後に全体に向けて企画を発表し合うというものでした。
私たちの班はホワイトボードを使ってこれまでの内容を整理し、当初のSNSを使って情報発信をする企画から、商店街ウォーキング企画へと変更になったことを改めて確認し、以下のような項目で、大きな紙の6つの項目に企画内容を書いていきました。
● 1項目 企画の名前をつける
 企画の名前は分かりやすく一言で内容がわかるものでないと行けません。そこで私たちは一人につき企画の名前を10個考え発表し、多数決で一番人気のものを採用する方法を取り入れました。そして二つの案を組み合わせた「レッツゴー商店街、阪南大学商店街win-win計画」が選ばれたのです。
● 2項目 企画する理由は?
 まず阪南大学の学生が商店街を利用しない理由を4つ考えました。①商店街を知らない、②商店街に入りにくい、③天王寺のチェーン店に行く、④空き時間は図書館を利用、これからの課題がウォーキング企画の実施によって解決できると考え、これが私たちの企画をする理由になりました。
● 3項目 誰が、誰に対して、いつ?どこで?
 この項目で企画の対象者と実施場所を明確にしました。阪南大学の一回生をターゲットにして商店街と学生が一緒になってウォーキング企画を実施し、そこで新たな絆を作り商店街に親しみをもってもらうという目的です。
● 4項目 商店街と対象者のメリット
 この企画の商店街側のメリットは単純に儲かるということ、そして1回生と商店街の絆を作ることで末永い、利用が見込めるということです。私たちは企画する上で商店街の方に利益があるということを重視しました。
 学生側のメリットは新たに安くて美味しい物を知れて松原市や商店街と密接につながることができるということです。
 学生には新たな選択肢を提供することが利益になると班で意見が上がり、それがこの企画ならできると感じたのです。
● 5項目 企画の内容
 ワークショップが行われた段階で決まっていたことは、阪南大学の授業内で実施されていたウォーキング企画を松原市の商店街で実施するということだけです。
 その実施されていたウォーキング企画では阪南大学から学生に昼食代として2000円の補助があったのでそれをお店で使うことで商店街にも利益があり学生は美味しいものを食べられて新たな交流を生むことができる。これがこの企画のコンセプトです。
● 6項目 企画を実施することで実現したい未来
 私たちの斑は、阪南大学の学生に商店街を知ってもらい、大学を卒業しても利用するような場所に商店街がなって欲しいと考え、この企画を計画しました。
 自分たちが日々暮らしている地域への帰属意識が低くなっている今だからこそ、誰もが帰えりたくなる場所に商店街がなっていくこと。これが私たちの実現したい未来です。
 ただし、もう一枚の、実施予定日を書くという紙に、ワークショップ時間内では記入することができませんでした。
 そして最後に班ごとに企画の発表を行いました。商店街を学校のように学びの場として利用する企画を考えた班や商店街の情報だけでなく、店主の方の魅力などをまとめた冊子を作る企画を考えた班などがあり、各班バラエティーにとんだ企画を作っていたという印象です。
 こうして全3回の「未来の商店街をつくるワークショップ」は無事終了しました。
 今回のワークショップを通じて様々な経験が出来ました。普段出会わない社会人の方とコミュニケーションをとったり、会議を開いたり、企画書を作ったりと苦労はしましたがその分、私にとってかけがえのない経験になりました。
 そして主婦の方や社会人の方、市外からこられた方が忙しいなか商店街のために時間を作りワークショップを行う姿を見て地元活性化という課題に多くの方が関心を抱いているのだと感じました。
 衰退していく商店街が多いなかこうした取り組みは新たな関心を生み出し、無関心になりがちなことにスポットを当てることができるのでこれからもこうした取り組みが盛んに行われ新たな地元活性化案が生まれてくることを願うと共に、私たちは以上のような企画を企画倒れにすることなく、次のステップ、すなわち企画を実践するという段階へ移行します。これはまた別の機会にご報告いたします。