2025年10月1日(水)、経済学部の三木ゼミ2年生は、八尾市にある株式会社高木を訪問し、代表取締役の高木将宗さん他からお話をうかがいました。
 株式会社高木は昭和55年(1980年)創業、プレス金型の設計・製作や金型部品加工を手がける精密金属加工メーカーです。自動車・電子部品・通信機器など、幅広い分野の製造業を支える高精度な金型づくりに取り組み、設計から加工・組立・検査までを一貫して行う体制を整えています。高度な加工技術と柔軟な対応力を強みとし、±0.005mmの精度を実現する最新設備を備えています。平成17年には「株式会社高木製作所」から現在の社名へ改称し、地域に根ざしたものづくり企業として発展を続けています。さらに、2023年には「大阪ものづくり優良企業賞」を受賞、その確かな技術力と品質へのこだわりが公に認められている、大阪を代表するものづくり企業です。
 経済学部三木ゼミは、グローバル人材を育成する「グローバルキャリアプロジェクトゼミ」であると同時に、民間企業出身の教員が指導するという特色を活かし、企業/行政/地域との接点をできるだけ多く持つようにしています。三木ゼミは今年度も昨年度に引き続き、大阪府商工労働部の連携協定に基づく事業の1つとして「ものづくり中小企業と大学生の求人求職ミスマッチ解消」という課題に取組んでいます。今回はその活動の一環として訪問しました。

 以下に今回の訪問見学で得られた、学生たちの気付き(一部)を紹介します。



【経済学部2年生 藤川 愛子 さん】

 私たちは大阪府八尾市にある株式会社高木を訪問しました。昭和55年9月に創業され、平成17年4月に「株式会社高木製作所」から「株式会社高木」に社名変更されています。この会社の事業内容は大きく分けて三つあります。
 一つ目はプレス金型の設計や製作です。プレス金型とは、金属板などの素材をプレス機で加工するために使用される「型」のことです。主に自動車関係のホースクリップ部品やギア部分、携帯電話部品などに使用される金型の設計や製造を行っています。
 二つ目は治工具や機械部品の製作です。フライス加工(回転する工具で素材を削る)、研磨(素材の表面を滑らかにしたり、寸法精度を高めたりするために行う仕上げ加工)、組み立て、最終検査までを一貫して行う体制となっています。そのため、難削材や特殊形状の加工にも対応することができます。
 三つ目は金型部品の製造です。±0.005mmの高精度加工が可能な設備を使い、金型部品の製作を行っています。
 
 株式会社高木の強みだと感じたものは三つあります。
 まず一つ目は、迅速な対応力です。焼入れ材を豊富に在庫しており、取引先からの依頼にすぐ対応できる体制や、加工に必要な設備を整えている点です。従業員一人ひとりが製品を作る際に自分の考えややり方を持っており、効率化や時間短縮の工夫をしていることも印象的でした。
 二つ目は、最先端設備の導入です。取引先に良い商品を届けるために、定期的に設備を更新し、最新の加工技術を取り入れていました。また、大量生産ではなく、一つ一つ丁寧に株式会社高木にしかできないオリジナル製品を作る姿勢も感じました。
 三つ目は、若手職人の活躍です。マニュアル通りに進めるだけでなく、自分が作ってみたいものがあれば提案し、チャレンジすることができます。そのため、若手ならではの柔軟な発想を活かした製品が採用され、実際に商品化されているものもあります。
 
 株式会社高木は、従業員12名(うちネパール出身が1名)と少ない人数ながら、役割分担がしっかりしているため迅速な対応ができています。また、SNSにも力を入れており、SNS運用代行会社に依頼して撮影を行っていました。TikTokでは社長自身が自社製品を紹介するために体を張って撮影するなど、SNS運用に積極的に参加されていました。福利厚生の面では、お弁当が200円で食べられたり、社長自身が従業員のためにお菓子やゼリーなどの軽食を冷蔵庫に用意したりと、社長ならではの働きやすい環境づくりがされています。
 
 今回の企業訪問を通じて、株式会社高木のものづくりに対するひたむきな姿勢と、働きやすい職場づくりへの取り組みに感動しました。少人数でも最新の設備を使い、従業員の丁寧かつ高い技術力を感じました。グローバルな視点を取り入れつつ、地域に根ざしたものづくりを続ける姿勢は、今後の社会においても大きな価値を持つと感じました。
 
 【経済学部2年生 西田 裕咲子 さん】

株式会社高木について
 株式会社高木では、プレス金型設計・製作、工具の製作を行っており、金属加工・機械加工の分野で実績を積み上げてきた技術志向の高い企業です。従業員の人数は少ないものの、多くの種類の商品を少量で生産し、柔軟に対応している企業です。
 
株式会社高木の強み
 株式会社高木の強みは、確かな技術力と迅速な対応力にあります。設計から加工、仕上げ、検査までをすべて自社内で完結できる体制を整えており、品質や納期の面で高い信頼性を実現しています。特に、顧客の細かな要望にも柔軟に対応できる点が大きな特徴です。
 また、様々な加工技術の設備を保有しており、複雑な形状や高硬度材の加工にも対応可能です。こうした高い技術力と設備力が品質向上にもつながっており、他の企業では難しいとされる加工にも応じることができる点が株式会社高木の強みです。
 さらに、現場の技術者たちが高い誇りを持って業務に取り組んでいるため、常に「どうすれば品質が良くなるか」「どうすれば効率化できるか」といった改善意識が根付いています。町工場ながらも高品質で高信頼のものづくりを実現できる企業として注目されています。
 
株式会社高木の技術設備について
 株式会社高木は、最新の工作機械や測定機器を揃えており、寸法精度や品質保証にも力を入れています。具体的には、ワイヤー放電加工機、マシニングセンタ、平面研削盤、フライス盤、放電加工機、トライ用プレス機などを保有し、高精度な加工を実現しています。
 また、測定機器にも力を入れており、画像寸法測定器や光学顕微鏡、測長器、垂直検査機などを保有しています。さらに、2次元・3次元のCAD/CAMシステムを導入しており、複雑な形状の部品設計・加工も効率的に行うことができます。
 
訪問してみての感想
 他の企業と比べると従業員の人数は少ないものの、一貫した生産体制と柔軟な対応力を備えており、整理整頓された工場や充実した設備が印象的でした。現場では金型や精密部品の加工が丁寧に行われており、職人の方々の真剣な姿勢から、品質へのこだわりとプロ意識を強く感じました。また、人数が少ない分、一人ひとりがチャレンジできる機会が多く、他社とは異なる良い職場環境があることも印象に残りました。
 
 【経済学部2年生 馬場 凰生 さん】

 今回訪問した株式会社高木は、金型加工を中心とした事業を展開している企業です。実際に訪問してみると、設備や加工の様子を写真や図を交えて紹介しており、非常に分かりやすい会社案内となっていました。
 
 経営者に関しては、自社を良くしていこうという強い意欲が感じられました。特に、InstagramやTikTokなどのSNSを活用して会社の認知を広げようとしている点が印象的で、時代に合わせた発信に積極的な姿勢がうかがえました。また、10年後には自社工場を建設するという明確な目標を掲げ、ロードマップを作成しているなど、将来を見据えた経営方針があることも分かりました。経営者自身も明るくラフな雰囲気で、学生にも気さくに接してくれたため、終始リラックスして話を聞くことができました。
 社内環境については、帰宅前の5分間で清掃を行っているとのことでした。特別きれいというわけではなかったですが、最低限の整理整頓は保たれている印象でした。また、社内は禁煙で、喫煙する場合は屋外で行うルールがあるなど、職場環境への配慮も感じられました。取引先については、現状では一社への依存度が高いですが、今後は取引先を増やす方向で動いており、事業の幅を広げる努力をしています。金型以外の依頼にも柔軟に対応しており、「言われたことはなんでもやる」というスタンスからもチャレンジ精神の強さが伝わってきました。
 社員構成を見ると、20代・30代の若手社員は3名と少なく、全体的に若手が少ない印象を受けました。しかし、社員の挨拶や対応は丁寧で、社内の雰囲気は明るかったです。以前は人間関係があまり良くなかった時期もあったようですが、現在は改善され、社員同士の関係も良好とのことでした。若手社員へのインタビューでは、「多品種で自由に作業できることが楽しい」「同じ製品をより短時間で仕上げられると達成感がある」など、やりがいを感じながら働いている様子がうかがえました。人材育成のマニュアルも存在しますが、実際には現場での実践が中心であり、形だけの部分もあるようでした。
 待遇面では、新卒の月給は22万円で、残業によって収入が増えるとのことでした。ボーナスは業績に応じて支給され、良い年には合計4か月分ほどになることもあるとのことです。インタビューに答えていただいた若手社員は、「面接の翌日に来てほしいと言われ、即採用されたことがきっかけ」と話しており、採用のスピード感にも特徴がありました。実際に働いてみて「自由にできる環境で、思っていたより怖い人がいなかった」と感じたようで、社内の風通しの良さがうかがえました。
 総合的に見て、株式会社高木は自由度が高く、社員一人ひとりが自分のペースで働ける環境を大切にしている会社だと感じました。社長の人柄もユーモラスで親しみやすく、会社をより良くしていこうという思いが強いです。一方で、残業が多い点は負担が大きく、ワークライフバランスの面では課題が残ります。しかし、自由な社風や挑戦的な経営姿勢は大いに評価できる企業であると感じました。