中小企業が廃業する1つの理由に「後継者不足」がある。この事業では、元々は継ぐつもりがなかったものづくり中小企業を、何らかの理由で継いで、今では成功されている大阪市港区・大正区の若手社長4名を対象に、事業継承する前後の心境の変化を中心に三木ゼミ生がインタビューし、その内容を記事化する。これにより、中小企業を事業継承することの魅力を発信し、また事業継承する若手経営者にエールを送ることを目的に実施する。
今回、株式会社高野鉄工所の代表取締役・土江和弘さんにインタビューをしてきました。株式会社高野鉄工所は長年にわたる旋盤加工経験から習得した技術をもとに長尺旋盤加工を得意とする会社です。

1.事業継承するまで

前職は何をされていましたか?

外食産業(イタリアン)です。

前職に未練はありませんでしたか?

未練はなくはないです。
だからこの会社を成功させてから、オーナーとして外食産業をしたいと考えています。

今の会社に対してどのようなイメージを持っていましたか?

外食産業で働いていたときは地味だと思っていました。会社を手伝うようになってからは、重い物を持ったり朝から晩まで働いたり、危なくてしんどくて大変な仕事だと思いました。

2.事業継承してみて

この業界はどのような業界ですか? 

入った当初は怒られてばかりだったので嫌いでした。この業界のよくあることで、経歴が長い人が全て正しいような風習があります。

どのような経緯で今の仕事に就きましたか?

大学(経営学部)を卒業して、外食産業に就職し、2年働いていました。そこでシェフに誘われ店を出すことになり、シェフが店を作るまでの間、父の仕事をやってみたいと思い、手伝い程度で1年半働きました。お店ができたら辞めるつもりだったのですが、父に辞めることを言うと、あまりにも怒りすぎて辞めることが出来ない状況だったので、シェフに1年猶予をもらい、父を説得しようとしました。しかし、そんな時に父が倒れ、余命1年と発覚しました。それでも外食産業に戻りたかったのですが、会社を継げる人がおらず悩んでいたときに、祖父が偉大だったことを知り、祖父にこの会社の歴史を聞いて会社を潰すわけにはいかないと思い、会社を継ぐことを決めました。

会社を継ぐとき家族に反対されませんでしたか?

母に猛反対されました。元々母には外食産業に戻るまでの手伝い程度で働いている間も反対されていました。母は経理で会社に携わっており、当時は景気がそんなに悪くなかったのですが、会社として給料を払うのが精一杯だったので反対されていました。

どのようにして家族に認めてもらいましたか?

父の想いと祖父が偉業をなしていたということもあり、継ぐ決意が固まり、母を説得しました。

今の仕事で前職の経験が活きていることはありますか?

物事を客観的に見ることが出来る点は、前職の経験を活かせていると思います。

実際に会社を継いで良かったと思うところはありますか?

社長になってみて、日々新たな発見や気付かされることが多くあり、それらが自分自身の成長に繋がっていることです。

継いでから1番大変だったことは何ですか?

今まで教えてもらっていた人の上に立って指示をするようになったことで確執が生まれ、人間関係が複雑になったことです。
性格もありますが、強く言えないので、指示をしようとすると緊張してしまいます。

会社を継いで苦労されたところはどのようなところですか?

父が他界した後今まで教えてもらっていた職人の上に立ち、指示をしないといけないようになり、どう指示をするか、給料の話などどう話すか悩みました。

どのようにして苦手意識を克服しましたか?

好きになる努力をしました。ホームセンターに行って工具を見たり、パンフレットに記載してある部材を見たりして、興味を持つようにしました。だんだんアイデアが湧いてくるようになり、苦手意識がなくなりました。自分から変わっていくことが大切だと思います。

継いでみてどのような気持ちの変化がありましたか?

最初はやっていけるか不安でしたが、自分のせいで会社が潰れたと思われたくなかったので、自分がやるしかないと思いました。

今働いている方はどのような方がいますか?

職人が2人居ます。
今いる職人は他の会社から引き取りました。
他の会社で代変わりをして、やりづらくなり、転職してきた職人もいます。

3.将来展望について

今後何人雇いたいと考えていますか?

まずは2人雇いたいと考えています。中小企業は10人が壁だと言われており、10人雇うことは厳しいですが、いずれはその壁を超えたいと考えています。

どのような人材が欲しいと考えていますか?

打たれ強い人に来て欲しいです。年齢にこだわりはないですが、探求心がある人、やる気のある人に来て欲しいです。

どのようにして人材募集をしようと考えていますか?

友人や知り合いのツテや求人会社に頼ろうと考えています。
SNSやHPを使い人材募集をしようと思ったが、どのようにすればいいのかわからず、断念しました。

お子さんに継いでもらうことは考えていないのですか?

無理に継いでほしいとは思わないです。継ぎたいと思うなら継いでほしいですが、妥協で継がれたくないです。

何歳まで続けようと考えていますか?

代表ではなくても元気でいられる間は、携わりたいと考えています。

4.インタビューの最後に

最後に、この会社を継いで満足していますか?

今となっては継いでよかったと思っています。
色々な経験をする機会があり、年齢関係なく、技術や知識がある人から学ぶことが多いので、日々成長することができ満足しています。

インタビューを終えて

今回のインタビューを通して、私達が1番に感じたことは社長が「努力」されたということだ。父のお手伝いで働いていた頃、中小企業は地味で、危なくしんどそうというイメージがあり、嫌いであった。しかし、社長は「探究心」を持ち続けることで日々学ぶことや発見が多く、次第に好きになっていった。社長が探求せず社長に就かないことは勿体ないと仰っていたように私達も見えていない部分を探求することによって出来ることが多くあるということを気付かされた。

取材日:2020年10月21日(水)
担当:沢埜 柊太、下河原 旭洋、土井 瑞奈、柳内 理沙、山本 航平(阪南大学経済学部三木ゼミ3年生)