中間報告のときにも書きましたし、阪上さんのコメントの中でも触れられていますが、金子ゼミのフィールドワークでは、事前にゼミ生にあまり活動の詳細を話しません。
高校生や中学生(今年度は中学校の居場所への参加はなかったですが)と話したり、ゲームをしたりするのだというくらいしか事前情報はありません。「私は、君たちが知っているゲームや音楽などの共通の話題があまりないのだから、どう話していいかなんて教えられないよ。そこは自分たちで考えて何とかして」と言ってあります。ちなみに、期せずして今回コメントをくれた3人の学生は、今年度の秋の1年生向けのゼミのPRイベント「先輩と語ろう会」にも協力してくれましたが、私は集合時間と場所だけをそれぞれに伝え、彼らに加えてもう一人の4年生も、実はその日がはじめましての人同士もいるなか、当日その場で「さあ、どうするか考えて」と伝え、その場でスタートします。そのくらい即興で対応することに重きを置いています。

今回のワークショップは、西川先生に加えて、元田奈高校校長の中田正敏先生もお招きし、そのほかはこうした活動に理解のある方々に声をかけて実現しました。
タイトルは「居場所から学びを考える」ということで掲げました。しばしば、学校に居場所カフェやサードプレイスというそれまでの学校には異質なものを作ろうとするとき、拒否反応が示されることがありますが、そういうとき、「学び」と「居場所」は対極的なものとして受け止められたり、あるいは別のものであるからこそ既存の秩序を邪魔しないものと説得されたりすることがあります。しかし、私は「居場所」での体験そのものが「学び」になったり、あるいは通常の教科学習をする上での支えになるという意味でも、「学び」と切り離せないものだと考えており、それを掘り下げて考えてみたいという問題設定を一応してみました。ただ、これは表向きの理由です。

実は、事前に西川先生にインタビューを行い、そこにも東君と西道君に同席してもらいましたが、インタビューの後、「居場所」に移動したときに卒業生の学生が遊びに来ていました。その学生は「居場所」の出身者でもあり、現在、学校内にそうした場があった意味を大学で研究しようとしていると聞いたので、「えー、今度、西川先生たちと居場所のイベントをするんだけど、絶対、役に立つと思うからおいでよ」と誘いました。
当初、このイベントは研究の一環として実施しようと考えていましたが、そこで声をかけたことをきっかけに、新しいプランに変更しました。そこから、今回コメントをもらったゼミの3人に、「3月21日、空いてる?居場所を考えるイベントをやるんだけど来てくれない?」と声をかけ、来てもらいました。

イベントを開催することが決まったのも2月中でしたが、案内を関係者に送ったのもさらにショートノティスで、ほぼ数週間から1週間くらい前でした。もちろん、そのような状況だったため、声をかけても参加できなかった方もたくさんいらっしゃいました。私が声をかけた大人たちは、それぞれの現場で「居場所」の理念を大事に活動しているベテランですし、こうした場も初めてではないという意味で心配もしていませんでしたが、若者はとにかくこうした場は初めてなので、いつもの「居場所」のようにとはいかないまでも、参加しやすい形を作れればと考えていました。とはいえ、どこまでいってもやはり緊張はします。それでも、みなさん思い思いの言葉を話してくれました。

当日は、3時間くらい話をしていたのですが、最初の1時間近くは参加者の自己紹介をゆっくりしていきました。そこからは、その中の言葉を拾いながら、少しずつ話を広げていくというスタイルで進んでいきました。
参加されたみなさんには、簡単にあとで感想を聞いていったのですが、概ね「面白かった」と言っていただけたので、良かったと思います。後日、西川先生と雑談をしていたときに、先生から「いろんな世代の人の話を聞けたのが面白かった」という一言をいただき、そういう風に企画したわけではありませんが、結果的にそのような場になったのなら、それは良かったなと感じました。

今回は彼らに最後のワークショップのコメントをもらいました!

学生活動状況報告

 
居場所カフェができた背景を知りました。僕も何度かボランティアで行かせていただいた分、居場所カフェに思うことがありました。
居場所がない人たちのためではなく、居場所がある安心感を地域に広げていっているのではないかと思いました。
僕が居場所カフェでボランティアをする側ではありますが、居場所カフェにいる人たちと触れ合うことで、ボランティアという言葉では表すことができないものがあるのではないかと思っています。現在は桃谷高校に行かせてもらっていますが、今後は他の高校や中学にある居場所カフェやサードプレイスにも行かせてもらいたいです。
経済学部3年 西道 怜士

さまざまな方の子どもに関する考え方や意見を聞くことができ、自分の視野が広がる貴重な経験になりました。立場の違う人の意見に触れることで、新しい気づきがあり良かったです。
また、学校の環境を良くするためには地域の方々の協力が必要であることや、居場所カフェのような取り組みも多くの支えで成り立っていることを学びました。さらに、先生方の働き方について、大きな会議を減らして小さな会議を増やすことで意見を言いやすくなり、問題解決にも早く取り組めるという点が印象に残りました。
これから自分もアルバイトで上の立場になるので、今回学んだことを活かし、周りが意見を言いやすい環境づくりを意識していきたいです。
経済学部2年 吉田 璃弘

今回のワークショップでは、中学校、高校でそれぞれ現役で教職に就かれている先生や教職を経験されている方のリアルを聞くことができ、教職を目指しているものの中学校と高校のどちらを目指すのかを決めることができていない自分にとって、とても参考になる話を聞くことができたと感じています。
また、教師の労働時間などについても、教職の授業で労働時間について考えることはありますが、学生同士で話し合っても出てこないような現場で働いているからこその工夫なども聞くことができ、貴重な時間だったと思います。
経済学部2年 東 憲伸

  

連携先コメント

NPO法人FAIRROAD 理事長
阪上 由香 様

今年度も、金子先生のゼミ生の皆さんに、桃谷高校のモモカフェに大学生スタッフとして関わっていただきました。教職課程を履修している学生だけでなく、さまざまな思いで大学生活を過ごしている皆さんが参加してくれました。年齢が近いこともあり、どちらが生徒でどちらが学生スタッフかわからなくなるほど、同じ雰囲気で時間を共有しており、私たちには見せない自然な笑顔が印象的でした。 金子先生は、いわゆる「居場所」についてやFAIRROADの活動をあえて説明しすぎず、生徒さんを連れてきてくださいます。その関わり方はとても大切だと感じています。先生と学生の皆さんとの関係性があるからこそですが、その場での関わりが自然に立ち上がっていくためには必要だと感じています。(FAIRROADの活動が説明しにくいのもあるかもしれません。) 言語化はときに気づきや学びを深める一方で、想像の余白を奪ってしまうこともあります。「あれはなんやったんやろう…」「なんて言えばよかったんかな…」と、すっきりしないまま1日が終わることもあったかもしれません。ただ、その言葉になりきらないグレーな感覚が残っているということは、生徒にとって安全で安心な時間が守られていたということでもあると私は感じています。相手の言葉や態度を自分の価値基準で整理しきらず、そのまま受け止める関わりは、権利擁護的な実践です。 ただ、複雑な事情や強いSOSだと感じた場合には、一人で抱え込まず、その日のうちにスタッフへ共有してください。どの言葉がそれにあたるのかは、スタッフ間でのコミュニケーションのなかで見えてくるので、いろいろ話しましょう。「思う」から「話す」までの距離を、そっと見守ってくださった皆さんに感謝しています。またいつでも来てください。

教員コメント

経済学部 経済学科
金子 良事 准教授

金子ゼミは、ゼミ自体が居場所的に運営しているので、居場所事業に参加していなくても通常のゼミでも変わりません。
今年度は、1年生向けのゼミ紹介の動画の中で卒業生に語ってもらったことがありましたが、なかなか言葉にするのは難しいということを語っていました。私は、別に教え子たちがそれぞれの経験を言葉にできなくても構わないと思っていて、ましておざなりの言葉でそれを着飾るくらいなら、自分が経験した瞬間瞬間を大切に持っていてくれればよいなと考えています。
今回、3人のコメントは期せずして、自分自身を深めるという方向で捉えてくれていました。答えなんて出さなくてよいので、何年かたって思い出したときに、あのときのゼミで経験したことはなんだったんだろうと考え続けてくれれば、うれしいなと思います。

参加学生名簿

西道 怜士 河野 九瑠美 東 憲伸 吉田 璃弘 海元 颯菜