大野ゼミ第1期生 春の東京合宿(メディア&エンタメ見学)報告

 いささか旧聞に属しますが、国コミ大野ゼミ第1期生の2015年春合宿のようすを備忘録として記します。

 メディアやコンテンツを研究対象としている大野ゼミでは、2/25水〜28土の三泊四日で、東京の各放送局そしてエンタテイメント産業の現場を実地見聞する合宿を行いました。
 当初は放送メディアだけでなく、新聞社、雑誌社、広告代理店など幅広い業種の会社を見学するつもりだったのですが、ゼミ生から「どうせなら東京キー局をいくつも巡って、個性の違いを体感したい」との要望があり、NHKも含めラジオ・テレビ各局をスケジュールの可能な限り見て回る強行軍を実施することになりました。第2期生そして未来の大野ゼミ生のために、そのようすを記録しておきます。
 (*なお、以下の見学内容は、指導教員が民間企業勤務時代の個人的な人脈を通じて、各局に特別に許可を得て行ったものです。各局とも一般公開は行っていません。第三者が局に問合せても、対応はしてもらえませんので、悪しからずご了承ください)

2/25(水) 第一日目(テレビ朝日・フジテレビ)

 あさ7時に新大阪を発ち、最初の訪問先である六本木ヒルズのふもとに鎮座するテレビ朝日へたどり着いたのは午前10時30分。最近はバラエティや歌番組なども好調で視聴率の首位争いを演じているテレ朝ですが、やはり看板は報道番組。まず案内されたのは『報道ステーション』のスタジオでした。
 ニュースといえば、記者の人たちの慌ただしい様子が思い浮かびますが、実際にはスタジオワークを支える裏方さんたちの存在も忘れてはなりません。限りあるスペースを広く見せるために遠近法を取り入れたスタジオセットへの工夫、夜の番組なのに午前中から準備にとりかかっている美術や生花担当のスタッフの大変さに驚かされました。
 また当日はラッキーなことに生放送中の『ワイドスクランブル』のスタジオにも入れてもらえ、出演者とフロアディレクターたちの打合せの様子などを至近距離で見学できました。

 午後からは、ゆりかもめに揺られて台場のフジテレビに。玄関先では、なんとステーションキャラクターである青い犬のラフくんがお出迎え!午前のテレ朝がどちらかといえば朝日新聞社系の硬い(キッチリした)社風であったのと対称的に、フジは毎日が学園祭のような雰囲気。車内のエレベーターに乗っても、社員たちが気さくに話しかけてきます。オフィスの廊下にはクレーンゲームが置いてあったり、まさに「楽しくなければテレビじゃない」を体現しています。
 見せてもらったのは、朝のワイド番組『とくダネ!』と夜のスポーツニュース『すぽると!』のスタジオ。さすがに出演者はいませんでしたが、等身大看板のキャスターたちと記念撮影。また、司会の小倉さんの座り位置に、ももいろクローバーZがメッセージを残しているのを発見して、ちょっとトクした気分に。
 その後も、美術倉庫に入ってあの国民的長寿番組『笑っていいとも!』の使い古しの電飾看板を見せてもらったり、放送局の心臓部ともいえるマスタールーム通されたり、おなじみの球体展望台に案内されたりと盛りだくさん。とりわけ驚かされたのは、フジテレビの電波を一手にコントロールするマスタールームを見せてもらえたことです。放送局に勤務経験のある指導教員の私ですら、15年の勤務でマスタールームに入ったのは数えるほど。それぐらい厳重に管理されている場所を、ガラス越しとはいえ見学させてもらえるとはフジテレビの器の大きさをヒシヒシと感じました。もっとも、学生たちはこの場所の重要さに今一つピンときていない様子で、何で私がそんなに興奮しているのか不思議なようでしたが…

2/26(木) 第二日目(J−wave・テレビ東京)

 東京合宿二日目のスタートは早起きして、またも六本木ヒルズへ。こんどは超高層ビルの最上部に向かいます。高速エスカレーターの扉が開けば、そこは日本で最も高い所にスタジオがあり、日本で最もオシャレでカッコ良いFMラジオ局J-waveです。実はここJ-waveは、1990年代前半、指導教員の大野が広告代理店時代に局担当として毎日の様に訪れていたラジオステーション。1988年の開局以来、日本の音楽シーンを引っ張って来た局であり、今や誰もが口にする「Jポップ」という言葉を作った局でもあります。
 6時から始まっている『TOKYO MORNING RADIO』のスタジオでは、DJで俳優の別所哲也さんが朝のヘッドラインニュースや曲紹介を軽快にこなしていきます。と、突然、生放送中の電波で「けさはスタジオ見学に大阪の阪南大学の学生さんが来てるよ。諸君、おはようモーニング!(番組の合言葉)」戸惑いながらも「おはようモーニング!」と返す学生たち。さらに、曲がかかっている間に「ちょっとみんな!スタジオ入っておいでよ!」と声をかけてくれてくれ、一緒に記念撮影。ちなみに別所さんは私の大学の同級生(在学中から彼は有名だった)で、前職の放送局勤務のときも社食やスタジオの廊下などで接近遭遇していました。別所さんはサービス精神旺盛で、番組終了後には学生たちに記念品まで用意してくれる手回しの良さ。何から何までカッコいい、男気あふれる別所さんです。
 次いで、何万枚と所蔵されている日本最大級のCDライブラリーの選曲システムやスタジオの基本機能の説明を受け、さらには空いているスタジオでDJやディレクターの模擬体験もさせてもらえました。即席ディレクターとして一丁前にブースに向かってキューを出したり、ヘッドフォン着けてマイクの前で曲紹介など、実に楽しい体験でした。テレビと違って身軽なラジオの良さを学生たちはあらためて認識。超高層ビルの上から見下ろす大都会のパノラマ、向かいにそびえる朝日に輝く東京タワーの姿がみんなの心にしっかり焼き付いたようです。
 J-waveの見学が終わってもまだ9時半です。こんどは隣の駅の神谷町からテレビ東京に赴く大野ゼミ一行。テレビ東京といえば、番組予算の少なさを知恵と工夫で乗り切る独自路線が、最近ではむしろ視聴者の好感度アップにつながっている局。多くのアニメ作品やジャニーズの若手が起用されることでもおなじみで、実はゼミ生の間でも、「いちばん行ってみたい局」といわれていたのです。
 そんな期待を胸に訪れたテレビ東京、入館から見学コースまで色んな意味で「ゆる〜い」感じで、期待に違わぬおもてなしを受けました。入館すると玄関のスグ横のガラス張りのスタジオでは東京ローカルの朝生ワイド『なないろ日和!』を放送中。MCは薬丸裕英さん、料理の試食やら長尺の通販コーナーやらを絡めながらのマイペースぶり。最初からテレ東モード全開です。受付をはさんで反対側には『トーキョーライブ22時』のスタジオというか、お茶の間スペースが…ジャニーズファンの女子は写真撮りまくりです。
 案内役の方の説明も、「ふつうの」会議室で、ある意味とても社会学習っぽく始まったのですが、ここからがスゴかった。良い意味での予想を裏切られることの連続でした。まもなくニュースが始まろうとしているのに、その直前まで本物のカメラとプロンプター(アナウンサーが真正面を見ても手元の原稿が読める機械)を使ってのキャスター体験、そしてニュースが始まるとスタジオの副調整室での見学を許可されました。生放送、とりわけ報道のスタジオは殺気立っているのが常で、部外者が気軽に立ち入れるような場所ではないのですが、そこに立ち合わせてもらえたのです。さらに、編集室で作業中のスタッフのところでテープや編集機を見せてもらったり、空いているスタジオで音声卓をいじらせてもらったり、きわめつけはロケ撮影のためのカメラをかつがせてもらえたのです。撮影用カメラはたいへんに高額で、素人がいじらせてもらえることなど通常はありえません。カメラマンの方々は仕事中なのに嫌な顔ひとつせず、学生たち一人一人にカメラ操作を手ほどきしてくださいました。本当に頭が下がる思いでした。また、車庫では外から帰って来たばかりの中継車の中にも入れてもらえました。番組制作の現場の作業の一つ一つをリアル体験できました。
 テレビ東京の方いわく、「我々は他局と比べて華々しい番組があるわけでもなく、局舎も古いし、見た目で圧倒できる要素もない。しからば、見学に来てもらった皆さんには他局でできない経験をしてもらうことが一番の差別化ポイントだと思った」とのこと。さすが、知恵と工夫のテレビ東京!参加者みんながますますテレ東ファン(てれとマニア)になりました。ありがとう、テレビ東京!

2/27(金) 第三日目(東京ディズニーランド)

 東京合宿三日目は、ゼミ生たっての希望で、東京ディズニーランドでキャラクタービジネス、エンタメビジネスについての実地見聞と相成りました。おりしも世界的大ヒット『アナと雪の女王』を基にしたパレード「アナとエルサのフローズンファンタジー」が期間限定で行われていたため、入場者の様子とあわせてエンタテイメントの実態をじっくりと観察しました。顧客サービスの質、お土産ビジネスの巧みさなどマーケティングの視点を持つと、また違ったディズニーの姿が見えてきます。もちろん、あの世界一有名なキャラクターにも会わない訳にはいかないので、会って来ました。中に誰か入っているような気がしたのは私だけでしょうか。

2/28(土) 第四日目(NHK)

 東京合宿の最終日は、指導教員の大野の古巣、NHKです。
 まずは、『紅白』『ポップジャム』『歌謡コンサート』などでおなじみ高山哲哉アナウンサーに、メディアで働く者の心構え、そして人と人とのコミュニケーションの基本などをざっくばらんに語っていただきました。
 そしてBSプレミアムで放送中の『COOL JAPAN 発掘!カッコいいニッポン』の収録スタジオをじっくり見学。日本のクールさを外国人の視点で再発見してゆこうという趣旨で2006年にスタート、すでに足かけ10年に及ぶBSの長寿番組です。NHKワールドでも放送されるため、英語をメイン言語に収録され、オンエアでは日本語訳がテロップされるという、まさに国際コミュニケーション学部生にうってつけの番組。
 MCのリサ・ステッグマイヤーさんは、ゼミ生にとっては幼少時に視た『天才てれび君』のお姉さんといった方が、通りが良いかもしれません。大野とも長年一緒に番組をやってきた仲間で、久々の再会を喜び合いつつ「あの時の子どもたちが今や大学生だものねー、でも『天才てれび君』をやってたおかげで皆にずっと覚えてもらっているんだから、子ども番組ってありがたいよねー」とのお言葉。現在はシンガポールを拠点に日本やアジア各地でキャスター業を続けているリサさん、気さくにゼミ生とも写真撮影に応じてくれました。

 ゼミ旅行までは、どちらかといえば自由奔放すぎてまとまりの無い第1期生でしたが、この合宿を機にメンバーの親睦も深まり、ゼミとしての一体感も出てきました。東京滞在中の四日間、食べ盛りの学生たちの食費の面倒をみたため、教員のサイフの負担もケタ外れでしたが、それ以上に有意義な実りある合宿だったと実感しています。
(指導教員:大野 茂)