永田ゼミ(専門演習アプローチ) 第1回ビブリオバトル

 国際コミュニケーション学部2回生の大林佳織です。永田ゼミ(専門演習アプローチ)で開催した第1回ビブリオバトルについて報告させていただきます。

 今回のバトラーは以下の6名です。

①貞廣 佑子 :伊坂 幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』東京創元社, 2006.12
②武部 楓:鎌田 洋『ディズニーサービスの神様が教えてくれたこと』ソフトバンククリエイティブ, 2012.7
③山谷 元基:しまず こういち編著『新装版 マーフィー名言集-あなたを成功へ導く568のことば』産業能率大学出版部; 新装版, 2012.9
④安田 優子:星 新一『妖精配給会社』新潮社; 改版 ,1976.12
⑤川内 ゆいか:心屋 仁之助『がんばっても報われない本当の理由』PHP研究所 ,2014.2
④花井 翼:重松 清『きみ去りしのち』文藝春秋, 2010.2

 まずトップバッターは貞廣さん。伊坂幸太郎著の『アヒルと鴨のコインロッカー』を紹介してくれました。一人の男子学生がアパートに引っ越し、隣人に挨拶をするというところから物語は始まります。その隣人から「一緒に本屋を襲わないか」と誘われ、本当に本屋を襲ってしまう…。私も伊坂幸太郎さんにのめり込んだ時期があり、初めて手にした本が今回紹介してもらった『アヒルと鴨のコインロッカー』でした。表紙がぼろぼろになるまで読み返した記憶がよみがえってきました。
 「この本を読んだら、次も伊坂幸太郎さんの本が読みたくなる」との一言には強い共感を覚えました。一見すると全く関係ない別々の話が、結末で一気に繋がる快感と衝撃は、伊坂幸太郎ならではのものだと思います。また、私が一番納得した点は、映画と原作本との違いです。彼女は、映画化された『アヒルと鴨のコインロッカー』は見ないと言っていました。映画を見てしまうと、原作とちょっと違っていたり期待はずれだったりするのはよくあることで、私もよくそういう経験をします。だから私の場合は、裏切られないように映画から見て原作本を読むという順番にしています。
 ただ私は映画の『アヒルと鴨のコインロッカー』も見ましたが、本と同様にとても面白いと感じたので、是非彼女にも見てもらいたいと思いました。
 2番目は、今回のチャンプに輝いた武部さんが紹介してくれた『ディズニーサービスの神様が教えてくれたこと』です。ディズニーにはマニュアルはなく、誰もが持つディズニーのイメージを壊さないために、臨機応変に実践されてきたいくつもの方法が実例をふまえて書かれているそうです。将来はサービス業に就きたいという彼女は、この本から「お客様に対する態度を見直さないといけない」と日常の中の体験で学んだそうです。また、「自分にとっては良い事をしていると思っていても、相手にとっては真逆のことかもしれない」という言葉に、私もとても考えさせられました。この本に書かれている内容は、ディズニーにおけるサービスだけではなく、私たちの日常的な生活にもあてはまるものだと思います。
 最後に言っていた「当たり前のサービスだけでなく、客が望む以上のサービスをしないといけない」という言葉が、私の心に強く残りました。

 3番目は山谷君の紹介してくれた『マーフィーの名言集』です。潜在意識を働かせれば人生はうまくいき、いいものにしたいと思えばいいものになる、など人生においてたくさんのことを教えてくれる本です。彼は本を読まないことが多いらしいのですが、何かをやり遂げたい時には本に頼ると言っていました。野球部でレギュラーに入りたい、甲子園にも出たいという気持ちから、自分が頑張れるきっかけはないかと思っている中、この本に出会ったそうです。この本のおかげで継続の大切さに気づき、自分の自信がないことが原因だと痛感したそうです。この本を読んだあと、自信のない自分と決別し、「レギュラーを取る」と周りに宣言することで、プレッシャーを自分に与え意識を変えたとのこと。彼はこの本のおかげでレギュラーになることができたとそうです。1冊の本が人の心や行動まで変えてしまうことに驚きました。私も「何かをやり遂げたい」と感じた時、この本を読んでみたいと思います。
 4番目は安田さんが紹介してくれた星新一著の『妖精配給会社』です。本が苦手で、本との接点があまりない環境にいた彼女が、知り合いから薦められ手にとった本だそうです。短編集で、1話が4ページ程度のものもあり、すっと頭に入ってきてとても読みやすかったと彼女は言っていました。私はこの魅力的なタイトルにとても惹かれました。
 この本には、意味が分かると怖さがわかる話が多いそうで、最後に驚くような結末がまっているとか。そのなかの一話で彼女が紹介してくれた「ボタン星からの贈り物」という話に、とても興味を惹かれました。本が苦手な人や読む機会が少ない人にもお薦めの一冊ではないかと感じました。
 5番目はダブルチャンプとなった川内さんが紹介してくれた『頑張っても報われない本当の理由』です。普段は雑誌が中心で本を読む事がないという彼女が、あえて手に取ったという本に私はとても興味を抱きました。女の子であれば陰口はどのように対処したらいいのか、など普段の生活に役立つ内容が多く、自分にプラスになり前向きになることが出来る本だそうです。彼女は、とくに「自分を安く売らない」という言葉が心に残ったと紹介してくれました。どんな時でも安請け合いせず、「やりたくないときはやりたくない」と自己主張することができるようになったそうです。「自分の考えを持つことは意外と難しいことだ」と思っている私にとっては、それを普段の生活から身につけている彼女をとても格好いいと感じました。私も自分を変えたいと思った時この本を手に取ってみたいと思います。

 最後は『きみ去りしのち』という本を花井君が紹介してくれました。本を読む事が好きだという彼は、本の内容をしっかりと理解していて、すぐに頭に入ってこないような複雑な登場人物の構成までわかりやすく説明してくれました。「すごい」の一言。
 生後2ヶ月で亡くなってしまった子供、原因は誰のせいでもないのに夫婦は互いに自分自身を責め、関係が壊れていく。そんななか主人公は旅にでます。行った先々でたくさんの人と命について語り合ったり、同じ境遇の人と会話をかわしたりすることで主人公の考え方が変わっていくという物語です。この本には、実際の地名(例えば熊本の阿蘇山など)やそこで行われている「野焼き」など伝統的な行事が出てくるそうですが、作者の表現の仕方が巧みで、「情景が目に浮かぶようだ」と紹介してくれました。
彼は行ったことのない所に行くことが好きで、九州へ旅をする主人公に惹かれ、この本を読み始めたそうです。私も、重松清さんの本を読んでいて感じる事は、表現力や喩えがとても綺麗だというところです。いつもこういう表現の仕方があるのかと驚かされます。久しぶりに重松清さんの本を読んでみたい、と感じるビブリオでした。
 今回のビブリオバトルでは、本を読まない、本が苦手な人が多かったのでとても興味がわきました。というのも、私はどちらかと言うと本が好きで読書量が多いので、本が苦手な人がどんな本を手に取るのかに興味があったからです。私は基本的に小説しか読まないので、名言集や、自己啓発本が紹介されたのは私にとって新しい本との出会いの機会となりました。また、小説でも、もう一度読み直してみたい、次はこれを読んでみようと次の楽しみにも繋がりました。私は、本屋や図書館に行けば自分の興味があるコーナーにしか行かないことが多いのですが、このビブリオバトルを通じて、読んだことも手に取ったことさえない本とも出会うことができました。私はビブリオバトルのいちばんの魅力は、ここにあると感じています。