ビブリオバトル 第一回 永田ゼミ

 永田ゼミの恒例であるビブリオバトルが開催されました。各々、持っている力を出し合いチャンプを目指し頑張った模様をレポートします。
 第一回目となるビブリオバトルには、四名が参加しました。バトラーは以下の通りです。

①中川陽菜 朝井リョウ『何者』新潮文庫,2012
②川口奏 山田悠介『Aコース』幻冬舎文庫,2012
③杉野理沙子 有川浩『海の底』・『クジラの彼』角川文庫,2009・2010
④土肥拓斗 朝井リョウ『何者』新潮文庫,2012

バトル外参加:永田拓治 木下是雄『レポートの組み立て方』筑摩書房,1994・大野晋+浜西正人『類語国語辞書』角川書店,1985

一番手 中川陽菜 朝井リョウ『何者』新潮文庫,2012

 一番手は中川陽菜さんで、紹介してくれた本は、『何者』でした。登場人物は就活をする若い男女6名。ストーリーは、就活をとおして変化するそのグループの人間模様を描いたもので、就活が進んでいくとともに登場人物の恋愛も描かれているそうです。
 表向きは仲良くしているのですが、裏ではSNSで心の闇をぶちまける。その舞台がtwitterであり、この本のキーワードとなっています。我々にとって身近なSNSや就活という現代の社会事情に沿ったテーマが描かれているものであり、興味深い内容でした。
 最初にキ登場人物を順番に説明していて、理解が深まりました。個人的には最後はハッピーエンドではないところに興味がわきました。
 なおこの本を選んだ理由は、直木賞作品であったからだそうです。

二番手 川口奏 山田悠介『Aコース』幻冬舎文庫,2012

 二番手は川口奏さんで、紹介してくれた本は『Aコース』です。本は普段、あまりよまないそうですが、ホラーには興味があり、本書を選んだということです。この本の内容は、日常に倦んだ男子高校生5人が、ゲームセンターのバーチャルワールドゲームをクリアしていく物語だそうです。このバーチャルワールドで痛みを受けると現実の世界にある体も実際に痛みを感じるそうで、日常に刺激を求めた5人は、AからFまであるレベルのなかから最高難易度を選びクリアを目指します。
 舞台は病院。制限時間の中で、迫り来る火の中で一から九までの正解のボタンを探し出すために力を合わせて頑張るそうです。後半はなぜ彼らが病院に送られたのかなど、数々の謎が解けていく、とのことでした。川口さんの話し方はゆっくりで、あまり声に抑揚がないぶん、かえって恐ろしいホラーの世界に引き込まれていきました。

三番手 杉野理沙子 有川浩『海の底』・『クジラの彼』角川文庫,2009・2010

 三番手は杉野理沙子さんで、紹介してくれた本は、『海の底』と『クジラの彼』です。小学生の頃から本を読むことが苦手だったそうですが、本書には難しい表現はあまりなく、分厚い本ですが読みやすかったとのことです。この本の作者は『図書館戦争』でもおなじみの有川浩さん。
 本書は、きりしおという潜水艦を舞台とした物語です。六日間の間で登場人物による例えば恋愛などの様々なドラマが起こるそうです。その恋愛の続きが『海の底』にはおさまりきらなかったので、『クジラの彼』に続編を書いたとのこと。セットで読むとさらに面白さが倍増するそうです。ただ本書のみどころは恋愛ではなく、ザリガニ。巨大なザリガニが人々を襲い、人々はそれと戦うようです。気になります。
 ビブリオバトルとは一冊の本だけを紹介すると思っていたので、このやりかたには驚きました。図書館戦争を映画で見たことがあり、とても気に入ったので、杉野さんが紹介した本に興味がわき、読みたくなりました。

四番手 土肥拓斗 朝井リョウ『何者』新潮文庫,2012

 四番手は土肥拓斗さんで、紹介作品は、なんと一番手の中川さんと同じ『何者』。土肥さんがこの本を選んだ理由は二つあり、一つ目は中川さんと同じくこの本が直木賞受賞作であったから。二つ目は『桐島、部活やめるってよ。』を手がけた作者であったからだそうです。 
 土肥さんは、一番手の中川さんと紹介作品が被ったことから、違う観点で物語を紹介してくれました。最初、土肥さんはこのタイトルを見た時、サスペンスか推理小説を想像したそうです。しかし、それは読み進めていくことに違うということが明らかになっていきます。現代の大学生とSNSとがメインテーマなので、本の世界に入り込んで読みすすめられたそうです。また、主人公の名前が『たくと』ということにも親近感がわき、感情移入しやすかったとのこと。ただ終始、良い気はしなかったそうです。
 土肥さんがこの本を通じて感じたことは、『待っているだけでは何者にもなれない、しかし、何かをしたら何者かになれる。』ということだったそうです。
 同じ本にもかかわらず、中川さんとは全く違う本の説明を受けているようでした。前半に本の説明、後半に自分の感想を述べるなど、順序良く展開されており、とても聞きやすかったのも印象的でした。ビブリオバトル参加者のうち、二人もが紹介した本なのでさらに興味がわきました。是非読んでみたいです。
 以上のバトルのすえに投票が行われ、第三期生による第一回ビブリオバトルのチャンプが決定しました。
 優勝者は『海の底』と、『クジラの花』を紹介してくれた杉野さん。効果的にキーパーソン?となるザリガニを登場させ、聴衆の興味を引き立たせたのが優勝した一つの要因ではないかと考えます。

 一回目のビブリオバトルを終え感じたのは、たった五分のスピーチに、各々の個性が強くあらわれる、ということでした。一人一人、自分の良さを巧みにスピーチの中に取り組み、まるで映画の予告を見ているような気分になりました。続きは、エンディングは、タイトルと内容はマッチしているのか、など、興味はつきませんでした。

 個人的には川口さんの『Aコース』に一番、読みたいという意欲をかき立てられました。川口さんの話し方は、まるで自分が読んでいるような感覚に陥るようでした。くわえて私自身ホラーが好きなことも、本書にひかれた理由の一つです。
 来週は残りのメンバーが、第二回ビブリオバトルに参加します。第一回とくらべて、バトラーが多いですが、優勝を目指して頑張りたいと思います。

国際コミュニケーション学部 中村 魁