異文化理解入門で韓国伝統舞踊を鑑賞

 多様な異文化を直接体験することによってその文化をより深く理解することができます。また、異文化の体験は自国の歴史や文化を振り返るきっかけとなり、自国文化を複眼的な目で考察できる能力を高めます。私たちCHOゼミでは、国際感覚を持ってより広い世界に目を向けることができるよう、様々な文化体験に出掛けています。この度は、そのような自分達の異文化体験を国際コミュニケーション学部の1年生たちとも共有すべく、「異文化理解入門」の授業の中で異文化を紹介し、1年生たちが実際に異文化を体験できるような企画を実践しました。この企画は、CHOゼミの先輩達から始まり、今年で3年目を迎えます。企画の実現までに、私たちは社会人の外部講師の方々と交渉を重ねたり、舞台設置に関するアイディアの交換や日程調整などの連絡を緊密に取り合ったりして、一人前の社会人としての企画力・実践力を養いました。その活動報告として、ここでは、「異文化理解入門授業での韓国伝統舞踊の鑑賞」について報告いたします。

*この報告は、阪南大学【実学志向型総合的キャリアシステムの構築】事業の2014年度キャリアゼミ支援事業「共に歩むための他者理解(CHOゼミ)」の「異文化理解入門での韓国伝統舞踊鑑賞」活動報告の一部です。
*この学生教育研究活動は阪南大学学会より補助を受けています。

韓国伝統舞踊の舞台披露の様子
入谷絵梨花

 一般的に、他の国の人たちに比べ、日本人は自国や他国のことについてあまり知ろうとしないと言われることがあります。しかし、このような無関心は、異文化が共存する社会においては深い溝を生む一番の原因であると思います。地球の裏側の国でもなく、もっとも近い国であり、しかも似ている文化である韓国文化を理解することは決して難しいことではありません。それにも関わらず、私たちはあまり興味を持ってこなかったように思います。そこで、私たちは4月初旬頃に、大阪市北区中崎にある駐大阪韓国文化院を訪れ、韓国文化を直接体験させていただきました。その体験は、韓国文化に対する新たな発見と理解につながり、隣国としての親密感を覚えることができました。
 韓国文化院には「訪ねていく韓国文化」というプログラムがあります。私たちは、このプログラムを利用して、阪南大学国際コミュニケーション学部の1年生たちに「異文化紹介ならびに韓国伝統舞踊の鑑賞」プログラムを企画・実施することになりました。

 当日は、授業のはじめに韓国文化院の活動について簡単にお話をしていただきました。その後、韓国を紹介するDVDを約10分程度観ました。その映像には、普段見ることのできないような韓国の自然や風景、町並みが映し出されていてとても魅力的でした。その後、韓国舞踊家のキム・ヒオク先生とキム・イルチ先生による韓国の伝統舞踊「春鶯舞(チュネンム)」と「胡笛(ほちょく)シナウィ」を鑑賞しました。1つめの舞踊「春鶯舞(チュネンム)」は、キム・イルチ先生が披露してくださいました。
  • 韓国伝統舞踊「春鶯舞(チュネンム)」 キム・イルチ先生

 これは、朝鮮王朝23代目の純祖王(1790~1894)時代に、純祖王の息子孝明王子がスンウォン王妃の誕生40周年を記念して創作したとされる宮廷舞踊です。王様の前で披露する踊りであったためにあまり大きな動きもできず、お尻を向ける事も許されなかったようです。柳枝の上でさえずるウグイスの様子を見て創作したと言われ、踊りの中での動きのしなやかさや、手先や足先の動きまでもが意識されていて、小さくまとまったゆっくりとした踊りです。動きが殆どなく節制されたそのゆったりとした踊りがまた一つの特徴的な魅力でもあり、宮廷舞踊では珍しい一人踊りとして知られています。実は、教室の舞台が小さく制限されているので、この踊りを披露することになったのです。
  • 韓国伝統舞踊「胡笛(ほちょく)シナウィ」

 2つめの舞踊「胡笛(ほちょく)シナウィ」は、キム・ヒオク先生が披露してくださいました。1つめの「春鶯舞(チュネンム)」とは違って、これは、即興的で扇子の動きが非常に派手な、テンポの速いリズミカルな踊りでした。伴奏に合わせて大きく動く扇子が人と一体となって、とても綺麗で優雅でした。これは、「胡笛(ほちょく)」の楽器に合わせ、巫俗の信仰儀式で巫女が歌ったり、踊ったりする踊りだそうですが、「春鶯舞(チュネンム)」と対比され、楽しみが増しました。
 次にキム・イルチ先生により、伝統楽器「チャング」を紹介していただきました。チャングは朝鮮半島の伝統打楽器で、日本で言う太鼓のようなものです。チャングは右面と左面でその音が違うため、その音を混合させることで、とても迫力のある音が部屋に響きわたりました。キム・イルチ先生のチャング演奏のあとに、1年生達数人に直接チャング演奏を体験してもらいました。はじめは、ぎこちない演奏でしたが慣れていくうちにみんなの音がひとつになって、とても綺麗で迫力あるハーモニーが奏でられていました。2組目の体験者の人たちは、さらに難しい叩き方を教わっていましたが、みんな上手に演奏でき、素晴らしかったです。日本にいながらにして、外国の伝統舞踊を目の前で鑑賞し、異国の伝統楽器を直接体験できる素晴らしい機会を得ることができたと思います。
  • 1年生達の伝統楽器チャング叩き体験

 公演終了後は、韓国文化院の方々にインタビューをさせていただきました。
 今回、異文化理解入門の時間をいただき、1年生に実際に異文化に触れてもらいたいという理由から韓国文化院の方々に出張イベントをお願いしました。主催するにあたり日程の調整、公演の内容などの連絡のやりとりも自分にとって大変大きな勉強になりました。伝統舞踊も美しく本当に魅了されるものがあり、主催して本当によかったと思います。1年生だけが勉強になっただけでなく、私も色々な経験をさせていただき自分自身が成長したことを実感できました。1年生の頃に見た公演と、3年生になり主催して見た公演はまた見方が違い新鮮な気持ちにもなりました。韓国にもともと興味がありましたが、今回の企画公演を通して、また新たな発見をすることができ良い体験ができました。
  • キム・ヒオク先生とキム・イルチ先生へのインタビュー

韓国伝統文化についてインタビュー
古川加奈子

1.韓国の伝統舞踊の魅力は何ですか?
 韓国の伝統舞踊は、呼吸から始まります。静中動という言葉があり、意味は「静かに見える中にも激しく動く」という意味です。それは、すべて呼吸が関係しており、韓国の伝統舞踊は「呼吸」からその魅力を語れます。

2.舞踊は、毎日練習されているのですか?
 はい。月曜日〜日曜日まで毎朝2時間程練習しています。また、様々な場所で生徒に教えながら、自分たちも一緒に練習しています。

3.鮮やかなお化粧は何か意味があるのですか? また、何か特殊な化粧品を使っているのですか?
 やはり衣装が派手なので衣装に負けないようにお化粧も派手にしています。また、特殊な化粧品を使っているわけではなく、皆さんが使っているようなお化粧品を使用しています。

4.相手に伝える面で苦労したことはありませんか?
 一人一人違う感情を込めて演技をすることを心かけています。尚且つ見ている方に何を表現しているかを感じとってもらうことに苦労しました。また、男女ともに表現の仕方は様々ではありますが、女性だと体の柔らかさや、優しさ、そして強さをも表現することが求められます。強さを表現しながらも静かなところは優しく表現することが非常に難しく、苦労した点でもあります。

5.伝統舞踊を様々な所で披露していますが、やりがいは何ですか?
 最初は、携帯ばっかり見ていた人が多かったですが、最後には、ちゃんと目が合うようになっていて、韓国の文化をきちんと伝えられたと思いました。韓国文化に全く接する機会がないところで、韓国の伝統文化を伝えていけるのがとてもいいことであり、日本人でも韓国人でも若い人たちに少しでも伝統文化を身近に伝えられることはうれしいし、大切だと思います。

6.様々な学校での講演以外に普段はどのような活動をしているのですか?
 自分の教室の定期発表会であったり、他のプロの先生と一緒に舞台に上がったり、幅広く活動しています。大阪だけでなく、広島や福岡など様々な所で披露しています。
 また、日本の伝統文化とのコラボレーションもしています。和太鼓やお琴、三味線との日本と韓国の楽器コラボレーションをよくしています。

7.将来を担う学生に対して一言お願いします。
 自分の踊りに対してものすごく誇りを持っていて、自分の命のように感じながら踊っています。皆さんも自分自身を大切にして、嫌な時もめげずに前を向いて歩けばいつかは報われると思います。韓国の伝統文化を教える所があまり存在しなかった頃から、自分の舞踊教室を開き、京都や大阪などの教室で教え始めてはや20年になりますが、無から有を作り出したと自負しております。
 今や韓流ブームがあり、日韓の仲良さを感じたりもしますが、さかのぼっていけば、1千年〜二千年前の方が、日本と韓国の関係はよりフレンドリーだったように感じます。日本だけとか韓国だけとかではなく、もっと両国が互いに大きく目を向け、受け入れることをして欲しいです。


 インタビューをさせていただくことで、韓国の伝統文化についてより深く関心を持つことができました。私たちが「知りたい」、「感じ取りたい」何かを得るヒントになるインタビューであったと感じました。
  • 公演後のお話とインタビュー

  • キム・ヒオク先生のチャンゴ講座と演奏

1年生の韓国文化体験の感想
尾崎果歩

 今回3回生達が企画した「異文化理解授業での韓国の伝統舞踊鑑賞」を受けて、1年生達は、どのように感じたかについて抜粋でまとめました。

 チャングの演奏は、日本の和太鼓の様なお腹に響くような音ではなく、一風違った音がしました。韓国も日本と同じアジアなので、音楽にも日本の和の音に似たようなものを感じました。また、他のアジアの舞踊や楽器にも興味がわいてきました。(Yさん)
  • 韓国紹介のビデオを鑑賞中の1年生たち

 昔、王の前では大きな動作はできなかったというのを聞いて、一人目の方の「春鶯舞(チュネンム)」の踊りを見ると、確かに体の芯は動かさず、上品に上下に揺れていてとても美しかったです。二人目の方の踊りは、一人目の方の踊りより速いテンポで動いて扇子を開いたり閉じたりしていて、とても優雅でした。文化を知るには体験をするのが一番だというのを聞いて、私自身も早く留学へ行きたいなと思いました。(Sさん)

 チャングは日本の太鼓と似ている所があり、音も似ていました。先生が叩いていた音は、生徒が体験で叩いた音とは音の大きさも綺麗さもまったく違っていて、すごく感動しました。他の国を理解するというのは先入観だけでなく、実際に体験や経験をすることで本当の価値が分かるのだと、今日の授業でわかりました。(Sさん)

 私はK-POPが好きで韓国に行ったこともあり、ドラマもたくさん観ているけど、実際に目の前で韓国の伝統舞踊を鑑賞できるとは思っていませんでした。また、他の国に関してもこのような機会があればいいなと思いました。(Nさん)
  • 1年生達の伝統楽器チャング叩き体験

 踊りは日本舞踊と少し似ていました。ゆっくり動くのはとても難しいのに、とても美しく踊っておられてすごいと思いました。王様の前で披露する踊りなのでお尻を向けられないし、大きな動きもできないとおっしゃっておられましたが、衣装の袖が先まで真っ直ぐ伸びているのが、とても美しくて素晴らしかったです。楽器の体験もさせてもらうことができました。あの太鼓一つで歌うことも踊ることもできるのはすごいと思いました。貴重な体験ありがとうございました。(Nさん)

 以上、阪南大学の1年生たちに韓国の文化を直接体験することで、異文化理解を深めてもらえたことに私たちは非常にやりがい感じました。韓国は身近に感じていたけれど、意外と知らないことも多かったようで、1年生たちはとても興味深げに受講してくれました。こうした企画を進めていくことで、私たちも韓国の文化に触れることができ、より一層異文化理解を深めることができました。この日を迎えるまでは、何度も皆と話し合いを重ね、社会の方々とも連絡を取り、大変で挫けそうな時もありました。しかし、大変な思いをした分、1年生たちが韓国の文化に興味を持ってくれたことに達成感を感じることができ、大きく一回り成長したことを実感できました。これからも、この経験を無駄にすることなく、さらに大きな目標をもって、様々な事に挑戦していきたいです。
  • 韓国文化院の方と異文化理解入門で韓国の伝統舞踊鑑賞を企画した3年生のスタッフ