「門脇家住宅」の一般公開を手伝って

 私達CHOゼミでは、ゴールデンウィークを利用し、鳥取県西伯郡大山町にある「門脇家住宅」の一般公開のお手伝いに行きました。「門脇家住宅」は、300年以上前に建築されている農家で、茅葺き屋根が特徴の風情あふれるお屋敷です。さらに、敷地内では昔ながらの生活用品や書画など江戸後期の生活様式が伺える貴重な資料がたくさん保存展示されています。昭和49年に国の重要文化財に指定されており、春と夏の年2回、一般公開が行われています。今回は、日本の南部地方の伝統農家の調査も含め、5月に行われた春の「門脇家住宅の一般公開」のお手伝いに行って参りました。私たちは普段外国については、意識的に調べたりしながら勉強する機会も多いですが、自分が生まれた国については、あまり意識もしないし、知らないことが多いことに気付きました。今回は、「門脇家住宅の一般公開」を手伝う活動を通し、学んだこと、体験したことをまとめましたので、それをここに報告いたします。

*この報告は、阪南大学【実学志向型総合的キャリアシステムの構築】事業の2014年度キャリアゼミ支援事業「共に歩むための他者理解(CHOゼミ)」の「門脇家住宅の一般公開を手伝う」活動報告の一部です。
*この学生教育研究活動は阪南大学学会より補助を受けています。
  • 門脇家の主屋の正面

門脇家住宅を含む所子の歴史
中西恵美

 門脇家住宅の主屋は、明和6年(1769年)に建てられたものであり、豪農の居宅であると同時に、大庄屋の役宅としての性格をもった造りとなっていることが大きな特徴です。昭和49年(1974年)には、国の重要文化財に指定され、米蔵、新蔵の2棟の蔵と水車小屋の付属建物、そしてその土地も平成5年(1993年)に重要文化財に追加されました。外観は、1mの厚さにも及ぶ立派な茅葺き屋根が特徴となっています。
  • 門脇家住宅一般公開の入口と門脇家前の風景

 江戸時代、豪農となった門脇家は、大庄屋に任命され、役宅を兼ねる大きな居宅を構えました。その後、門脇家周辺に、分家である南門脇家や東門脇家などが立ちはじめました。門脇家住宅の主屋の土間には、太い梁を4段縦横に組み上げた立派な架構が見られます。主屋の裏側にはお米、いわゆる年貢を収納しておく米蔵や新蔵があります。また、正面左には、各村で収穫され、集められた米の品質を検査する検査場があり、門脇家が昔、どれだけ豪農であったかをうかがい知ることができました。
  • 左:米蔵     右:新蔵

 また、門脇家住宅を含む所子という町にも歴史があり、平成25年(2013年)には、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。私たちは、地元のガイドインストラクターの方と一緒に、約1時間程度、説明も兼ねて回らせていただきました。所子の南に位置する賀茂神社は、古くからの神社で、明和5年(1768年)には、21柱の神々が祀られていました。賀茂神社の北正面から所子集落の真ん中を通る帯状の空間は、「神さんの通り道」と呼ばれており、これはその名の通り、神様がお通りになるという意味で、昔からその帯状の上には建物を建ててはいけないという決まりがあり、現在もそれを守っているそうです。この「神さんの通り道」を基準に、賀茂神社から見て、右を「カミ」、左を「シモ」と呼ぶようになりました。「カミ」には、煙草乾燥場や廻国供養塔など昔ながらの村落を拝見することができます。「シモ」には、先ほどから紹介している門脇家住宅や所子村役場跡、精華尋常高等小学校跡など近代の家屋群を拝見することができます。そして、「カミ」の中には、平成21年(2009年)に国登録有形文化財に指定された美甘家住宅があります。この住宅の表門には、全国でも珍しい左桟瓦が使用されていますが、これは、集落内で美甘家住宅のみだそうです。また、美甘家住宅の庭園は、富士山の溶岩が固まった石を利用しており、これもまた日本でとても珍しい庭園だそうです。
 今回の調査活動を通して、所子という日本の昔ながらの生活に触れることができました。また、この所子全体を町中の住民で守っていこうとする強い意識が、とても心に残りました。
  • 地元ガイドインストラクターから所子町の説明を受けている様子

門脇家住宅お手伝い
徳永瑞季

  • 門脇家住宅の主屋の座敷にて

  • 門脇家住宅正門前にて

 私たちは5月5日に国の重要文化遺産に指定されている「門脇家住宅一般公開」のお手伝いをさせていただきました。仕事内容は、門脇家住宅の台所の説明、署名活動、受付、や後片付けなどです。
その日の天気は、午前中はいまにも雨が降りそうな曇り空でした。そのせいかなかなか集客が見込めませんでした。しかし、昼からは日が照り始め、お客様も次々と訪れるようになりました。5日の一般公開に訪れた集客数は、約140人でした。前日の4日は約160人お客様が来たそうです。集客数は前日には及びませんでしたが、天気があまりよくない中140人もの人たちが一般公開の観覧に来てくださったことはすごいと言っていました。受付をしていると、夫婦で来られる方や親子連れの方、またカップルで来られる方もいらっしゃいました。
 門脇家住宅の台所の説明では、門脇家の方がまず一通り私たちに詳しく説明をして頂き、それを覚えてお客様に説明するということでした。門脇家のかまどは、お客様が来たとき使用する多人数用の大きいかまどと、普段日常で使われる小さいかまどがありました。大きいかまどは高さが低く、私たちの背丈ほどある大きなしゃもじを使っても態勢が苦しくならないように工夫されたものでした。また、大きいかまどの底には穴が開いており、その穴が外につながっていて煙が外へ流れるようになっていました。その煙突は壁に斜めに突き出たつくりになっています。これは火事を防ぐために、わざと斜めになっているそうです。また、現在は水道が設置されていますが、もともとは水道がなく井戸から水をくみ上げ使っていたそうです。
  • 台所のお客様用「かまど」

  • 台所の日常用「かまど」と火吹き竹

 そして写真の左端に写っているのが火吹き竹です。これは火を吹きおこすために用いる竹筒のことです。一端の節を残して小さな穴があけてあり、この穴から空気を勢いよく吹き出すことができるようになっています。火吹き竹は、観覧者の中でも見たことや知っている人が多かったので説明しやすかったです。
 芳名録への署名活動では、来てくださったお客様の住所と名前を書いていただきました。芳名録に署名してもらうことで、どこから来てくださったのかも分かります。また、記録された名前が増えることで、これだけ大勢の人が門脇家に関心を持ってくれているということが分かり、誇りになると言っていました。実際、訪れた方々の住所の記録を見ると、北海道や東京など遠方から来てくださっているお客様も多かったので驚きました。同時にそんな遠くからわざわざ来てくださったのだと思うと私自身も嬉しくなりました。
 私は、今回の機会がなければ門脇家のことを知ることはなかったかもしれません。しかし、実際に実物をこの目で見ることができ、とても感動しました。昔の人の生きる知恵や暮らしの工夫の素晴らしさにも感心しました。今回の門脇家住宅の一般公開のお手伝いは、色んな面でとても貴重な体験だったと思います。まだ門脇家のことをあまり知らないという人たちにもっと広く深く知っていただきたいなと思いました。