1年生への異文化紹介を企画して

 私達CHOゼミは、日本の中で共存共栄している多様な異文化をより深く理解するために、様々な文化体験に出掛けます。今回は、駐大阪韓国文化院に異文化体験に出掛けました。韓国は日本から一番近い国であるにもかかわらず、最近のいろんな政治的な事情により日韓関係は冷え込んでいます。私達は隣の国の文化についてあまりにも知識不足であるため、まずは若者達からお互いを深く理解し合う必要があると思いました。そこで、まず私達は大阪市北区中崎にある駐大阪韓国文化院を訪れ、韓国文化を直接体験させていただきました。その後、そこでの体験を阪南大学1年生たちとも共有すべく、「異文化理解入門」という授業の中で韓国文化を紹介し、異文化交流を図るという企画を練ることになりました。そして、韓国文化院の方々と交渉を重ねた末に、当該企画は実現にまでこぎつけることができました。ここでは、その概要を報告いたします。

※この報告は、阪南大学【実学志向型総合的キャリアシステムの構築】事業の2013年度キャリアゼミ支援事業「異文化交流と比較文化論的調査により多文化共生を目指す(CHOゼミ)」の「韓国文化院との異文化交流」に関する活動報告の一部です。
※この学生教育研究活動は阪南大学学会より補助を受けています。

韓国文化院   住吉 安沙実

 駐大阪韓国文化院は、1999年に開院され、今年で開院15周年を迎えました。韓国文化院は、韓国政府が運営しており、世界21ヶ国25都市で展開されています。日本では、東京と大阪の2ヶ所に設置されており、私たちが訪ねたのは、駐大阪韓国文化院でした。駐大阪韓国文化院は大阪市北区中崎にあり、主に関西地域を中心として活動しており、多様な韓国文化を総合的に紹介することで、文化を通じて韓日間の交流の拡大と協力を支援する窓口としての役割を担っています。具体的な活動は、次のようなものがあります。韓国文化を紹介する公演やイベントの企画開催は勿論、韓国文化や歴史資料に関するブックカフェ・図書館・映像資料コーナーの運営や世宗学堂での韓国語講座、さらに世界規模で開催されている、k-popコンテストなどです。また、今回、私たち阪南大学1回生のための来校は、「訪ねていく韓国文化院」という活動の一環として位置づけられます。文化院ではこのような様々な活動を行っています。

 今回私たちは駐大阪韓国文化院を訪れ、韓国の伝統服であるチマチョゴリを試着したり、韓国の伝統楽器や食器などに触れさせていただきました。ブックカフェにも案内していただき、韓国の書物やテレビ番組関連資料なども拝見することができました。韓国文化院には、たくさんの韓国人の方が勤めていましたが、皆さん日本語も流暢で日本語での対応も全然問題なく、私達は韓国文化について気軽に学ぶことができました。ちょうどインターンシップで来日している韓国人学生の方もいたので、学生立場での就職事情や海外インターンシップに関する話もできました。

 私たちは、自分たちが直接体験した隣の国の文化を後輩たちにも直接体験してもらいたいと思いました。そこで、韓国文化院の「訪ねていく文化院」というプログラムを利用して、阪南大学の「異文化理解入門」授業の1年生たちに外部講師による異文化交流授業を開いてもらえるようにお願いしました。この「訪ねていく文化院」の授業を開くことは、阪南大学にいながら韓国文化を直接体験することができるため、1年生にとっては異文化と触れ合う貴重な経験になると思いました。さらに、韓国文化を広く伝播することを目的としている韓国文化院としても阪南大学の若者と交流できるいい機会だと思いました。この企画提案は去年に続く2年連続の企画でもあり、韓国文化院の方も快諾して下さいました。
 「訪ねていく文化院」の授業を開くにあたり、韓国文化院の方との日程調整をしたり、授業の内容としての公演の中身を詰めたりしました。阪南大学での授業内容が決まったら、公演を行う教室の規模や舞台の寸法などを測ったりしました。また、出演者が衣装を着替える楽屋としての小部屋を借りるために阪南大学の事務の方とも話し合ったりもしました。来校の日程や公演内容が決定した時点で、ゼミ生のみんなで、当日の流れについての確認や出演者として来校するお客さんの案内についても確認しました。
 当日はみんな朝早くから集まり、お客さんの案内や出演者の公演リハーサルなども行い、1年生達への資料配布なども考えながら、「異文化理解入門」の外部講師授業として韓国文化院の「訪ねていく文化院」の本番を迎えました。

舞台の様子   門松真美

 まず、授業のはじめには、韓国文化院の多様な活動に関する紹介や韓国全般を紹介するDVDを拝見しました。普段の韓国観光では見かけられない、田舎の風景や街並みが紹介されましたので非常に新鮮でした。また、韓国料理、音楽、ドラマ、韓流アイドルに関しても簡単に紹介されました。
 その後、キム・ヒオク先生、キム・イルチ先生、チョ・ヨンヒ先生の3人による韓国の伝統舞踊の花仙踊曲(ファソンムゴ)を拝見しました。この花仙踊曲(ファソンムゴ)は、仙女の優雅な動きが躍られていて、韓国伝統服チマチョゴリの優雅さをも際立たせていました。

 次は、キム・イルチ先生により、韓国伝統楽器であるチャンゴ(打楽器の一種)を紹介してもらった後、チャンゴ踊りも拝見することができました。チャンゴ踊りを拝見した後、チャンゴのリズムについても詳しく教えてもらいました。阪南大学生たちは皆で机の上を叩きながら、3拍子のチャンゴのリズムを直接体験することができました。チャンゴのリズムは、右手と左手でそれぞれ別のリズムを叩くので、なかなか難しかったのですが、教室中にチャンゴのリズムが騒がしく響きました。その後、数人が教室の前に呼ばれ、チャンゴの楽器を直接体験しました。机の上でリズムを叩く練習のときとは違って、バチでチャンゴを叩いたらその音の振動がさらに胸に伝わりました。
 チャンゴは朝鮮半島の代表的な打楽器であり、砂時計のような形の胴体をしています。その胴体の両面に違う種類の皮を張って作った太鼓の一種です。チャンゴは竹製のバチを使い、太鼓の両革や太鼓の枠を叩く楽器で、それぞれの低音と高音を鳴り響かせることで、互いのリズムを組み合わせる演奏ができます。
 次に、キム・ヒオク先生により、韓国伝統舞踊の太平舞(テピョンム)を拝見しました。
テピョンムは、長い伝統を持つ京畿道堂グッの巫俗舞踊に影響を受けている韓国独特の舞踊でもあります。国家や朝鮮王室が天下太平で平穏無事であることと豊年豊作を祈願するという舞いを舞台化して発展させた民俗舞踊だそうです。その踊りの基本となるリズムが大変複雑であり、特に足の動きを多彩に使ったステップが特徴的でした。
 次に、チョ・ヨンヒ先生による韓国伝統舞踊ソゴム(片手に持てる小太鼓の踊り)を拝見しました。ソゴムは、片手にはバチをもう一つの片手には太鼓を持って、太鼓を叩きながら踊る伝統舞踊で、太鼓の軽やかなリズムと華麗な足の動きが特徴的です。
 最後は、キム・イルチ先生による韓国伝統舞踊の扇の舞(プチェチュム)を拝見しました。プチェチュムは色鮮やかな衣装を着て、両手に大きな扇を持ち、波や牡丹の花などを表現する華やかな美しい踊りです。
 このような素敵な舞踊を直接見たり、伝統楽器を直接体験したりして、とても貴重な異文化体験ができたと思います。
 公演が終わってからは控室に移動し、出演者の方にいろいろとインタビューをさせていただきました。

インタビュー   山下若菜

出演後、キム・ヒオク先生、チョ・ヨンヒ先生、キム・イルチ先生にインタビューをしました。

Q:先生たちの舞踊がとっても素晴らしかったです。お化粧とチマチョゴリの色も大変綺麗で、色鮮やかでした。それぞれに特別な意味はありますか?
A:韓国の伝統舞踊を踊る時は、普段の化粧と違って非常に濃く化粧をします。何故かというと、チマチョゴリの色が大変鮮やかなので、化粧を濃くしないと顔がぼけるからです。
 韓国の伝統服チマチョゴリに使われる色には赤色、青色、黄色が必ず使われます。韓国文化の中では、赤色は土、青色は空、黄色は人間を意味する色なので、各色はそれぞれを代表しています。これらの色を伝統服であるチマチョゴリに取り入れ、社会の階級や身分年齢などが分かるようにしているわけです。たとえば、少女や若い女性は真紅のチマに黄色のチョゴリを好んで着ていました。結婚したばかりの新婦は真紅のチマと黄緑または緑色のチョゴリを着る傾向にありました。それ以外にも、年齢に見合う代表色がありました。

Q:さきほど踊られていたテピョンム、ソゴム、プチェチュムでは、それぞれの意味がありますか?
A:テピョンムは天下太平を願う国家行事で踊られた踊りであり、ソゴムは豊年を願う農家の民たちから伝わってきた踊りです。プチェチュムは女性の上品さと美しさを表す踊りとなっています。

Q:伝統舞踊を勉強しようと思ったきっかけは何ですか。親から習うように言われましたか、それとも、自分から勉強しようと思いましたか? 
A:子供の時から踊りが好きで、気づくと踊っていたという感じです。伝統舞踊はスポーツと同じ感じで、プロといわれるようになるには、毎日の練習が欠かせません。私たちは今でも毎日練習するようにしています。
 現在では、三人はそれぞれ日本で韓国伝統舞踊の教室を開いています。生徒たちの中には韓国人もいますが、日本人もたくさんいます。年齢層は、小学生から80歳を超える人までいます。みんなはそれぞれの目的で伝統舞踊をされています。80歳を超える人は健康のためにも踊られていますが、基本的には若い人から高齢者まで韓国の伝統舞踊を学びたいという方がほとんどです。

Q:韓国舞踊をするうえで大切にされていることはありますか。またハプニングなどはありましたか?
A:私たちは17年以上にもわたって舞踊をたくさんの人の前で披露し、また教えてきました。もちろん体調が思わしくなく、公演前に熱が出る時もありますが、舞台の上に立てば、今回のように満面の笑顔で伝統ある韓国舞踊を踊っております。異国である日本で国の伝統踊りを披露できるのを誇りに思っています。体調が思わしくなく非常に辛いときは、表面上では笑顔を取り繕いますが、歯を食いしばって舞台を頑張るときもあります。それは17年間も培ってきたプロ精神であると私たちは思っています。

Q:先生はどのような目的で活動されていますか。それから、将来望んでいることがありますか?
A:韓国人の先生たちは皆さん舞踊を教える過程の中で、さらに韓国文化や韓国文化院の活動を理解してもらえるよう、毎日努力しています。
 歴史からみると、日本と韓国は本当に兄弟のような時代がある反面、悲しい歴史もあります。日本人の皆さん、特に若い人たちが正しい歴史を知ったうえで、私たち、韓国の文化を好きになって欲しいと思います。私達は、10年以上も日本に滞在し、沢山の人に韓国舞踊を披露したり教えたりしてきました。欲を言えば、韓国の舞踊と日本の盆踊りや能楽等の伝統的な踊りが融合され、新しい文化が生まれれば素敵だと思います。その為には、今まで以上にお互いの国のことを理解し合わないといけないと思います。

 インタビューをしている中で、韓国の文化と日本の文化との融合やその発展を考えている様子がしみじみと伝わり、私たちもいろんな文化や知識を勉強しなければならないと思いました。

1年生の感想   海道 美皇

 始めのところで韓国を紹介するビデオの一つ一つの景色が美しくて、思わず見とれてしまいました。韓国として思い浮かべるのはソウル市内だけれど、こんなにものどかで美しい風景や街並みもあるのだと感心しました。(宮川 澄香)

 今回は韓国の伝統舞踊を披露して頂きました。私が特に気になったのは韓国特有の衣装です。日本の十二単と少し似ていると感じましたが、色使いが鮮やかで、服装の形が異なっていました。韓国のチマチョゴリは下半身の部分がふっくらしていて女の子らしい感じがしましたが、日本の着物は全体的に細身で大人っぽさがあると思いました。(Kさん)

 韓国の伝統舞踊は動きにとても緩急があり、優雅で心が惹き付けられました。また韓国の舞踊には、大きな扇や小さな太鼓を使った踊りもあり、見ていて飽きなかったです。そして、日本に比べるとかなりポップな要素もあり、衣装にも彩り鮮やかなところは、やはり歴史や文化の違いだなと実感しました。踊りには伝えたいメッセージが込められていると思いますが、今回は勉強不足でそれがあまり理解できなかったのが残念でした。次はもっと韓国の文化を学んでから再度見たいと思いました。(Yさん)
 
 今日は韓国の伝統楽器「チャンゴ」を直接体験しました。日本の楽器とは、やはり違う韓国独特の雰囲気を感じました。太鼓をたたくバチを握る手の握りかたが左右で異なり、3拍子でリズムを打つのが難しかったです。また、自分が太鼓をたたいた音は静かな音で、自分の気持ちが音に出ているような気がしました。今回の講義を通して、韓国の伝統文化を直接体験したり、身近で生で鑑賞できるということは実にすばらしく、自分たちにとって異文化に接する素晴らしい時間でありました。(Hさん)

 最近ではk-popのことしか取り上げていない気がしていたので、韓国の昔からの文化を身近に感じることができて新鮮でした。遠いところから朝早くにも関わらず来てくださった方々に感謝しています。ありがとうございました。(Oさん)
 以上、阪南大学の1年生たちに韓国の文化を直接体験してもらえたことに私たちは非常にやりがいを感じました。このような企画の準備過程はとても大変でしたが、いろんな学びもありました。社会の方々とのやり取りの中で、自分たちの企画がうまく実行できたという達成感も感じました。また、ゼミのみんなで協力し合いながら企画の実現に向け取り組んだことで、まとまりもでき、一人ひとりが一段と成長を遂げたと思います。今回の経験から学んだことを今後のゼミ活動や就職活動にも活かしていきたいと思います。