流通学部 流通学科 片渕卓志

 特別講義では、現在の経済活動や産業政策をそのままにした場合の2100年の地球の平均気温は、現在の気温から5.7℃上昇するシナリオであること、日本に当てはめると春が早まり、秋は遅れ、猛暑日が約5か月となるなどのデータが「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」や気象庁のデータをもとに示されました。
 そして、石炭、石油、天然ガスという地球の温暖化を促進してしまう資源による電気の利用を減らし、地球の維持可能な形の資源、すなわち再生可能な自然資源を使っての発電(自然エネルギー)についてご教授いただきました。日本は「資源はない国である」と、これまで無前提で当たり前のように言われてきましたが、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など「エネルギーは無限にある」という、「逆転の発想」が示されました。
 こうした経緯から、PAREにキャリアゼミ要項をお送りし、片渕ゼミとして、キャリアゼミの連携団体となっていただくことを依頼しました。キャリアゼミ募集要項には、「産官学の連携により地域社会と本学が協力関係をもちながら、地域社会の課題を発見し解決する活動を通じて学生の社会人基礎力を育成することを目的としたゼミ活動である」と定義されております。こうした側面から春学期のゼミ活動を総括してみたいと思います。
 4月に入り、「自然エネルギー市民の会」の事務所に表敬訪問に参りました。そこではPAREの活動について説明を受けました。また、PAREが省エネの大切さを市民に理解してもらうための啓発活動で使われている道具を見せて頂きました。PAREと阪南大学片渕ゼミは協力関係をもちながら、地域社会の課題を解決する活動をすることになっております。
3 大阪の市民団体(自然エネルギー市民の会)の建設した「市民共同発電所」の視察見学と大阪府泉大津市の「ゼロ・カーボンシティ」推進担当スタッフへの聞き取り調査

 5月29日にPAREが建設した大阪の市民団体としては初の「泉大津市民共同発電所」で草刈り作業のお手伝いをさせていただきました。学生の参加が少なく、この点が次回以降の課題です。発電設備の視察見学活動や当日の発電所の発電量の計測活動などとリンクさせ、毎回人を送り出せる手立てを考えたいと思います。キャリアゼミ活動として協力いただくばかりの関係にならないように改善していきます。子どもたちへ省エネの大切さを教える啓発活動教室のアシスタントの依頼があれば引き受けることになっておりますが、充分に用意しておきたいと考えております。
  630日にはPAREが運営管理する同発電所の発電の仕組みの説明を受けました。詳しくは630日の記事をご参照下さい。この日はまたPARE事務局の中村様のご紹介で泉大津市の環境課の担当者の方から2050年のカーボンニュートラル実現へ向けた同市の取り組みを聞き取ることができました。2050年までに市内の施設、工場・オフィス、家庭から排出される温室効果ガスをゼロにする「ゼロ・カーボンシティ」を目指し、各種の取り組みを行っていることを教わることができました。
4 和歌山県有田川町の小水力発電とバイオマス発電の聞き取り調査

 7月20日に和歌山県有田川町の町営小水力発電所と同町にある有田川町バイオマス株式会社のバイオマス発電所(木質バイオマス発電)を視察しました。今回の視察はPAREとは別団体が主催する「自然エネルギー講座」の視察見学会に参加させていただいたものです。主催団体は小水力発電と小規模の木質バイオ発電を大阪で作る可能性を探ることに目的としてもっておられ、この心意気は本格的で、かつ真剣なものでした。あとで同団体は、多さでも同じような発電所を建設することが出来ないかを真摯に検討している組織であると知りました。
 当日の参加者は38名の大人数でした。昼食時には、木質バイオ発電から生まれた熱を活用して営業する「かなや明恵峡温泉」で、参加者全員が見学について感想を交流するという機会がありました。学生たちは自分たちより年上の大勢の前で発言する機会を突然もつことになりましたが、よくやっていました。また、2つの見学先では参加者からの質問の機会が設けられましたが、参加者からの熱心な質問を聞く機会をもてたことは、学生たちにとってたいへんプラスで貴重な体験であったと考えています。
 流通学部では12月にゼミナール大会が開催されます。片渕ゼミの学生も研究発表をしますが、これまでお世話になった方々から教わったことを十分参考にし、感謝しながら、もてる力を存分に発揮したプレゼンテーションを行う必要があります。
 以上をもってキャリアゼミ活動の中間報告としたいと思います。下記に当日の状況がわかる写真を一部掲載します。町営小水力発電所は外からの様子だけで中にあるタービン(水車)の様子やタービンに水が流れ込む様子は見ることはできませんでしたが、詳細な資料を頂いているので、別に解説記事を掲載します。
5 補論:有田川町のバイオマス発電について

 有田川町の間伐材を利用したバイオマス発電所については、まずプロモーションビデオがとてもよくできているので下記のリンクからその様子をご覧頂ければと思います。
 有田川バイオマス発電所は「木質ガス化発電」という方式を採用しており、有田川産または県内産の間伐材をチップにし、そのチップを蒸し焼きにして可燃ガスを発生させ、可燃ガスを燃やしてタービンを回し発電します。発電量は約1,600世帯の電気使用量に相当します。有田川町バイオマス発電所は域貢献型発電所がコンセプトであり、①有田川町産を中心に県内産の木材 (年1万トン)を供給することで、林業の活性化につなげる、②発電時の熱を隣接する「かなや明恵峡温泉」に送り、電気で温泉水を温めていたのを発電所から供給される熱に代替する、③副産物として生まれる炭を肥料化することで地域での農業利用を目指す、④発電する際に生まれる熱を木材乾燥に利用し、水分率の低い薪や木質チップをつくり、ボイラーやストーブなどで利用してもらうと言うものです。バイオマス発電はカーボンニュートラルと言われるが、有田川バイオマス発電所の場合は、さらに熱と炭の活用することにより温暖化防止に貢献しているといえます。

有田川バイオマス発電所プロモーション映像

学生活動状況報告

家次 一毅(3年)
 このゼミで今まで「地球温暖化」について勉強してきました。ゼミの活動をするまでは、地球温暖化という言葉だけは知っていましたが、具体的にどういうことなのかということをあまり理解できていなかったと思います。勉強をするうちに理解を深めていくことができました。ただし言葉だけで学んでいても、実際のことは分からないという思いがあったが、自然エネルギーの発電所などを視察し、色々教わる中で「自然エネルギー」の大切さを理解することが出来ました。見学をさせてもらうことで、地球温暖化の問題が身近となるとともに、それを止めることが実際にはそんなに簡単ではないと感じることができました。一人一人が意識を変えていくことが重要だと思いました。

山下 大地(3年)
 このゼミに入らなければ一生知らず、関わらなかっただろうと思う「地球温暖化」について勉強していくうちに、自然エネルギーのすごさ、すなわち太陽光発電や水力発電など、そこに設置しておくだけで発電できるという、すごさを知ることが出来たし、一方でその場所に草や木が生えるのが大変で、私は汐見発電所の草刈り作業に参加したこともあって、電気をつくる大変さというよりは、発電所を設置することで別のしんどさがあることを知れたことは自分にとって大きかったです。色々な発電を学んできたがタービンを回してモータを回転させて電気をつくるというのは同じなのだなと学ぶことが出来た。バイオマス発電についてはあの暑い中での作業がどれだけ大変なことをしているのかを考えました。

今川 斗碧(3年)
 地球温暖化は自分たちの身の回りのことなので、もっと関心をもって取り組まなければいけないと理解しました。3月には龍神温泉に行って中村様のお話を聞かせてもらって、そこでもまだ内容は全然理解できなかったのですけれど、汐見発電所、二川ダム小水力発電所、有田川町バイオマス発電所を見学させていただいて、どれも「すごい」という感想しかなくて、もっと自分が知って行かなければいけないことが多いというということが分かりました。

石田 将暉(3年)
 地球温暖化について具体的に世界がどのような活動をしているのか、最初はよくわからなかったです。まず地球温暖化というのがどういう状態なのかというのを頭に入れた状態でないと、先生の言っていることが分からなかったので、先生の話を大まかに理解し、使われる用語をよく理解するように努めました。発電所の見学によって、文字だけでは理解できないことがたくさんありました。