当該研究活動は、大阪府八尾市高安地区の活性化につながる地域づくりデザインを提案することを目的とする研究活動である。
 大阪府の中河内地域に位置する八尾市は、面積41.72平方キロメートル、人口269,631人、高齢化率26%の特例市である。行政区的には、大阪市、柏原市、東大阪市、藤井寺市、松原市と市境を隣接させ、地形地理的には生駒山地を東側に持する。大阪中心部にもアクセスがよく、近年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンや大阪観光を楽しむ外国人観光者も視野に入れた取り組みなどが期待されるところである。
 近年の全国的な傾向であるが、八尾市においても、出生率よりも死亡率が上回り、人口減少、小中学校の統廃合などが進み、市域、とりわけ、高安地区では、その傾向が顕著であり、地域に活気が見られない状況を呈している。
 このような状況にピリオドを打ち、あらたな展開を見出すべく、市としても何らかの対策を講じていきたいと考えられているようであり、八尾市政策推進課より本研究室へ高安地区を中心とした地域づくりデザインの提案依頼があった。

 なお、今回のケースにおいては、高安地区における「空き校舎の活用」を前提とするものであり、その活用方案の提案の中心に「空き校舎の活用」を据え、周囲の地域資源の活用を思考するものであった。
 研究活動は、まず、3回ゼミ18名を4グループに分け、行政資料などの書面資料から八尾市の現況を把握することからはじめた。そして、数回の現地調査(フィールドワーク)を実施し、グループにおけるディスカッションを重ねながらデザインをまとめ、2016年3月に八尾市役所においてグループごとに地域づくりデザインを提案するというプロセスで展開した。
 提案したデザインは、例えば、ものづくりのまち八尾という特色を勘案し、八尾市内の企業の職業体験ブースを集約した施設に関する提案、ニッポンバラタナゴに関連して絶滅危惧種や自然保護・環境保護などに特化して資料を収集する図書館に関する提案などを内容に持ち込んだデザインであった。
 地域が地域に目を向けるという状況を創造するためには、何らかのきっかけが必要となるが、その手段の1つとして第3者的要因も有効であると考えられる。当該研究活動が、地域の方々に地域のことを知ってもらうきっかけを提供することに繋がればと考えるところである。
 なお、本研究室では八尾市における研究活動を継続する予定である。

参加学生一覧

二ノ井未来、井原礼香、上野聡美、大澤弥央、奥野陽介、鈴木菜月、竹本愛、中原理奈、西川夏生、布目綾香、冨士知郷、古屋佑果、守安理沙子、八木麻歩未、横山杏子、吉本慎也、浅井雄龍

学生の感想

国際観光学部 富士 知郷

 和泉ゼミは「地域・観光の創造」をテーマに掲げて研究活動を展開しています。つまり、地域資源や人的ネットワークを活用しながら、地域づくりや観光振興のための新たなデザインプランを思考・提案し、地域の方々と共に実践するという研究活動です。先生はゼミにおいて「地域を考えるということは地域に住んでいる人のことを考えることと同じだ。だから地域の声に耳を傾け、地域の目線で思考しなければならない」とおっしゃられます。実際にフィールドワークへ行き、地域の方のお話を聞いていると、それまで大学の中で自分たちが考えていたことが、少しズレているのではないかと思うことがありました。
 地域づくり・観光振興という分野の研究においては、書籍などによる理論的な学びと現地での学びのバランスが大切であるということを、身をもって知ることが出来ました。

教員のコメント

国際観光学部 和泉 大樹 准教授

 大学における学びの特徴は、問題を自分自身で発見することにあります。とりわけ、地域づくりなどの分野では、本のページや地域の資料をめくっているだけでは問題を発見することが難しく、フィールドに出て、自身で感じることが重要であると考えられます。彼女のグループは八尾の特徴の1つである「ものづくり企業が多い」ということに着目しましたが、フィールドワークなどにより、地域の方が地域の企業にあまり就職しないということを知り得たようです。そしてそこから「八尾の企業と地域の方々の距離を近づける必要がある」という発想に至りました。
 当該研究活動のプロセスにおける彼女の経験は、これからの彼女の人生において有効に機能する学びの経験であると確信しています。とは、指導教員の欲目でしょうか?